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平成29年-問32改題 民法 債権

Lv3

問題 更新:2024-01-07 12:09:33

共同事業を営むAとBは、Cから事業資金の融資を受けるに際して、共に弁済期を1年後としてCに対し連帯して1,000万円の貸金債務(以下「本件貸金債務」という。)を負担した(負担部分は2分の1ずつとする。)。この事実を前提とする次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 本件貸金債務につき、融資を受けるに際してAが法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤に陥っており、錯誤に基づく取消しを主張してこれが認められた場合であっても、これによってBが債務を免れることはない。
  2. 本件貸金債務につき、A・C間の更改により、AがCに対して甲建物を給付する債務に変更した場合、Bは本件貸金債務を免れる。
  3. 本件貸金債務につき、弁済期到来後にAがCに対して弁済の猶予を求め、その後更に期間が経過して、弁済期の到来から起算して時効期間が満了した場合に、Bは、Cに対して消滅時効を援用することはできない。
  4. 本件貸金債務につき、Cから履行を求められたAが、あらかじめ共同の免責を得ることをBに通知することなくCに弁済した。その当時、BはCに対して500万円の金銭債権を有しており、既にその弁済期が到来していた場合、BはAから500万円を求償されたとしても対抗することができる。
  5. 本件貸金債務につき、AがCに弁済した後にBに対してその旨を通知しなかったため、Bは、これを知らずに、Aに対して事前に弁済する旨の通知をして、Cに弁済した。この場合に、Bは、Aの求償を拒み、自己がAに対して500万円を求償することができる。
  解答&解説

正解 3

解説

連帯債務の相対効(相対的効力)・絶対効(絶対的効力)を問うている。

相対効 連帯債務者の一人に生じた事由が、他の連帯債務者に影響を及ぼさない
絶対効 連帯債務者の一人に生じた事由が、他の連帯債務者に影響を及ぼす

連帯債務者は、債権者に対してはそれぞれが全額の債務を負うという点に関して、各連帯債務者は対等な関係であり、それぞれの債務は別のものととらえることができる。

したがって連帯債務関係においては「相対効」が原則(民法441条)であるものの、一部「絶対効」も認められる。

本件貸金債務につき、融資を受けるに際してAが法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤に陥っており、錯誤に基づく取消しを主張してこれが認められた場合であっても、これによってBが債務を免れることはない。 1.妥当である。

連帯債務者の一人について法律行為の無効又は取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は、その効力を妨げられない(民法437条)。

他の連帯債務者がいようがいまいが、各連帯債務者はもともと全額の債務を負っているため、ある連帯債務者が存在しないことになっても、他の連帯債務者には影響はない(相対効)。

本件貸金債務につき、A・C間の更改により、AがCに対して甲建物を給付する債務に変更した場合、Bは本件貸金債務を免れる。 2.妥当である。

連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する(民法438条)。
更改については、絶対効である。

本件貸金債務につき、弁済期到来後にAがCに対して弁済の猶予を求め、その後更に期間が経過して、弁済期の到来から起算して時効期間が満了した場合に、Bは、Cに対して消滅時効を援用することはできない。 3.妥当でない。

Aが時効の更新事由である債務の承認行為をしているが、これは他の連帯債務者との関係で、絶対効ではない。ゆえにBはCに消滅時効を援用できる。

本件貸金債務につき、Cから履行を求められたAが、あらかじめ共同の免責を得ることをBに通知することなくCに弁済した。その当時、BはCに対して500万円の金銭債権を有しており、既にその弁済期が到来していた場合、BはAから500万円を求償されたとしても対抗することができる。 4.妥当である。

他の連帯債務者があることを知りながら、連帯債務者の一人が共同の免責を得ることを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において、他の連帯債務者は、債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分について、その事由をもってその免責を得た連帯債務者に対抗することができる(民法443条1項)。

Aは、他の連帯債務者であるBの存在を知りながら、事前の通知をしておらず、Bは、Cに対する500万円の債権をもって相殺できたことから、Bは、Aに対抗でき、AはBに対し500万円の求償ができない。

なお、BのCに対する500万円の債権が移転するので、Aは、Cに対し500万円を請求できる。

本件貸金債務につき、AがCに弁済した後にBに対してその旨を通知しなかったため、Bは、これを知らずに、Aに対して事前に弁済する旨の通知をして、Cに弁済した。この場合に、Bは、Aの求償を拒み、自己がAに対して500万円を求償することができる。 5.妥当である。

弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た連帯債務者が、他の連帯債務者があることを知りながらその免責を得たことを他の連帯債務者に通知することを怠ったため、他の連帯債務者が善意で弁済その他自己の財産をもって免責を得るための行為をしたときは、当該他の連帯債務者は、その免責を得るための行為を有効であったものとみなすことができる(民法443条2項)。

Aは、他の連帯債務者であるBの存在を知りながら、事後の通知をしておらず、Bは、事前の通知をしたうえでCに弁済しているので、BはAに対して自己の弁済は有効であったとみなすことができる。
よって、Bは、Aの求償を拒み、自己がAに対して500万円を求償することができる。

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