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令和5年-問25 行政法 行政事件訴訟法

Lv3

問題 更新:2024-01-07 21:10:56

空港や航空関連施設をめぐる裁判に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. いわゆる「新潟空港訴訟」(最二小判平成元年2月17日民集43巻2号56頁)では、定期航空運送事業免許の取消訴訟の原告適格が争点となったところ、飛行場周辺住民には、航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けるとしても、原告適格は認められないとされた。
  2. いわゆる「大阪空港訴訟」(最大判昭和56年12月16日民集35巻10号1369頁)では、空港の供用の差止めが争点となったところ、人格権または環境権に基づく民事上の請求として一定の時間帯につき航空機の離着陸のためにする国営空港の供用についての差止めを求める訴えは適法であるとされた。
  3. いわゆる「厚木基地航空機運航差止訴訟」(最一小判平成28年12月8日民集70巻8号1833頁)では、周辺住民が自衛隊機の夜間の運航等の差止めを求める訴訟を提起できるかが争点となったところ、当該訴訟は法定の抗告訴訟としての差止訴訟として適法であるとされた。
  4. いわゆる「成田新法訴訟」(最大判平成4年7月1日民集46巻5号437頁)では、新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(当時)の合憲性が争点となったところ、憲法31条の法定手続の保障は刑事手続のみでなく行政手続にも及ぶことから、適正手続の保障を欠く同法の規定は憲法31条に違反するとされた。
  5. いわゆる「成田新幹線訴訟」(最二小判昭和53年12月8日民集32巻9号1617頁)では、成田空港と東京駅を結ぶ新幹線の建設について、運輸大臣の工事実施計画認可の取消訴訟の原告適格が争点となったところ、建設予定地付近に居住する住民に原告適格が認められるとされた。
  解答&解説

正解 3

解説

いわゆる「新潟空港訴訟」(最二小判平成元年2月17日民集43巻2号56頁)では、定期航空運送事業免許の取消訴訟の原告適格が争点となったところ、飛行場周辺住民には、航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けるとしても、原告適格は認められないとされた。 1.妥当でない

判例は、新潟空港の騒音被害をうける近隣住民は、航空運送事業免許の取消しを求める原告適格を有するとした。

「定期航空運送事業免許に係る路線を航行する航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けることとなる者は、当該免許の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有する。」(最判平成元年2月17日)

なお、本件訴訟の最終的な結論として、住民側は、敗訴している。
というのは、行政事件訴訟法10条1項は、「取消訴訟においては、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として取消しを求めることができない。」として、取消理由を制限しているところ、本件における原告たる住民は、自己の法律上の利益に関する違法の主張、すなわち騒音被害が生じることと関係性のある違法を主張しなかったため、当該規定の制限をうけることになったのである。

いわゆる「大阪空港訴訟」(最大判昭和56年12月16日民集35巻10号1369頁)では、空港の供用の差止めが争点となったところ、人格権または環境権に基づく民事上の請求として一定の時間帯につき航空機の離着陸のためにする国営空港の供用についての差止めを求める訴えは適法であるとされた。 2.妥当でない

判例は、空港の供用についての民事訴訟による差止めを認めなかった。

「民事上の請求として一定の時間帯につき航空機の離着陸のためにする国営空港(大坂空港)の供用の差止めを求める訴えの適否について、空港の離着陸のためにする供用は運輸大臣の有する空港管理権と航空行政権という二種の権限の総合的判断に基づいた不可分一体的な行使の結果であるとみるべきであるから国営空港の供用の差止めを求める訴えは不適法である。」(大阪空港訴訟:最大判昭和56年12月16日)

いわゆる「厚木基地航空機運航差止訴訟」(最一小判平成28年12月8日民集70巻8号1833頁)では、周辺住民が自衛隊機の夜間の運航等の差止めを求める訴訟を提起できるかが争点となったところ、当該訴訟は法定の抗告訴訟としての差止訴訟として適法であるとされた。 3.妥当である

自衛隊が設置した飛行場における航空機の運航による騒音被害を理由として自衛隊の使用する航空機の運航の差止めを求める訴えについて、行政事件訴訟法37条の4第1項所定の「重大な損害を生ずるおそれ」があるとした差止訴訟の対象となることが認められた。

「自衛隊機の運航により生ずるおそれのある損害は、処分がされた後に取消訴訟等を提起することなどにより容易に救済を受けることができるものとはいえず、本件飛行場における自衛隊機の運航の内容、性質を勘案しても、第1審原告らの自衛隊機に関する主位的請求(運航差止請求)に係る訴えについては、上記の「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められる。」(最大判平成28年12月8日)

いわゆる「成田新法訴訟」(最大判平成4年7月1日民集46巻5号437頁)では、新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(当時)の合憲性が争点となったところ、憲法31条の法定手続の保障は刑事手続のみでなく行政手続にも及ぶことから、適正手続の保障を欠く同法の規定は憲法31条に違反するとされた。 4.妥当でない

新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(当時)の合憲性に関する事案である。
判例は、総合較量すれば、命令をするにあたり、相手方に対しそれらを与える旨の規定がなくても憲法31条に違反しないとした(成田新法事件:最大判平成4年7月1日)。

「憲法31条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。
しかし、31条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、一般に、行政手続は、刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではないと解するのが相当である。
本件について、総合較量すれば、命令をするにあたり、相手方に対し事前に告知、弁解、防御の機会を与える旨の規定がなくても、憲法31条に反するものということはできない。」(最大判平成4年7月1日)

いわゆる「成田新幹線訴訟」(最二小判昭和53年12月8日民集32巻9号1617頁)では、成田空港と東京駅を結ぶ新幹線の建設について、運輸大臣の工事実施計画認可の取消訴訟の原告適格が争点となったところ、建設予定地付近に居住する住民に原告適格が認められるとされた。 5.妥当でない

全国新幹線鉄道整備法9条に基づく運輸大臣の工事実施計画の認可は、抗告訴訟の対象とならない、つまり近隣住民に原告適格は認められないとされた。

「本件認可は、いわば上級行政機関としての運輸大臣が下級行政機関としての日本鉄道建設公団に対しその作成した本件工事実施計画の整備計画との整合性等を審査してなす監督手段としての承認の性質を有するもので、行政機関相互の行為と同視すべきものであり、行政行為として外部に対する効力を有するものではなく、また、これによって直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する効果を伴うものではないから、抗告訴訟の対象とならない」(昭和53年12月8日)

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