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  2. 不動産賃借権の時効取得について

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こんにちは。
取得時効については民法に次の条文があります。

(所有権の取得時効)
第百六十二条 
1 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
(所有権以外の財産権の取得時効)
第百六十三条 
所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い二十年又は十年を経過した後、その権利を取得する。


所有権の場合は162条が適用され、この場合は「所有の意思をもって」です。
所有権以外の財産権については163条が適用されますが、ここで所有権以外の財産権というのは物権である地上権、永小作権、地役権の他に債権であるけれども物権に近い債権である賃借権(「不動産賃貸借の物権化」と言われるようです)が該当し、この場合は「自己のためにする意思をもって」、すなわち不動産賃貸借であれば「自己のために賃借する意思をもって」ということで、時効取得が可能になると思います。
なので賃借の意思をもって地代を20年払い続ければ時効取得できてしまうという事だと思います。
参考判例→最判昭和48年10月8日
賃借権の時効取得はイメージが湧きにくいのですが、無権原者とは知らずに
借りて賃借料を払っていて賃借権を時効取得するケースが多いと思います。

例えば最判昭和52年9月29日の場合では、土地付き建物の土地の一部を
管理人と称するものから借りて建物を築城し、土地の賃借料を支払っていたが、
実は管理人はただの建物の賃借人だった。この状況において所有者が告訴したが
長期にわたり賃借料を支払っていた被告人に賃借権の時効取得を認めています。

以上参考まで。
ウルトラゾーンさん、Beginnerさん。

お二方とも丁寧な解説ありがとうございます。
とても参考になりました。

確かに... イメージがしづらいですよね。
そもそも、賃借権のみを時効取得するというのがイメージできません。

賃借権のみを時効取得したところでどんなメリットがあるのか?
また、賃借権を失った土地の所有者にはどんな不都合があるのか?
さらには、相手が契約に従って普通に地代を払い続けてくれてる以上、時効の中断は難しいような気もしますし...

まだまだ勉強不足でいろいろ考えると混乱してしまいます。


不動産賃借絡みの問題は、少し特殊というかややこしいところがあるので民法や借地借家法において問われやすいところだと思います。逆にここをしっかり学習しておけば得点源になると思うので頑張りましょう。
メリットについてですが
Beginnerさんが書かれているように、ある土地を借りて賃料を払いながら長年(20年以上としましょう)平穏に住み続けている人(Aさん)がいたとして、この人が真の土地の所有者だと名乗る人(Bさん)からいきなり「ここは私の土地だから出ていけ」と言われたら、まさに青天の霹靂で困ってしまいますよね。
この場合、土地を借りる時にきちんと真の所有者である事を確かめなかったAさんが悪いのか、20年以上も土地を放置していたBさんが悪いのかを判断する事になり、落度の大きさはBさん>Aさんとなると思います(時効の考え方に照らして)
その結果、ずっと平穏に暮らしてきたAさんは、その場所でこれからも暮らしていけるというメリット?があります。
そして真の土地の所有者であるBさんは、自分の土地を自由に使えないという不具合が生じる事になります(←長い間ほおっておいたのだから仕方がない)が、Bさんもある意味、自分の土地を勝手に貸されてしまった被害者でもあるため、この賠償は別途土地をAさんに貸した者(土地の所有者を偽っていた者)に対して求めていくことになると思います。

そんな訳で、問題で問われる部分は、だいたい条文や判例などを基にどちらに非があるかで勝敗がつけられ、それが答えになるのですが、実際はそれで終わりではなくて、その後も負けた方が更に非がある人に対して賠償していくという構造になっているのを認識しておけばいいのではないかと思います。
>賃借権のみを時効取得したところでどんなメリットがあるのか?
建物の明渡、除却命令を免れることに大きなメリットがあります。

前記の判例では所有者が借地人に対して所有権に基づく妨害排除請求をしていると考えられます。
この請求は裁判上の請求なので強制力があり、賃借権の時効取得が認められないと裁判所から
借地人所有建物の明渡、除却命令が出るので、建物を撤収し原状復帰しなければなりません。

その場合に、管理人に借地人が損害賠償を請求することで被害は軽減できますが、管理人が生存
していなくて、相続放棄されたら借地人は八方塞がりになってしまいます。

このように時効の問題は相続がからむと責任追及が難しくなるので、救済されるべき者に救いの
手を差し伸べるところに大きな意義があると思います。

>賃借権を失った土地の所有者にはどんな不都合があるのか?
土地の所有者は賃借権を失う?、ということはありませんが、借地人が賃借権を時効取得すると
当然その部分は自己が利用便益することができなくなります。
さらに、賃借権のついた借地人の所有建物が所有地にあることになるので土地の売却が難しくなり、
資産価値も低下します。
返信ありがとうございました。
とても分かりやすくて感激しました。

掲示板上の文章のやり取りでここまですっきりするとは…。
お二方ともとても広い知識をお持ちでうらやましい限りです。

自分も皆さんに追いつけるように頑張りたいと思います。
また機会がありましたらよろしくお願いします。

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