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令和5年-問8 行政法 行政総論

Lv3

問題 更新:2024-01-07 20:33:20

行政行為の瑕疵に関する次のア~オの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.ある行政行為が違法である場合、仮にそれが別の行政行為として法の要件を満たしていたとしても、これを後者の行為として扱うことは、新たな行政行為を行うに等しいから当然に許されない。

イ.普通地方公共団体の長に対する解職請求を可とする投票結果が無効とされたとしても、前任の長の解職が有効であることを前提として、当該解職が無効とされるまでの間になされた後任の長の行政処分は、当然に無効となるものではない。

ウ.複数の行政行為が段階的な決定として行われる場合、先行行為が違法であるとして、後行行為の取消訴訟において先行行為の当該違法を理由に取消しの請求を認めることは、先行行為に対する取消訴訟の出訴期間の趣旨を没却することになるので許されることはない。

エ.行政行為の瑕疵を理由とする取消しのうち、取消訴訟や行政上の不服申立てによる争訟取消しの場合は、当該行政行為は行為時当初に遡って効力を失うが、職権取消しの場合は、遡って効力を失うことはない。

オ.更正処分における理由の提示(理由附記)に不備の違法があり、審査請求を行った後、これに対する裁決において処分の具体的根拠が明らかにされたとしても、理由の提示にかかる当該不備の瑕疵は治癒されない。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・オ
  4. ウ・エ
  5. ウ・オ
  解答&解説

正解 3

解説

イ、オが妥当である。

ある行政行為が違法である場合、仮にそれが別の行政行為として法の要件を満たしていたとしても、これを後者の行為として扱うことは、新たな行政行為を行うに等しいから当然に許されない。 ア.妥当でない

ある違法な行政行為を別個の行政行為としてみた場合には適法要件を充たすと認められる場合に、その別個の行政行為として扱うことを「違法行為の転換」という。
例えば、死者に対する営業許可をその相続人に対してなされたものとして扱う場合である。

自作農創設特別措置法施行令43条によって定めた農地買収計画について、当該計画に関する不服申立ての裁決にて同令45条によって買収を維持したことは違法ではないとした(最大判昭和29年7月19日)。

普通地方公共団体の長に対する解職請求を可とする投票結果が無効とされたとしても、前任の長の解職が有効であることを前提として、当該解職が無効とされるまでの間になされた後任の長の行政処分は、当然に無効となるものではない。 イ.妥当である

普通地方公共団体の長に対する解職請求を可とする投票結果が無効とされたとしても、前任の長の解職が有効であることを前提として、当該解職が無効とされるまでの間になされた後任の長の行政処分は、無効となるものではない(最大判昭和35年12月7日)。

複数の行政行為が段階的な決定として行われる場合、先行行為が違法であるとして、後行行為の取消訴訟において先行行為の当該違法を理由に取消しの請求を認めることは、先行行為に対する取消訴訟の出訴期間の趣旨を没却することになるので許されることはない。 ウ.妥当でない

先行の行政行為である処分の出訴期間が過ぎていても、後行の行政行為である処分の取消訴訟を提起して、先行の行政行為である処分の違法性を主張することができる(最判平成21年12月17日)。

行政行為の違法性を主張する際に、その行為に先行する行政行為の瑕疵(違法性)を主張できることを「違法性の承継」という。

関連のある連続する別個の行政行為において、先行する行政行為が違法であっても、後行の行政行為には影響を及ぼさないのが原則である。
例えば、課税処分と滞納処分は、相互に関連する行政行為ではあるが、それぞれ独立した行政行為であるため、違法性は承継されない。それぞれ独立した行政行為である以上、その行政行為ごとに是正されるべきであるからである。
しかし、例外的に先行行為と後行行為の目的が共通しており、相結合して同一の法的効果を生じる場合は、先行行為は後行行為の準備行為にすぎないため、違法性の承継が認められると考えられている。

行政行為の瑕疵を理由とする取消しのうち、取消訴訟や行政上の不服申立てによる争訟取消しの場合は、当該行政行為は行為時当初に遡って効力を失うが、職権取消しの場合は、遡って効力を失うことはない。 エ.妥当でない

行政行為が取り消される場合には、取消訴訟や不服申し立てによる争訟取消しの場合のほか、上級行政庁や処分庁など行政機関が職権で行政行為を取り消す場合があり、これを職権取消しという。
職権取消を含めて取消しは、処分成立当初に瑕疵があったこと(原始的瑕疵)を理由とするものである。
したがって、その効果は原則として遡及し、はじめから行政行為がなかったものとみなされる(最判昭和43年11月7日)。

更正処分における理由の提示(理由附記)に不備の違法があり、審査請求を行った後、これに対する裁決において処分の具体的根拠が明らかにされたとしても、理由の提示にかかる当該不備の瑕疵は治癒されない。 オ.妥当である

青色申告についてした更正処分における理由附記の不備の瑕疵は、処分に対する審査裁決において処分理由が明らかにされた場合であっても、治癒されない(最判昭和47年12月5日)。

処分庁と異なる機関の行為により附記理由不備の瑕疵が治癒されるとすることは、処分そのものの慎重、合理性を確保する目的にそわないばかりでなく、処分の相手方としても、審査裁決によってはじめて具体的な処分根拠を知らされたのでは、それ以前の審査手続において十分な不服理由を主張することができないという不利益を免れないからである。

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