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令和元年-問3改題 憲法 その他

Lv4

問題 更新:2023-01-28 12:24:35

議員の地位に関する次の記述のうち、法令および最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはいくつあるか。

ア.衆参両議院の比例代表選出議員に欠員が出た場合、当選順位に従い繰上補充が行われるが、名簿登載者のうち、除名、離党その他の事由により名簿届出政党等に所属する者でなくなった旨の届出がなされているものは、繰上補充の対象とならない。

イ.両議院の議員は、国会の会期中逮捕されないとの不逮捕特権が認められ、憲法が定めるところにより、院外における現行犯の場合でも逮捕されない。

ウ.両議院には憲法上自律権が認められており、所属議員への懲罰については司法審査が及ばないが、除名処分については、一般市民法秩序と関連するため、裁判所は審査を行うことができる。

エ.地方議会の自律権は、議院の自律権とは異なり法律上認められたものにすぎないので、裁判所は、除名に限らず、地方議会による議員への出席停止の懲罰について審査を行うことができる。

オ.地方議会の議員は、住民から直接選挙されるので、国会議員と同様に免責特権が認められ、議会で行った演説、討論または表決について議会外で責任を問われない。

  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. 四つ
  5. 五つ
  解答&解説

正解 2

解説

衆参両議院の比例代表選出議員に欠員が出た場合、当選順位に従い繰上補充が行われるが、名簿登載者のうち、除名、離党その他の事由により名簿届出政党等に所属する者でなくなった旨の届出がなされているものは、繰上補充の対象とならない。 ア.妥当である。

衆議院名簿登載者又は参議院名簿登載者で、当選人とならなかったものにつき除名、離党その他の事由により当該衆議院名簿届出政党等又は参議院名簿届出政党等に所属する者でなくなった旨の届出が、文書で、これらの条に規定する事由が生じた日の前日までに選挙長にされているときは、これを当選人と定めることができない(公職選挙法98条3項参照)。

両議院の議員は、国会の会期中逮捕されないとの不逮捕特権が認められ、憲法が定めるところにより、院外における現行犯の場合でも逮捕されない。 イ.妥当でない。

「院外における現行犯の場合でも逮捕されない」としている点が妥当でない。

議員の不逮捕特権が規定されている憲法50条は、「両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない」と規定している。
その例外規定として国会法33条に「各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない」と規定されている。

両議院には憲法上自律権が認められており、所属議員への懲罰については司法審査が及ばないが、除名処分については、一般市民法秩序と関連するため、裁判所は審査を行うことができる。 ウ.妥当でない。

両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。
ただし、議員を除名するには、出席議員の2/3以上の多数による議決を必要とする(憲法58条2項)。

この議決については、議院の自律的な審査に委ねる趣旨から、その結論を裁判所で争うことはできないと解されている。

地方議会の自律権は、議院の自律権とは異なり法律上認められたものにすぎないので、裁判所は、除名に限らず、地方議会による議員への出席停止の懲罰について審査を行うことができる。 エ.妥当である。

地方議会議員の除名処分については、議員の身分の喪失に関する重大事項で、単なる内部規律の問題にとどまらないとして、司法審査の対象となる(地方議会議員出席停止事件:最大判昭和35年10月19日)。

地方議会議員の出席停止処分についてこれまでの判例(地方議会議員出席停止事件:最大判昭和35年10月19日)では、司法権の限界の1つである部分社会の法理により司法判断の対象とならないとされていたが、それが60年ぶりに変更され「普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否は、司法審査の対象となるというべきである」(最大判令和2年11月25日)とされた。

その理由として、「出席停止の懲罰は、・・・公選の議員に対し、議会がその権能において科する処分であり、これが科されると、当該議員はその期間、会議及び委員会への出席が停止され、議事に参与して議決に加わるなどの議員としての中核的な活動をすることができず、住民の負託を受けた議員としての責務を十分に果たすことができなくなる。
このような出席停止の懲罰の性質や議員活動に対する制約の程度に照らすと、これが議員の権利行使の一時的制限にすぎないものとして、その適否が専ら議会の自主的、自律的な解決に委ねられるべきであるということはできない。
そうすると、出席停止の懲罰は、議会の自律的な権能に基づいてされたものとして、議会に一定の裁量が認められるべきであるものの、裁判所は、常にその適否を判断することができるというべきである」としている。

地方議会の議員は、住民から直接選挙されるので、国会議員と同様に免責特権が認められ、議会で行った演説、討論または表決について議会外で責任を問われない。 オ.妥当でない。

「国会議員と同様に免責特権が認められ、議会で行った演説、討論または表決について議会外で責任を問われない」としている点が妥当でない。

議員の特権である議員の発言・表決の免責について憲法51条では「両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われない」と規定しているが、この趣旨が地方議会議員の免責特権にあてはまるのかについて判例は、「憲法上、国権の最高機関たる国会について、広範な議院自律権を認め、ことに、議員の発言について、憲法51条に、いわゆる免責特権を与えているからといって、その理をそのまま直ちに地方議会にあてはめ、地方議会についても、国会と同様の議会自治・議会自律の原則を認め、さらに、地方議会議員の発言についても、いわゆる免責特権を憲法上保障しているものと解すべき根拠はない」としている(最大判昭和42年5月24日)。

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