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令和2年-問4 憲法 精神的自由

Lv4

問題 更新:2023-01-28 11:12:26

表現の自由の規制に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。

  1. 表現の内容規制とは、ある表現が伝達しようとするメッセージを理由とした規制であり、政府の転覆を煽動する文書の禁止、国家機密に属する情報の公表の禁止などがその例である。
  2. 表現の内容を理由とした規制であっても、高い価値の表現でないことを理由に通常の内容規制よりも緩やかに審査され、規制が許されるべきだとされる場合があり、営利を目的とした表現や、人種的憎悪をあおる表現などがその例である。
  3. 表現内容中立規制とは、表現が伝達しようとするメッセージの内容には直接関係なく行われる規制であり、学校近くでの騒音の制限、一定の選挙運動の制限などがその例である。
  4. 表現行為を事前に規制することは原則として許されないとされ、検閲は判例によれば絶対的に禁じられるが、裁判所による表現行為の事前差し止めは厳格な要件のもとで許容される場合がある。
  5. 表現行為の規制には明確性が求められるため、表現行為を規制する刑罰法規の法文が漠然不明確であったり、過度に広汎であったりする場合には、そうした文言の射程を限定的に解釈し合憲とすることは、判例によれば許されない。
  解答&解説

正解 5

解説

表現の内容規制とは、ある表現が伝達しようとするメッセージを理由とした規制であり、政府の転覆を煽動する文書の禁止、国家機密に属する情報の公表の禁止などがその例である。 1.妥当である

表現の内容規制とは、ある表現が伝達しようとするメッセージの内容そのものを理由とした規制である。

本肢に書かれているように、政府の転覆を煽動する文書の禁止、国家機密に属する情報の公表の禁止などが該当し、ある表現の自由の制限が表現の内容規制にあたる場合には、厳格な審査によって合憲性が判断されることとなる。

表現の内容を理由とした規制であっても、高い価値の表現でないことを理由に通常の内容規制よりも緩やかに審査され、規制が許されるべきだとされる場合があり、営利を目的とした表現や、人種的憎悪をあおる表現などがその例である。 2.妥当である

高い価値の表現の内容規制については、表現の自由の内容規制に関する違憲審査基準の一つでアメリカの憲法判例理論から波及する「明白かつ現在の危険」基準に基づいて、非常に厳格に合憲性が判断されるが、広告のような営利的な表現活動(営利的言論の自由)は、国民一般が消費者として様々な情報を受け取ることの重要性に鑑み、表現の自由の保護が及ぶが、その場合でも保障の程度は政治的言論の自由よりも低いと解することになる。

したがって、本肢のような表現の内容を理由とした規制であっても、高い価値の表現でないことを理由に通常の内容規制よりも緩やかに審査され、規制が許されるべきだとされる場合がある。

表現内容中立規制とは、表現が伝達しようとするメッセージの内容には直接関係なく行われる規制であり、学校近くでの騒音の制限、一定の選挙運動の制限などがその例である。 3.妥当である

表現内容中立規制とは、「この区域の電柱に張り紙をしてはならない」というビラ張り規制や、「深夜に近隣に迷惑を与えるほどの騒音を出してはならない」という騒音規制等の、時・場所・方法の規制を指す。
表現が伝達しようとするメッセージの内容を直接的ではなく制限することになるが、判例で多用されている。

たとえば、屋外広告物の表示の場所、方法の条例による規制について「国民の文化的生活の向上を目途とする憲法の下においては、都市の美観風致を維持することは、公共の福祉を保持するゆえんであるから、この程度の規制は、公共の福祉のため、表現の自由に対し許された必要かつ合理的な制限と解することができる。(屋外広告物条例事件:最大判昭和43年12月18日)」とした判例や、みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札をすることを禁止した軽犯罪法上の規制について、「たとい思想を外部に発表するための手段であっても、その手段が他人の財産権、管理権を不当に害するごときものは、もとより許されないところであるといわなければならない。(愛知原水協事件:最大判昭和45年6月17日)」などの判例がある。

表現行為を事前に規制することは原則として許されないとされ、検閲は判例によれば絶対的に禁じられるが、裁判所による表現行為の事前差し止めは厳格な要件のもとで許容される場合がある。 4.妥当である

検閲について判例は、「憲法21条2項前段は、「検閲は、これをしてはならない。」と規定する。
憲法が、表現の自由につき、広くこれを保障する旨の一般的規定を21条1項に置きながら、別に検閲の禁止についてかような特別の規定を設けたのは、検閲がその性質上表現の自由に対する最も厳しい制約となるものであることにかんがみ、これについては、公共の福祉を理由とする例外の許容(憲法12条、13条参照)をも認めない趣旨を明らかにしたものと解すべきである」(最大判昭和59年12月12日)とし、検閲は絶対的に禁じられている。

事前差し止めが検閲にあたるかについては、「仮処分による事前差止めは、表現物の内容の網羅的一般的な審査に基づく事前規制が行政機関によりそれ自体を目的として行われる場合とは異なり、個別的な私人間の紛争について、司法裁判所により、当事者の申請に基づき差止請求権等の私法上の被保全権利の存否、保全の必要性の有無を審理判断して発せられるものであって、右判示にいう「検閲」にはあたらないものというべきである」(最大判昭和61年6月11日)としている。

そして「出版物の頒布等の事前差止めは、このような事前抑制に該当するものであって、とりわけ、その対象が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等の表現行為に関するものである場合には、そのこと自体から、一般にそれが公共の利害に関する事項であるということができ、・・・その表現が私人の名誉権に優先する社会的価値を含み憲法上特に保護されるべきであることにかんがみると、当該表現行為に対する事前差止めは、原則として許されないものといわなければならない。
ただ、右のような場合においても、その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあるときは、当該表現行為はその価値が被害者の名誉に劣後することが明らかであるうえ、有効適切な救済方法としての差止めの必要性も肯定されるから、かかる実体的要件を具備するときに限って、例外的に事前差止めが許されるものというべきであり、このように解しても上来説示にかかる憲法の趣旨に反するものとはいえない」(最大判昭和61年6月11日)とし、裁判所による表現行為の事前差し止めは厳格な要件のもとで許容される。

表現行為の規制には明確性が求められるため、表現行為を規制する刑罰法規の法文が漠然不明確であったり、過度に広汎であったりする場合には、そうした文言の射程を限定的に解釈し合憲とすることは、判例によれば許されない。 5.妥当でない

優越的地位のある表現の自由の規制は慎重になされなければならず、規制が漠然不明確である場合は、その制約自体が表現行為の萎縮効果を及ぼすため、明確性が厳格に要求され、漠然不明確な場合は、原則として無効であると解されている。これを「明確性の理論(漠然性故に無効の法理)」と呼ぶ。

また、規制が過度に広汎な場合には、その制約自体が表現行為の委縮効果を及ぼすため、その法令全体が違憲となるという考え方がある。これを「過度に広汎性ゆえに無効の法理」と呼ぶ。

これらの規制を合憲的に解釈する解釈方法のことを合憲限定解釈といい、判例は、この合憲限定解釈を認めている。

税関検査合憲判決では、「表現の自由を規制する法律の規定について限定解釈をすることが許されるのは、その解釈により、規制の対象となるものとそうでないものとが明確に区別され、かつ、合憲的に規制し得るもののみが規制の対象となることが明らかにされる場合でなければならず、また、一般国民の理解において、具体的場合に当該表現物が規制の対象となるかどうかの判断を可能ならしめるような基準をその規定から読みとることができるものでなければならない(最大判昭和59年12月12日)」としている。

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