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合格道場が取り扱っている問題・解説と同主旨の問題が本試験で出題されたものの表です。

択一問題35問掲載 記述式は択一問題で全問掲載 一般知識(文章理解除く)5問掲載

令和4年本試験とサイト掲載問題の比較一覧

基礎法学・憲法

令和4年本試験 合格道場掲載
問題5 練習問題>憲法>司法17
肢1
告知、弁解、防御の機会を与えることなく所有物を没収することは許されないが、貨物の密輸出で有罪となった被告人が、そうした手続的保障がないままに第三者の所有物が没収されたことを理由に、手続の違憲性を主張することはできない。
解説肢3
第三者の所有物を没収する場合において、その没収に関して当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防御の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、著しく不合理であって、憲法の容認しないところであるといわなければならない。・・・これなくして第三者の所有物を没収することは、適正な法律手続によらないで、財産権を侵害する制裁を科するにほかならない」(第三者所有物没収事件:最判昭和37年11月28日)
なお、当該違憲判決を受けて「刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法」が制定された。
問題5 練習問題>憲法>人身の自由5
肢3
審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判を受ける被告人の権利が害されたと認められる異常な事態が生じた場合であっても、法令上これに対処すべき具体的規定が存在しなければ、迅速な裁判を受ける権利を根拠に救済手段をとることはできない。
問題肢ウ
憲法上の迅速な裁判を受ける権利によって、審理の著しい遅延が生じた場合は、審理を打ち切ることも許される。

解説肢ウ
憲法37条1項の迅速な裁判を受ける権利について判例は「審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判を受ける被告人の権利が害せられたと認められる異常な事態が生じた場合には・・・その審理を打ち切るという非常救済手段がとられるべき事を認めている趣旨の規定である」としている(高田事件:最大判昭和47年12月20日)。
問題5 練習問題>憲法>人身の自由7
肢4 正解肢
不利益供述の強要の禁止に関する憲法の保障は、純然たる刑事手続においてばかりだけでなく、それ以外にも、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には、等しく及ぶ。
解説肢3
「憲法38条1項の・・・右規定による保障は、純然たる刑事手続においてばかりではなく、それ以外の手続においても、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には、ひとしく及ぶものと解する」(川崎民商事件:最大判昭和47年11月22日)
問題5 練習問題>行政法>行政総論7-9
肢5
不正な方法で課税を免れた行為について、これを犯罪として刑罰を科すだけでなく、追徴税(加算税)を併科することは、刑罰と追徴税の目的の違いを考慮したとしても、実質的な二重処罰にあたり許されない。
問題肢5
義務違反に対する課徴金の賦課は、一種の制裁であるから、罰金などの刑罰と併科することは二重処罰の禁止に抵触し、許されない。

解説肢5
義務違反者に対する課徴金の賦課と刑罰の併科や追徴税と刑罰の併科は、その目的を異にすることから、二重処罰の禁止に抵触しない(最判平成10年10月13日、最大判昭和33年4月30日)。
問題6 練習問題>憲法>内閣7
肢1
内閣は、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経て条約を締結するが、やむを得ない事情があれば、事前または事後の国会の承認なく条約を締結できる。
解説肢エ
内閣が条約を締結するには、事前に時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする(憲法73条3号ただし書き)。
したがって、必ず事前の国会の承認が必要なわけではない。
問題6 練習問題>憲法>内閣11
肢2
内閣は、国会が閉会中で法律の制定が困難な場合には、事後に国会の承認を得ることを条件に、法律にかわる政令を制定することができる。
問題肢5
内閣は、国会閉会中に、緊急かつ重要性が認められる場合に、次に開会された国会の追認を条件として、法律を制定することが憲法上認められている。

解説肢5
国会が唯一の立法機関であり、本肢のような内閣の立法行為はできない。なお、明治憲法では緊急勅令や独立命令が認められていた。
問題6 練習問題>憲法>国会1
肢3
参議院の緊急集会は、衆議院の解散により国会が閉会している期間に、参議院の総議員の4分の1以上の要求があった場合、内閣によりその召集が決定される。
解説肢3
衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。ただし、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる(憲法54条2項)。
問題6 練習問題>憲法>内閣3
肢4 正解肢
内閣総理大臣が欠けたとき、内閣は総辞職をしなければならないが、この場合の内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行う。
問題肢5
内閣総理大臣が辞職した場合、内閣は総辞職しなければならないが、新たに内閣総理大臣が任命されるまでの間は、それまでの内閣が引き続き職務を行う。

解説肢5
内閣が総辞職した場合、その内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行う(憲法71条)。
問題6 練習問題>憲法>財政8
肢5
新年度開始までに予算が成立せず、しかも暫定予算も成立しない場合、内閣は、新年度予算成立までの間、自らの判断で予備費を設け予算を執行することができる。
解説肢4
予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる(憲法87条1項)。
また、この支出は、すべて事後に国会の承諾が必要である(憲法87条2項)。
なお、国会が不承諾だった場合でも、既になされた支出については有効であり、この場合は、内閣が政治的責任を問われるにすぎないと解されている。
問題7 練習問題>憲法>内閣3
肢4
傍聴人は法廷で裁判を見聞できるので、傍聴人が法廷でメモを取る行為は、権利として保障されている。
解説肢4
判例によると、法廷でメモを取ることは「尊重に値する」ものの、保証されるべきとまではしていない。
「傍聴人が法廷においてメモを取ることは、その見聞する裁判を認識、記憶するためになされるものである限り、尊重に値し、故なく妨げられてはならないものというべきである。」(最大判平成元年3月8日)

行政法

令和4年本試験 合格道場掲載
問題8 練習問題>憲法>社会権7
空欄A
ア.生活保護法の規定に基づき、要保護者等が国から生活保護を受けるのは、法的利益であって、保護受給権とも称すべきものであるとしている
イ.生活保護法の規定に基づき、要保護者等が国から生活保護を受けるのは、国の恩恵ないし社会政策の実施に伴う反射的利益であるとしている
問題肢4
生活保護法の規定に基づき要保護者または被保護者が国から生活保護を受けられるのは、単なる国の恩恵ないし社会政策の実施に伴う反射的利益ではなく、法的権利である。
解説肢4
「生活保護法の規定に基づき要保護者または被保護者が国から生活保護を受けるのは、単なる国の恩恵ないし社会政策の実施に伴う反射的利益ではなく、法的権利であって、保護受給権とも称すべきものと解すべきである。」(朝日訴訟:最大判昭和42年5月24日)
問題9 練習問題>行政法>行政手続法1-3
肢ア
行政手続法は、行政契約につき定義規定を置いており、国は、それに該当する行政契約の締結及び履行にあたっては、行政契約に関して同法の定める手続に従わなければならない。
解説
行政法は似た法律も多く、各肢の手続き自体は目にすることも多い用語であろうから、混同しやすいところでもあるが、過去に本問と類似の問題が出題されているので対応できるようにしておきたい。

規定されている:処分、行政指導、届出、命令
規定されていない:計画策定、行政契約、行政調査、即時強制、入札手続、事後的な救済手続きなど 目的等)
行政手続法1条
この法律は、「処分」、「行政指導」及び「届出」に関する手続並びに「命令等を定める」手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。
問題9 練習問題>行政法>地方自治法17-1
肢イ
地方公共団体が必要な物品を売買契約により調達する場合、当該契約は民法上の契約であり、専ら民法が適用されるため、地方自治法には契約の締結に関して特別な手続は規定されていない。
問題肢1
地方公共団体における売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結される。
解説肢1
売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする(地方自治法234条1項)
問題9 練習問題>行政法>行政総論11-3
肢ウ 正解肢
水道事業者たる地方公共団体は、給水契約の申込みが、適正かつ合理的な供給計画によっては対応することができないものである場合には、水道法の定める「正当の理由」があるものとして、給水契約を拒むことができる。
解説肢3
「水道事業を経営する町がマンション分譲業者からの420戸分の給水契約の申込みに対し契約の締結を拒んだことは、当該町が、全国有数の人口過密都市であり今後も人口の集積が見込まれ、認可を受けた水源のみでは現在必要とされる給水量を賄うことができず、認可外の水源から取水して給水量を補っているが当該取水は不安定であり、多額の財政的負担をして種々の施策を執ってきているが容易に右状況が改善されることは見込めず、このまま漫然と新規の給水申込みに応じていると近い将来需要に応じきれなくなり深刻な水不足を生ずるこが予測されるという判示の事実関係の下においては、新たな給水申込みのうち、需要量が特に大きく、住宅を供給する事業を営む者が住宅を分譲する目的であらかじめしたものについて給水契約の締結を拒むことにより、急激な水道水の需要の増加を抑制するためのやむを得ない措置であって、右の措置には水道法15条1項にいう「正当の理由」があるものというべきである。」(最判平成11年1月21日)
問題9 練習問題>行政法>行政総論14-7
肢エ 公害防止協定など、地方公共団体が締結する規制行政にかかる契約は、法律に根拠のない権利制限として法律による行政の原理に抵触するため、法的拘束力を有しない。 問題肢3
地方公共団体が事業者との間で締結する公害防止協定については、公法上の契約に該当すると解されるので、根拠となる条例の定めがない限り、当該協定に法的拘束力は生じない。
解説肢3
「根拠となる条例の定めがない限り、当該協定に法的拘束力は生じない。」とはいえない。
公害防止協定の法的性質・効力については議論のあるところではあるが、大きく分けると紳士協定説と契約説がある。
紳士協定説は、企業責任として紳士的・道義的に宣言したに過ぎないから法的拘束力はないとするのに対し、契約説は、契約である以上、根拠法令があるかどうかにかかわらず一定の拘束力があるとする。
この点、判例(最判平成21年7月10日)は、法的性質等への言及はしていないが、当該協定に一定の拘束力があることを前提として、産業廃棄物処理施設を操業の差止めを認めていることから、契約説の立場であると考えられている。
問題9 練習問題>行政法>行政総論13-1
肢オ 正解肢
法令上、随意契約によることができない契約を地方公共団体が随意契約で行った場合であっても、当該契約の効力を無効としなければ法令の規定の趣旨を没却する結果となる特別の事情が存在しない限り、当該契約は私法上有効なものとされる。
問題肢2
地方公共団体が、地方自治法上、随意契約によることができない場合であるにもかかわらず、随意契約を行ったときは、かかる違法な契約は、私法上、当然に無効となる
解説肢2
随意契約の制限に関する法令に違反して締結された契約の私法上の効力については別途考察する必要があり、かかる違法な契約であっても私法上当然に無効になるものではなく、随意契約によることができる場合として前記令の規定の掲げる事由のいずれにもあたらないことが何人の目にも明らかである場合や契約の相手方において随意契約の方法による当該契約の締結が許されないことを知り又は知り得べかりし場合のように当該契約の効力を無効としなければ随意契約の締結に制限を加える前記法及び令の規定の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる場合に限り、私法上無効になる」(最判昭和62年5月19日)
問題10 練習問題>行政法>行政手続法1-3
肢3
行政手続法においては、行政調査を行う場合、調査の適正な遂行に支障を及ぼすと認められない限り、調査の日時、場所、目的等の項目を事前に通知しなければならないとされている。
解説
行政法は似た法律も多く、各肢の手続き自体は目にすることも多い用語であろうから、混同しやすいところでもあるが、過去に本問と類似の問題が出題されているので対応できるようにしておきたい。

規定されている:処分、行政指導、届出、命令
規定されていない:計画策定、行政契約、行政調査、即時強制、入札手続、事後的な救済手続きなど
目的等)
行政手続法1条
この法律は、「処分」、「行政指導」及び「届出」に関する手続並びに「命令等を定める」手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。
問題10 過去問>年度別>平成26年>問10
肢5 正解肢
行政調査の実効性を確保するため、調査に応じなかった者に刑罰を科す場合、調査自体の根拠規定とは別に、刑罰を科すことにつき法律に明文の根拠規定を要する。
問題肢ウ
法律の規定を設ければ、行政調査に応じなかったことを理由として、刑罰を科すなど、相手方に不利益を課すことも許される。
解説肢ウ
行政調査に応じなかったことを理由として、刑罰を科すことで、間接的に調査を強制することを「間接強制調査」といい、法律の規定によって認められている場面がある(国税通則法127条2号参照)。
問題11 練習問題>行政法>行政手続法4-2
肢1 正解肢
行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努め、これを定めたときは、行政手続法所定の方法により公にしておかなければならない。
解説肢5
標準処理期間を定めること自体は努力義務であるが、これを定めたときに公にすることは義務となっており、申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない(行政手続法6条)
問題11 練習問題>行政法>行政手続法4-6
肢2
行政庁は、法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請について、それを理由として申請を拒否することはできず、申請者に対し速やかにその補正を求めなければならない。
解説肢3
法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない(行政手続法7条)。補正と拒否は選択の関係である。
問題11 練習問題>行政法>行政手続法4-6
肢3
行政庁は、申請により求められた許認可等の処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示すよう努めなければならない。
解説肢1
行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる(行政手続法8条1項)。
問題11 練習問題>行政法>行政手続法13-1
肢4
行政庁は、定められた標準処理期間を経過してもなお申請に対し諾否の応答ができないときは、申請者に対し、当該申請に係る審査の進行状況および処分の時期の見込みを書面で通知しなければならない。
問題肢5
行政庁は、申請に係る審査が標準処理期間を超える場合には、申請者に対して、当該申請に係る審査の進行状況及び当該申請に対する処分の時期の見通しを書面で通知しなければならない。
解説肢5
標準処理期間は、行政庁としては自己の努力目標とする期間となりうるが、当該期間内の処理を保証しているわけではなく、申請者にとっては、あくまで目安にしか過ぎないものであるため、申請の処理が標準処理期間を超える場合でも、当該申請に係る審査の進行状況及び当該申請に対する処分の時期の見通し等の標準処理期間を超えたことに関する通知をする義務はない(行政手続法6条、8条参照)。
もっとも、標準処理期間を超えたかどうかにかかわらず、申請者から求められた場合は、当該申請に係る審査の進行状況及び当該申請に対する処分の時期の見通しを示す(書面で示す必要はない)努力義務(義務ではない)はある(行政手続法9条1項)。
なお、標準処理期間を超えたからといって、直ちに不作為についての審査請求(行政不服審査法3条)や不作為の違法確認の訴え(行政事件訴訟法3条5項)における「相当の期間」にあたるものではないと解されている。
問題11 練習問題>行政法>行政手続法4-9
肢5
行政庁は、申請に対する処分であって、申請者以外の者の利益を考慮すべきことが当該法令において許認可等の要件とされているものを行う場合には、当該申請者以外の者および申請者本人の意見を聴く機会を設けなければならない。
問題肢2
行政庁は、申請者以外の者の利害を考慮すべきことが要件とされている処分を行う場合には、それらの者の意見を聴く機会を設けなければならない。
解説肢2
意見聴取は義務とされていないので誤り。
行政庁は、申請に対する処分であって、申請者以外の者の利害を考慮すべきことが当該法令において許認可等の要件とされているものを行う場合には、必要に応じ、公聴会の開催その他の適当な方法により当該申請者以外の者の意見を聴く機会を設けるよう努めなければならない(行政手続法10条)。
本条は意見聴取を努力義務として規定している。
主な理由として、第三者からの意見聴取に努める実益のない場合や、意見聴取に努めることが他の公益との衡量上不適切とされる場合あるいは行政効率を著しく阻害するとされる場合があり、一律に意見聴取を行うことが合理的ではないからである。
問題12 練習問題>行政法>行政手続法2-4
肢1
申請拒否処分は、申請により求められた許認可等を拒否するものとして、法の定義上、不利益処分に該当するので、それを行うにあたっては、申請者に対して意見陳述の機会を与えなければならない。
解説肢2
不利益処分とは、行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいうが(行政手続法2条4号本文)、申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分は除かれる(行政手続法2条4号ただし書き、ロ)。
問題12 練習問題>行政法>行政手続法4-9
肢2
行政庁は、不利益処分がされないことにより権利を害されるおそれがある第三者がいると認めるときは、必要に応じ、その意見を聴く機会を設けるよう努めなければならない。
解説肢2
意見聴取は義務とされていないので誤り。
行政庁は、申請に対する処分であって、申請者以外の者の利害を考慮すべきことが当該法令において許認可等の要件とされているものを行う場合には、必要に応じ、公聴会の開催その他の適当な方法により当該申請者以外の者の意見を聴く機会を設けるよう努めなければならない(行政手続法10条)。
本条は意見聴取を努力義務として規定している。
主な理由として、第三者からの意見聴取に努める実益のない場合や、意見聴取に努めることが他の公益との衡量上不適切とされる場合あるいは行政効率を著しく阻害するとされる場合があり、一律に意見聴取を行うことが合理的ではないからである。
問題12 練習問題>行政法>行政手続法7-5
肢3 正解肢
弁明の機会の付与は、処分を行うため意見陳述を要する場合で、聴聞によるべきものとして法が列挙している場合のいずれにも該当しないときに行われ、弁明は、行政庁が口頭ですることを認めたときを除き、弁明書の提出により行われる。
解説肢3
不利益処分の意見陳述のための手続としては、聴聞と弁明の機会の付与があり、聴聞の対象は、許認可等の取消しや資格の剥奪というような重大な不利益処分となっている(行政手続法13条1項1号)。
一方、弁明の機会の付与は、それらに該当しない比較的軽微な不利益処分がその対象である(行政手続法13条1項2号)。
練習問題>行政法>行政手続法9-1
解説肢1
弁明の機会の付与は、原則として弁明書を提出して行うが、行政庁が口頭ですることを認めた場合は、口頭によってすることができる(行政手続法29条1項)。
問題12 練習問題>行政法>行政手続法8-8
肢4
法が定める「聴聞」の節の規定に基づく処分またはその不作為に不服がある場合は、それについて行政不服審査法に基づく審査請求をすることができる。
問題肢4
聴聞を経て行政庁が行った不利益処分について、聴聞に参加した当事者は、当該処分について審査請求をすることはできない。
解説肢4
聴聞を経てされた不利益処分については、当事者及び参加人は、審査請求をすることができる。
一方、聴聞の規定に基づく処分又は不作為については審査請求をすることはできない(行政手続法27条)。
問題12 練習問題>行政法>行政手続法8-11
肢5
聴聞は、行政庁が指名する職員その他政令で定める者が主宰するが、聴聞を主宰することができない者について、法はその定めを政令に委任している。
解説肢4
行政手続法19条2項では、主宰者になれない者を定めており、聴聞の当事者や参加人本人をはじめ、その配偶者、四親等内の親族、同居の親族、法定代理人及び過去にこれらの関係にあった者等は主宰者になることはできない。
問題13 練習問題>行政法>行政手続法11-1
肢1 正解肢
届出は、法の定めによれば、「行政庁に対し一定の事項の通知をする行為」であるが、「申請に該当するものを除く」という限定が付されている。
解説肢1
届出とは、行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む。)をいう(行政手続法2条7号)。
したがって、法令の義務や法律上の効果を発生させるためのものではない、単に一定の事項の通知をする行為は、行政手続法の届出にあたらない。
問題13 練習問題>行政法>行政手続法2-1
肢2
届出は、法の定めによれば、「行政庁に対し一定の事項の通知をする行為」であるが、「事前になされるものに限る」という限定が付されている。
解説肢4
届出とは、行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む。)をいう(行政手続法2条7号)。
したがって、法令の義務や法律上の効果を発生させるためのものではない、単に一定の事項の通知をする行為は、行政手続法の届出にあたらない。
問題13 練習問題>行政法>行政手続法2-1
肢3
届出は、法の定めによれば、「法令により直接に当該通知が義務付けられているもの」であるが、「自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを除く」という限定が付されている。
解説肢4
届出とは、行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む。)をいう(行政手続法2条7号)。
したがって、法令の義務や法律上の効果を発生させるためのものではない、単に一定の事項の通知をする行為は、行政手続法の届出にあたらない。
問題13 練習問題>行政法>行政手続法11-1
肢4
法令に定められた届出書の記載事項に不備があるか否かにかかわらず、届出が法令によりその提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとされる。
問題肢4
届出が法令に定められた届出の形式上の条件に適合しており、その他不備もない場合には、法令により当該届出の提出先とされている行政庁に到達した時に、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたことになる。
解説肢4
届出が届出書の記載事項に不備がないこと、届出書に必要な書類が添付されていることその他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している場合は、当該届出が法令により当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたことになる(行政手続法37条)。
問題13 練習問題>行政法>行政手続法11-1
肢5
届出書に法令上必要とされる書類が添付されていない場合、事後に補正が求められることにはなるものの、当該届出が法令によりその提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務自体は履行されたものとされる。
問題肢4
届出が法令に定められた届出の形式上の条件に適合しており、その他不備もない場合には、法令により当該届出の提出先とされている行政庁に到達した時に、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたことになる。
解説肢4
届出が届出書の記載事項に不備がないこと、届出書に必要な書類が添付されていることその他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している場合は、当該届出が法令により当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたことになる(行政手続法37条)。
問題14 練習問題>行政法>行政不服審査法6-1
肢1
行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に審査請求をすることができる場合には、行政不服審査法の定める例外を除き、処分庁に対して再調査の請求をすることができる。
解説肢1
行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合でも、法律に再調査の請求をすることができる旨の定めがあるときは、当該処分に不服がある者は、処分庁に対して再調査の請求をすることができる(行政不服審査法5条1項)。
問題14 練習問題>行政法>行政不服審査法8-3
肢2 正解肢
行政不服審査法に基づく審査請求を審理した審理員は、審理手続を終結したときは、遅滞なく、審査庁がすべき裁決に関する意見書を作成し、速やかに、これを事件記録とともに、審査庁に提出しなければならない。
解説肢4
審理員は、審理手続を終結したときは、遅滞なく、審査庁がすべき裁決に関する意見書を作成し(行政不服審査法42条1項)、これを速やかに、事件記録とともに、審査庁に提出しなければならない(行政不服審査法42条2項)。
審理員は、いわば裁決の案を審査庁に提出することになる。
問題14 過去問>令和3年>問13
肢3
法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分がされていないと思料する者は、行政不服審査法に基づく審査請求によって、当該処分をすることを求めることができる。
解説肢ウ
何人も、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分又は行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)がされていないと思料するときは、当該処分をする権限を有する行政庁又は当該行政指導をする権限を有する行政機関に対し、その旨を申し出て、当該処分又は行政指導をすることを求めることができる(行政手続法36条の3第1項)。
しかし、法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものは「申請に対する処分」であり(行政手続法2条3号)、「申出」は、申出人の権利義務に変動が生じないから処分性が認められない。したがって、行政指導をすることを求める申出に対して行政機関は、諾否の応答をすべきものとされていない。
問題14 過去問>令和元年>問11
肢4
法令に違反する行為の是正を求める行政指導の相手方は、当該行政指導が違法なものであると思料するときは、行政不服審査法に基づく審査請求によって、当該行政指導の中止を求めることができる。
解説肢1
法令に違反する行為の是正を求める行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)の相手方は、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思料するときは、当該行政指導をした行政機関に対し、その旨を申し出て、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる(行政手続法36条の2第1項)。
行政指導の中止等の求めができるのは、法令に違反する行為の是正を求める行政指導の相手方であって、「何人も」できるわけではない。
問題14 過去問>令和元年>問16
肢5
地方公共団体の機関がする処分であってその根拠となる規定が条例に置かれているものにも行政不服審査法が適用されるため、そのような処分についての審査請求がされた行政庁は、原則として総務省に置かれた行政不服審査会に諮問をしなければならない。
解説肢3
地方公共団体は、当該地方公共団体における不服申立ての状況等に鑑み同項の機関を置くことが不適当または困難であるときは、条例で定めるところにより、事件ごとに、執行機関の付属機関として、この法律の規定によりその権限に属された事項を処理するための機関を置くこととすることができる(行政不服審査法81条2項)。
行政不服審査のための付属機関を事件ごとに設置する場合は、条例で定める必要があり、国の行政不服審査会に諮問を行うわけではない。
問題15 練習問題>行政法>行政不服審査法8-2
肢1
審理員は、審査請求がされた行政庁が、審査請求の対象とされた処分の処分庁または不作為庁に所属する職員から指名する。
解説肢3
審理員は、審査庁に所属する職員から指名され(行政不服審査法9条1項、2項参照)、審査庁となるべき行政庁は、審理員となるべき者の名簿を作成するよう努めなければならない(行政不服審査法17条)。
問題15 練習問題>行政法>行政不服審査法7-3
肢2 正解肢
審理員は、職権により、物件の所持人に対し物件の提出を求めた上で、提出された当該物件を留め置くことができる。
解説肢3
審理員は、審査請求人の申立てにより又は職権で、書類その他の物件の所持人に対し、その物件の提出を求めることができる(行政不服審査法33条)。
なお、審理員の職権による調査が審理関係人の主張しない事実の調査(職権探知)も認める趣旨なのか否かについては明文の規定はないが、判例・通説は職権探知が可能だという立場をとっているものと思われる。
問題15 練習問題>行政法>行政不服審査法7-7
肢3
審理員は、審査請求人または参加人の申立てがなければ、必要な場所についての検証をすることはできない。
問題肢5
審理員は、審査請求人若しくは参加人の申立てがなくとも職権に基づいて、必要な場所につき、検証をすることができる。
解説肢5
審理員は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、必要な場所につき検証をすることができる(行政不服審査法35条1項)。
審査請求人若しくは参加人から申立てのあった検証をするか否かの判断、職権で検証をするか否かの判断、といったこれらの判断は審理員の裁量に委ねられている。
審査請求の証拠調べにおいては、職権探知主義により審査請求人の主張してない事実や申立てがなくとも審査庁の職権で探知することができる。具体的には、本肢の検証のほかに、参考人への事実陳述又は鑑定請求、所持人への書類その他の物件提出請求などがある。
もっとも、完全な職権主義によって、審理の主導権を完全に審査庁が握ることになれば、恣意的な審理が行われるおそれもあるため、審査請求人や参加人に、職権の発動を促すための申立権も認められており、また、証拠書類等の提出権、証拠調べに立ち会う権利、提出された証拠等の閲覧請求権など当事者主義的な要素も取り入れられている。
問題15 練習問題>行政法>行政不服審査法7-6
肢4
審理員は、審査請求人または参加人の申立てがなければ、審査請求に係る事件に関し、審理関係人に質問することはできない。
肢4
審理員は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、必要な場所につき検証をすることも(行政不服審査法35条1項)、審理関係人に質問することもできるので、処分庁等に対しても質問をすることができる(行政不服審査法36条)。
これは、事実関係や論点又は審理関係人の主張の趣旨・内容が明確に理解できない場合、迅速な審理に支障が生じるおそれがあることから、審理員には、審理関係人に対する質問権限が付与されているのである。
問題15 練習問題>行政法>行政不服審査法7-16
肢5
審理員は、数個の審査請求に係る審理手続を併合することはできるが、ひとたび併合された審査請求に係る審理手続を分離することはできない。
問題肢エ
行政不服審査法では数個の審査請求に係る審理手続を併合し、又は併合された数個の審査請求に係る審理手続を分離するという措置は認められていない。
解説肢エ
審理員は、必要があると認める場合には、数個の審査請求に係る審理手続を併合し、又は併合された数個の審査請求に係る審理手続を分離することができる(行政不服審査法39条)。
問題16 練習問題>行政法>行政不服審査法7-18
肢1 正解肢
処分庁が審査請求をすることができる処分をなす場合においては、それを書面でするか、口頭でするかにかかわらず、当該処分につき不服申立てをすることができる旨その他所定の事項を書面で教示をしなければならない。
解説肢2
行政庁は、審査請求・再調査の請求などの不服申立てをすることができる処分をする場合は、処分の相手方に対し、当該処分につき不服申立てをすることができる旨、不服申立てをすべき行政庁および不服申立期間を書面で教示しなければならないが、処分を口頭でする場合は教示義務自体がない(行政不服審査法82条1項)。
問題16 練習問題>行政法>行政不服審査法7-5
肢2
処分庁が審査請求をすることができる処分をなす場合において、処分の相手方に対し、当該処分の執行停止の申立てをすることができる旨を教示する必要はない。
解説肢2
行政庁は、不服申立てをすることができる処分を書面でする場合は、処分の相手方に対し、当該処分につき不服申立てをすることができる旨、不服申立てをすべき行政庁および不服申立期間を教示しなければならないが、口頭でする場合は除かれる(行政不服審査法82条1項)。
問題16 練習問題>行政法>行政不服審査法7-10
肢3
処分庁は、利害関係人から、当該処分が審査請求をすることができる処分であるかどうかにつき書面による教示を求められたときは、書面で教示をしなければならない。
問題肢3
行政庁は利害関係人に対して、教示義務はないので、当該処分が不服申立てをすることができる処分であるかどうかについて教示を求められても、行政庁は必ずしも当該事項を教示しなくてもよい。
解説肢3
行政庁は、利害関係人から、当該処分における不服申立てが可能か等、不服申立てに関して教示を求められたときは、当該事項を教示しなければならない(行政不服審査法82条2項)。なお、書面による教示を求められたときは、書面でしなければならない(行政不服審査法82条3項)。
問題16 練習問題>行政法>行政不服審査法7-4
肢5
審査庁は、再審査請求をすることができる裁決をなす場合には、裁決書に、再審査請求をすることができる旨並びに再審査請求をすべき行政庁および再審査請求期間を記載してこれらを教示しなければならない。
問題肢4
審査庁は、再審査請求をすることができる裁決をする場合には、裁決書に再審査請求に関する一定事項を記載して、教示しなければならない。
解説肢4
審査庁は、再審査請求をすることができる裁決をする場合には、裁決書に再審査請求をすることができる旨並びに再審査請求をすべき行政庁及び再審査請求期間を記載して、これらを教示しなければならない(行政不服審査法50条3項)。
問題17 練習問題>行政法>行政事件訴訟法1-3
肢1
行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟である抗告訴訟として適法に提起できる訴訟は、行政事件訴訟法に列挙されているものに限られる。
解説肢5
無名抗告訴訟とは、文字通り「無名の訴訟」、つまり法律で定められていない訴訟類型のことで、法定外抗告訴訟とも呼ばれる。
従来は、義務付け訴訟や差止訴訟が、無名抗告訴訟の典型としてあげられていたが、平成16年の改正により義務付け訴訟及び差止訴訟は行政事件訴訟法に抗告訴訟の類型の一つとして規定された。これらが法定化されたことによって、無名抗告訴訟の意義は薄まったといえるが、存在自体が否定されたわけではなく、命令権限の不行使が違法であることの確認を求める義務確認訴訟(東京地判平成13年12月4日)などを無名抗告訴訟として提起する余地がある
問題17 練習問題>行政法>行政事件訴訟法4-3
肢2
不作為の違法確認の訴えに対し、請求を認容する判決が確定した場合、当該訴えに係る申請を審査する行政庁は、当該申請により求められた処分をしなければならない。
解説肢5
不作為の違法確認の訴えにより不作為が違法であると裁判所によって判断された以上、判決の拘束力により行政庁はなんらかの処分をすることを迫られるが、あくまでも裁決しないという不作為について違法が確認されたに過ぎず、処分や裁決の内容についてまでを判断したり、命令したりしているわけではない。
したがって、審査庁は却下及び棄却という裁決をすることが可能である。
問題17 練習問題>行政法>行政事件訴訟法4-1
肢3
不作為の違法確認の訴えは、処分または裁決についての申請をした者に限り提起することができるが、この申請が法令に基づくものであることは求められていない。
解説肢1
不作為の違法確認の訴えとは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう(行政事件訴訟法3条5項)。
また、訴えを提起できる者は、処分又は裁決についての申請をした者に限られる(行政事件訴訟法37条)。
これは、行政不服審査法における不作為の不服申立てと同様である。
問題17 練習問題>行政法>行政事件訴訟法6-5
肢4 正解肢
「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当しない行為については、民事保全法に規定する仮処分をする余地がある。
解説肢5
行政事件訴訟法44条は「行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為については、民事保全法に規定する仮処分をすることができない。」としているため、実質的当事者訴訟において、その訴訟物が行政庁の処分その他公権力の行使に関わらない場合は、民事保全法の仮処分をすることができる。
なお、「行政庁の処分その他公権力の行使」に関わる実質的当事者訴訟である場合については、当事者訴訟では、執行停止の制度が準用されておらず、民事保全法の仮処分ができないとした場合、仮の権利救済制度が欠缺する事態に陥ることから、することができるという見解、部分的に許容する見解、条文どおりにできないとする見解など各説が混在している。
問題17 練習問題>行政法>行政事件訴訟法6-1
肢5
当事者訴訟については、具体的な出訴期間が行政事件訴訟法において定められているが、正当な理由があるときは、その期間を経過した後であっても、これを提起することができる。
解説肢5
法令に出訴期間の定めがある当事者訴訟は、その法令に別段の定めがある場合を除き、正当な理由があるときは、その期間を経過した後であっても、これを提起することができる(行政事件訴訟法40条)。
問題18 過去問>年度別>平成28年>問19
肢2
都市計画区域内において用途地域を指定する決定は、地域内の土地所有者等に建築基準法上新たな制約を課すものではあるが、その効果は、新たにそのような制約を課する法令が制定された場合と同様の当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なものにすぎず、当該地域内の個人の具体的な権利を侵害するものではないから、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当しない。
肢5
判例(最判昭和57年4月22日)は、「都市計画区域内において工業地域を指定する決定…が、当該地域内の土地所有者等に建築基準法上新たな制約を課し、その限度で一定の法状態の変動を生ぜしめるものであることは否定できないが、かかる効果は、あたかも新たに右のような制約を課する法令が制定された場合におけると同様の当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず、このような効果を生ずるということだけから直ちに右地域内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があったものとして、これに対する抗告訴訟を肯定することはできない。」として処分性を否定している。
問題18 過去問>年度別>平成28年>問19
肢3
市町村の施行に係る土地区画整理事業計画の決定により、事業施行地区内の宅地所有者等は、所有権等に対する規制を伴う土地区画整理事業の手続に従って換地処分を受けるべき地位に立たされるため、当該計画の決定は、その法的地位に直接的な影響を及ぼし、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当する。
解説肢4
判例(最大判平成20年9月10日)は、「市町村の施行に係る土地区画整理事業の事業計画の決定は、施行地区内の宅地所有者等の法的地位に変動をもたらすものであって、抗告訴訟の対象とするに足りる法的効果を有するものということができ、実効的な権利救済を図るという観点から見ても、これを対象とした抗告訴訟の提起を認めるのが合理的である。」として、土地区画整理事業計画の決定に対して処分性を認めている。
問題18 練習問題>行政法>行政事件訴訟法2-32
肢4
地方公共団体が営む水道事業に係る条例所定の水道料金を改定する条例の制定行為は、同条例が上記水道料金を一般的に改定するものであって、限られた特定の者に対してのみ適用されるものではなく、同条例の制定行為をもって行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視することはできないから、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当しない。
解説肢2
普通地方公共団体が営む水道事業に係る条例所定の水道料金を改定する条例の制定行為は、同条例が水道料金を一般的に改定するものであって、限られた特定の者に対してのみ適用されるものではなく、同条例の制定行為をもって行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視することはできないから行政処分には該当しない(最判平成18年7月14日)。
問題18 練習問題>行政法>行政事件訴訟法2-32
肢5
特定の保育所の廃止のみを内容とする条例は、他に行政庁の処分を待つことなく、その施行により各保育所廃止の効果を発生させ、当該保育所に現に入所中の児童およびその保護者という限られた特定の者らに対して、直接、当該保育所において保育を受けることを期待し得る法的地位を爺う結果を生じさせるものであるから、その制定行為は、行政庁の処分と実質的に同視し得るものということができ、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当する。
解説肢5
各保育所の廃止のみを内容とする本件改正条例は、他に行政庁の処分を待つことなく、その施行により各保育所廃止の効果を発生させ、当該保育所に現に入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して、直接、当該保育所において保育を受けることを期待し得る法的地位を奪う結果が生じるから、行政処分に該当する(最判平成21年11月26日)。
問題19 練習問題>行政法>行政事件訴訟法3-1
肢2
無効確認訴訟には、取消訴訟の原告適格を定める規定が準用されておらず、原告適格に関する制約はない。
問題肢1
無効等確認の訴えは、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟であり、その性質上、原告適格を有することは訴訟を提起するにあたり要件とはならない。
解説肢1
無効確認訴訟は、「当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者(①予防的無効確認)」「その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で【当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないもの】(②補充的無効確認)」に限り、提起することができる(行政事件訴訟法36条)。
なお、この原告適格の捉え方として、【 】は、②のみの要件なのか(二元説)、①と②の両方の要件なのか(一元説)については、対立がある。
判例上においては、必ずしも明確になっているとはいえないが、滞納処分のおそれがある場合(要件①のみ)について、課税処分の無効等確認の訴えを認めたものがあり(最判昭和48年4月26日)、また、学説も二元説よりの考えが多数説となっている。
問題19 練習問題>行政法>行政事件訴訟法3-1
肢3 正解肢
無効確認訴訟は、処分の取消訴訟につき審査請求の前置が要件とされている場合においても、審査請求に対する裁決を経ずにこれを提起することができる。
問題肢3
取消訴訟について不服申立ての前置が要件とされている処分であっても、不服申立てをすることなくただちに無効等確認の訴えを提起することができる。
解説肢3
無効等確認の訴えでは、取消訴訟の多くの規定を準用しているが、不服申立前置(行政事件訴訟法8条1項ただし書き)については準用されていないため、取消訴訟について個別法で不服申立ての前置が要件とされている処分でも、無効等確認の訴えを提起することができる。
なお、取消訴訟の規定を準用していないもので注意が必要なものとしては「不服申立前置が取られている場合」の他、「第三者効(対世効)」(肢5参照)、「事情判決」、「出訴期間」などがある(行政事件訴訟法38条)。
問題19 練習問題>行政法>行政事件訴訟法3-3
肢4
無効確認訴訟においては、訴訟の対象となる処分は当初から無効であるのが前提であるから、当該処分の執行停止を申し立てることはできない。
問題肢3
行政事件訴訟法における無効等確認の訴えでは、取消訴訟の規定を準用して、執行停止の申立てを認めている。
解説肢3
無効等確認の訴えでは、取消訴訟の多くの規定を準用しており、執行停止も準用されている。本来、無効な行政行為に執行力はないが、事実上有効なものとして強制執行する可能性があるため、これに対する権利保護手段として執行停止制度が準用されている。
なお、取消訴訟の規定を準用していないもので注意が必要なものとしては「第三者効(対世効)」、「不服申立前置が取られている場合」(肢5参照)、「事情判決」(肢1参照)、「出訴期間」(肢4参照)などがある(行政事件訴訟法38条)。
問題19 練習問題>行政法>行政事件訴訟法3-1
肢5
無効確認訴訟は、処分が無効であることを前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができる場合にも、提起することができる。
解説肢1
無効確認訴訟は、「当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者(①予防的無効確認)」「その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で【当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないもの】(②補充的無効確認)」に限り、提起することができる(行政事件訴訟法36条)。
なお、この原告適格の捉え方として、【 】は、②のみの要件なのか(二元説)、①と②の両方の要件なのか(一元説)については、対立がある。
判例上においては、必ずしも明確になっているとはいえないが、滞納処分のおそれがある場合(要件①のみ)について、課税処分の無効等確認の訴えを認めたものがあり(最判昭和48年4月26日)、また、学説も二元説よりの考えが多数説となっている。
問題20 練習問題>行政法>国家賠償法1-9
肢1
検察官が公訴を提起したものの、裁判で無罪が確定した場合、当該公訴提起は、国家賠償法1条1項の適用上、当然に違法の評価を受けることとなる。
問題肢3
公訴の提起をされた者において、無罪判決が確定した場合には、判決時と公訴の提起時で特に事情を異にする場合を除き、検察官の公訴の提起は違法となり、国家賠償法に基づく損害賠償責任を負う。
解説肢3
「起訴時あるいは公訴追行時における検察官の心証は、その性質上、判決時における裁判官の心証と異なり、起訴時あるいは公訴追行時における各種の証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば足りる。」(最判昭和53年10月20日)。
したがって、無罪の刑事判決が確定したというだけで直ちに当該刑事事件についてされた逮捕、勾留及び公訴の提起・追行が違法となるものではない。
問題20 練習問題>行政法>国家賠償法1-14
肢2 正解肢
指定確認検査機関による建築確認事務は、当該確認に係る建築物について確認権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体の事務であり、当該地方公共団体が、当該事務について国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負う。
問題肢ア
指定確認検査機関の建築確認処分に起因する私人の損害について、当該事務の帰属する地方公共団体は、国家賠償責任を負うことはない。
解説肢ア
指定確認検査機関の建築確認処分に起因して私人が損害を被った場合、当該事務の帰属する地方公共団体は、国家賠償責任を負うことになる(最決平成17年6月24日参照)
問題20 練習問題>行政法>国家賠償法1-11
肢3
公立学校における教職員の教育活動は、私立学校の教育活動と変わるところはないため、原則として、国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」に当たらない。
問題肢1
国家賠償法における公権力の行使の概念は非常に広く、法的行為のみならず、公立学校における教員の教育活動といった事実行為も国家賠償法での公権力の行使にあたる。
解説肢1
国家賠償は、違法な行政行為によって生じた損害を金銭的に賠償する私人救済の制度であるが、判例は、国家賠償法1条の「公権力の行使」について、権力作用のみならず、私経済作用及び国家賠償法2条の対象となるものを除いた非権力作用も包容する「広義説」を採用しており(東京高判昭和56年11月13日)、公立学校における教師の教育活動も公権力の行使に含まれる。
課外のクラブ活動における生徒同士の喧嘩によって失明した事案において、国家賠償請求の対象であることを前提にしつつ、顧問教諭・学校に注意義務はあるが常時立会い、監視指導すべき義務までは負わないとして請求を退けた(最判昭和58年2月18日)。
公立中学校の水泳の授業におけるプールでの飛込み練習中に事故が起きた事案について、最高裁は、公立学校における教師の教育活動も、国家賠償法1条にいう「公権力の行使」に該当するとしたうえで賠償請求を認容した(最判昭和62年2月6日)。
問題20 練習問題>行政法>国家賠償法1-15
肢4
税務署長のする所得税の更正が所得金額を過大に認定していた場合、当該更正は、国家賠償法1条1項の適用上、当然に違法の評価を受けることとなる。
問題肢3
税務署長のした所得税の更正処分が、税務署長が所得金額を過大に認定したとして判決によって取り消されたとしても、当該更正処分は国家賠償法1条1項にいう違法があったとは必ずしもいえない。
解説肢3
抗告訴訟上の違法と国家賠償法上の違法は、同一の内容なのか、それとも別の内容なのかという問題がある。
この点、更正処分(税金を加算する行政処分)の取消訴訟で違法と判断された事案でその後の国家賠償請求訴訟で判例は「税務署長のする所得税の更正は、所得金額を過大に認定していたとしても、そのことから直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく、税務署長が資料を収集し、これに基づき課税要件事実を認定、判断する上において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と更正をしたと認め得るような事情がある場合に限り、右の評価を受ける」とした上で違法ではないとした(最判平成5年3月11日)。
本判例の考え方は、違法性の概念が取消訴訟と国家賠償では異なるという立場に立って(「違法性二元論」や「違法性相対説」と呼ばれる)、職務上通常尽くすべき注意義務違反の有無の観点から国家賠償法上の違法性を判断(「職務行為基準説」と呼ばれる)したものである。
問題20 練習問題>行政法>国家賠償法1-15
肢5
警察官が交通法規に違反して逃走する車両をパトカーで追跡する職務執行中に、逃走車両の走行によって第三者が負傷した場合、当該追跡行為は、当該第三者との関係において、国家賠償法1条1項の適用上、当然に違法の評価を受けることとなる。
問題肢4
警察官のパトカーによる追跡を受けて車両で逃走する者が事故を起こして第三者に損害を与えた場合、損害の直接の原因が逃走車両の運転手にあるときは、当該追跡行為は国家賠償法1条1項の適用上違法となり得ない。
解説肢4
パトカーによる追跡中の事故について判例は「追跡行為が違法であるというためには、右追跡が当該職務目的を遂行する上で不必要であるか、又は逃走車両の逃走の態様及び道路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無及び内容に照らし、追跡の開始・継続若しくは追跡の方法が不相当であることを要するものと解すべきである。」としている(最判昭和61年2月27日)。
本判例では、その結論として原告の国家賠償請求を棄却しているが、国家賠償請求が認められる要件を示しているため、国家賠償法1条1項の適用上違法となることもある。
問題22 練習問題>行政法>地方自治法5-10
肢1
この条例に基づく過料は、行政上の秩序罰に当たるものであり、非訟事件手続法に基づき裁判所が科する。
解説肢イ
本条例に基づく罰金は行政刑罰にあたり、刑法総則の適用があるため、その手続きは行政庁等の告発を受けて、検察官が起訴し、裁判所が刑事訴訟法の定める手続きによって科すことになる。
なお、秩序罰による過料の場合は、刑罰ではないため、刑法総則及び刑事訴訟法の適用はうけず、法令に別段の定めがある場合を除き、法律に根拠がある過料の場合は地方裁判所が非訟事件手続法の定めに従って科すことになり、本問のように条例に根拠がある過料の場合には、地方自治法に基づいて地方自治体の長が行政処分によって科すことになる。
問題22 練習問題>行政法>地方自治法5-10
肢2
条例の効力は属人的なものであるので、A市の住民以外の者については、この条例に基づき処罰することはできない。
問題肢ウ
条例の効力は属人的なものであるので、A市の住民以外の者については、たとえA市域内の繁華街で路上喫煙に及んだとしても、本条例に基づき処罰することはできない。
解説肢ウ
条例の効力は「属地的なもの」であるので、たとえA市の住民以外の者であっても、A市域内の繁華街で路上喫煙に及んだ場合、本条例に基づき処罰することができる。
「条例を制定する権能もその効力も、法律の認める範囲を越えることを得ないとともに、法律の範囲内に在るかぎり原則としてその効力は当然属地的に生ずるものと解すべきである。それゆえ本件条例は、新潟県の地域内においては、この地域に来れる何人に対してもその効力を及ぼすものといわなければならない。」(最判昭和29年11月24日)

自国の領域内で行われた行為については、その行為の当事者の国籍にかかわらず、自国の法を適用するという考え方のことを「属地主義」という。日本の刑法は属地主義を原則としており(刑法1条)、例えば、日本国内で外国人Aが外国人Bに強盗した場合は、日本の刑法が適用される。
本肢では、この概念を自治体の地域にあてはめて「属地的」と表現している。
これに対し、自国民の行為については、行為地や被害者の国籍にかかわらず、自国の法を適用するという考え方のことを「属人主義」という。日本の刑法は、属人主義を補充的に採用しており(刑法3条)、例えば、日本国民AがX国で殺人をした場合は、Aに対して日本の刑法も適用される(実際に日本とX国のどちらの法で処罰するかは、両国の取り決めによる)。
本肢では、この概念を自治体の地域にあてはめて「属人的」と表現している。
問題22 練習問題>行政法>地方自治法5-10
肢3 正解肢
この条例で過料を定める場合については、その上限が地方自治法によって制限されている。
解説肢エ
普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、2年以下の懲役若しくは禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる(地方自治法14条3項)。
問題22 練習問題>行政法>地方自治法5-10
肢4
地方自治法の定める上限の範囲内であれば、この条例によらず、A市長の定める規則で罰金を定めることもできる。
解説肢オ
本条例にかえて長の規則で違反者に罰金を科することは許されない。
普通地方公共団体の長は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、普通地方公共団体の規則中に、規則に違反した者に対し、5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができるだけで(地方自治法15条2項)、罰金(刑罰の一種)を科する旨の規定を設けることはできない。
問題22 練習問題>行政法>地方自治法5-10
肢5
この条例において罰金を定める場合には、A市長は、あらかじめ総務大臣に協議しなければならない。
解説肢エ
普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、2年以下の懲役若しくは禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる(地方自治法14条3項)。
問題23 練習問題>行政法>地方自治法2-4
肢1
住民訴訟は、普通地方公共団体の住民にのみ出訴が認められた客観訴訟であるが、訴訟提起の時点で当該地方公共団体の住民であれば足り、その後他に転出しても当該訴訟が不適法となることはない。
問題肢5
地方自治法に基づく住民訴訟は、当該地方公共団体内に住所を有する者のみが提起することができ、訴訟係属中に原告が当該地方公共団体内の住所を失えば、原告適格を失う。
解説肢5
住民訴訟の訴訟要件の一つである当該普通地方公共団体の住民であることは、維持されなければならず、事実審の口頭弁論終結時までに当該普通地方公共団体から転出した場合には、当事者適格を欠く者の訴えとして不適法となる(大阪高判昭和59年1月25日)。
問題23 過去問>年度別>令和2年>問24
肢2
普通地方公共団体における違法な財務会計行為について住民訴訟を提起しようとする者は、当該財務会計行為が行われた時点において当該地方公共団体の住民であったことが必要となる。
問題肢2
住民訴訟を提起する者は、その対象となる財務会計行為が行われた時点において当該普通地方公共団体の住民であることが必要である。
解説肢2
住民訴訟をするには、事前に住民監査請求(事務監査ではない)をしていることが要件となる(地方自治法242条の2第1項)。
また、住民監査請求の主体は「普通地方公共団体の住民」であるため、選挙権を有さない者でも、納税者でなくても、日本人でなくても、法人であっても、住民監査請求をした当該地方公共団体の住民であり、かつ法律上の行為能力が認められている限り、住民訴訟を提起することができる(地方自治法242条1項)。
問題23 練習問題>行政法>地方自治法21-5
肢3
普通地方公共団体における違法な財務会計行為について住民訴訟を提起しようとする者は、当該財務会計行為について、その者以外の住民が既に提起した住民監査請求の監査結果が出ている場合は、自ら別個に住民監査請求を行う必要はない。
問題肢ア
住民訴訟を提起するには、住民監査請求をしていることを要するが、当該普通地方公共団体の他の住民が住民監査請求を行っていたとしても、自ら住民監査請求を行っていなければ、住民訴訟を提起することはできない。
解説肢ア
住民訴訟における住民監査請求前置(主義)を定める地方自治法242条の2第1項は、「普通地方公共団体の住民は、前条1項の規定による請求(住民監査請求)をした場合において、」としており、住民訴訟ができるのは、住民監査請求をした者に限られている。
したがって、他の住民が住民監査請求を行っていても、自ら住民監査請求を行っていなければ、住民訴訟を提起することはできない。
問題23 練習問題>行政法>地方自治法21-7
肢4
普通地方公共団体において違法な財務会計行為があると認めるときは、当該財務会計行為と法律上の利害関係のある者は、当該地方公共団体の住民でなくとも住民監査請求をすることができる。
解説肢ア
住民監査請求をすることができる者は、当該地方公共団体の住民のみに限られているという点は妥当である(地方自治法242条1項)。しかし「事務監査請求については、住民以外でもすることができる」という点は妥当でない。
事務監査請求をすることができる者も、当該地方公共団体の住民のみに限られている(地方自治法12条2項、74条1項、18条、10条1項)。
問題23 練習問題>行政法>地方自治法5-10
肢5 正解肢
違法に公金の賦課や徴収を怠る事実に関し、住民が住民監査請求をした場合において、それに対する監査委員の監査の結果または勧告に不服があるとき、当該住民は、地方自治法に定められた出訴期間内に住民訴訟を提起することができる。
解説肢オ
住民監査請求においては、監査の結果に不服のある請求者は、住民訴訟を提起することができる(地方自治法242条の2第1項)。
一方、事務監査請求では、その監査の結果に不服があっても、その後の不服に関する手続きは何ら用意されていない。
また、判例は、監査の結果の通知は、処分の取消しの訴えの対象である「行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為」に該当しない(=処分性がない)としている(福岡地裁昭和58年9月29日)。
練習問題>行政法>地方自治法21-2
解説肢1
住民監査請求は、当該行為のあった日又は終わった日から1年を経過したときは、原則としてすることができない(地方自治法242条2項)。
一方、住民訴訟は、住民監査請求の結果、勧告、勧告を受けてとった措置に不服があって提起する場合は、その通知があった日から30日以内、また、60日を経過しても監査又は勧告を行わないため提起する場合は、そこから30日以内という出訴期間の制限がある(地方自治法242条の2第2項)。
問題24 練習問題>行政法>地方自治法3-8
肢1 正解肢
都道府県は、都道府県知事の権限に属する事務の一部について、条例の定めるところにより、市町村が処理するものとすることができるとされている。
問題肢4
条例による事務処理の特例としては、都道府県知事の権限に属する事務の一部を条例に基づき市町村に委ねることが許されている。
解説肢4
都道府県は、都道府県知事の権限に属する事務の一部を、条例の定めるところにより、市町村が処理することとすることができる。この場合においては、当該市町村が処理することとされた事務は、当該市町村の長が管理し及び執行するものとする(地方自治法252条の17の2第1項)。
問題24 過去問>年度別>令和2年>問23
肢2
都道府県の事務の根拠となる法律が、当該事務について都道府県の自治事務とする旨を定めているときに限り、当該事務は自治事務となるとされている。
問題肢1
都道府県知事が法律に基づいて行政処分を行う場合、当該法律において、当該処分を都道府県の自治事務とする旨が特に定められているときに限り、当該処分は自治事務となる。
解説肢1
地方公共団体の事務は、自治事務と法定受託事務に区分され、地方自治法において「自治事務」とは、地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のもの(地方自治法2条8項)である。
自治事務及び法定受託事務ともに、法律・政令により事務処理が義務付けられており、法律で自治事務と定められているときに限り地方公共団体の処理する事務が自治事務となるわけではない。
問題24 練習問題>行政法>地方自治法4-1
肢4
都道府県は、その法定受託事務の処理に対しては、法令の規定によらずに、国の関与を受けることがあるとされている。
問題肢3
普通地方公共団体は、その事務の処理に関し、法律又はこれに基づく政令の根拠によらなければ、国又は都道府県の関与を受けることはない。
解説肢3
普通地方公共団体は、その事務の処理に関し、法律又はこれに基づく政令によらなければ、普通地方公共団体に対する国又は都道府県の関与を受け、又は要することとされることはない(地方自治法245条の2)。
問題24 練習問題>行政法>地方自治法5-3
肢5
都道府県は、その自治事務について、独自の条例によって、法律が定める処分の基準に上乗せした基準を定めることができるとされている。
解説肢1
上乗せ条例とは法律より厳しい基準を定めた条例のことであるが、地方自治法14条1項では、法令に違反しない限りにおいて条例の制定を認めており、法令に違反しているかどうかについてはそれぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによって判断がされ、矛盾抵触がなければ上乗せ条例を制定することも許されている。また、上乗せ条例に限らず、条例によって刑罰を定めるには、相当程度に具体的な法律の授権は必要であるが、個別的な授権まではなくても良いとされている。
問題25 練習問題>行政法>行政組織法2-6
第1条 この法律は、内閣の統轄の下における行政機関で[ ア ]及びデジタル庁以外のもの(以下「国の行政機関」という。)の組織の基準を定め、もって国の行政事務の能率的な遂行のために必要な国家行政組織を整えることを目的とする。
第3条第1項 国の行政機関の組織は、この法律でこれを定めるものとする。
同第2項 行政組織のため置かれる国の行政機関は、省、[ イ ]及び庁とし、その設置及び廃止は、別に[ ウ ]の定めるところによる。
解説肢2
国家行政組織法は、内閣の統轄の下における行政機関で内閣府及びデジタル庁以外のものの組織の基準を定め、もつて国の行政事務の能率的な遂行のために必要な国家行政組織を整えることを目的とする(国家行政組織法1条)。
練習問題>行政法>行政組織法2-6
解説肢1
行政組織のため置かれる国の行政機関は、省、委員会及び庁とし、その設置及び廃止は、別に法律の定めるところによる(国家行政組織法3条2項)。
問題26 練習問題>行政法>地方自治法6-4
肢1
事務監査請求をする権利は、日本国籍を有しない住民にも認められている。
問題肢5
普通地方公共団体の事務の執行に関する事務監査請求は、外国人であっても当該普通地方公共団体に一定期間住んでいる住民であれば、その権利を有し、行使する事ができる。
解説肢5
事務監査請求するには、普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有することが要件となっており(地方自治法75条1項、74条1項)、当該選挙権は、『日本国民たる』年齢満18年以上の者で引き続き3ヵ月以上市町村の区域内に住所を有することが必要である(地方自治法18条)。したがって、外国人は行うことができない。
なお、住民監査請求は、その要件が「普通地方公共団体の住民」であるため、外国人でも行うことが可能である。
問題26 練習問題>行政法>地方自治法6-4
肢2
住民監査請求をする権利は、日本国籍を有する住民にのみ認められている。
解説肢5
事務監査請求するには、普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有することが要件となっており(地方自治法75条1項、74条1項)、当該選挙権は、『日本国民たる』年齢満18年以上の者で引き続き3ヵ月以上市町村の区域内に住所を有することが必要である(地方自治法18条)。したがって、外国人は行うことができない。
なお、住民監査請求は、その要件が「普通地方公共団体の住民」であるため、外国人でも行うことが可能である。
問題26 過去問>年度別>令和3年>問22
肢3
公の施設の利用関係については、日本国籍を有しない住民についても、不当な差別的な取り扱いをしてはならない。
解説肢エ
普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない(地方自治法244条3項)。
また、判例でも「普通地方公共団体の住民ではないが、その区域内に事務所、事業所、家屋敷、寮等を有し、その普通地方公共団体に対し地方税を納付する義務を負う者など住民に準ずる地位にある者に(略)、当該公の施設の性質やこれらの者と当該普通地方公共団体との結び付きの程度等に照らし合理的な理由なく差別的取扱いをすることは、同項に違反するものというべきである」とされている(最判平成18年7月14日)。
したがって、地方自治法244条3項は、一定の地方税の負担をしている等により住民に準ずる地位にある者にも適用される。
問題26 練習問題>行政法>地方自治法2-4
肢4
日本国籍を有しない住民のうち、一定の期間、同一地方公共団体の区域内に居住したものは、当該地方公共団体の長や議会の議員の選挙権を有する。
解説肢1
日本国民たる年齢満18年以上の者で引き続き3ヵ月以上市町村の区域内に住所を有するものは、公職選挙法の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する(地方自治法18条、公職選挙法9条)。

民法

令和4年本試験 合格道場掲載
問題27 過去問>年度別>平成27年>問28
肢1 正解肢
AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bは当該土地上に建物を建築し、これを善意のCに賃貸した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できない。
解説肢3
民法94条2項の「第三者」を問う問題である。民法94条の虚偽表示が無効であることは、善意の「第三者」には対抗できないとするのが民法94条2項の規定するところであるが、「第三者」の定義が明文において規定されておらず、解釈が必要となる。
判例によると、第三者とは、虚偽の意思表示の当事者またはその一般承継人以外の者であって、その表示の目的ないし効果について法律上利害関係を有するに至った者をいう(最判昭和42年6月29日)とされている。虚偽表示によって生じた外観に基づいて、新たな、「法律上の」利害関係を持った者を保護するのが民法94条2項の趣旨であるところ、このような解釈に至ったものと思われる。
そして別の判例によると、土地の仮装譲受人が当該土地上に建物を建築してこれを他人に賃貸した場合、当該建物賃借人は、仮装譲渡された土地については法律上の利害関係を有するものとは認められないから、民法94条2項所定の第三者にはあたらないとされている(最判昭和57年6月8日)。土地と建物は別の不動産であるから、「建物の」賃借人は、「土地」については法律上の利害関係がない。「土地」については、あるのはせいぜい事実上の利害関係に過ぎず、第三者にはあたらないとの判断である。
したがって、建物賃借人を民法94条2項の第三者とする本肢は妥当でない。
問題27 練習問題>民法>物権2-6
肢2
AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bが当該土地を悪意のCに譲渡し、さらにCが善意のDに譲渡した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をDに対抗できない。
解説肢5
Dは善意の第三者として保護され、AはDに所有権の復帰を対抗することができない。
通謀虚偽表示の無効は善意の第三者に対抗できないとされているところ(民法94条2項)、当該規定は権利外観理論の現れであると考えられているため、本肢のような通謀なき不実登記の場合にも類推適用される。
また、直接取引関係に立った者が悪意の場合でも、当該悪意者からの転得者が善意であるときは、善意の第三者にあたる(最判昭和45年7月24日)。
問題27 過去問>年度別>平成20年>問27
肢3
AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bは善意の債権者Cのために当該土地に抵当権を設定した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できない。
問題肢エ
Bが甲土地につきAに無断でEのために抵当権を設定した場合に、Aは、善意のEに対して、A・B間の売買の無効を対抗することができない。
解説肢エ
民法94条2項の「第三者」とは、虚偽表示の当事者又はその包括承継人以外の者であって、その表示目的につき法律上利害関係を有するに至った者をいう(大判大正9年7月23日)。
そして、虚偽表示による譲受人からその目的物について抵当権の設定を受けた者は、民法94条2項の「第三者」に含まれる(大判昭和6年10月24日)。
したがって、Aは善意の第三者たるEに対して、A・B間の売買の無効を対抗することはできない(民法94条2項)。
問題27 過去問>年度別>平成20年>問27
肢4
AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bの債権者である善意のCが、当該土地に対して差押えを行った。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できない。
問題肢オ
民法94条2項の「第三者」とは、虚偽表示の当事者又はその包括承継人以外の者であって、その表示目的につき法律上利害関係を有するに至った者をいう(大判大正9年7月23日)。
そして、相手方Bの一般債権者であるFは、土地を差し押さえれば民法94条2項の「第三者」にあたるが(大判昭和12年2月9日)、土地を差し押さえる前の一般債権者は民法94条2項の「第三者」にあたらない(大判昭和18年12月22日)。
したがって、Aは、Fに対して、A・B間の売買の無効を対抗することができる。
問題27 練習問題>民法>債権I7-5
肢5
AはBと通謀してAのCに対する指名債権をBに仮装譲渡したところ、Bは当該債権を善意のDに譲渡した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をDに対抗できない。
解説肢5
債務者は、対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる(民法468条1項)。
一方で、虚偽表示(通謀虚偽表示)による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができないとされている(民法94条2項)。この点について判例は、民法94条2項の趣旨である取引の安全性の保護を重視し、善意の第三者に対抗することができないとしている(大判大正3年11月20日など)。また、虚偽表示に基づき発生した債権を善意で譲受けた者は、民法94条2項の第三者に該当する(大判昭和13年12月17日)。
したがって、債権の譲渡について通知を受けたBは虚偽表示であることを善意の譲受人Cに主張することができない。
問題28 練習問題>民法>物権5-5
肢1
Aが所有する動産甲(以下「甲」という。)の保管をAから委ねられ占有しているBが、甲を自己の物と称してCに売却した場合、甲に対するCの即時取得の成立要件について、占有開始におけるCの平穏、公然、善意および無過失は推定される。
解説肢1
即時取得が認められる要件の一つである、平穏、公然、善意、無過失のうち、平穏、公然、善意については、民法186条「占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。」によってその推定が働く。また、即時取得における占有の無過失についても、判例において推定が働くとされている(最判昭和41年6月9日)。
問題28 練習問題>民法>総則6-14
肢2 正解肢
Aが所有する乙土地(以下「乙」という。)をBが20年以上にわたって占有し、所有権の取得時効の成否が問われる場合、Aが、Bによる乙の占有が他主占有権原に基づくものであることを証明しない限り、Bについての他主占有事情が証明されても、Bの所有の意思が認められる。
問題肢1
A所有の甲土地につき、20年間占有を継続してきたBが取得時効を援用した場合に、Aの側において、他主占有事情の立証をするか、又はBの占有が賃貸借など他主占有権原に基づいて開始された旨を立証したときは、取得時効の成立を否定することができる。
解説肢1
取得時効の成立には、所有の意思を持って平穏公然に占有する必要がある。そして占有は、所有の意思を持ってする自主占有と、所有の意思なしにする他主占有とに分かれる。判例は、「占有者がその性質上所有の意思のないものとされる権原に基づき占有を取得した事実が証明されるか、又は占有者が占有中、・・・外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかったものと解される事情が証明されるときは、占有者の内心の意思のいかんを問わず、その所有の意思を否定し、時効による所有権取得の主張を排斥しなければならないものである。」(最判昭和58年3月24日)
本肢において、AがBの占有を他主占有であると証明すれば、取得時効の成立を否定することができる。
問題28 練習問題>民法>物権7-1
肢4
Aが所有する動産丁(以下「丁」という。)を保管することをBに寄託し、これに基づいてBが丁を占有していたところ、丁をCに盗取された場合、Bは、占有回収の訴えにより、Cに対して丁の返還を請求することができる。
解説肢5
占有者の意思に反して占有を侵奪されたときは、占有者は占有を侵奪された時より1年以内に占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができるが(民法200条1項、201条3項)、占有の訴えについては、本権(本肢でいうCの所有権)に関する理由に基づいて裁判をすることができない(民法202条)。これは、占有回収の訴えはあくまでも現在ある支配状態の保護を目的としているため、占有訴権の要件に従い審理がされるもので、所有権を有しない悪意の占有者でも占有訴権を行使しえるとされている(大判大正13年5月22日)。
したがって、Cは本件占有回収の訴えにおいて、所有権はあるが、自力救済の禁止という観点からも、敗訴する可能性が高い。なお、Cは所有権に基づいて反訴をすることは可能である(最判昭和40年3月4日)。
問題28 練習問題>民法>物権1-2
肢5
Aが所有する動産戊(以下「戊」という。)を保管することをBに寄託し、これをBに引き渡した後、Aは戊をCに譲渡した場合、Aが、Bに対して以後Cの所有物として戊を占有するよう指示し、Cが、これを承諾したときは、戊についてAからCへの引渡しが認められる。
解説肢3
物権変動における動産の対抗要件は、引渡し(民法178条)であるが、ここにいう引渡しには現実の引渡しの他に「簡易の引渡」「占有改定」「指図による占有移転」も含まれるとされている。
「簡易の引渡」譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる(民法182条2項)。
「占有改定」代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する(民法183条)。
「指図による占有移転」代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する(民法184条)。
問題29 練習問題>民法>物権14-2
肢1
本件根抵当権について元本確定期日が定められていない場合、Aは、根抵当権の設定から3年が経過したときに元本確定を請求することができ、Bは、いつでも元本確定を請求することができる。
解説肢5
元本確定期日が定められていない場合、根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から3年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時から2週間を経過することによって確定する(民法398条の19)。なお、根抵当権者の方からは、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができ、担保すべき元本は、その請求の時に確定する(民法398条の19第2項)。
問題29 過去問>年度別>令和2年>問29
肢2
本件根抵当権について元本確定前に被担保債権の範囲を変更する場合、Cの承諾は不要であるが、その変更について元本確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす。
解説肢2
確定前根抵当権においては、被担保債権の範囲の変更をすることができるが(民法398条の4)、後順位抵当権者第三者の承諾は求められていない(民法398条の4第2項)。
また、元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなされる(民法398条の4第3項)。
問題29 過去問>年度別>令和2年>問29
肢3
本件根抵当権について元本が確定した後、当該確定した元本の額が極度額に満たない場合には、Aは、Bに対して、極度額を法の定める額に減額することを請求することができる。
解説肢5
元本の確定後においては、根抵当権設定者は、その根抵当権の極度額を、現に存する債務の額と以後2年間に生ずべき利息その他の定期金及び債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求することができる(民法398条の21第1項)。
問題29 練習問題>民法>物権14-3
肢4 正解肢
本件根抵当権について元本が確定した後、当該確定した元本の額が極度額に満たない場合には、Bは、当該確定した元本に係る最後の2年分の利息、損害金については、極度額を超えても、本件根抵当権を行使して優先弁済を受けることができる。
問題肢3
登記された極度額が1億円の場合、根抵当権者は、元本1億円とそれに対する最後の2年分の利息及び損害金の合計額に付き、優先弁済を主張できる。
解説肢3 誤り
極度額が1億円の場合は、担保されるのは元本・利息等の合計について1億円を限度として、優先弁済を受けられる。また、1億円以内であれば利息は2年分に限らず全額について優先弁済を受けられる。
問題29 練習問題>民法>物権14-2 根抵当権
肢5
本件根抵当権について元本が確定する前に、BがAに対して有する材料供給にかかる債権の一部をDに譲渡した場合、当該債権譲渡の対抗要件を具備していても、Dは、当該譲渡された債権について根抵当権を行使することはできない。
解説肢3
元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない。元本の確定前に債務者のために又は債務者に代わって弁済をした者も、同様とする(民法398条の7第1項)。根抵当権においては、随伴性や附従性がないため、元本確定前に債権が譲渡されても、その債権は当該根抵当権によって当然には担保されない。
なお、元本確定後であれば、抵当権付で債権譲渡ができる。
問題30 練習問題>民法>債権I6-2
肢1
本件契約に「Cが亡くなった後に引き渡す」旨が定められていた場合、Cの死亡後にBから履行請求があったとしても、Aが実際にCの死亡を知るまではAの履行遅滞の責任は生じない。
解説肢2
債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う(民法412条2項)。
問題30 練習問題>民法>債権I6-9
肢2
動産甲が、契約締結前に生じた自然災害により滅失していたために引渡しが不能である場合、本件契約は、その成立の時に不能であるから、Aは、Bに履行の不能によって生じた損害を賠償する貨任を負わない。
解説肢5
債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない(民法412条の2)が、契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは、その履行の不能によって生じた損害の賠償を請求することを妨げない(民法412条の2第2項、415条)。
原始的不能を理由として契約は無効にならないが、現実問題として履行は不能であるから、債権者は債務者に対して履行請求をすることができない。よって、債権者は損害賠償請求をすることで解決を図ることになる。
問題30 練習問題>民法>債権II15-1
肢4
動産甲が本件契約締結後引渡しまでの間にA・B双方責めに帰すことができない事由によって滅失したときは、Aの引渡し債務は不能により消滅するが、Bの代金債務は消滅しないから、Bは、Aからの代金支払請求に応じなければならない。
問題肢1
Bが甲建物をAに引渡す前に第三者Cの放火によって甲建物が全焼した場合、BからAに対して売買代金の支払請求があれば、Aは、Bに対して代金の支払いを拒むことができない。
解説肢1
当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる(民法536条)。よって、Aは、Bに対して代金の支払いを拒むことができる。
問題30 練習問題>民法>債権II15-1
肢5 正解肢
Aが本件契約に基づき動産甲をBのもとに持参して引き渡そうとしたが、Bがその受領を拒んだ場合、その後にA・B双方の責めに帰すことができない事由によって甲が滅失したときは、Bは、本件契約の解除をすることも、Aからの代金支払請求を拒絶することもできない。
解説肢5
売主が契約の内容に適合する目的物をもって、その引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず、買主がその履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその目的物が滅失し、又は損傷したとき、買主は、その滅失又は損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない(民法567条2項)。
問題31 練習問題>民法>債権I6-7
肢1
債務者が債務の全部について履行を拒絶する意思を明確に示したとしても、債権者は、相当の期間を定めて履行の催告をし、その期間内に履行がない場合でなければ、契約を解除することができない。
解説肢2
債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したときは、債権者は、催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる(民法542条1項2号)。
問題31 一問一答>民法>債権I 72
肢2
特定物の売買契約において、契約締結後に目的物が不可抗力によって滅失した場合、買主は、履行不能を理由として契約を解除することができない。
問題
債務の履行の全部が不能になったときは、債権者は直ちに契約を解除することができる。
解説
履行遅滞による解除権では催告を要するが(民法541条)、債務の履行の全部又は一部が不能となり残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないときは、債権者は、直ちに契約の解除をすることができる(民法542条1項)。
問題31 練習問題>民法>債権I4-9
肢3
建物賃貸借契約において、賃借人の用法違反が著しい背信行為にあたり、契約関係の継続が困難となるに至った場合であっても、賃貸人は相当の期間を定めて賃借人に利用態様を改めるよう催告をし、その期間が経過しても賃借人が態度を改めようとしない場合でなければ、賃貸人は、当該契約を解除することができない。
問題肢3
賃貸借契約において、賃借人の賃借物に対する使用方法が著しく信頼関係を破壊するものである場合、賃貸人は、催告を経ることなくして、ただちに契約を解除することができる。
解説肢3
賃貸借は、当事者相互の信頼関係を基礎とする継続的契約であるから、賃貸借の継続中に、当事者の一方に、その信頼関係を裏切って、賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめるような不信行為のあった場合には、相手方は、賃貸借を将来に向って、解除することができるものと解しなければならない、そうして、この場合には民法541条所定の催告は、これを必要としないものと解すべきである。」(最判昭和27年4月25日)
問題31 練習問題>民法>債権I4-11
肢4
売買契約に基づいて目的物が引き渡された後に契約が解除された場合、買主が売主に対して負うべき原状回復義務には、目的物の返還に加えて、それまでに生じた目的物に関する使用利益の返還も含まれるが、当該契約が他人物売買であったときは、買主は売主に対して使用利益の返還義務を負わない。
問題肢オ
Aが、B所有の自動車をCに売却する契約を締結し、Cが、使用していたが、その後、Bが、所有権に基づいてこの自動車をCから回収したため、Cは、A・C間の売買契約を解除した。この場合、Cは、Aに対しこの自動車の使用利益(相当額)を返還する義務を負う。
解説肢オ
本肢では、CはAに自動車の使用利益(相当額)を返還する義務を負う。
他人物売買契約において売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、債務不履行の一般規定により契約の解除をすることができるが(民法565条、564条)、他方で、当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う(民法545条1項本文)。
本肢では、AC間の売買契約が解除されたのであるから、AC間の契約は初めからなかったことになり、Cにも原状回復義務が生じ、その内容として、給付された物から生じた使用利益も返還する必要がある(最判昭和51年2月13日)。
問題32 一問一答>民法>債権III 167
肢1
甲建物についてのAのBに対する賃貸人たる地位は、Bの承諾を要しないで、AとCとの合意により、Cに移転させることができる。
問題
AがBの所有地を賃借している場合において、Bがその土地を合意によりCに譲渡するときは、Bの賃貸人の地位についてAの承諾を必要とする。
解説
不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができる(民法605条の3)。
問題32 練習問題>民法>債権II20-10
肢2
甲建物の譲渡によるCへの賃貸人たる地位の移転は、甲建物についてAからCへの所有権移転登記をしなければ、Bに対抗することができない。
解説肢イ
本問のBは、乙建物について移転登記をしないときは、Cに対して乙建物の賃料を請求することはできない。
不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができるが、賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない(民法605条の3、民法605条の2第3項)。
なお、譲受人(本肢のB)が登記を備えていない場合でも、賃借人(本肢のC)がその者を賃貸人であると認めて賃料を支払ったときは、有効な弁済となる(最判昭和46年12月3日)。
問題32 練習問題>民法>債権II20-6
肢4 正解肢
賃貸人たる地位がCに移転した場合、Bは、Cの承諾を得なければ、甲建物の賃借権を譲り渡すことはできないが、甲建物を転貸するときは、Cの承諾を要しない。
解説肢2
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない(民法612条1項)。
また、賃借人が賃貸人の承諾を得ず第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる(民法612条2項)。
もっとも、借地借家法によって、借地上に建物がある場合の賃借権では、賃借人の申立てにより、裁判所によって賃貸人の承諾に代わる許可をもらったり、賃貸人の承諾なく第三者が借地上の建物を取得した場合で、賃貸人が賃借権の譲渡や転貸を承諾しないときは、建物の買取り請求を行使できるなど保護されている。
問題32 練習問題>民法>債権II20-9
肢5
賃貸人たる地位がCに移転した場合、敷金の返還に係る債務はCに承継され、Cが、Bに対し、その債務を負う。
問題肢2
賃貸借契約期間中にBが建物をCに譲渡し、Cが賃貸人の地位を承継した場合、敷金に関する権利義務は当然にCに承継される。
解説肢2
敷金に関する権利義務は当然にCに承継される。
不動産の賃借権は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる(民法605条)。そして、当該不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する(民法605条の2第1項)。
賃借人からすれば、対抗要件を備えていれば誰が賃貸人になろうが構わないからである。
さらに、賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、608条の規定による費用の償還に係る債務及び622条の2第1項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する(民法605条の2第4項)。
なお、有益費の償還義務についても新賃貸人が負うとされている(最判昭和46年2月19日)。
問題33 一問一答>民法>債権IV 230
肢1
利息付金銭消費貸借契約において、利息について利率の定めがなかったときは、利息の利率は借主が金銭を受け取った日の法定利率による。
貸主は、特約がなければ、借主に対して利息を請求することができず(民法589条1項)、特約があるときは、貸主は、借主が金銭その他の物を受け取った日以後の利息を請求することができる(民法589条2項)。
したがって、Aは、2025年4月1日以後の利息を請求することはできず、2025年4月2日以降についての利息を請求することができる。
一問一答>民法>債権I 59
金銭消費貸借において、利息についての特約がなければ、無利息となるが、利息について定めをして、利率について別段の定めがないときは、法定利率・年3%になる(民法404条1項2項、419条)。ただし、この利率は、3年ごとに見直しがされる(民法404条3項)。
また、貸主、借主のどちらか又は双方が商人である場合も法定利率・年3%が適用になる
問題33 練習問題>民法>債権I6-9
肢3
利息付金銭消費貸借契約において、利息について利率の定めがあったが遅延損害の額の定めがなかった場合に、当該利息の約定利率が法定利率より低かったときは、遅延損害の額は法定利率によって定める。
問題肢2
金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、約定利率が法定利率を超えるときは、法定利率による。
解説肢2
金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による(民法419条1項)。
問題33 一問一答>民法>債権II 87
肢4
不法行為に基づく損害賠償において、遅延損害金は、原則として不法行為時の法定利率によって定める。
将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする(民法417条の2第1項)。
将来において取得するはずの金銭を今すぐ貰えるとなると、それを運用して被った損害を超える利益を得られる可能性が生じる。公平を期するため、逸失利益を現在の価値に換算するべく、中間利息の控除が行われる。そして、その利率は、和解時ではなく、損害賠償請求権が生じた時点である不法行為時の法定利率で計算される。
問題33 一問一答>民法>債権II 87
肢5
将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。
将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする(民法417条の2第1項)。
将来において取得するはずの金銭を今すぐ貰えるとなると、それを運用して被った損害を超える利益を得られる可能性が生じる。公平を期するため、逸失利益を現在の価値に換算するべく、中間利息の控除が行われる。そして、その利率は、和解時ではなく、損害賠償請求権が生じた時点である不法行為時の法定利率で計算される。
問題34 練習問題>民法>総則3-3
肢1
未成年者が他人に損害を加えた場合、道徳上の是非善悪を判断できるだけの能力があるときは、当該未成年者は、損害賠償の責任を負う。
問題肢ア
自分の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていない未成年者が、他人に損害を与えたとき、当該未成年者は、その損害賠償責任を負わない。
解説肢ア
不法行為によって他人の権利を侵害した者は、損害賠償責任を負うのが原則であるが(民法709条)、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていない未成年者は、その損害賠償責任が免除され(民法712条)、その法定代理人が責任を負う(民法714条)。ただし、法定代理人が監督義務を怠らなかったとき、又はその監督義務を怠らなくても損害が生じたであろうときは、その責任は免除される(民法714条ただし書き)。
問題34 練習問題>民法>債権II28-3
肢2
精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、過失によって一時的にその状態を招いたとしても、損害賠償の責任を負わない。
問題肢5
自己の責任を弁識する能力を欠く状態で他人に損害を加えた者は、常に免責される。
解説肢5
精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わないのを原則とするが(民法713条本文)、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、責任を負う(民法713条ただし書き)。例えば、お酒を飲み酩酊状態で他人に損害を加えた場合など、責任を負うことになる。したがって、常に免責されるとはいえない。
問題34 練習問題>民法>債権II26-1
肢3
野生の熊が襲ってきたので自己の身を守るために他人の宅地に飛び込み板塀を壊した者には、正当防衛が成立する。
正当防衛・緊急避難について、民法と刑法では、意味に違いはあるが、行政書士試験では刑法は試験範囲ではないので、民法上の意味についてのみ説明する。民法では720条に規定がおかれているが、1項が正当防衛について、2項が緊急避難についての規定と解されている。正当防衛は、他人の不法行為に対する防衛行為として、第三者又は相手(人)に加害行為をした場合に適用され、緊急避難は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合に適用される
問題34 練習問題>民法>債権II26-1
肢4
路上でナイフを振り回して襲ってきた暴漢から自己の身を守るために他人の家の窓を割って逃げ込んだ者には、緊急避難が成立する。
正当防衛・緊急避難について、民法と刑法では、意味に違いはあるが、行政書士試験では刑法は試験範囲ではないので、民法上の意味についてのみ説明する。民法では720条に規定がおかれているが、1項が正当防衛について、2項が緊急避難についての規定と解されている。正当防衛は、他人の不法行為に対する防衛行為として、第三者又は相手(人)に加害行為をした場合に適用され、緊急避難は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合に適用される
問題34 練習問題>民法>債権II26-1
肢5 正解肢
路上でナイフを持った暴漢に襲われた者が自己の身を守るために他人の家の窓を割って逃げ込んだ場合、窓を壊された被害者は、窓を割った者に対して損害賠償を請求できないが、当該暴漢に対しては損害賠償を請求できる。
問題肢1
Bは自己の身体を防衛するため、やむを得ずあわててC宅敷地に飛び込んだが、その際、C宅敷地にある植木鉢を壊してしまった場合、Cは、Bに対して損害賠償請求ができる。
解説肢1 誤り
他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない(民法720条1項本文)。
問題肢3
Bは自己の身体を防衛するため、やむを得ずあわててC宅敷地に飛び込んだが、その際、C宅敷地にある植木鉢を壊してしまった場合、Cは、Aに対して損害賠償請求ができる。
解説肢3 正しい
正当防衛により加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わないが、被害者から不法行為をした者に対する損害賠償の請求はできる(民法720条1項ただし書き)。
問題35 練習問題>民法>相続1-6
肢2
相続人は、相続開始の時から、一身専属的な性質を有するものを除き、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するが、不法行為による慰謝料請求権は、被害者自身の精神的損害を填補するためのものであるから相続財産には含まれない。
解説肢4
不法行為による慰謝料請求権は、被害者がこの請求権を放棄したものと解しうる特別の事情のない限り、生前に請求の意思を表明しなくても、その相続人は、当然にこの慰謝料請求権を相続する(最大判昭和42年11月1日)。
また、即死時における損害賠償請求権についても、相続人への承継がされる(大判大正15年2月16日)。
問題35 一問一答>民法>相続39
肢4
相続開始後、遺産分割前に共同相続人の1人が、相続財産に属する財産を処分した場合、当該財産は遺産分割の対象となる相続財産ではなくなるため、残余の相続財産について遺産分割を行い、共同相続人間の不公平が生じたときには、別途訴訟等により回復する必要がある。
遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる(民法906条の2第1項)。
相続開始後、遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合、当該財産を考慮せず残された財産を遺産として分割してしまうと、処分をした相続人が得をしてしまい不公平が生じるから、これを防ぐためである。
問題35 練習問題>民法>相続1-15
肢5
共同相続人は、相続の開始後3ヵ月を経過した場合、いつでもその協議で遺産の全部または一部の分割をすることができる。
解説肢5
「死亡の時より5年以内」としている点、「共同相続人全員で」としている点が誤り。
共同相続人は、原則としていつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる(民法907条1項)。
そして、遺産の分割について、共同相続人間で協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる(民法907条2項本文)

商法-会社法

令和4年本試験 合格道場掲載
問題36 練習問題>商法>商法総則2-5
肢1
甲が営業とともにその商号を乙に譲渡する場合には、乙が商号の登記をしなければその効力は生じない。
問題肢2
商号の譲渡は、登記をしなければその効力を有しない。
解説肢2
商号の譲渡は、登記をしなければ、第三者に対抗することはできないが(商法15条2項)、譲渡自体は意思表示によってすることができるため、登記していなくても効力は有する。
問題36 練習問題>商法>商法総則4-2
肢2
乙が甲の商号を引き続き使用する場合には、乙は、甲の営業によって生じた債務を弁済する貢任を負う。ただし、営業譲渡後、遅滞なく、乙が第三者である丙に対して、甲の債務を弁済する責任を負わない旨の通知をした場合には、乙は、丙に対して弁済責任を負わない。
解説肢4
譲渡人の商号を引き続き使用する場合には原則として譲受人にも債務弁済の責任が生じるが、遅滞なく譲渡人の債務責任を負わない旨の登記をした場合又は遅滞なく第三者に対しその旨の通知をした場合は免責される(商法17条1項、2項)。
問題36 練習問題>商法>商法総則2-5
肢3
乙が甲の商号を引き続き使用する場合に、甲の営業によって生じた債権について、債務者である丙が乙に対して行った弁済は、丙の過失の有無を問わず、丙が善意であるときに、その効力を有する。
問題肢1
営業を譲り受けた商人が譲渡人の商号を引き続き使用する場合において、譲渡人の営業によって生じた債権について、その債務者がその譲受人にした弁済は、弁済者が善意無重過失のときは、その効力を有する。
解説肢1
営業を譲り受けた商人が譲渡人の商号を引き続き使用する場合において、譲渡人の営業によって生じた債権について、その債務者がその譲受人にした弁済は、弁済者が「善意無重過失」のときは、その効力を有する(商法17条4項)。
問題37 練習問題>商法>会社法Ⅰ3-11
肢ア
発起設立において、発行可能株式総数を定款で定めていない場合には、発起人は、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない。
問題肢2
定款作成時に発行可能株式総数を定めていない場合、公開会社は株式会社の成立の時までに、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならないが、公開会社でない会社の場合には、発行可能株式総数の定めを置かなくてよい。
解説肢2
公開会社も非公開会社も発行可能株式総数を定款で定めていない場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない(会社法37条1項)。また、株式会社は、定款を変更して発行可能株式総数についての定めを廃止することができない(会社法113条1項)。
問題37 過去問>年度別>平成27年>問37
肢ウ 正解肢
募集設立において、発行可能株式総数を定款で定めていない場合には、発起人は、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない。
解説肢ウ
条文によると、発起人は、発行可能株式総数を定款で定めていない場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならないとされている(会社法37条1項)。
さらに条文によると、募集設立の場合は発行可能株式総数を定款で定めていないときは、株式会社の成立の時までに、創立総会の決議によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならないとされている(会社法98条)。
したがって、本肢は妥当である。
問題37 練習問題>商法>会社法Ⅰ3-11
肢オ
設立時発行株式の総数は、設立しようとする株式会社が公開会社でない場合を除いて、発行可能株式総数の4分の1を下ることができない。
問題肢1
会社設立時に株式会社が発行する株式数は、公開会社の場合には、発行可能株式総数の4分の1を下回ることができないが、公開会社でない場合は、発行可能株式総数の4分の1を下回ることができる。
解説肢1 設立時発行株式の総数は、発行可能株式総数の1/4を下ることができない。ただし、設立しようとする株式会社が公開会社でない場合は、この限りでない(会社法37条3項)。
したがって、公開会社でない場合は、発行可能株式総数の1/4を下回ることができる。
問題38 練習問題>商法>会社法Ⅰ3-15
肢1
特別支配株主は、株式売渡請求に係る株式を発行している対象会社の他の株主(当該対象会社を除く。)の全員に対し、その有する当該対象会社の株式の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる。
問題肢1
株式会社の総株主の議決権の10分の9以上を有する株主は、当該株式会社の他の株主の全員に対して、その有する当該株式会社の株式の全部を売り渡すことを請求できる。
解説肢1
肢1にある記述こそが「特別支配株主の株式等売渡請求」の概要である。9/10以上の議決権を有し、会社を支配している株主のことを特別支配株主といい、当該株主は他の株主に対して「株式を売り渡せ」と請求することが可能である。
条文の規定によると「株式会社の特別支配株主(株式会社の総株主の議決権の9/10(これを上回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)以上を当該株式会社以外の者及び当該者が発行済株式の全部を有する株式会社その他これに準ずるものとして法務省令で定める法人(特別支配株主完全子法人)が有している場合における当該者をいう。)は、当該株式会社の株主(当該株式会社及び当該特別支配株主を除く。)の全員に対し、その有する当該株式会社の株式の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる。ただし、特別支配株主完全子法人に対しては、その請求をしないことができる」とされている(会社法179条1項)。
したがって本肢は正しい。
問題38 練習問題>商法>会社法Ⅰ3-15
肢2 正解肢
株式売渡請求をしようとする特別支配株主は、株式売渡請求に係る株式を発行している対象会社に対し、株式売渡請求をする旨および対価として交付する金銭の額や売渡株式を取得する日等の一定の事項について通知し、当該対象会社の株主総会の承認を受けなければならない。
問題肢2
特別支配株主は、株式売渡請求をしようとするときは、対象会社の承認を受けなければならず、当該承認は、対象会社が取締役会設置会社であるときは、取締役会の決議によらなければならない。
解説肢5
条文によると「特別支配株主は、株式売渡請求をしようとするときは、対象会社に対し、その旨及び前条第1項各号に掲げる事項を通知し、その承認を受けなければならない」とされている(会社法179条の3第1項)。そして条文は「取締役会設置会社が第1項の承認をするか否かの決定をするには、取締役会の決議によらなければならない」とされている(会社法179条の3第3項)。取締役会では、売渡請求を受けた株主の利益を考慮して承認することで、当該株主の利益が保護されることになる。
したがって、本肢は正しい。
問題38 練習問題>商法>会社法Ⅰ3-15
肢4
売渡株主は、株式売渡請求が法令に違反する場合であって、売渡株主が不利益を受けるおそれがあるときは、特別支配株主に対し、売渡株式の全部の取得をやめることを請求することができる。
解説肢4
売渡株主の保護として、一定の場合は売渡請求の差止請求が認められる。
条文によると、「次に掲げる場合において、売渡株主が不利益を受けるおそれがあるときは、売渡株主は、特別支配株主に対し、株式等売渡請求に係る売渡株式等の全部の取得をやめることを請求することができる」(会社法179条の7第1項柱書き)として、「①株式売渡請求が法令に違反する場合」を規定している(会社法179条の7第1項1号)。一方で、定款に違反する場合は差止請求の場面としては認められていない。
したがって本肢は誤り。
問題38 練習問題>商法>会社法Ⅰ3-15
肢5
株式売渡請求において定めた取得日において公開会社の売渡株主であった者は、当該取得日から6ヵ月以内に、訴えをもってのみ当該株式売渡請求に係る売渡株式の全部の取得の無効を主張することができる。
問題肢5
公開会社である場合、株式等売渡請求に係る売渡株式等の全部の取得の無効は、取得日から6ヵ月以内に、売渡株主であった者が訴えをもって主張することが可能である。
解説肢5
条文によると「株式等売渡請求に係る売渡株式等の全部の取得の無効は、取得日から6ヵ月以内(対象会社が公開会社でない場合にあっては、当該取得日から1年以内)に、訴えをもってのみ主張することができる。」とされている(会社法846条の2第1項)。
したがって、本肢は正しい。
なお、肢4の差止請求が売渡株主を保護するための事前的な制度であるのに対し、肢5は事後的な制度である。
問題39 練習問題>商法>会社法Ⅱ1-10
肢1
総株主の議決権の100分の3以上の議決権を6ヵ月前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項および招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。
問題肢1
総株主の議決権の100の1以上に当たる議決権を有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。
解説肢1
定款で別の定めがある場合を除き、原則として総株主の議決権の3/100以上の議決権を6ヵ月前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる(会社法297条1項)。
問題39 練習問題>商法>会社法Ⅰ4-2
肢2
総株主の議決権の100分の1以上の議決権または300個以上の議決権を6ヵ月前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の日の8週間前までに、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができる。
解説肢2
株主総会における議題追加請求権についての問題である。
条文によると「取締役会設置会社においては、総株主の議決権の1/100以上の議決権又は300個以上の議決権を6ヵ月前から引き続き有する株主に限り、取締役に対し、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができる。この場合において、その請求は、株主総会の日の8週間前までにしなければならない」とされている(会社法303条2項)。議決権の数が「1/100」には満たなくとも、「300個」の議決権があれば当該権利の行使が可能になることが分かる。なお、非公開会社になると「6ヵ月」の保有要件はない(会社法303条3項参照)。
したがって本肢は誤り。
なお、「議決権の1/100以上」を有する株主だけでなく「300個以上の議決権」を有する株主に当該権利が認められているのは、株主に当該権利を行使しやすくするためである。当該権利はいわば株主総会を形骸化されないための制度であるが、「議決権の1/100以上」を有する株主だけしか当該権利を行使することができないとするならば、上場企業などでは、当該権利行使が可能な株主は相当少なくなってしまう。
問題39 練習問題>商法>会社法Ⅱ1-9
肢4 正解肢
総株主の議決権の100分の1以上の議決権を6ヵ月前から引き続き有する株主は、株主総会に係る招集の手続および決議の方法を調査させるため、当該株主総会に先立ち、取締役に対し、検査役を選任すべきことを請求することができる。
問題肢3
6ヵ月前より引き続き発行済株式の総数の100分の1以上の議決権を有する株主は、株主総会招集の手続及びその決議の方法を調査させるため、株主総会に先立ち検査役の選任を取締役会に請求することができる。
解説肢3
株式会社又は「総株主の」議決権の1/100以上の議決権を有する株主は、株主総会に係る招集の手続及び決議の方法を調査させるため、当該株主総会に先立ち、「裁判所に対し」、検査役の選任の申立てをすることができる(会社法306条)。
なお、「6ヵ月前から引き続き有する」という条件がつくのは公開会社である取締役会設置会社の場合に限られる。
問題39 練習問題>商法>会社法Ⅱ2-17
肢5
取締役、会計参与、監査役および執行役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。ただし、当該事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合その他正当な理由があるとして法務省令で定める場合は、この限りでない。
解説肢1
取締役、会計参与、監査役及び執行役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない(会社法314条本文)。
ただし、当該事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合は、この限りでない(会社法314条ただし書き)。
問題40 過去問>年度別>令和2年>問40
肢イ
公開会社ではない大会社は、会計監査人に代えて、会計参与を置くことができる。
解説肢4
公開会社、非公開会社を問わず、大会社であれば会計監査人を選任しなければならない(会社法328条1項2項)。
会社の機関設計の知識を前提とした問題は多くあるが、すべてのパターンを覚える必要はない。株主の流動性、会社の規模によって利害関係者が増えるほど、定款による自治から監査による信頼性を担保する会社設計が必要になってくる。
意味合いを理解しながら最低限必要な機関のパターンを学習することが肝要である。
問題40 練習問題>商法>会社法Ⅱ1-11
肢ウ 正解肢
会計参与は、株主総会の決議によって選任する。
解説肢3
役員(取締役、会計参与及び監査役)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する(会社法329条1項)。
問題40 練習問題>商法>会社法Ⅱ2-11
肢エ 正解肢
会計参与は、公認会計士もしくは監査法人または税理士もしくは税理士法人でなければならない。
問題肢4
株式会社の役員のうち、会計参与は、公認会計士若しくは監査法人又は税理士若しくは税理士法人でなければならない。
解説肢4
会計参与は、公認会計士若しくは監査法人又は税理士若しくは税理士法人でなければならない(会社法333条1項)。

多肢選択式

令和4年本試験 合格道場掲載
問題41 練習問題>行政法>地方自治4
地方議会議員に対する出席停止の懲罰の取消しを求める訴えが、①②の要件を満たす以上、[ ア ]の争訟に当たることは明らかであると思われる。 解説肢ア
判例は、「普通地方公共団体の議会は、地方自治法並びに会議規則及び委員会に関する条例に違反した議員に対し、議決により懲罰を科することができる(地方自治法134条1項)ところ、懲罰の種類及び手続は法定されている(地方自治法135条)。これらの規定等に照らすと、出席停止の懲罰を科された議員がその取消しを求める訴えは、法令の規定に基づく処分の取消しを求めるものであって、その性質上、法令の適用によって終局的に解決し得るものというべきである」(最大判令和2年11月25日)とし、法律上の争訟にあたると判断している。
問題42 練習問題>行政法>情報公開法2-12
行政機関の保有する情報の公開に関する法律(行政機関情報公開法)に基づき、行政機関の長に対して、当該行政機関が保有する[ ア ]の開示が請求された場合、当該行政機関の長は、当該[ ア ]の開示又は不開示の決定(開示決定等)をしなければならない。 解説肢2
「何人も」、情報公開法の定めるところにより、行政機関の長に対し、当該行政機関の保有する行政文書の開示を請求することができる(情報公開法3条)。したがって、国籍も問われないし、法人でも請求できる。
問題42 練習問題>行政法>情報公開法4-1
開示決定等に不服がある者は、行政不服審査法に基づく審査請求をすることができる。審査請求に対する裁決をすべき行政機関の長は、原則として、[ エ ]に諮問しなければならない(当該行政機関の長が会計検査院長である場合を除く)。[ エ ]は、必要があると認めるときは、諮問をした行政機関の長(諮問庁)に対し、[ ア ]の提示を求めることができ、諮問庁は、これを拒むことができない。 解説肢1
開示決定等について審査請求があったときは、審査する行政機関の長は、「不適法で却下する場合」「全部開示の裁決等をする場合」を除き、原則として情報公開・個人情報保護審査会に諮問しなければならない(情報公開法19条)。
問題43 練習問題>基礎法学>法令の構造等6
この事例を損失補償により救済するアプローチは、[ イ ]よりも重要な利益である生命・身体の利益は、当然に憲法29条3項に規定する損失補償の対象となるとする[ ウ ]解釈によって、救済を図ろうとする。 解説肢2
所有権絶対の原則とは、所有権は、何らの人為的拘束を受けず、侵害するあらゆる他人に対して主張することができる完全円満な支配権であり、国家の法よりも先に存在する権利で神聖不可侵であるとする原則をいい財産権を保障する憲法29条、所有権の内容を定める民法206条などにこの原則が表れている。
練習問題>基礎法学>法令の解釈2
解説肢1
勿論解釈とは、条文で明確に定められていない事項でも、その趣旨からして含まれるのはもちろんであると解釈することで、類推解釈の一つとされている。
自転車は、人が乗っていなければ通常動かないものであるから、当該看板について、もちろん自転車に乗った人が入れないという意味であると解釈するのは、勿論解釈である。
問題43 練習問題>行政法>国家賠償法1-5
予防接種により重篤な副反応が発生した場合に、担当医師がこうした結果を予見しえたのに、過誤により予見しなかったものと[ エ ]することで 解説肢4
保健所の予防接種によって後遺障害が発生した場合には、予防接種実施規則に基づいて禁忌者(予防接種を用いてはいけない者)を識別するために必要とされる予診が尽くされたが禁忌者に該当すると認められる事由を発見することができなかったこと、被接種者が個人的素因を有していたこと等の特段の事情が認められない限り、被接種者は禁忌者に該当していたと推定するのが相当である(最判平成3年4月19日)。

記述式

令和4年本試験 合格道場掲載
問44 練習問題>行政法>行政事件訴訟法5-1
このようなB市長の対応を受け、Xらは、行政事件訴訟法の定める抗告訴訟を提起することにした。この場合において、①誰を被告として、 問題肢3
地方公共団体に所属する行政庁が行うべき処分に関する義務付け訴訟の被告は、当該行政庁である。
解説肢3 義務付け訴訟でも同法11条1項が準用されている(行政事件訴訟法38条1項)。したがって、被告はその行政庁が所属する地方公共団体である。
問44 練習問題>行政法>行政不服審査法12-5
②前記のような被害を受けるおそれがあることにつき、同法の定める訴訟要件として、当該是正命令がなされないことにより、どのような影響を生ずるおそれがあるものと主張し(同法の条文の表現を踏まえて記すこと。)、 問題肢3
行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないときにおける義務付けの訴えが提起できるのは、一定の処分がされないことにより「 」を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときである。
解説肢3
行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないときにおける義務付けの訴えは、一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り、提起することができる(行政事件訴訟法37条の2)。
問44 練習問題>行政法>行政事件訴訟法6-4
③どのような訴訟を起こすことが適切か。 問題肢オ
建築基準法に違反した危険な建築物について、隣地の住民が行政庁へ建築基準法上の規制権限の発動を求める訴訟
解説肢オ
義務付けの訴え(行政事件訴訟法3条6項)
練習問題>行政法>行政事件訴訟法5-4
問題肢1
Aの家の隣地にある建築物が建築基準法に違反した危険なものであるにもかかわらず、建築基準法上の規制権限の発動がなされない場合、Aは、当該規制権限の不行使につき、不作為の違法確認訴訟を提起することができる。
解説肢1
不作為の違法確認訴訟は、行政庁が法令に基づく申請に対し、処分等をしない場合に、申請をした者に限り提起するもので(行政事件訴訟法3条5項、37条)、隣地建築物に関して何ら申請をしていないAは、当該訴訟を提起することはできない。本肢の場合、Aは義務付け訴訟の提起を検討することができる(行政事件訴訟法3条6項1号)。
問45 練習問題>民法>総則5-9
Aが所有する甲不動産について、Aの配偶者であるBが、Aから何ら代理権を与えられていないにもかかわらず、Aの代理人と称して甲不動産をCに売却する旨の本件売買契約を締結した後、Bが死亡してAが単独で相続するに至った。CがAに対して、売主として本件売買契約を履行するよう求めた場合に、Aは、これを拒みたいと考えているが、認められるか。民法の規定および判例に照らし、その許否につき理由を付して40字程度で記述しなさい。 AはBの代理人として、B所有の甲土地をCに売り渡す売買契約をCと締結した。しかし、Aは甲土地を売り渡す代理権は有していなかった。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
問題肢5
契約締結後に、Aが死亡し、Bが無権代理人Aの地位を単独で相続したときは、BはAの無権代理行為であるCとの売買契約につき追認を拒絶することができる。
解説肢5
無権代理人の地位を本人が相続したときは本人は追認を拒絶することができる(下記判例参照)。なお、追認を拒絶した場合、無権代理人の賠償責任も相続されるため、本人はその責任を負うこと(最判昭和48年7月3日)、本人を無権代理人が相続した場合は拒絶できないこと(下記判例参照)もあわせて覚えておきたい。
「無権代理人が本人を相続した場合においては、自らした無権代理行為につき本人の資格において追認を拒絶する余地を認めるのは信義則に反するから、右無権代理行為は相続と共に当然有効となると解するのが相当であるけれども、本人が無権代理人を相続した場合は、これと同様に論ずることはできない。後者の場合においては、相続人たる本人が被相続人の無権代理行為の追認を拒絶しても、何ら信義に反するところはないから、被相続人の無権代理行為は一般に本人の相続により当然有効となるものではないと解するのが相当である。」(最判昭和37年4月20日)。
問題46 練習問題>[記述] 民法Ⅲ3
Aは、工場を建設するために、Bから、Bが所有する甲土地(更地)を、賃貸借契約締結の日から賃借期間30年と定めて賃借した。ただし、甲土地の貸借権の登記は、現在に至るまでされていない。ところが、甲土地がBからAに引き渡される前に、甲土地に何らの権利も有しないCが、AおよびBに無断で、甲土地に塀を設置したため、Aは、甲土地に立ち入って工場の建設工事を開始することができなくなった。そこで、Aは、Bに対応を求めたが、Bは何らの対応もしないまま現在に至っている。Aが甲土地に工場の建設工事を開始するために、Aは、Cに対し、どのような請求をすることができるか。民法の規定および判例に照らし、40字程度で記述しなさい。 問題
Aの所有する甲土地をBが賃借する契約締結後、間もなくして、Cが甲土地を不法占拠した場合において、Bはどのような法律構成による請求で、Cを甲土地から排除することが可能か。40字程度で記述しなさい。なお、Bは甲土地の引渡しを受けておらず、当該賃借権は登記をしていないものとする。
解説
債権者代位権では、被保全債権は原則として金銭債権となるが、不動産賃借権のような特定債権の保全のために賃貸人の妨害排除請求権を代位行使することは判例によって認められている(債権者代位権の転用:大判昭和4年12月16日)。
なお、本来、妨害排除請求権は物権に基づく権利であるが、対抗力を備えた不動産賃借権であれば、直接、賃借権に基づいて妨害排除請求ができるとされている(最判昭和28年12月28日、最判昭和30年4月5日など)。もっとも、本問ではBの賃借権は対抗要件を具備していないという設定なので、所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使することになる。

一般知識

令和4年本試験 合格道場掲載
問題49 練習問題>一般知識>政治28
肢ウ 正解肢
核拡散防止条約(NPT)では、すべての国の核兵器保有が禁止されているが、アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の5か国は批准していない。
解説肢エ
核拡散防止条約(正式名:核兵器の不拡散に関する条約、略称:NPT)は、アメリカ合衆国、ロシア(当時はソ連)、イギリス、フランス、中華人民共和国(本肢のインドは含まれない)の5ヵ国以外が核兵器の保有を禁止する条約で1970年3月に発効した。
2020年1月時点の締結国は191ヵ国・地域(日本は1970年2月に署名、1976年6月に批准している)であるが、核兵器保有宣言をしているインドとパキスタン、核兵器保有が疑われているイスラエルは未加盟である。
また、北朝鮮は国際原子力機関(IAEA)等による核兵器開発疑惑の指摘と査察要求に反発して2003年に脱退している。
問題49 練習問題>一般知識>政治28
肢オ
中距離核戦力(INF)全廃条約は、アメリカとソ連との間に結ばれた条約で、2019年に失効した。
問題肢ウ
1987年に発効した中距離核戦力全廃条約(INF全廃条約)は、ロシアの条約不履行を理由にアメリカが脱退を表明し、その後、ロシアも条約の履行を停止したことで、2019年に同条約は失効した。
解説肢ウ
冷戦中、米ソ両国は、1987年に中距離核戦力(INF)として定義された中距離の弾道ミサイル、巡航ミサイルをすべて廃棄することを目的とした中距離核戦力全廃条約(INF全廃条約)を締結した。
しかし、2019年に米のトランプ大統領は、ロシアの条約不履行を理由に脱退を表明し、ロシアも条約の履行を停止した。そして2019年8月に同条約は失効した。
問題51 練習問題>一般知識>経済28
2022年4月段階での国際通貨基金(IMF)の推計資料によれば世界のなかでGDPの水準が高い上位6か国をあげると、[ ア ]、[ イ ]、[ ウ ]、[ エ ]、[ オ ]、[ カ ]の順となる。 解説肢5
近年の日本の名目GDPは約500兆円前後で推移しており、この水準は世界第3位である(1位アメリカ、2位中国、3位日本、4位ドイツ、5位イギリス)。
問題54 練習問題>一般知識>社会13
地球環境問題を解決するためには、国際的な協力体制が不可欠である。1971年には特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関して、[ ア ]が採択された。 解説肢2
ラムサール条約(正式名:特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)は、水鳥を食物連鎖の頂点とする湿地の生態系を守ることを目的した条約である。
問題54 練習問題>一般知識>社会25
その後、1997年の第3回[ ウ ]締約国会議(COP3)で[ エ ]が採択され、さらに、2015年の第21回[ ウ ]締約国会議(COP21)で[ オ ]が採択されるなど、取組が続けられている。 解説肢イ
京都議定書
気候変動枠組条約に基づき、第3回気候変動枠組条約締約国会議にて議決した議定書である。先進国全体の温室効果ガス6種の合計排出量削減(1990年比5%)の他に、各国の削減目標が定められた。京都メカニズム(クリーン開発メカニズム(CDM)、排出権取引(ET)、共同実施(JI))や、吸収源活動が盛り込まれていることもその特徴の一つである。
解説肢オ
パリ協定
京都議定書に代わる、2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組み。歴史上はじめて、全ての国が参加する公平な合意として2016年に採択された。
アメリカのトランプ政権は地球温暖化そのものを懐疑して2020年にパリ協定を離脱したが、2021年バイデン政権で復帰を表明した。
問題55 一問一答>一般知識等>情報通信 40
第三に、新しいテクノロジーである[ Ⅳ ]の登場がある。従来の学習機能とは異なって、コンピュータ自身が膨大なデータを読み解いて、その中からルールや相関関係などの特徴を発見する技術である。これは人間と同じ[ Ⅴ ]をコンピュータが行うことに特徴がある。さらに、この[ Ⅳ ]が優れているのは、コンピュータ自身が何度もデータを読み解く作業を継続して学習を続け、進化できる点にある。 問題文は、イーラーニングの説明である。
ディープ・ラーニング(深層学習)とは、音声の認識、画像の特定、予測など、人間が行うような課題を実行できるようにコンピューター(AI)に学習させる手法である。
人間がデータを編成して定義済みの数式にかけるのではなく、データに関する基本的なパラメータ設定のみを行い、その後は何層もの処理を用いたパターン認識を通じてコンピューター(AI)自体に課題の解決方法を学習させる。
問題56 練習問題>一般知識>情報通信10
肢ア 正解肢
自らに関する情報が利用される際に、ユーザ本人の許可を事前に得ておくシステム上の手続を「オプトイン」という。
解説肢2
平成20年改正によって、これまでの「オプトアウト方式」から、「オプトイン方式」に変更がなされた。したがって、「※未承諾広告※」の表記等をしているだけでは、特定電子メールを送信することはできず、送信するには事前に相手の同意が必要となる。
オプトアウト方式
一定の方式が遵守さていれば、原則として特定電子メールを送信してもよい。
オプトイン方式
特定電子メール配信について、事前に相手の同意がなければ、原則として特定電子メールを送信してはいけない。
問題56 一問一答>一般知識等>経済100
肢イ 正解肢
インターネット上で情報発信したりサービスを提供したりするための基盤を提供する事業者を「プラットフォーム事業者」という。
問題
企業や個人が、特定のインターネットサイトなどの利用者を対象にビジネスを展開する際、システムや基盤を提供するIT事業者をプラットフォーマーという。
解説
代表的な企業として、「GAFA(ガーファ)」と呼ばれる、米国の巨大IT企業であるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンが挙げられる。
問題56 練習問題>一般知識>情報通信14
肢ウ
情報技術を用いて業務の電子化を進めるために政治体制を専制主義化することを「デジタルトランスフォーメーション」という。
問題肢1
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することである。
解説肢1
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念で、日本におけるDXは、2018年に経済産業省が「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」を取りまとめたことを契機に拡がり始めている。
例えば、ビジネスにおいては、デスクワークがメインの会社がテレワークに対応するためにプロセスを見直したり、農業部門においては、ドローンによる遠隔監視や農薬散布など農家人口減少や農業生産量の減少といった対策をすることが挙げられる。
問題57 練習問題>一般知識>個人情報保護28
肢5 正解肢
個人情報保護委員会は、認定個人情報保護団体に関する事務をつかさどる。
問題肢3
認定個人情報保護団体に関することは、委員会の任務である。
解説肢3
認定個人情報保護団体に関することは、個人情報保護委員会の任務である(個人情報保護法129条1項3号)。従来は、主務大臣が所掌していたが、委員会が認定・監督する。

※合格道場の問題番号・タイトル・内容は2022年12月時のものです。
修正等により変更されている場合があります。