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令和5年-問19 行政法 行政事件訴訟法

Lv3

問題 更新:2024-01-07 23:55:57

行政事件訴訟法が定める抗告訴訟の対象に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 登録免許税を過大に納付して登記を受けた者が登録免許税法に基づいてした登記機関から税務署長に還付通知をすべき旨の請求に対し、登記機関のする拒否通知は、当該請求者の権利に直接影響を及ぼす法的効果を有さないため、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。
  2. 行政庁が建築基準法に基づいて、いわゆるみなし道路を告示により一括して指定する行為は、特定の土地について個別具体的な指定をしたものではなく、一般的基準の定立を目的としたものにすぎず、告示による建築制限等の制限の発生を認めることができないので、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。
  3. 労災就学援護費に関する制度の仕組みに鑑みると、被災労働者またはその遺族は、労働基準監督署長の支給決定によって初めて具体的な労災就学援護費の支給請求権を取得するため、労働基準監督署長が行う労災就学援護費の支給または不支給の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
  4. 市町村長が住民基本台帳法に基づき住民票に続柄を記載する行為は、公の権威をもって住民の身分関係を証明し、それに公の証明力を与える公証行為であるから、それ自体によって新たに国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する法的効果を有するため、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
  5. 都市計画法の規定に基づく用途地域指定の決定が告示された場合、その効力が生ずると、当該地域内においては、建築物の用途、容積率、建ぺい率等につき従前と異なる基準が適用され、これらの基準に適合しない建築物については建築確認を受けることができなくなる効果が生じるので、用途地域指定の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
  解答&解説

正解 3

解説

登録免許税を過大に納付して登記を受けた者が登録免許税法に基づいてした登記機関から税務署長に還付通知をすべき旨の請求に対し、登記機関のする拒否通知は、当該請求者の権利に直接影響を及ぼす法的効果を有さないため、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。 1.妥当でない

登記等を受けた者が登録免許税法に基づいてした登記機関から税務署長に還付通知をすべき旨の請求に対し、登記機関のする拒否通知は、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたる(最判平成17年4月14日)。

判例は「登録免許税法31条2項は、登記等を受けた者に対し、簡易迅速に還付を受けることができる手続を利用することができる地位を保障しているものと解するのが相当である。
そして、同項に基づく還付通知をすべき旨の請求に対してされた拒否通知は、登記機関が還付通知を行わず、還付手続を執らないことを明らかにするものであって、これにより、登記等を受けた者は、簡易迅速に還付を受けることができる手続を利用することができなくなる。
そうすると、上記の拒否通知は、登記等を受けた者に対して上記の手続上の地位を否定する法的効果を有するものとして、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたると解するのが相当である(最判平成17年4月14日)」としている。

行政庁が建築基準法に基づいて、いわゆるみなし道路を告示により一括して指定する行為は、特定の土地について個別具体的な指定をしたものではなく、一般的基準の定立を目的としたものにすぎず、告示による建築制限等の制限の発生を認めることができないので、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。 2.妥当でない

建築基準法42条2項に基づいてされる2項道路(みなし道路)の指定は、個別具体的に対象道路を指定する「個別指定」でする場合と、告示等により一定条件に合致する道を一律に指定する「一括指定」でする場合があるところ、一括指定の場合であっても、個別の土地についてその本来的な効果として具体的な私権制限を発生させるものであり、個人の権利義務に対して直接影響を与えるものということができるから、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたる(最判平成14年1月17日)。

労災就学援護費に関する制度の仕組みに鑑みると、被災労働者またはその遺族は、労働基準監督署長の支給決定によって初めて具体的な労災就学援護費の支給請求権を取得するため、労働基準監督署長が行う労災就学援護費の支給または不支給の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。 3.妥当である

労働基準監督署長の行う労災就学援護費の支給又は不支給の決定は、法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり、被災労働者又はその遺族の権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたる(最判平成15年9月4日)。

判例は「労災就学援護費に関する制度の仕組みにかんがみれば、法は、労働者が業務災害等を被った場合に、政府が、法第3章の規定に基づいて行う保険給付を補完するために、労働福祉事業として、保険給付と同様の手続により、被災労働者又はその遺族に対して労災就学援護費を支給することができる旨を規定しているものと解するのが相当である。
そして、被災労働者又はその遺族は、所定の支給要件を具備するときは所定額の労災就学援護費の支給を受けることができるという抽象的な地位を与えられているが、具体的に支給を受けるためには、労働基準監督署長に申請し、所定の支給要件を具備していることの確認を受けなければならず、労働基準監督署長の支給決定によって初めて具体的な労災就学援護費の支給請求権を取得するものといわなければならない。
そうすると、労働基準監督署長の行う労災就学援護費の支給又は不支給の決定は、法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり、被災労働者又はその遺族の上記権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるものと解するのが相当である(最判平成15年9月4日)」としている。

市町村長が住民基本台帳法に基づき住民票に続柄を記載する行為は、公の権威をもって住民の身分関係を証明し、それに公の証明力を与える公証行為であるから、それ自体によって新たに国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する法的効果を有するため、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。 4.妥当でない

住民票に特定の住民と世帯主との続柄がどのように記載されるかは、その者が選挙人名簿に登録されるか否かには何らの影響を及ぼさないことが明らかであり、住民票に続柄を記載する行為が何らかの法的効果を有すると解すべき根拠はないため、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたらない(最判平成11年1月21日)。

都市計画法の規定に基づく用途地域指定の決定が告示された場合、その効力が生ずると、当該地域内においては、建築物の用途、容積率、建ぺい率等につき従前と異なる基準が適用され、これらの基準に適合しない建築物については建築確認を受けることができなくなる効果が生じるので、用途地域指定の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。 5.妥当でない

用途地域指定の決定において、従前と異なる基準が適用され基準に適合しない建築物の建築確認を受けることができなくなる効果が生じるというだけでは、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたらない。

判例は「都市計画法8条1項1号に基づき都市計画決定が告示されてその効力が生ずると、当該地域内においては、建築物の用途、容積率、建ぺい率等につき従前と異なる基準が適用され、これらの基準に適合しない建築物については建築確認を受けることができず、建築等ができないことになるが、それは当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的な効果にすぎず、このような効果を生ずるということだけで地域内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があったとする抗告訴訟をすることはできない(盛岡広域都市計画用途地域指定無効確認請求事件:最判昭和57年4月22日)」としている。

いわゆる拘束的計画では、その計画ごとによって、処分性の判断が異なっている。
主なものは下記を参照。

①処分性が否定された例
  • 都市計画法に基づく用途地域・高度地区の指定(最判昭和57年4月22日)
  • 道路に関する都市計画変更決定(最判昭和62年9月22日)
  • 都市計画法に基づく地区計画(最判平成6年4月22日)
②処分性が肯定された例
  • 土地区画整理組合の認可(最判昭和60年12月17日)
  • 土地改良事業計画における事業施行の認可(最判昭和61年2月13日)
  • 第二種市街地再開発事業計画の決定・公告(最判平成4年11月26日)
  • 土地区画整理事業計画の決定(最判平成20年9月10日)

肯定された例にある最判平成20年9月10日は、従来、当該計画は青写真にすぎないとして(青写真論)、処分性が否定されていたものを判例変更して肯定したものであるが、今後、他の行政計画にも当該判例の影響が及ぶ可能性があるのではないかと指摘されている。

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