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  4. 問33

平成29年-問33 民法 債権

Lv4

問題 更新:2024-01-07 12:16:09

Aは自己所有の甲機械(以下「甲」という。)をBに賃貸し(以下、これを「本件賃貸借契約」という。)、その後、本件賃貸借契約の期間中にCがBから甲の修理を請け負い、Cによる修理が終了した。この事実を前提とする次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. Bは、本件賃貸借契約において、Aの負担に属するとされる甲の修理費用について直ちに償還請求することができる旨の特約がない限り、契約終了時でなければ、Aに対して償還を求めることはできない。
  2. CがBに対して甲を返還しようとしたところ、Bから修理代金の提供がなかったため、Cは甲を保管することとした。Cが甲を留置している間は留置権の行使が認められるため、修理代金債権に関する消滅時効は進行しない。
  3. CはBに対して甲を返還したが、Bが修理代金を支払わない場合、Cは、Bが占有する甲につき、動産保存の先取特権を行使することができる。
  4. CはBに対して甲を返還したが、Bは修理代金を支払わないまま無資力となり、本件賃貸借契約が解除されたことにより甲はAに返還された。本件賃貸借契約において、甲の修理費用をBの負担とする旨の特約が存するとともに、これに相応して賃料が減額されていた場合、CはAに対して、事務管理に基づいて修理費用相当額の支払を求めることができる。
  5. CはBに対して甲を返還したが、Bは修理代金を支払わないまま無資力となり、本件賃貸借契約が解除されたことにより甲はAに返還された。本件賃貸借契約において、甲の修理費用をBの負担とする旨の特約が存するとともに、これに相応して賃料が減額されていた場合、CはAに対して、不当利得に基づいて修理費用相当額の支払を求めることはできない。
  解答&解説

正解 5

解説

Bは、本件賃貸借契約において、Aの負担に属するとされる甲の修理費用について直ちに償還請求することができる旨の特約がない限り、契約終了時でなければ、Aに対して償還を求めることはできない。 1.妥当でない。

賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる(民法608条1項)。

賃貸人は賃借人に対して賃借物を適切に使用させる義務を有し、「直ちに」とは「費用を支出するのと同時に」という意味であって、契約が終了することを必要としない。

なお、必要費とは異なり、有益費は、契約の終了後においてはじめて償還請求をすることができる(民法608条2項)。

CがBに対して甲を返還しようとしたところ、Bから修理代金の提供がなかったため、Cは甲を保管することとした。Cが甲を留置している間は留置権の行使が認められるため、修理代金債権に関する消滅時効は進行しない。 2.妥当でない。

留置権の行使は、債権の消滅時効の進行を妨げない(民法300条)。
留置権の行使はあくまで物権の行使であるため、債権関係に影響を与えない。

CはBに対して甲を返還したが、Bが修理代金を支払わない場合、Cは、Bが占有する甲につき、動産保存の先取特権を行使することができる。 3.妥当でない。

先取特権は債務者の所有物に成立するのが原則であるが、甲機械はAの所有物であり、Bは賃貸借契約に基づいて占有しているだけなので、Cは動産保存の先取特権を行使することは妥当でない。

先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する(民法303条)。

なお、即時取得の規定の準用がない民法319条を根拠に妥当ではないと考えた人もいるかと思われるが、この肢には当該条文が成立するための要件が書かれていないことから303条を根拠に正解を導き出すのが賢明である。

CはBに対して甲を返還したが、Bは修理代金を支払わないまま無資力となり、本件賃貸借契約が解除されたことにより甲はAに返還された。本件賃貸借契約において、甲の修理費用をBの負担とする旨の特約が存するとともに、これに相応して賃料が減額されていた場合、CはAに対して、事務管理に基づいて修理費用相当額の支払を求めることができる。 4.妥当でない。

事務管理によって費用の支払いを請求できるための要件としては、「義務なく他人のために事務の管理を始めた」ことが必要である(民法697条参照)。

本肢の場面ではCはBから甲の修理を請け負ったのであるから、Cは義務なく他人のために事務の管理を始めたわけではない。
したがって本肢で問題となるのは、事務管理の費用償還請求権の有無ではない。
この時点で、本肢は妥当でないと判断できるが、検討を続ける。
CはAに対して支払いを求めているのは、不当利得返還請求権の行使であろう(CA間に契約もなければ不法行為もなく、前述の通り事務管理でもないため、残る債権の発生原因は不当利得であるため)。
不当利得返還請求権が認められるためには、Aが「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受けた」と言えなければならない(民法703条)。では、Aは当該利益を受けたのであろうか。
本問の事例と類似する建物賃貸借関係における判例では、「甲が建物賃借人乙との間の請負契約に基づき右建物の修繕工事をしたところ、その後乙が無資力になったため、甲の乙に対する請負代金債権の全部又は一部が無価値である場合において、右建物の所有者丙が法律上の原因なくして右修繕工事に要した財産及び労務の提供に相当する利益を受けたということができるのは、丙と乙との間の賃貸借契約を全体としてみて、丙が対価関係なしに右利益を受けたときに限られるものと解するのが相当である」としている(最判平成7年9月19日)。
本肢の場面でAは修理費用をBの負担とする代わりに賃料を減額していたのだから、「利益を受けた」とはいえない。
この点からも、本肢は妥当でない。

CはBに対して甲を返還したが、Bは修理代金を支払わないまま無資力となり、本件賃貸借契約が解除されたことにより甲はAに返還された。本件賃貸借契約において、甲の修理費用をBの負担とする旨の特約が存するとともに、これに相応して賃料が減額されていた場合、CはAに対して、不当利得に基づいて修理費用相当額の支払を求めることはできない。 5.妥当である。

肢4解説を参照。

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