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平成27年-問28 民法 総則

Lv4

問題 更新:2023-01-30 19:16:15

心裡留保および虚偽表示に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 養子縁組につき、当事者の一方において真に養親子関係の設定を欲する意思がない場合であっても、相手方がその真意につき善意、無過失であり、縁組の届出手続が行われたときは、その養子縁組は有効である。
  2. 財団法人(一般財団法人)の設立に際して、設立関係者全員の通謀に基づいて、出捐者が出捐の意思がないにもかかわらず一定の財産の出捐を仮装して虚偽の意思表示を行った場合であっても、法人設立のための当該行為は相手方のない単独行為であるから虚偽表示にあたらず、財団法人の設立の意思表示は有効である。
  3. 土地の仮装譲渡において、仮装譲受人が同地上に建物を建設してその建物を他に賃貸した場合、建物賃借人において土地譲渡が虚偽表示によるものであることについて善意であるときは、土地の仮装譲渡人はその建物賃借人に対して、土地譲渡の無効を理由として建物からの退去および土地の明渡しを求めることができない。
  4. 仮装の売買契約に基づく売買代金債権が他に譲渡された場合、債権の譲受人は第三者にあたらないため、譲受人は、譲受債権の発生原因が虚偽表示によるものであることについて善意であっても、買主に対して売買代金の支払を求めることができない。
  5. 金銭消費貸借契約が仮装され、借主に金銭が交付されていない場合であっても、当該契約に基づく貸金債権を譲り受けた者は、譲受債権の発生原因が虚偽表示によるものであることについて善意であるときは、借主に対して貸金の返済を求めることができる。
  解答&解説

正解 5

解説

養子縁組につき、当事者の一方において真に養親子関係の設定を欲する意思がない場合であっても、相手方がその真意につき善意、無過失であり、縁組の届出手続が行われたときは、その養子縁組は有効である。 1.妥当でない。

判例は「真に養親子関係の設定を欲する効果意思がない場合においては、養子縁組は・・・無効である。そして、この無効は絶対的なものであるから、・・・民法93条ただし書きを適用する必要もなく、又適用したものでもない。(最判昭和23年12月23日)」としている。

民法93条は、本文としては表示行為を優先させて有効になるとしつつも、ただし書きにおいて、相手方が悪意又は善意有過失の時は表意者の内心を尊重して無効になるとしている。
また、民法802条1号は、縁組は、人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないときは無効になるとしている。
民法において身分法上の行為は、財産法上の行為とは異なり、徹底して「内心」を尊重させている。

財団法人(一般財団法人)の設立に際して、設立関係者全員の通謀に基づいて、出捐者が出捐の意思がないにもかかわらず一定の財産の出捐を仮装して虚偽の意思表示を行った場合であっても、法人設立のための当該行為は相手方のない単独行為であるから虚偽表示にあたらず、財団法人の設立の意思表示は有効である。 2.妥当でない。

財団法人(一般財団法人)の設立に際して民法94条の適用(類推適用)はないとする本肢は妥当でない。

条文によると、相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とするとされている(民法94条1項)。

判例は、財団法人を設立するためにされる寄附行為は、相手方を必要としない単独行為であるが、その一環をなす財産出捐行為が、現実には財団法人設立関係者の通謀に基づき、出捐者において真実財産を出捐する意思がなく、単に寄附行為の形式を整える目的で一定の財産を出捐する旨を仮装したというにすぎない場合においては、当該事実関係を実質的に考察し、当該寄附行為について民法94条の規定を類推適用して、これを無効と解するのが相当であるとした(最判昭和56年4月28日)。

土地の仮装譲渡において、仮装譲受人が同地上に建物を建設してその建物を他に賃貸した場合、建物賃借人において土地譲渡が虚偽表示によるものであることについて善意であるときは、土地の仮装譲渡人はその建物賃借人に対して、土地譲渡の無効を理由として建物からの退去および土地の明渡しを求めることができない。 3.妥当でない。

民法94条2項の「第三者」を問う問題である。民法94条の虚偽表示が無効であることは、善意の「第三者」には対抗できないとするのが民法94条2項の規定するところであるが、「第三者」の定義が明文において規定されておらず、解釈が必要となる。

判例によると、第三者とは、虚偽の意思表示の当事者またはその一般承継人以外の者であって、その表示の目的ないし効果について法律上利害関係を有するに至った者をいう(最判昭和42年6月29日)とされている。
虚偽表示によって生じた外観に基づいて、新たな、「法律上の」利害関係を持った者を保護するのが民法94条2項の趣旨であるところ、このような解釈に至ったものと思われる。

そして別の判例によると、土地の仮装譲受人が当該土地上に建物を建築してこれを他人に賃貸した場合、当該建物賃借人は、仮装譲渡された土地については法律上の利害関係を有するものとは認められないから、民法94条2項所定の第三者にはあたらないとされている(最判昭和57年6月8日)。
土地と建物は別の不動産であるから、「建物の」賃借人は、「土地」については法律上の利害関係がない。「土地」については、あるのはせいぜい事実上の利害関係に過ぎず、第三者にはあたらないとの判断である。

したがって建物賃借人を民法94条2項の第三者とする本肢は妥当でない。

仮装の売買契約に基づく売買代金債権が他に譲渡された場合、債権の譲受人は第三者にあたらないため、譲受人は、譲受債権の発生原因が虚偽表示によるものであることについて善意であっても、買主に対して売買代金の支払を求めることができない。 4.妥当でない。

肢3と同様、民法94条2項の「第三者」を問うものである。「第三者」の定義の解釈については、肢3判例(最判昭和42年6月29日)を参照のこと。

そして判例によると、発生が仮装された債権の譲受人は第三者にあたり、民法94条2項が適用されるとされている(大判昭和13年12月17日)。

金銭消費貸借契約が仮装され、借主に金銭が交付されていない場合であっても、当該契約に基づく貸金債権を譲り受けた者は、譲受債権の発生原因が虚偽表示によるものであることについて善意であるときは、借主に対して貸金の返済を求めることができる。 5.妥当である。

肢4解説を参照。

発生が仮装された債権の譲受人は第三者にあたる。

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