平成26年-問20 行政法 その他
Lv3
問題 更新:2023-01-30 21:09:30
土地収用に伴う土地所有者に対する損害補償について、妥当な記述はどれか。
- 土地収用に伴う損失補償は、「相当な補償」で足るものとされており、その額については、収用委員会の広範な裁量に委ねられている。
- 土地収用に伴う損失補償を受けるのは、土地所有者等、収用の対象となる土地について権利を有するものに限られ、隣地の所有者等の第三者が補償を受けることはない。
- 収用委員会の収用裁決によって決定された補償額に起業者が不服のある場合には、土地所有者を被告として、その減額を求める訴訟を提起すべきこととされている。
- 土地収用に伴う土地所有者に対する補償は、その土地の市場価格に相当する額に限られ、移転に伴う営業利益の損失などは、補償の対象とされることはない。
- 土地収用に関しては、土地所有者の保護の見地から、金銭による補償が義務付けられており、代替地の提供によって金銭による補償を免れるといった方法は認められない。
正解 3
解説
土地収用に伴う損失補償は、「相当な補償」で足るものとされており、その額については、収用委員会の広範な裁量に委ねられている。 1.妥当でない。
土地収用法は、補償額について「近傍類地の取引価格等を考慮した相当な価格に物価の変動の修正率を乗ずる」としている(土地収用法71条)。
また判例は、保障の範囲及び額の決定について、「通常人の経験則及び社会通念に従って客観的に認定されるべきであり、収用委員会に裁量権が認められると解することはできない」とした(最判平成9年1月28日)。
土地収用法71条 |
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収用する土地又はその土地に関する所有権以外の権利に対する補償金の額は、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した事業の認定の告示の時における相当な価格に、権利取得裁決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額とする。 |
土地収用法における損失の補償は、・・・同法による補償金の額は、『相当な価格』(同法71条参照)等の不確定概念をもって定められているものではあるが、右の観点から、通常人の経験則及び社会通念に従って、客観的に認定され得るものであり、かつ、認定すべきものであって、補償の範囲及びその額(以下、これらを「補償額」という。)の決定につき収用委員会に裁量権が認められるものと解することはできない。(最判平成9年1月28日)
土地収用に伴う損失補償を受けるのは、土地所有者等、収用の対象となる土地について権利を有するものに限られ、隣地の所有者等の第三者が補償を受けることはない。 2.妥当でない。
土地収用法は、土地収用法93条1項で、損失補償の範囲について「当該土地及び残地以外の土地について、道路、溝、垣、さく等の設置工事、又は盛土、切土の必要がある場合は、費用の全部又は一部を補償しなければならない」としている。
土地収用法93条1項 |
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土地を収用し、又は使用(略)して、その土地を事業の用に供することにより、当該土地及び残地以外の土地について、通路、溝、垣、さくその他の工作物を新築し、改築し、増築し、若しくは修繕し、又は盛土若しくは切土をする必要があると認められるときは、起業者は、これらの工事をすることを必要とする者の請求により、これに要する費用の全部又は一部を補償しなければならない。この場合において、起業者又は当該工事をすることを必要とする者は、補償金の全部又は一部に代えて、起業者が当該工事を行うことを要求することができる。 |
収用委員会の収用裁決によって決定された補償額に起業者が不服のある場合には、土地所有者を被告として、その減額を求める訴訟を提起すべきこととされている。 3.妥当である。
土地収用法133条3項は、損失の補償に関する訴えにつき「これを提起した者が起業者であるときは土地所有者又は関係人を、土地所有者又は関係人であるときは起業者を、それぞれ被告としなければならない。」旨を規定している。
収用委員会の裁決は行政処分であり、本来は補償額の不服は裁決を争うものであるが、土地収用法133条3項は、補償額については、形式的当事者訴訟として、起業者と土地所有者との間で争うものと定めているのである。
なお、収用委員会の裁決のうち損失の補償に関する訴えは、裁決書の正本の送達を受けた日から6ヵ月以内に提起しなければならない(土地収用法133条2項)。
土地収用に伴う土地所有者に対する補償は、その土地の市場価格に相当する額に限られ、移転に伴う営業利益の損失などは、補償の対象とされることはない。 4.妥当でない。
土地収用法88条は、「土地の収用に対する補償のほか、離作料、営業上の損失、建物の移転による賃貸料の損失その他土地を収用し、又は使用することによって土地所有者又は関係人が通常受ける損失は、補償しなければならない。」旨を規定している。
したがって、移転に伴う営業利益の損失も補償の対象となる。
土地収用に関しては、土地所有者の保護の見地から、金銭による補償が義務付けられており、代替地の提供によって金銭による補償を免れるといった方法は認められない。 5.妥当でない。
土地収用法70条は、土地収用の損失の補償について、「金銭をもってするものとする。ただし、替地の提供その他補償の方法について収用委員会の裁決があった場合はこの限りでない」としており、代替地の提供による補償が認められている。
土地収用法70条 |
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損失の補償は、金銭をもってするものとする。ただし、替地の提供その他補償の方法について、第82条から第86条までの規定により収用委員会の裁決があった場合は、この限りでない。 |