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令和5年-問9 行政法 行政総論

Lv3

問題 更新:2024-01-07 20:34:17

行政上の法律関係に関する次のア~エの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.社会保障給付における行政主体と私人との間の関係は、対等なものであり、公権力の行使が介在する余地はないから、処分によって規律されることはなく、もっぱら契約によるものとされている。

イ.未決勾留による拘禁関係は、勾留の裁判に基づき被勾留者の意思にかかわらず形成され、法令等の規定により規律されるものであるから、国は、拘置所に収容された被勾留者に対して信義則上の安全配慮義務を負わない。

ウ.食品衛生法の規定により必要とされる営業の許可を得ることなく食品の販売を行った場合、食品衛生法は取締法規であるため、当該販売にかかる売買契約が当然に無効となるわけではない。

エ.法の一般原則である信義誠実の原則は、私人間における民事上の法律関係を規律する原理であるから、租税法律主義の原則が貫かれる租税法律関係には適用される余地はない。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. ウ・エ
  解答&解説

正解 3

解説

妥当なものはイ、ウである。

社会保障給付における行政主体と私人との間の関係は、対等なものであり、公権力の行使が介在する余地はないから、処分によって規律されることはなく、もっぱら契約によるものとされている。 ア.妥当でない

「公権力の行使が介在する余地はないから、処分によって規律されることはなく、もっぱら契約によるものとされている」の部分は妥当ではない。
社会保障給付における行政主体と私人との間の関係について、公権力の行使が介在する余地はないとはいえない。

社会保障とは、「社会保険」「社会福祉」「公的扶助」「保険医療・公衆衛生」からなり、国民の安全や生活の安定を支えるセーフティネット(社会保障制度)である。社会保障制度は多岐にわたり、国や都道府県・市町村など様々な行政主体がそれぞれの役割を担い、連携しながら実施、給付の仕組みは法制化されている。

社会保障給付における行政主体と私人との間の関係は、行政主体と私人との当事者の意思の合致によって成立するものではなく、対等なものとはいえない。例えば、労災就学援護費の支給又は不支給は、行政主体である労働基準監督署長が決定するものである。

判例にも「労働基準監督署長の行う労災就学援護費の支給又は不支給の決定は、法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり、被災労働者又はその遺族の上記権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものと解するのが相当(最判平成15年9月4日)」とされている。

未決勾留による拘禁関係は、勾留の裁判に基づき被勾留者の意思にかかわらず形成され、法令等の規定により規律されるものであるから、国は、拘置所に収容された被勾留者に対して信義則上の安全配慮義務を負わない。 イ.妥当である

判例は「未決勾留は、刑訴法の規定に基づき、逃亡又は罪証隠滅の防止を目的として、被疑者又は被告人の居住を刑事施設内に限定するものであって、このような未決勾留による拘禁関係は、勾留の裁判に基づき被勾留者の意思にかかわらず形成され法令等の規定に従って規律されるものである。そうすると、未決勾留による拘禁関係は、当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上の安全配慮義務を負うべき特別な社会的接触の関係とはいえない。
したがって、国は、拘置所に収容された被勾留者に対して、その不履行が損害賠償責任を生じさせることとなる信義則上の安全配慮義務を負わないというべきである(最判平成28年4月21日)」としている。

食品衛生法の規定により必要とされる営業の許可を得ることなく食品の販売を行った場合、食品衛生法は取締法規であるため、当該販売にかかる売買契約が当然に無効となるわけではない。 ウ.妥当である

判例は「取締法規である食品衛生法の許可を得ていない会社と取引をした場合において、その取引に関する売買契約は、私法上は無効にならない(最判昭和35年3月18日)」としている。

許可のない私法上の契約が有効か無効かについては、その許可の根拠となる行政法規を強行法規と取締法規に分類し、強行法規(当事者が規定に反する内容の合意をした場合、その合意を無効にする法規)に違反した場合は私法契約上も無効になるが、取締法規(行政上の目的から、一定の行為を禁止し、または制限する規定)に違反したに過ぎない場合は私法契約は無効にならないと解されている。

法の一般原則である信義誠実の原則は、私人間における民事上の法律関係を規律する原理であるから、租税法律主義の原則が貫かれる租税法律関係には適用される余地はない。 エ.妥当でない

信義誠実の原則は、租税法律関係においても適用される余地があるとしている。

判例は「租税法規に適合する課税処分について、法の一般原理である信義則の法理の適用により、課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても、法律による行政の原理なかんずく租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、法理の適用については慎重でなければならず、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に、初めて法理の適用の是非を考えるべきものである(最判昭和62年10月30日)」としている。

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