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平成28年-問32 民法 債権

Lv3

問題 更新:2023-01-30 17:51:59

債権者代位権または詐害行為取消権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、正しいものはどれか。

  1. 債権者は、債権の弁済期前であっても、債務者の未登記の権利について登記の申請をすることについて、裁判所の許可を得た場合に限って、代位行使することができる。
  2. 債権者は、債務者に属する物権的請求権のような請求権だけでなく、債務者に属する取消権や解除権のような形成権についても代位行使することができる。
  3. 債権者は、債務者に属する権利を、債権者自身の権利として行使するのではなく、債務者の代理人として行使することができる。
  4. 甲不動産がAからB、AからCに二重に譲渡され、Cが先に登記を備えた場合には、AからCへの甲不動産の譲渡によりAが無資力になったときでも、Bは、AからCへの譲渡を詐害行為として取り消すことはできない。
  5. 詐害行為取消権の立証責任に関しては、債務者の悪意と同様に、受益者および転得者側の悪意についても債権者側にある。
  解答&解説

正解 2

解説

債権者代位権の要件
①債権保全の必要性があること
②被保全債権の弁済期が到来していること(保存行為を除く)
③代位の対象の権利が代位されうる権利であること
④代位される者(債務者)が、権利の行使をいまだしていないこと
詐害行為取消権の要件
[1]被保全債権の存在
[2]債務者における詐害行為及び詐害の意思のあること
[3]受益者・転得者が詐害の事実について知っていたこと

債権者は、債権の弁済期前であっても、債務者の未登記の権利について登記の申請をすることについて、裁判所の許可を得た場合に限って、代位行使することができる。 1.誤り。

裁判所の許可を得た場合に限って代位行使することができるとする本肢は誤り。

債権者代位権の要件のうち、上記②についての問題である。

条文によると、債権者は、その債権の期限が到来しない間は、債権者代位権を行使することができないが、保存行為は、この限りでないとされている(民法423条2項)。

債務者の未登記の権利について登記の申請をすることは保存行為であるため、債権者の債権の期限が未到来でも、裁判所の許可を得ずに代位権を行使することができる。

債権者は、債務者に属する物権的請求権のような請求権だけでなく、債務者に属する取消権や解除権のような形成権についても代位行使することができる。 2.正しい。

債権者代位権の要件のうち、上記③についての問題である。

判例によると、債務者に属する形成権(権利者の一方的な意思表示によって一定の法律関係を発生させることのできる権利)も代位の対象になり得るとされている(解除権につき大判大正8年2月8日、相殺権につき大判昭和8年5月30日)。
取消権の成立は解除権に近いため、取消権の代位行使も認められうる。

なお、代位できない権利とは「一身専属の権利」及び「差押えを禁じられた権利」である(民法423条1項ただし書き)。

債権者は、債務者に属する権利を、債権者自身の権利として行使するのではなく、債務者の代理人として行使することができる。 3.誤り。

債務者の代理人として行使することができるとする本肢は誤り。

条文によると、債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利を行使することができるとされている(民法423条1項)。
これは債務者の代理人としての権利行使ではなく、債権者自身の権利行使である。

なお、民法423条を読んでも、代位権の行使が債務者の代理人として行使するのか、債権者自身の権利として行使するのか定かではないと思った方もいるであろう。
ここは条文の「趣旨」を考えて欲しい。民法423条にあるように、当制度は「債権者の債権を保全するための制度」である。もし債権者が債務者の代理人として行動することになると、債権者の債権を保全することと矛盾する場面が出てくるであろう。債権者代位権は、あくまで債権者のための制度である。

甲不動産がAからB、AからCに二重に譲渡され、Cが先に登記を備えた場合には、AからCへの甲不動産の譲渡によりAが無資力になったときでも、Bは、AからCへの譲渡を詐害行為として取り消すことはできない。 4.誤り。

Bは無資力になったAの行為を詐害行為として取り消すことができないとする本肢は誤り。

詐害行為取消権の要件のうち、上記[1]についての問題である。

判例によると、特定物引渡請求権といえどもその目的物を債務者が処分することにより無資力となった場合には、当該特定物債権者はその処分行為を詐害行為として取り消すことができるものと解するのが相当とされている(最判昭和36年7月19日)。

そもそも詐害行為取消権を行使するための被保全債権は、金銭債権であることが原則であり、特定物債権の実現のために取消権の行使をすることはできない(つまり債権者代位権と異なって、「転用」は認められるべきではない)。
なぜなら詐害行為取消権の目的は責任財産の保全であるし、特定物債権の実現のために詐害行為取消権が認められたら、民法177条、178条の対抗要件制度が意味をなさなくなるためである。

上記「最判昭和36年7月19日」の事例は、特定物引渡債権の実現のために詐害行為取消権を行使するのでなく、特定物引渡債権が金銭債権たる損害賠償請求権に転化している点に注意。

詐害行為取消権の立証責任に関しては、債務者の悪意と同様に、受益者および転得者側の悪意についても債権者側にある。 5.誤り。

受益者の悪意について債権者側に立証責任があるとする本肢は誤り。

詐害行為取消権の要件のうち、上記[3]についての問題である。

そもそも立証責任とは、裁判官が判決を出すためのルールである。
裁判は「主張+立証」の繰り返しで行われるが、主張を通すために立証するべき事実はあらかじめ決まっており、その事実の立証の責任が、当事者の一方に負わされている。
当該責任を負った者が立証できなかった場合は、その者に不利な判決が出されることになっている。これが「立証責任」である。

受益者の悪意については、受益者側に立証責任があるとされている。

なお、立証責任の分担は明文で定められるものではなく、裁判実務を通して形成される。

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