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令和元年-問27 民法 総則

Lv4

問題 更新:2023-01-28 13:17:16

時効の援用に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

ア.時効による債権の消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずるものである。

イ.時効の援用を裁判上行使する場合には、事実審の口頭弁論終結時までにする必要がある。

ウ.被相続人の占有により取得時効が完成していた場合に、その共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができる。

エ.保証人や連帯保証人は、主たる債務の消滅時効を援用することはできるが、物上保証人や抵当不動産の第三取得者は、被担保債権の消滅時効を援用することはできない。

オ.主たる債務者である破産者が免責許可決定を受けた場合であっても、その保証人は、自己の保証債務を免れるためには、免責許可決定を受けた破産者の主たる債務について、消滅時効を援用しなければならない。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. ウ・オ
  5. エ・オ
  解答&解説

正解 5

解説

時効による債権の消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずるものである。 ア.妥当である。

時効の援用とは、時効期間の満了によって権利の取得や義務の消滅という利益を受けるかどうかは当事者の意思に委ねられ、これらの利益を受ける意思表示をいう。
そして時効の援用について判例は、「時効による債権の消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずるものである。」としている(最判昭和61年3月17日)。

時効の援用を裁判上行使する場合には、事実審の口頭弁論終結時までにする必要がある。 イ.妥当である。

時効期間が満了していれば、いつでも直接時効の利益を受ける者は裁判上たると裁判外たるとを問わずいつでも時効を援用することができ、いったん援用があると時効による権利の取得は確定不動のものとなる(最判昭和10年12月24日)。
そして、時効の援用を裁判上で行使する場合は、事実審の口頭弁論終結時までにする必要がある(大判大正12年3月26日)。

なお、時効を援用せずに後から別の訴訟で援用をすることは許されない(大判昭和14年3月29日)。

被相続人の占有により取得時効が完成していた場合に、その共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができる。 ウ.妥当である。

援用者が複数いる場合について判例は、「時効の完成により利益を受ける者は自己が直接に受けるべき利益の存する限度で時効を援用することができるものと解すべきであって、被相続人の占有により取得時効が完成した場合において、その共同相続人の1人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができるにすぎないと解するのが相当である」としている(最判平成13年7月10日)。

時効を援用するかどうかは、各人の意思に委ねるべきであるから、人に対する援用の効果のおよぶ範囲は原則として相対効を原則としている。

保証人や連帯保証人は、主たる債務の消滅時効を援用することはできるが、物上保証人や抵当不動産の第三取得者は、被担保債権の消滅時効を援用することはできない。 エ.妥当でない。

条文は、「時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない」と規定されている(民法145条)。

この当事者について判例は、「当事者とは時効により直接に利益を受ける者、すなわち権利を取得し、消滅時効により権利の制限又は義務を免れる者をいい、間接に利益を受ける者は当事者ではない」としている(大判明治43年1月25日)。

主たる債務者である破産者が免責許可決定を受けた場合であっても、その保証人は、自己の保証債務を免れるためには、免責許可決定を受けた破産者の主たる債務について、消滅時効を援用しなければならない。 オ.妥当でない。

破産免責の効力の及ぶ債務の保証人とその債権の消滅時効の援用について判例は、「免責決定の効力を受ける債権は、債権者において訴えをもって履行を請求しその強制的実現を図ることができなくなり、右債権については、『権利を行使することができる時』を起算点とする消滅時効の進行を観念することができないというべきであるから、破産者が免責決定を受けた場合には、右免責決定の効力の及ぶ債務の保証人は、その債権についての消滅時効を援用することはできないと解するのが相当である。」としている(最判平成11年11月9日)。

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