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令和5年-問20 行政法 国家賠償法

Lv3

問題 更新:2024-01-07 21:06:04

道路をめぐる国家賠償に関する最高裁判所の判決について説明する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 落石事故の発生した道路に防護柵を設置する場合に、その費用の額が相当の多額にのぼり、県としてその予算措置に困却するであろうことが推察できる場合には、そのことを理由として、道路管理者は、道路の管理の瑕疵によって生じた損害に対する賠償責任を免れ得るものと解するのが相当である。
  2. 事故発生当時、道路管理者が設置した工事標識板、バリケードおよび赤色灯標柱が道路上に倒れたまま放置されていたことは、道路の安全性に欠如があったといわざるをえず、それが夜間の事故発生直前に生じたものであり、道路管理者において時間的に遅滞なくこれを原状に復し道路を安全良好な状態に保つことが困難であったとしても、道路管理には瑕疵があったと認めるのが相当である。
  3. 防護柵は、道路を通行する人や車が誤って転落するのを防止するために設置されるものであり、材質、高さその他その構造に徴し、通常の通行時における転落防止の目的からみればその安全性に欠けるところがないものであったとしても、当該転落事故の被害者が危険性の判断能力に乏しい幼児であった場合、その行動が当該道路および防護柵の設置管理者において通常予測することができなくとも、営造物が本来具有すべき安全性に欠けるところがあったと評価され、道路管理者はその防護柵の設置管理者としての責任を負うと解するのが相当である。
  4. 道路の周辺住民から道路の設置・管理者に対して損害賠償の請求がされた場合において、当該道路からの騒音、排気ガス等が周辺住民に対して現実に社会生活上受忍すべき限度を超える被害をもたらしたことが認定判断されたとしても、当該道路が道路の周辺住民に一定の利益を与えているといえるときには、当該道路の公共性ないし公益上の必要性のゆえに、当該道路の供用の違法性を認定することはできないものと解するのが相当である。
  5. 走行中の自動車がキツネ等の小動物と接触すること自体により自動車の運転者等が死傷するような事故が発生する危険性は高いものではなく、通常は、自動車の運転者が適切な運転操作を行うことにより死傷事故を回避することを期待することができるものというべきであって、金網の柵をすき間なく設置して地面にコンクリートを敷くという小動物の侵入防止対策が全国で広く採られていたという事情はうかがわれず、そのような対策を講ずるためには多額の費用を要することは明らかであり、当該道路には動物注意の標識が設置され自動車の運転者に対して道路に侵入した動物についての適切な注意喚起がされていたということができるなどの事情の下においては、高速道路で自動車の運転者がキツネとの衝突を避けようとして起こした自損事故において、当該道路に設置または管理の瑕疵があったとはいえない。
  解答&解説

正解 5

解説

落石事故の発生した道路に防護柵を設置する場合に、その費用の額が相当の多額にのぼり、県としてその予算措置に困却するであろうことが推察できる場合には、そのことを理由として、道路管理者は、道路の管理の瑕疵によって生じた損害に対する賠償責任を免れ得るものと解するのが相当である。 1.妥当でない

単に予算が足りなかったり、費用が多額だったりというだけでは、免責にはならない(高知落石事件:最判昭和45年8月20日)。

国家賠償法2条は、無過失責任を定めたものであるが、無制限にその責任を認めるものではなく、それが不可抗力ないし回避可能性のない場合であるときは、責任は負わないとされているため、考慮要素は事件当時における公の営造物の客観的状態に限られない。

考慮される主な要素としては、以下のようなものがある。

①財政的な考慮 単に予算が足りなかったり、費用が多額だったりというだけでは、免責にはならないが(高知落石事件:最判昭和45年8月20日)、それが社会的にみて不相当・不合理という場合には免責事由になりうる。
②時間的考慮 事故当時の道路の客観的状態には瑕疵が認められるのに、安全を保持することが不可能であることを理由に免責したのは、時間的考慮をしたことによる帰結である(最判昭和50年6月26日)。
③技術的考慮 視力障害者の転落事故防止用の点字ブロックを設置しなかったことが設置又は管理の瑕疵にあたるかの判断は、その安全設備が事故防止に有効なものとして素材・形状・敷設方法等が標準化され普及しているか、設置場所の構造、事故の危険性の程度、安全設備を設置する必要性の程度、安全設備の設置の困難性の有無等、諸般の事情を総合考慮する必要がある(最判昭和61年3月25日)。
①財政的な考慮
単に予算が足りなかったり、費用が多額だったりというだけでは、免責にはならないが(高知落石事件:最判昭和45年8月20日)、それが社会的にみて不相当・不合理という場合には免責事由になりうる。
②時間的考慮
事故当時の道路の客観的状態には瑕疵が認められるのに、安全を保持することが不可能であることを理由に免責したのは、時間的考慮をしたことによる帰結である(最判昭和50年6月26日)。
③技術的考慮
視力障害者の転落事故防止用の点字ブロックを設置しなかったことが設置又は管理の瑕疵にあたるかの判断は、その安全設備が事故防止に有効なものとして素材・形状・敷設方法等が標準化され普及しているか、設置場所の構造、事故の危険性の程度、安全設備を設置する必要性の程度、安全設備の設置の困難性の有無等、諸般の事情を総合考慮する必要がある(最判昭和61年3月25日)。

事故発生当時、道路管理者が設置した工事標識板、バリケードおよび赤色灯標柱が道路上に倒れたまま放置されていたことは、道路の安全性に欠如があったといわざるをえず、それが夜間の事故発生直前に生じたものであり、道路管理者において時間的に遅滞なくこれを原状に復し道路を安全良好な状態に保つことが困難であったとしても、道路管理には瑕疵があったと認めるのが相当である。 2.妥当でない

第三者の行為により営造物が瑕疵ある状態になった場合において、その状態を速やかに改善して瑕疵のない状態に回復させる責任が営造物管理者にはあるが、それが事故発生直前に生じ、時間的に遅滞なくこれを原状に復し道路を安全良好な状態に保つことが困難であった場合は、道路管理に瑕疵がなかったというべきである(最判昭和50年6月26日)。

なお、第三者の行為により営造物が瑕疵ある状態になり長期間故障車両を道路に放置していた場合は道路の管理に瑕疵があったとしている(最判昭和50年7月25日)。

防護柵は、道路を通行する人や車が誤って転落するのを防止するために設置されるものであり、材質、高さその他その構造に徴し、通常の通行時における転落防止の目的からみればその安全性に欠けるところがないものであったとしても、当該転落事故の被害者が危険性の判断能力に乏しい幼児であった場合、その行動が当該道路および防護柵の設置管理者において通常予測することができなくとも、営造物が本来具有すべき安全性に欠けるところがあったと評価され、道路管理者はその防護柵の設置管理者としての責任を負うと解するのが相当である。 3.妥当でない

国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理に瑕疵があったとみられるかどうかは、当該営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきものであり、通常の用法に即しない行動の結果生じた事故については、その設置管理者としての責任を負うべき理由はない(最判昭和53年7月4日)。

道路の周辺住民から道路の設置・管理者に対して損害賠償の請求がされた場合において、当該道路からの騒音、排気ガス等が周辺住民に対して現実に社会生活上受忍すべき限度を超える被害をもたらしたことが認定判断されたとしても、当該道路が道路の周辺住民に一定の利益を与えているといえるときには、当該道路の公共性ないし公益上の必要性のゆえに、当該道路の供用の違法性を認定することはできないものと解するのが相当である。 4.妥当でない

一般国道等の道路の周辺住民がその供用に伴う自動車騒音等により受けた被害が社会生活上受忍すべき限度を超え、道路の設置又は管理には瑕疵があるというべきであるとして、国家賠償請求を認めている(最判平成7年7月7日)。

走行中の自動車がキツネ等の小動物と接触すること自体により自動車の運転者等が死傷するような事故が発生する危険性は高いものではなく、通常は、自動車の運転者が適切な運転操作を行うことにより死傷事故を回避することを期待することができるものというべきであって、金網の柵をすき間なく設置して地面にコンクリートを敷くという小動物の侵入防止対策が全国で広く採られていたという事情はうかがわれず、そのような対策を講ずるためには多額の費用を要することは明らかであり、当該道路には動物注意の標識が設置され自動車の運転者に対して道路に侵入した動物についての適切な注意喚起がされていたということができるなどの事情の下においては、高速道路で自動車の運転者がキツネとの衝突を避けようとして起こした自損事故において、当該道路に設置または管理の瑕疵があったとはいえない。 5.妥当である

高速道路で自動車の運転者がキツネとの衝突を避けようとして自損事故を起こした場合において、小動物の侵入防止対策が講じられていなかったからといって当該道路に設置又は管理の瑕疵があったとはいえない(最判平成22年3月2日)。

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