平成26年-問39 商法 会社法
Lv4
問題 更新:2023-01-30 21:57:14
株主総会の決議に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、妥当でないものはどれか。
- 取締役会設置会社の株主総会は、法令に規定される事項または定款に定められた事項に限って決議を行うことができる。
- 取締役会設置会社以外の会社の株主総会においては、招集権者が株主総会の目的である事項として株主に通知した事項以外についても、決議を行うことができる。
- 取締役または株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき議決権を行使できる株主の全員が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったとみなされる。
- 株主総会の決議取消しの訴えにおいて、株主総会の決議の方法に関する瑕疵が重大なものであっても、当該瑕疵が決議に影響を及ぼさなかったものと認められる場合には、裁判所は、請求を棄却することができる。
- 会社を被告とする株主総会の決議取消しの訴え、決議の無効確認の訴え、および決議の不存在確認の訴えにおいて、請求認容の判決が確定した場合には、その判決は、第三者に対しても効力を有する。
正解 4
解説
取締役会設置会社の株主総会は、法令に規定される事項または定款に定められた事項に限って決議を行うことができる。 1.妥当である。
株主総会は、この法律(会社法)に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律(会社法)に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる(会社法295条1項2項)。
取締役会がない会社であれば、株主総会はすべての事項を決議することができるが、取締役会設置会社は、そうではないのである。
取締役会設置会社以外の会社の株主総会においては、招集権者が株主総会の目的である事項として株主に通知した事項以外についても、決議を行うことができる。 2.妥当である。
取締役会設置会社においては、株主総会は、298条1項2号(株主総会の招集時に定められる株主総会の目的である事項)に掲げる事項以外の事項については、決議をすることができない(会社法309条5項)。
一方で取締役会がない会社においては、会社法309条5項に相当する条文がないため、招集権者が株主総会の目的である事項として株主に通知した事項以外についても、決議を行うことができる。
取締役または株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき議決権を行使できる株主の全員が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったとみなされる。 3.妥当である。
取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす(会社法319条1項)。
全員の同意があるなら、株主総会を開くのが手間を省略するのが合理的だからである。
なお、取締役会の決議があったものとみなされる規定(会社法370条)もあわせて確認したい。
取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる(会社法370条)。
株主総会の決議取消しの訴えにおいて、株主総会の決議の方法に関する瑕疵が重大なものであっても、当該瑕疵が決議に影響を及ぼさなかったものと認められる場合には、裁判所は、請求を棄却することができる。 4.妥当でない。
株主総会等の決議の取消しの訴えの提起があった場合において、株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令又は定款に違反するときであっても、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、同項の規定による請求を棄却することができる(会社法831条2項)。
「かつ」という表現に着目すると、株主総会の決議の方法に関する瑕疵が重大なものであっても、当該瑕疵が決議に影響を及ぼさなかったものと認められる場合には、裁判所は、請求を棄却することができるとはいえない。
会社を被告とする株主総会の決議取消しの訴え、決議の無効確認の訴え、および決議の不存在確認の訴えにおいて、請求認容の判決が確定した場合には、その判決は、第三者に対しても効力を有する。 5.妥当である。
会社の組織に関する訴えに係る請求を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有する(会社法838条)。
いわゆる「対世効」というものである。
そして「会社の組織に関する訴え」のなかには、「株主総会の決議取消しの訴え、決議の無効確認の訴え、および決議の不存在確認の訴え」が含まれる(会社法834条16号17号)。