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令和5年本試験とサイト掲載問題の比較一覧

基礎法学・憲法

令和5年本試験 合格道場掲載
問題1 練習問題>基礎法学>法令の構造等2
明治8年太政官布告103号裁判事務心得の3条には、「民事の裁判に成分の法律なきものは[ア]に依り[ア]なきものは[イ]を推考して裁判すべし」という規定があり、民事裁判について「法の欠如」があるばあいに[イ]によるべきことがうたわれている。[ウ]の支配する刑法では罰則の欠如は当の行為につき犯罪につき犯罪の成立を否定する趣旨であるから、それは「法の欠如」ではない。ところが、民事裁判では、法の欠如があっても当事者に対して[エ](フランス民法4条)をすることはできず(憲法32条参照)、また、当然に原告を敗訴にすることももちろん法の趣旨ではない。
正解1
ア:習慣 イ:条理 ウ:罪刑法定主義 エ:裁判の拒否
解説肢3
「条理」とは、物事の筋道のことであり、また、その時代における社会の常識、社会通念のことである。
刑事の場合は、罪刑法定主義の前提があるため条理を法源として扱う余地はないが、民事の場合は、適用すべき法がない場合に条理を法源として扱う余地が出てくる。この点、裁判事務心得3条では、適用すべき法がない場合は条理によるべきことを規定している
練習問題>基礎法学>法令用語1
解説肢3
法の欠缺とは、ある事柄に対して、それを解決するべく適用する法規が欠けている(存在しない)状態にあることを指す。
民事裁判においては類推適用や慣習法、条理等によってその欠缺を補うことになるが、刑事裁判においては、こうした措置を取る事は罪刑法定主義に違反する行為として禁じられている
問題4 練習問題>憲法>社会3
肢1
憲法は何人に対しても平穏に請願する権利を保障しているので、請願を受けた機関はそれを誠実に処理せねばならず、請願の内容を審理および判定する法的義務が課される。
解説肢2
国・地方公共団体は、請願を受理し、誠実に処理する義務はあるが(請願法5条)、請願に応答したり、請願内容を実現する義務は負わない。
問題4 練習問題>憲法>司法17
肢2
立法行為は、法律の適用段階でその違憲性を争い得る以上、国家賠償の対象とならないが、そのような訴訟上の手段がない立法不作為についてのみ、例外的に国家賠償が認められるとするのが判例である。
解説肢4
立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき、容易に想定し難いような例外的な場合でない限り、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けない
問題4 練習問題>行政法>その他>その他3
肢4
憲法は、抑留または拘禁された後に「無罪の裁判」を受けたときは法律の定めるところにより国にその補償を求めることができると規定するが、少年事件における不処分決定もまた、「無罪の裁判」に当たるとするのが判例である。
解説肢4
少年法に基づく不処分決定は、刑訴法上の手続とは性質を異にする少年審判の手続における決定である上、決定を経た事件について、刑事訴追をし、又は家庭裁判所の審判に付することを妨げる効力を有しないから、非行事実が認められないことを理由とするものであっても、刑事補償法1条1項にいう「無罪の裁判」にはあたらない(最判平成3年3月29日)。

行政法

令和5年本試験 合格道場掲載
問8 練習問題>行政法>行政総論>5-3
肢ア
ある行政行為が違法である場合、仮にそれが別の行政行為として法の要件を満たしていたとしても、これを後者の行為として扱うことは、新たな行政行為を行うに等しいから当然に許されない。
問題肢5
行政庁が本来意図した行政処分として、法定要件を満たさず違法である場合、たとえこれを別の行政処分とみれば、その法定要件が満たされていても、その効力を維持するような取扱いは許されず、取り消さなければならない。
解説肢5
行政庁が本来意図した行政処分として、法定要件を満たさず違法である場合でも、別の行政処分とみれば、その法定要件が満たされていれば、その効力を維持するよう取扱うことは認められている。
いわゆる「違法(無効)行為の転換」と呼ばれるものである。
例えば、・・・
問8 練習問題>記述式>行政法Ⅰ>1-10
肢ウ
複数の行政行為が段階的な決定として行われる場合、先行行為が違法であるとして、後行行為の取消訴訟において先行行為の当該違法を理由に取消しの請求を認めることは、先行行為に対する取消訴訟の出訴期間の趣旨を没却することになるので許されることはない。
解説
そして、判例は、建築確認と安全認定は、避難又は通行の安全の確保という同一の目的を達成するために行われるもので、結合して初めて建築主に一定の地位を付与するという効果を発揮する点や安全認定についてその適否を争うための手続的保障が十分ではなく、その段階では判断が難しいことを理由に先行する安全認定の違法を主張することは許されるとした。
これらを踏まえて本問を検討すると、先行の行政行為であるA処分の出訴期間が過ぎていても、後行の行政行為であるB処分の取消訴訟を提起して、先行の行政行為であるA処分の違法性を主張することができるということになる
問8 練習問題>行政法>行政総論>5-4
肢オ
更正処分における理由の提示(理由附記)に不備の違法があり、審査請求を行った後、これに対する裁決において処分の具体的根拠が明らかにされたとしても、理由の提示にかかる当該不備の瑕疵は治癒されない。
問題肢1
青色申告についてした更正処分における理由附記の不備の瑕疵は、同処分に対する審査裁決において処分理由が明らかにされた場合は、治癒される
解説肢1
青色申告についてした更正処分における理由附記の不備の瑕疵は、同処分に対する審査裁決において処分理由が明らかにされた場合であっても、治癒されないと解すべきである。」(最判昭和47年12月5日)
処分庁と異なる機関の行為により附記理由不備の瑕疵が治癒されるとすることは、・・・
問9 練習問題>行政法>行政総論>14-6
肢イ
未決勾留による拘禁関係は、勾留の裁判に基づき被勾留者の意思にかかわらず形成され、法令等の規定により規律されるものであるから、国は、拘置所に収容された被勾留者に対して信義則上の安全配慮義務を負わない。
問題肢3
未決勾留による拘禁関係は、信義則上の安全配慮義務を負うべき特別な社会的接触の関係とはいえないので、国は、拘置所に収容された被勾留者に対して、信義則上の安全配慮義務を負わない。
解説肢3
未決勾留は、刑訴法の規定に基づき、逃亡又は罪証隠滅の防止を目的として、被疑者又は被告人の居住を刑事施設内に限定するものであって、このような未決勾留による拘禁関係は、勾留の裁判に基づき被勾留者の意思にかかわらず形成され法令等の規定に従って規律されるものである。そうすると、未決勾留による拘禁関係は、当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上の安全配慮義務を負うべき特別な社会的接触の関係とはいえない。
したがって、国は、拘置所に収容された被勾留者に対して、その不履行が損害賠償責任を生じさせることとなる信義則上の安全配慮義務を負わないというべきである」(最判平成28年4月21日)。
問9 練習問題>行政法>行政総論>14-1
肢ウ
食品衛生法の規定により必要とされる営業の許可を得ることなく食品の販売を行った場合、食品衛生法は取締法規であるため、当該販売にかかる売買契約が当然に無効となるわけではない。
問題肢2
許可が必要な事業において、それを受けていない会社がした取引の私法上の効力は、当然に無効になるものではないが、その法規が単に取締法規ではなく強行法規の性質を有している場合は、その取引の私法上の効力についても否定されうる。
解説肢2
法規が単に取締法規ではなく強行法規の性質を有している場合は、その取引の効力についても否定されることがある。
取締法規である食品衛生法の許可を得ていない会社と取引をした場合において、その取引に関する売買契約は、私法上は無効にならないとしている(最判昭和35年3月18日)。
一方、・・・
問9 練習問題>行政法>行政総論>14-4
肢エ
法の一般原則である信義誠実の原則は、私人間における民事上の法律関係を規律する原理であるから、租税法律主義の原則が貫かれる租税法律関係には適用される余地はない。
問題肢2
信義則の法理は、法の一般原理であるから、租税法規に適合する課税処分についても当然に適用されるものである。
解説肢2
租税法規に適合する課税処分について、法の一般原理である信義則の法理の適用により、右課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても、法律による行政の原理なかんずく租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、右法理の適用については慎重でなければならず、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に、初めて右法理の適用の是非を考えるべきものである。」(最判昭和62年10月30日)
問10 練習問題>多肢選択式>憲法>1-6
肢ア
在留期間更新の判断にあたっては、在留規制の目的である国内の治安と善良の風俗の維持など国益の保持の見地のほか、申請者である外国人の在留中の一切の行状を斟酌することはできるが、それ以上に国内の政治・経済・社会等の諸事情を考慮することは、申請者の主観的事情に関わらない事項を過大に考慮するものであって、他事考慮にも当たり許されない。
解説
憲法第3章の諸規定による基本的人権の保障は、[ア:権利の性質]上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても[イ:等しく及ぶ]ものと解すべきであり、政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶものと解するのが、相当である。しかしながら、・・・外国人在留制度のわく内で与えられているにすぎないものと解するのが相当であって、在留の許否を決する国の裁量を拘束するまでの保障、すなわち、在留期間中の憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的な事情として斟酌(しんしゃく)されないことまでの保障が与えられているものと解することはできない。・・・在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断したとしても、その事実の評価が明白に[ウ:合理性]を欠き、その判断が社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるとはいえず、他に被上告人の判断につき裁量権の範囲をこえ又はその[エ:濫用]があったことをうかがわせるに足りる事情の存在が確定されていない本件においては、被上告人の本件処分を違法であると判断することはできないものといわなければならない。
(最大判昭和53年10月4日民集第32巻7号1223頁)
問10
肢イ
在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無にかかる裁量審査においては、当該判断が全く事実の基礎を欠く場合、または事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により当該判断が社会通念に照らし、著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り、裁量権の逸脱、濫用として違法とされる。
問10
肢エ
外国人の在留期間中の政治活動について、そのなかに日本国の出入国管理政策や基本的な外交政策を非難するものが含まれていた場合、処分行政庁(法務大臣)がそのような活動を斟酌して在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断したとしても、裁量権の逸脱、濫用には当たらない。
問10
肢オ
外国人の政治活動は必然的に日本国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼすものであるから、そもそも政治活動の自由に関する憲法の保障は外国人には及ばず、在留期間中に政治活動を行ったことについて、在留期間の更新の際に消極的事情として考慮することも許される。
問11 練習問題>行政法>行政手続法>2-1
肢1
法の規定において用いられる「法令」とは、法律及び法律に基づく命令のみを意味し、条例及び地方公共団体の執行機関の規則はそこに含まれない。
問題肢2
行政手続法における「法令」には、地方公共団体の条例及び規則も含まれる。
解説肢2
一般的な法律用語として、「法令」とした場合、地方公共団体の条例及び規則は含まれない事もあるが、行政手続法における法令では、法律、法律に基づく命令(告示を含む。)の他に、地方公共団体の条例及び規則も含まれる事が明記されている(行政手続法2条1号)
問11 練習問題>行政法>行政手続法>2-4
肢3
法の規定が適用される行政指導には、特定の者に一定の作為または不作為を求めるものに限らず、不特定の者に対して一般的に行われる情報提供も含まれる
問題肢5
行政指導・・・行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定又は不特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないもの。
解説肢5
「又は不特定の者に」としている点が誤り。
行政指導とは、行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう(行政手続法2条6号)。
行政指導の対象者は、一人である必要はないが、特定されている必要があり、不特定多数の者を対象としたもの(例えば政府広報など)は、本法の行政指導にはあたらない
問11 練習問題>行政法>行政手続法>10-9
肢4
行政指導に携わる者が、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならないのは、法令に違反する行為の是正を求める行政指導をする場合に限られる。
解説肢2
行政指導に携わる者は、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならず(行政手続法35条1項)、当該行政指導をする際に行政機関が許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を行使し得る旨を示すときは、その相手方に当該権限を行使し得る根拠等を示さなければならない(行政手続法35条2項)。
また、・・・
問11 練習問題>行政法>行政手続法>10-9
肢5
行政機関が、あらかじめ、事案に応じ、行政指導指針を定め、かつ行政上特別の支障がない限りこれを公表しなければならないのは、根拠となる規定が法律に置かれている行政指導をしようとする場合に限られる。
解説肢3
同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときは、行政機関は、あらかじめ、事案に応じ、行政指導指針を定め、かつ、行政上特別の支障がない限り、これを公表しなければならない(行政手続法36条)。
問12 練習問題>行政法>行政手続法>9-3
肢1
聴聞の当事者または参加人は、聴聞の終結後であっても、聴聞の審理の経過を記載した調書の閲覧を求めることができる。
解説肢1
聴聞の当事者等は、聴聞期間中は文書閲覧権があり(行政手続法18条)、聴聞終結後もその報告書や聴聞調書の閲覧請求ができる(行政手続法24条4項)
一方、・・・
問12 練習問題>行政法>行政手続法>8-9
肢2
聴聞の当事者および参加人は、聴聞が終結するまでは、行政庁に対し、当該事案についてした調査の結果に係る調書その他の当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる。
問題肢4
聴聞における当事者等は、聴聞の通知があった時から不利益処分がされるまでの間、行政庁に対し、当該事実についてした調査の結果に係る調書その他の当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる。
解説肢4
聴聞における当事者等の文書等の閲覧権の期間は、聴聞の通知があった時から聴聞が終結する時までの間である(行政手続法18条1項)。
問12 練習問題>行政法>行政手続法>8-8
肢3
当事者または参加人は、聴聞の期日に出頭して、意見を述べ、証拠書類等を提出し、主宰者の許可を得て行政庁の職員に対し質問を発することができる。
問題肢2
聴聞の当事者又は参加人が、聴聞において行政庁の職員に質問をすることは当然に認められる権利であるから、聴聞主宰者の許可を得なくとも行うことができる。
解説肢2
行政庁の職員に対し質問するには主宰者の許可が必要である。
当事者又は参加人は、聴聞の期日に出頭して、意見を述べ、及び証拠書類等を提出し、並びに主宰者の許可を得て行政庁の職員に対し質問を発することができる(行政手続法20条2項)
問12 練習問題>行政法>行政手続法>7-8
肢4
当事者または参加人は、聴聞の期日への出頭に代えて、主宰者に対し、聴聞の期日までに陳述書および証拠書類等を提出することができる。
問題肢3
不利益処分の名あて人となるべき者として行政庁から聴聞の通知を受けた者は、代理人を選任することができ、また、聴聞の期日への出頭に代えて、聴聞の主宰者に対し、聴聞の期日までに陳述書及び証拠書類等を提出することができる。
解説肢3
聴聞の通知を受けた者(公示送達された者を含む)は、代理人を選任することができる(行政手続法16条1項)。
また、当事者又は参加人は、聴聞の期日への出頭に代えて、主宰者に対し、聴聞の期日までに陳述書及び証拠書類等を提出することができる(行政手続法21条1項)
なお、・・・
問12 練習問題>行政法>行政手続法>8-4
肢5
当事者または参加人が正当な理由なく聴聞の期日に出頭せず、陳述書等を提出しない場合、主宰者は、当事者に対し改めて意見を述べ、証拠書類等を提出する機会を与えなければならない。
問題肢2
聴聞において、当事者等が正当な理由なく聴聞の期日に不出頭で陳述書等を提出しないなど一定の事情を満たせば、聴聞の主宰者は、これらの者に対し改めて意見を述べ、及び証拠書類等を提出する機会を与えることなく、聴聞を終結することができる。
解説肢2
主宰者は、当事者の全部若しくは一部が正当な理由なく聴聞の期日に出頭せず、かつ、陳述書若しくは証拠書類等を提出しない場合、又は参加人の全部若しくは一部が聴聞の期日に出頭しない場合には、これらの者に対し改めて意見を述べ、及び証拠書類等を提出する機会を与えることなく、聴聞を終結することができる(行政手続法23条1項)
問13 練習問題>行政法>行政手続法>4-2
肢ア
申請者以外の利害を考慮すべきことが法令において許可の要件とされている場合に、公聴会を開催すること
行政手続法における申請に対する処分の手続としては「義務的」とされるものと「努力義務」とされるものに区別がされているが、「努力義務」にあたるものは次のうちどれか。
問題肢3
申請者以外の者の利害を考慮すべきことが法令において許認可等の要件とされているものを行う場合の公聴会の開催
解説肢3
行政庁は、申請に対する処分であって、当該法令の許認可等の要件に申請者以外の者の利害を考慮すべきとされている場合は、必要に応じ、公聴会等により当該申請者以外の意見を聴く機会を設ける努力義務がある(行政手続法10条)
問13 練習問題>行政法>行政手続法>4-3
肢イ
申請に対する処分を行う場合の審査基準を定めて公にしておくこと
行政手続法の条文においては、申請により求められた許認可等の行政処分を行う行政庁が「しなければならない」ものと「努めなければならない」ものの区別がなされているが、これに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
問題肢2
行政庁は、審査基準を定めなければならず、行政上特別の支障があるときを除き、これを公にしておかなければならない。
解説肢2
行政庁は、審査基準を定めなければならず(行政手続法5条1項)、行政上特別の支障があるときを除き、法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により審査基準を公にしておかなければならない(行政手続法5条3項)
問13 練習問題>行政法>行政手続法>7-4
肢ウ
不利益処分を行う場合の処分基準を定めて公にしておくこと
問題肢5
行政庁は、処分基準を定める努力義務があるが、これを定めたときに公にすることは義務である。
解説肢5
行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない(行政手続法12条1項)
問13 練習問題>行政法>行政手続法>4-2
肢エ
申請に対する処分の標準処理期間を定めた場合に、それを公にしておくこと
行政手続法における申請に対する処分の手続としては「義務的」とされるものと「努力義務」とされるものに区別がされているが、「努力義務」にあたるものは次のうちどれか。
問題肢5
標準処理期間を定めた場合において公にすること
解説肢5
標準処理期間を定めること自体は努力義務であるが、これを定めたときに公にすることは義務となっており、申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない(行政手続法6条)
問14 練習問題>行政法>行政不服審査法>3-4
肢1
不作為についての審査請求は、当該処分についての申請をした者だけではなく、当該処分がなされることにつき法律上の利益を有する者もすることができる。
解説肢1
行政庁の不作為については、法令に基づき行政庁に対して処分についての申請した者は、当該申請から相当の期間が経過したにもかかわらず、行政庁の不作為(法令に基づく申請に対して何らの処分をもしないことをいう)がある場合には、審査請求をすることができる(行政不服審査法3条)
問14 過去問>平成28年>問16
肢2
不作為についての審査請求について理由があり、申請に対して一定の処分をすべきものと認められる場合、審査庁が不作為庁の上級行政庁であるときは、審査庁は、当該不作為庁に対し当該処分をすべき旨を命じる。
解説肢5
不作為についての審査請求に理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該不作為が違法又は不当である旨を宣言した上で、不作為庁が審査庁である場合には、当該処分をし、審査庁が不作為庁の上級行政庁である場合には、当該不作為庁に対し、当該処分をすべき旨を命ずる(行政不服審査法49条3項)
問14 練習問題>行政法>行政不服審査法>3-4
肢3
不作為についての審査請求は、審査請求が濫用されることを防ぐために、申請がなされた日から法定された一定の期間を経過しなければすることができない。
解説肢1
行政庁の不作為については、法令に基づき行政庁に対して処分についての申請した者は、当該申請から相当の期間が経過したにもかかわらず、行政庁の不作為(法令に基づく申請に対して何らの処分をもしないことをいう)がある場合には、審査請求をすることができる(行政不服審査法3条)
問15 練習問題>行政法>行政不服審査法>5-7
肢1
審査庁が不利益処分を取り消す裁決をした場合、処分庁は、当該裁決の趣旨に従い当該不利益処分を取り消さなければならない。
解説肢2
処分(事実上の行為を除く。)についての審査請求が理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更する。
ただし、審査庁が処分の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない場合には、当該処分を変更することはできない(行政不服審査法46条1項)

審査請求が理由がある場合とは、
問15 練習問題>行政法>行政不服審査法>6-3
肢2
不利益処分につき、その根拠となった事実がないとしてこれを取り消す裁決を受けた処分庁は、事実を再調査した上で、同一の事実を根拠として同一の不利益処分を再び行うことができる。
解説肢4
行政不服審査法52条1項では「裁決は、関係行政庁を拘束する。」としているが、
問15 練習問題>行政法>行政不服審査法>5-1
肢3
事実上の行為についての審査請求に理由がある場合には、処分庁である審査庁は、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を裁決で宣言し、当該事実上の行為を撤廃又は変更する。
解説肢オ
事実上の行為についての審査請求が理由がある場合、審査庁は、事情裁決が行われる場合(行政不服審査法45条3項)を除いて、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言し、「撤廃」の措置を講ずることとして、審査庁の区分に応じて措置を定めている(行政不服審査法47条)。
処分庁以外の審査庁の場合は、処分庁に事実上の行為の撤廃または変更すべき旨を命ずることとしており、自ら事実上の行為を撤廃し、又は変更するわけではない(行政不服審査法47条1号)。
処分庁である審査庁の場合は、裁決で違法又は不当である旨を宣言した事実上の行為を自ら撤廃し、又は変更することになる(行政不服審査法47条2号)
問15 練習問題>行政法>行政不服審査法>5-7
肢4
審査庁は、処分庁の上級行政庁または処分庁でなくとも、審査請求に対する認容裁決によって処分を変更することができるが、審査請求人の不利益に処分を変更することは許されない。
問題肢2
処分についての審査請求に理由があるときは、処分庁の上級行政庁でない審査庁は、当該処分の取消しのみならず、処分庁に代わって一定の処分を行うことができる。
解説肢2
処分(事実上の行為を除く。)についての審査請求が理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更する。
ただし、審査庁が処分の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない場合には、当該処分を変更することはできない(行政不服審査法46条1項)
審査請求が理由がある場合とは、・・・
問16 練習問題>行政法>行政不服審査法>5-1
肢1
審査請求をすべき行政庁が処分庁と異なる場合、審査請求人は処分庁を経由して審査請求を行うこともできる。
問題肢イ
処分についての審査請求において、審査請求書を処分庁に提出して、処分庁を経由する形で行うこともできる。
解説肢イ
審査請求をすべき行政庁が処分庁等と異なる場合における審査請求は、処分庁を経由してすることもできる(行政不服審査法21条1項)
問16 練習問題>行政法>行政不服審査法>3-2
肢2
審査請求は書面により行わなければならないが、行政不服審査法以外の法律や条例に口頭ですることができる旨の規定のある場合には、審査請求人は審査請求を口頭で行うことができる。
問題肢1
審査請求は、書面を提出して行うものであり、口頭ですることは一切認められていない。
解説肢1
審査請求は書面によってするのが原則であるが、法律(条例に基づく処分については、条例。)に口頭ですることができる旨の定めがある場合は口頭でできる(行政不服審査法19条1項)
問16 練習問題>行政法>行政不服審査法>7-11
肢3
審査請求人は、裁決があるまでは、いつでも審査請求の取下げをすることができ、取下げの理由に特に制限は設けられていない。
問題肢5
審査請求人又は参加人は、裁決があるまでは、いつでも書面によって審査請求を取り下げることができる。
解説肢5
「参加人」は取り下げることはできない。
審査請求人は、裁決があるまでは、いつでも審査請求を取り下げることができる(行政不服審査法27条1項)
また、・・・
問16 練習問題>行政法>行政不服審査法>8-2
肢4
審査請求を受けた審査庁は、審査請求書に形式上の不備がある場合でも審理員を指名し、審理手続を開始しなければならず、直ちに審査請求を却下することはできない。
問題肢2
審査請求書に不備がある場合、審理員は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。
解説肢2
審査請求書が第19条の規定に違反する場合には、審査庁は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない(行政不服審査法23条)
問16 練習問題>行政法>行政不服審査法>7-5
肢5
審査請求人から申立てがあった場合には、審理員は原則として口頭意見陳述の機会を与えなければならず、口頭意見陳述には参加人だけでなく、審理員の許可を得て補佐人も参加することができる。
問題肢3
審査請求人又は参加人が、口頭で意見を述べる機会を得た場合には、補佐人とともに出頭するには、審理員の許可を得ることが必要である。
解説肢3
審査請求は書面審理を原則とするが、審査請求人又は参加人の申立てがあった場合には、審理員は、申立人に口頭で意見を述べる機会を与えなければならない(行政不服審査法31条1項)。
この場合において、審査請求人又は参加人は、審理員の許可を得て、補佐人とともに出頭することができる(行政不服審査法31条3項)
問17 練習問題>行政法>行政総論>10-3
肢ア
本件戒告等には処分性が認められることから、Xは、本件処分の無効確認訴訟を提起するだけでなく、本件戒告等の取消訴訟をも提起できる。
問題肢4
行政代執行法に基づく「戒告」や「代執行令書による通知」はいずれも代執行そのものではなく、また、これによって新たな義務又は拘束を課すものではないため、取消訴訟の対象にはならない。
解説肢4
行政代執行法に基づく「戒告」や「代執行令書による通知」はいずれも代執行そのものではなく、また、これによって新たな義務又は拘束を課すものではない。
しかし、「戒告」や「代執行令書による通知」は代執行の前提要件として行政代執行手続の重要な一環を構成し、代執行が行なわれることをほぼ確実に表示するものであって、実質的に公権力の行使にあたる処分といえるため、処分性を有し、取消訴訟の対象となると解されている。
下級審ではあるが、判例も「戒告」や「代執行令書による通知」に処分性を認めている
(大阪高決昭和40年10月5日)。
問17 練習問題>行政法>行政事件訴訟法>5-7
肢ウ
Xが本件処分の通知書を受け取ってから1年が経過していないことから、Xが本件処分の取消訴訟を提起しても、出訴期間の徒過を理由として却下されることはない。
問題肢イ
行政事件訴訟法における処分の取消しの訴えの出訴期間は、原則として処分があったことを知った日から6ヵ月以内である。
解説肢イ
取消訴訟は、処分又は裁決があったことを知った日から6ヵ月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない(行政事件訴訟法14条1項)。
問17 過去問>平成26年>問18
肢エ
Xが本件戒告等の取消訴訟を提起したとしても、代執行手続が完了した後には、本件戒告等の効果が消滅したことから、当該訴訟は訴えの利益の欠如を理由に不適法として却下される。
問題肢4
土地収用法による明渡裁決の取消しを求める利益は、明渡しに関わる代執行の完了によっても失われない。
解説肢4
土地収用法による明渡裁決の取消しを求める利益について判例は「建築基準法9条1項の規定により除却命令を受けた違反建築物について代執行による除却工事が完了した以上、右除却命令および代執行令書発付処分の取消しを求める訴は、その利益を有しないものと解すべきである」としている(最判昭和48年3月6日)。
問18 練習問題>行政法>行政事件訴訟法>3-1
学生B:準用については主として行訴法38条に定められているけど、他の条文でも定められているよね。まずは出訴期間について定める行訴法14条から。
学生A:行訴法14条については、(ア)無効等確認訴訟にも、その他の抗告訴訟にも準用されていない。訴訟の性質を考えれば当然のことだよ。
問題肢2
無効等確認の訴えは、出訴期間の制限を受け、その期間を経過した場合、正当な理由があるときを除き、提起できない。
解説肢2
取消訴訟の出訴期間に関する規定を無効等確認の訴えは準用しておらず、また、独自での規定もないため、無効等確認の訴えは出訴期間の制限をうけない(行政事件訴訟法14条1項、行政事件訴訟法38条)。
無効等確認の訴えは、・・・
問19 練習問題>行政法>行政事件訴訟法>5-3
肢1
登録免許税を過大に納付して登記を受けた者が登録免許税法に基づいてした登記機関から税務署長に還付通知をすべき旨の請求に対し、登記機関のする拒否通知は、当該請求者の権利に直接影響を及ぼす法的効果を有さないため、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。
問題肢1
登記等を受けたAが登録免許税法に基づいてした登記機関から税務署長に還付通知をすべき旨の請求に対し、登記機関が拒否通知をした場合、Aは当該拒否通知が行政処分にあたるとして取消訴訟を提起することができる。
解説肢1
登記等を受けた者が登録免許税法に基づいてした登記機関から税務署長に還付通知をすべき旨の請求に対し、登記機関のする拒否通知は、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたる(最判平成17年4月14日)。
問19 練習問題>行政法>行政事件訴訟法>5-14
肢2
行政庁が建築基準法に基づいて、いわゆるみなし道路を告示により一括して指定する行為は、特定の土地について個別具体的な指定をしたものではなく、一般的基準の定立を目的としたものにすぎず、告示による建築制限等の制限の発生を認めることができないので、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。
問題肢ウ
建築基準法42条2項によるいわゆる二項道路の指定が一括指定の方法でされた場合、これによって直ちに個別の土地について具体的な私権制限が生じるものでないから、当該指定は抗告訴訟の対象となる行政処分にはあたらない。
解説肢ウ
建築基準法42条2項に基づいてされる2項道路(みなし道路)の指定は、個別具体的に対象道路を指定する「個別指定」でする場合と、告示等により一定条件に合致する道を一律に指定する「一括指定」でする場合があるところ、一括指定の場合であっても、個別の土地についてその本来的な効果として具体的な私権制限を発生させるものであり、個人の権利義務に対して直接影響を与えるものということができるから、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたる(最判平成14年1月17日)。
問19 練習問題>行政法>行政事件訴訟法>5-14
肢4
市町村長が住民基本台帳法に基づき住民票に続柄を記載する行為は、公の権威をもって住民の身分関係を証明し、それに公の証明力を与える公証行為であるから、それ自体によって新たに国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する法的効果を有するため、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
解説肢1
なお、住民票への記載等に関する処分性については、「父が子につき住民票の記載をすることを求める申し出に対して、記載をしない旨の応答」及び「世帯主との続柄を記載する行為」については、抗告訴訟の対象となる行政処分にはあたらないとされているが(最判平成21年4月17日、最判平成11年1月21日)、・・・
問19 練習問題>行政法>行政事件訴訟法>5-14
肢5
都市計画法の規定に基づく用途地域指定の決定が告示された場合、その効力が生ずると、当該地域内においては、建築物の用途、容積率、建ぺい率等につき従前と異なる基準が適用され、これらの基準に適合しない建築物については建築確認を受けることができなくなる効果が生じるので、用途地域指定の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
問題肢3
都市計画法の規定に基づき都道府県知事が行う用途地域の指定は、行政処分に該当する。
解説肢3
いわゆる拘束的計画では、その計画ごとによって、処分性の判断が異なっている。
主なものは下記の表を参照。
①処分性が否定された例
都市計画法に基づく用途地域・高度地区の指定
(最判昭和57年4月22日)
問20 練習問題>行政法>国家賠償法>2-4
肢1
落石事故の発生した道路に防護柵を設置する場合に、その費用の額が相当の多額にのぼり、県としてその予算措置に困却するであろうことが推察できる場合には、そのことを理由として、道路管理者は、道路の管理の瑕疵によって生じた損害に対する賠償責任を免れ得るものと解するのが相当である。
問題肢4
道路に面する土砂崩れによって被害にあったとしても、土砂崩れによる被害を防止するための費用の額が多額にのぼり、それについての予算措置が困難である場合は、道路管理者は、その賠償責任を免れる。
解説肢4
「国家賠償法2条1項の営造物の設置または管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、これに基づく国および公共団体の賠償責任については、その過失の存在を必要としないと解するを相当とする。・・・
そして、本件道路における防護柵を設置するとした場合、その費用の額が相当の多額にのぼり、上告人県としてその予算措置に困却するであろうことは推察できるが、それにより直ちに道路の管理の瑕疵によって生じた損害に対する賠償責任を免れうるものと考えることはできない」(高知落石事件:最判昭和45年8月20日)
問20 練習問題>行政法>国家賠償法>2-3
肢2
事故発生当時、道路管理者が設置した工事標識板、バリケードおよび赤色灯標柱が道路上に倒れたまま放置されていたことは、道路の安全性に欠如があったといわざるをえず、それが夜間の事故発生直前に生じたものであり、道路管理者において時間的に遅滞なくこれを原状に復し道路を安全良好な状態に保つことが困難であったとしても、道路管理には瑕疵があったと認めるのが相当である。
問題肢4
県道上に道路管理者の設置した工事中であることの表示物が夜間に通行車によって倒され、赤色灯が消えるなどしており、間もなくしてそれが起因となって第三者が事故を起こした場合は、公共団体は当該第三者に対して道路の管理に瑕疵があったとして国家賠償法の損害賠償責任を負う。
解説肢4
しかし、本肢のような事例において判例は「県道上に道路管理者の設置した掘穿工事中であることを表示する工事標識板、バリケード及び赤色灯標柱が倒れ、赤色灯が消えたままになっていた場合であっても、それが夜間、他の通行車によって惹起されたものであり、その直後で道路管理者がこれを原状に復し道路の安全を保持することが不可能であったなど判示の事実関係のもとでは、道路の管理に瑕疵がなかったというべきである。」(最判昭和50年6月26日)としている。
問20 練習問題>行政法>国家賠償法>2-3
肢3
防護柵は、道路を通行する人や車が誤って転落するのを防止するために設置されるものであり、材質、高さその他その構造に徴し、通常の通行時における転落防止の目的からみればその安全性に欠けるところがないものであったとしても、当該転落事故の被害者が危険性の判断能力に乏しい幼児であった場合、その行動が当該道路および防護柵の設置管理者において通常予測することができなくとも、営造物が本来具有すべき安全性に欠けるところがあったと評価され、道路管理者はその防護柵の設置管理者としての責任を負うと解するのが相当である。
問題肢3
国家賠償法2条1項にいう「公の営造物の設置又は管理に瑕疵」があるとは、公の営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、設置管理者の通常予測し得ない異常な方法で使用した場合における事故では、設置管理者は、当該事故につき、国家賠償法の損害賠償責任を負わない。
解説肢3
「国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理に瑕疵があったとみられるかどうかは、当該営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきものであるところ、・・・通常の用法に即しない行動の結果生じた事故につき、その設置管理者としての責任を負うべき理由はない。」(最判昭和53年7月4日)
問20 練習問題>行政法>国家賠償法>2-2
肢4
道路の周辺住民から道路の設置・管理者に対して損害賠償の請求がされた場合において、当該道路からの騒音、排気ガス等が周辺住民に対して現実に社会生活上受忍すべき限度を超える被害をもたらしたことが認定判断されたとしても、当該道路が道路の周辺住民に一定の利益を与えているといえるときには、当該道路の公共性ないし公益上の必要性のゆえに、当該道路の供用の違法性を認定することはできないものと解するのが相当である。
解説肢1
一般国道等の道路の周辺住民がその供用に伴う自動車騒音等により受けた被害が社会生活上受忍すべき限度を超え、道路の設置又は管理には瑕疵があるというべきであるとして、国家賠償請求を認めている(最判平成7年7月7日)。
問20 練習問題>行政法>国家賠償法>2-4
肢5
走行中の自動車がキツネ等の小動物と接触すること自体により自動車の運転者等が死傷するような事故が発生する危険性は高いものではなく、通常は、自動車の運転者が適切な運転操作を行うことにより死傷事故を回避することを期待することができるものというべきであって、金網の柵をすき間なく設置して地面にコンクリートを敷くという小動物の侵入防止対策が全国で広く採られていたという事情はうかがわれず、そのような対策を講ずるためには多額の費用を要することは明らかであり、当該道路には動物注意の標識が設置され自動車の運転者に対して道路に侵入した動物についての適切な注意喚起がされていたということができるなどの事情の下においては、高速道路で自動車の運転者がキツネとの衝突を避けようとして起こした自損事故において、当該道路に設置または管理の瑕疵があったとはいえない。
問題肢5
高速道路で自動車の運転者が小動物との衝突を避けようとして自損事故を起こした場合、当該道路に小動物の侵入防止対策が講じられていなければ、営造物の設置又は管理に瑕疵があったとして国家賠償請求が認められる。
解説肢5
高速道路で自動車の運転者がキツネとの衝突を避けようとして自損事故を起こした場合において、小動物の侵入防止対策が講じられていなかったからといって当該道路に設置又は管理の瑕疵があったとはいえないとしている(最判平成22年3月2日)。
問21 練習問題>行政法>国家賠償法>1-1
国家賠償法1条1項の性質については[ ア ]説と[ イ ]説が存在する。両説を区別する実益は、加害公務員又は加害行為が特定できない場合や加害公務員に[ ウ ]がない場合に、[ ア ]説では国家賠償責任が生じ得ないが[ イ ]説では生じ得る点に求められていた。しかし、最一小判昭和57年4月1日民集36巻4号519頁は、[ ア ]説か[ イ ]説かを明示することなく、「国又は公共団体の公務員による一連の職務上の行為の過程において他人に被害を生ぜしめた場合において、それが具体的にどの公務員のどのような違法行為によるものであるかを特定することができなくても、右の一連の行為のうちのいずれかに行為者の故意又は過失による違法行為があったのでなければ右の被害が生ずることはなかったであろうと認められ、かつ、それがどの行為であるにせよこれによる被害につき行為者の属する国又は公共団体が法律上賠償の責任を負うべき関係が存在するときは、国又は公共団体は損害賠償責任を免れることができない」と判示している。さらに、公務員の過失を[ エ ]過失と捉える裁判例が支配的となっており、個々の公務員の[ ウ ]を問題にする必要はないと思われる。したがって、[ ア ]説、[ イ ]説は、解釈論上の道具概念としての意義をほとんど失っているといってよい。 問題肢5
国家賠償法1条の賠償責任は、国又は公共団体が損害を加えた公務員の選任監督について相当の注意を払っているときは、免責される。
解説肢5
国家賠償法1条の賠償責任は、公務員個人が負っている責任を国が代位したものと考える代位責任説が判例の立場であり、国の雇用者としての責任を問うているわけではないので、公務員の選任監督について相当の注意を払っているときでも、賠償責任を免れることはできないとされている。
「国家賠償法1条による国又は公共団体の賠償責任は公務員の故意又は過失に基づく加害行為を前提としてその責任を代位するものであるから、国又は公共団体が公務員の選任監督に過失がなかったことを立証しても、賠償責任を免れることができない。」(札幌高判昭和43年5月30日)。
問23 練習問題>行政法>地方自治法>6-4
肢1
事務監査請求は、当該普通地方公共団体の住民であれば、日本国民であるか否か、また選挙権を有するか否かにかかわらず、これを請求することができる。
問題肢5
普通地方公共団体の事務の執行に関する事務監査請求は、外国人であっても当該普通地方公共団体に一定期間住んでいる住民であれば、その権利を有し、行使する事ができる。
解説肢5
外国人は行うことができない。
事務監査請求するには、普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有することが要件となっており(地方自治法75条1項、地方自治法74条1項)、当該選挙権は、『日本国民たる』年齢満18年以上の者で引き続き3ヵ月以上市町村の区域内に住所を有することが必要である(地方自治法18条)
なお、・・・
問23 練習問題>行政法>地方自治法>11-7
肢4
議会の解散請求は、日本国民たる普通地方公共団体の住民であって選挙権を有する者の総数のうち、法所定の数以上の連署をもって成立するが、この総数が一定数以上の普通地方公共団体については、成立要件を緩和する特例が設けられている。
問題肢2
普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者は、原則としてその総数の3分の1以上の者の連署をもって、その代表者から、選挙管理委員会に対し、当該普通地方公共団体の議会の解散の請求をすることができる。
解説肢2
選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、原則としてその総数の1/3以上の者の連署をもって、その代表者から、普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し、当該普通地方公共団体の議会の解散の請求をすることができる(地方自治法76条1項)。
なお、議会の解散、長・議員・役員の解職の直接請求は、通常は有権者総数の1/3以上の連署が必要であるが、人口が多い地域については、必要な連署数が以下に緩和される
有権者の総数・・・
問25 練習問題>行政法>行政事件訴訟法>2-27
肢1
いわゆる「新潟空港訴訟」(最二小判平成元年2月17日民集43巻2号56頁)では、定期航空運送事業免許の取消訴訟の原告適格が争点となったところ、飛行場周辺住民には、航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けるとしても、原告適格は認められないとされた。
問題肢ア
航行する航空機の騒音により障害を受けることとなる飛行場周辺に居住する者Aが、定期航空運送事業免許の取消しを求める取消訴訟。
解説肢ア
定期航空運送事業免許に係る路線を航行する航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けることとなる者は、当該免許の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有する」(最判平成元年2月17日)。
問25 練習問題>行政法>行政事件訴訟法>2-34
肢2
いわゆる「大阪空港訴訟」(最大判昭和56年12月16日民集35巻10号1369頁)では、空港の供用の差止めが争点となったところ、人格権または環境権に基づく民事上の請求として一定の時間帯につき航空機の離着陸のためにする国営空港の供用についての差止めを求める訴えは適法であるとされた。
解説肢ア
判例は、空港施設では民事訴訟による差止めを認めなかったが(大阪空港訴訟:最大判昭和56年12月16日)、原子炉施設については民事訴訟による差止めを認めている(もんじゅ訴訟:最判平成4年9月22日)。
問25 練習問題>行政法>行政事件訴訟法>13-4
肢4
いわゆる「成田新法訴訟」(最大判平成4年7月1日民集46巻5号437頁)では、新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(当時)の合憲性が争点となったところ、憲法31条の法定手続の保障は刑事手続のみでなく行政手続にも及ぶことから、適正手続の保障を欠く同法の規定は憲法31条に違反するとされた。
問題肢1
行政手続は刑事手続とその性質においておのずから差異があることから、常に必ず行政処分の相手方等に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるなどの一定の手続を設けることを必要とするものではない。
解説肢1
「憲法31条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続が刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の埓外にあると判断することは相当ではない。
しかし、31条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、一般に、行政手続は、刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではないと解するのが相当である。
本件について、総合較量すれば、命令をするにあたり、相手方に対しそれらを与える旨の規定がなくても憲法31条に違反しない
」(成田新法事件:最大判平成4年7月1日)。
問25 練習問題>行政法>行政事件訴訟法>5-11
肢5
いわゆる「成田新幹線訴訟」(最二小判昭和53年12月8日民集32巻9号1617頁)では、成田空港と東京駅を結ぶ新幹線の建設について、運輸大臣の工事実施計画認可の取消訴訟の原告適格が争点となったところ、建設予定地付近に居住する住民に原告適格が認められるとされた。
問題肢2
全国新幹線鉄道整備法に基づく運輸大臣の工事実施計画の認可は、監督手段としての承認の性質を有するもので、行政行為として外部に対する効力を有するものではなく、また、これによって直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する効果を伴うものではないから、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたらない。
解説肢2
全国新幹線鉄道整備法に基づく運輸大臣の工事実施計画の認可について判例は「本件認可は、いわば上級行政機関としての運輸大臣が下級行政機関としての日本鉄道建設公団に対しその作成した本件工事実施計画の整備計画との整合性等を審査してなす監督手段としての承認の性質を有するもので、行政機関相互の行為と同視すべきものであり、行政行為として外部に対する効力を有するものではなく、また、これによって直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する効果を伴うものではないから、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたらない」としている(最判昭和53年12月8日)。
問26 練習問題>行政法>行政手続法>3-1
肢1
行政手続法は、地方公共団体の機関がする処分に関して、その根拠が条例に置かれているものについても行政手続法が適用されると定めている。
問題肢4
地方公共団体の機関がする不利益処分については、その根拠となる規定が国の法律に置かれている場合は、行政手続法の不利益処分に関する規定が適用される。
解説肢4
地方公共団体の機関がする行政処分については、根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものは適用除外である(行政手続法3条3項)
問26 練習問題>行政法>行政総論>7-9
肢4
行政代執行法は、条例により直接に命ぜられた行為についての履行の確保に関しては、各地方公共団体が条例により定めなければならないとしている。
問題肢1
行政上の義務履行の確保に関しては、行政代執行法が一般法とされ、別に法律又は条例で定めるところを除いては、この法律の定めるところによる。
解説肢1
「法律又は条例」としている点は誤り。
行政代執行法1条では「行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律の定めるところによる。」としているのに対し、同法2条では「法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により・・・」としており、2条ではわざわざ条例を含むと言及されていることに照らすと、1条の「法律」には、条例は含まれないと解すべきとするのが通説である
問26 一問一答>行政法>情報公開法、その他>1-18
肢5
行政機関情報公開法 *2は、地方公共団体は、同法の趣旨にのっとり、その保有する情報の公開に関して必要な施策を策定し、これを実施するよう努めなければならないと定めている。
解説
情報公開法にいう「行政機関」には、地方公共団体の行政機関は含まれないため(情報公開法2条1項参照)、情報公開法に基づいて地方公共団体の行政機関へ開示請求することはできない。
もっとも、情報公開法25条では「地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、その保有する情報の公開に関し必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければならない。」としており、実際には各地方公共団体で情報公開条例がおかれている。

民法

令和5年本試験 合格道場掲載
問27 練習問題>民法>総則>6-8
肢1
債権者が権利を行使できることを知った時から5年間行使しないときは、その債権は、時効によって消滅する。
問題肢1
Bが第三者Cへ貸しているお金の返済を受けたらAに代金を支払うこととした場合、Aの代金債権の消滅時効はBがCから返済を受けたことをAが知ったときから10年で消滅する。
解説肢1
10年ではなく5年で消滅する。
消滅時効は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、時効で消滅する(民法166条1項1号)
問27 練習問題>民法>総則>6-5
肢2
不法行為による損害賠償請求権以外の債権(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権を除く)は、その権利について行使することができることを知らない場合でも、その権利を行使できる時から10年間行使しないときには、時効によって消滅する。
問題肢2
期限の定めのない債権の消滅時効は、債権者が相当の期間を定めて催告し、その期間が経過した時から進行する。
解説肢2
債権の消滅時効は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき(民法166条1項1号)。権利を行使することができる時から10年間行使しないときに消滅する(民法166条1項2号)
問27 過去問>平成28年>問27
肢3
人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権は、その権利について行使することができることを知らない場合でも、その債権を行使できる時から20年間行使しないときには、時効によって消滅する。
解説
民法によると、「債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。権利を行使することができる時から10年間(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権は20年間)行使しないときは、消滅する」(民法166条、民法167条)とされている。
問27 練習問題>記述式>民法Ⅲ>22
肢4
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。
解説
民法724条
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
1項 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。
2項 不法行為の時から20年間行使しないとき。
民法724条の2 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1号の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは、「5年間」とする。
問28 練習問題>民法>総則>6-15
肢1
Bの時効完成前に、CがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Cに対して、登記なくして時効による所有権取得をもって対抗することができる。
問題肢2
不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成する前に当該不動産を譲り受けた者に対して、登記がなければ時効取得をもって対抗することができない。
解説肢2
「登記がなければ時効取得をもって対抗することができない。」としているので妥当ではない。
不動産を時効により取得した占有者と、取得時効が完成する前に当該不動産を譲り受けた者との関係は、時効完成時においては当事者同士と考えられている。
そのため、不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成する前に当該不動産を譲り受けた者に対して、登記がなくても時効取得をもって対抗することができる(大判大正7年3月2日、最判昭和41年11月22日)
問28 練習問題>民法>総則>6-15
肢2
Bの時効完成後に、DがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Dに対して、Dが背信的悪意者であったと認められる特段の事情があるときでも、登記なくして時効による所有権取得を対抗することはできない。
解説肢3
不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成した後に当該不動産を譲り受けた者に対して、登記がなければ時効取得をもって対抗することができないため(最判昭和33年8月28日)・・・
解説肢5
所有権又は通行地役権の時効取得について、判例は「甲が時効取得した不動産について、その取得時効完成後に乙が当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した場合において、乙が、当該不動産の譲渡を受けた時点において、甲が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており、甲の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在するときは、乙は背信的悪意者にあたるというべきである
取得時効の成否については、その要件の充足の有無が容易に認識・判断することができないものであることにかんがみると、乙において、甲が取得時効の成立要件を充足していることをすべて具体的に認識していなくても、背信的悪意者と認められる場合があるというべきであるが、その場合であっても、少なくとも、乙が甲による多年にわたる占有継続の事実を認識している必要があると解すべきであるからである。」としている(最判平成18年1月17日)。
問28 練習問題>民法>総則>6-2
肢3
Bの時効完成後に、EがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、その後さらにBが甲の占有を取得時効の成立に必要な期間継続したときは、Bは、Eに対し時効を援用すれば、時効による所有権取得をもって登記なくして対抗することができる。
問題肢3
Aが善意無過失で占有を開始し、所有の意思をもって、平穏かつ公然に7年間占有を続けた後、BがDにその土地を売却し、所有権移転を完了しても、Aは、その後3年間占有を続ければ、その土地の所有権を時効取得し、Dに対抗することができる。
解説肢3
占有を開始時点の所有者と、時効完成時点の所有者が、所有権の移転によって違っていても、それには関係なく、占有者は時効完成時点の所有者に対して、時効取得を主張できる(最判昭和41年11月22日)。
問28 練習問題>民法>総則>6-15
肢4
Bの時効完成後に、FがAから甲につき抵当権の設定を受けてその登記を了した場合、Bは、抵当権設定登記後引き続き甲の占有を取得時効の成立に必要な期間継続したときは、BがFに対し時効を援用すれば、Bが抵当権の存在を容認していたなどの抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、甲を時効取得し、その結果、Fの抵当権は消滅する。
問題肢3
不動産の取得時効の完成後、占有者が登記をしないうちに、その不動産につき第三者のために抵当権設定登記がなされた場合であっても、その占有者が、その後さらに時効取得に必要な期間、占有を継続したときは、抵当権の存在を容認していたとしても、占有者はその不動産を時効により取得し、その結果、抵当権は消滅する。
解説肢3
「不動産の取得時効の完成後、所有権移転登記がされることのないまま、第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合において、上記不動産の時効取得者である占有者が、その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続したときは、上記占有者が上記抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、上記占有者は、上記不動産を時効取得し、その結果、上記抵当権は消滅すると解するのが相当である。」(最判平成24年3月16日)。
問28 練習問題>民法>総則>6-4
肢5
Bの時効完成後に、GがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Gに対して、登記なくして時効による所有権取得をもって対抗することはできず、その際にBが甲の占有開始時点を任意に選択してその成立を主張することは許されない。
問題肢4
DがBの取得時効完成後にAから甲土地を買い受けた場合、Bは、登記がなくても、時効による甲土地の所有権の取得をDに対抗することができる。
解説肢4
時効完成後に譲渡され現れた第三者に対しては、占有者は、登記なくして対抗できない(大連判大正14年7月8日、最判昭和41年11月22日)。
練習問題>民法>総則>6-15
問題肢4
不動産の取得時効の完成後、占有者が、その時効が完成した後に当該不動産を譲り受けた者に対して時効を主張するにあたり、起算点を自由に選択して取得時効を援用することはできない。
解説肢4
取得時効完成の時期を定めるにあたっては、取得時効の基礎たる事実が法律に定めた時効期間以上に継続した場合においても、必ず時効の基礎たる事実の開始した時を起算点として時効完成の時期を決定すべきものであって、取得時効を援用する者において任意にその起算点を選択し、時効完成の時期をあるいは早めあるいは遅らせることはできないものと解すべきである。」(最判昭和35年7月27日)。
問29 練習問題>民法>物権>10-7
肢1
構成部分が変動する集合動産についても、その種類、場所および量的範囲が指定され、目的物の範囲が特定されている場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的とすることができ、当該集合物につき、AはBから占有改定の引渡しを受けることによって対抗要件が具備される。
問題肢3
構成部分の変動する集合動産について、一括して譲渡担保の目的とすることは認められる。
解説肢3
構成部分の変動する集合動産であっても、その種類所在場所及び量的範囲を指定するなどの方法により目的物の範囲が特定される場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的となりうる(最判昭和54年2月15日)。
そもそも譲渡担保権とは、・・・
問29 練習問題>民法>物権>17-1
肢2
本件譲渡担保権の設定後に、Bが新たな家電製品乙(以下「乙」という。)を営業用に仕入れて甲倉庫内に搬入した場合であっても、集合物としての同一性が損なわれていない限り、本件譲渡担保権の効力は乙に及ぶ。
問題肢2
集合動産の譲渡担保において、債権者が譲渡担保の設定に際して占有改定の方法により現に存する動産の占有を取得した場合、その対抗要件具備の効力は、その構成部分が変動したとしても、集合物としての同一性が損なわれない限り、新たにその構成部分となった動産についても及ぶ。
解説肢2
債権者と債務者との間に、集合物を目的とする譲渡担保権設定契約が締結され、その際に債権者が占有改定の方法により現に存する動産の占有を取得した場合、債権者は、当該集合物を目的とする譲渡担保権につき対抗要件を具備したことになり、その効力はその後構成部分が変動したとしても、集合物としての同一性が損なわれない限り、新たにその構成部分となった動産を包含する集合物について及ぶ(最判昭和62年11月10日)
問29 練習問題>民法>物権>17-1
肢3
本件譲渡担保権の設定後であっても、通常の営業の範囲に属する場合であれば、Bは甲倉庫内の在庫商品を処分する権限を有する。
問題肢3
集合動産の譲渡担保において、設定者がその目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をしたとしても、契約締結と同時に、当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得する。
解説肢3
構成部分の変動する集合動産を目的とする譲渡担保においては、集合物の内容が譲渡担保設定者の営業活動を通じて当然に変動することが予定されているのであるから、譲渡担保設定者には、その通常の営業の範囲内で、譲渡担保の目的を構成する動産を処分する権限が付与されており、この権限内でされた処分の相手方は、当該動産について、譲渡担保の拘束を受けることなく確定的に所有権を取得することができると解するのが相当である。
他方、対抗要件を備えた集合動産譲渡担保の設定者がその目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合、当該処分は上記権限に基づかないものである以上、譲渡担保契約に定められた保管場所から搬出されるなどして当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められる場合でない限り、当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできないというべきである(最判平成18年7月20日)。
問29 練習問題>民法>物権>11-14
肢4
甲倉庫内の在庫商品の中に、CがBに対して売却した家電製品丙(以下「丙」という。)が含まれており、Bが履行期日までに丙の売買代金を支払わない場合、丙についてAが既に占有改定による引渡しを受けていたときは、Cは丙について動産先取特権を行使することができない。
解説肢ア
Bから甲(動産)の売買代金の支払いを受けていないときは、甲につき先取特権を行使できそうであるが、先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない(民法333条)。
練習問題>民法>物権>17-1
問題肢2
集合動産の譲渡担保において、債権者が譲渡担保の設定に際して占有改定の方法により現に存する動産の占有を取得した場合、その対抗要件具備の効力は、その構成部分が変動したとしても、集合物としての同一性が損なわれない限り、新たにその構成部分となった動産についても及ぶ。
解説肢2
債権者と債務者との間に、集合物を目的とする譲渡担保権設定契約が締結され、その際に債権者が占有改定の方法により現に存する動産の占有を取得した場合、債権者は、当該集合物を目的とする譲渡担保権につき対抗要件を具備したことになり、その効力はその後構成部分が変動したとしても、集合物としての同一性が損なわれない限り、新たにその構成部分となった動産を包含する集合物について及ぶ(最判昭和62年11月10日)。
問30 練習問題>民法>物権>11-2
連帯債務者の一人について生じた次のア~オの事由のうち、民法の規定に照らし、他の連帯債務者に対して効力が生じないものの組合せとして、正しいものはどれか。
肢ア.連帯債務者の一人と債権者との間の混同
肢イ.連帯債務者の一人がした代物弁済
肢ウ.連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者がした相殺の援用
肢エ.債権者がした連帯債務者の一人に対する履行の請求
肢オ.債権者がした連帯債務者の一人に対する債務の免除
解説肢1
民法438条(連帯債務者の一人との間の更改)、民法439条1項(連帯債務者の一人による相殺)及び前条(連帯債務者の一人との間の混同)に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない(民法441条)。
民法テキスト4 →リンク
問31 練習問題>民法>債権Ⅱ>18-4
肢1
差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであれば、その第三債務者が、差押え後に他人の債権を取得したときでなければ、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。
問題肢4
差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。
解説肢4
差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる(民法511条1項)。
問31 練習問題>民法>債権Ⅱ>18-1
肢2
時効によって消滅した債権が、その消滅以前に相殺適状にあった場合には、その債権者は、当該債権を自働債権として相殺することができる。
問題肢1
Aの債権が時効によって消滅した後でも、時効完成前にBの債権と相殺適状にあれば、Aは、Bに対して相殺をすることができる。
解説肢1
時効によって消滅した債権が時効の完成前に相殺適状であった場合には、その債権者は、相殺をすることができる(民法508条)。
問31 一問一答>民法>債権157
肢3
相殺禁止特約のついた債権を譲り受けた者が当該特約について悪意又は重過失である場合には、当該譲渡債権の債務者は、当該特約を譲受人に対抗することができる。
問題
相殺について、債権債務の当事者は意思表示によって相殺を禁止し、または制限することができるが、相殺制限の特約をもって、悪意又は過失のある第三者に対抗することはできない
解説
二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができるが(民法505条1項本文)、当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる(民法505条2項)。
当事者が、相殺制限特約をもって第三者に対抗するためには、悪意又は重過失が求められる。
問31 練習問題>民法>債権Ⅱ>18-1
肢4
債務者に対する貸金債権の回収が困難なため、債権者がその腹いせに悪意で債務者の物を破損した場合には、債権者は、当該行為による損害賠償債務を受働債権として自己が有する貸金債権と相殺することはできない。
問題肢3
Aの債権が、Bの暴力に起因する不法行為に基づく損害賠償請求であるときには、Bは、Bの債権をもって相殺をすることができない。
解説肢3
悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない(民法509条1項1号)。 本肢の事案をもっと具体化していうと、Bが友人Aに貸しているお金を、Aが返さないからといって、BがAを殴り(不法行為)、BからAの治療費とBの貸金を相殺するという主張はできないということで、同規定は不法行為の誘発防止とともに不法行為の被害者に現実の給付を与える趣旨とされており、不法行為を受けた方(この場合のA)から、相殺することはできる(最判昭和42年11月30日)。
問31 練習問題>記述式>民法Ⅲ>22
肢5
過失によって人の生命又は身体に損害を与えた場合、その加害者は、その被害者に対して有する貸金債権を自働債権として、被害者に対する損害賠償債務と相殺することができる。
解説
次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。
1号 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務
2号 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く。)(民法509条)
問32 練習問題>民法>債権Ⅱ>17-5
肢1
Aは、Bが予め甲の受領を明確に拒んでいる場合であっても、甲につき弁済期に現実の提供をしなければ、履行遅滞の責任を免れない。
問題肢2
弁済の提供は、債務の本旨に従った現実の提供であることを要し、債権者があらかじめ受領を拒んだからといって、それが軽減されることはない。
解説肢2
債権者が受領をあらかじめ拒んでいる場合は、「現実の提供」が軽減されて債務者は弁済の準備をしたことを通知し受領を催告するという「口頭の提供」で足りる(民法493条)。
問32 練習問題>民法>債権Ⅰ>6-7
肢2
Aは、Bが代金の支払を明確に拒んでいる場合であっても、相当期間を定めて支払の催告をしなければ、本件売買契約を解除することができない。
問題肢2
履行遅滞を理由として売買契約を解除する場合、債務者が債務の全部を履行する意思のないことを明確に表示したときでも、債権者は催告しなければ契約を解除することができない。
解説肢2
債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したときは、債権者は、催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる(民法542条1項2号)。
問32 一問一答>民法>債権82
肢3
Aが弁済期に甲を持参したところ、Bが甲を管理するための準備が整っていないことを理由に受領を拒んだため、Aは甲を持ち帰ったが、隣人の過失によって生じた火災により甲が損傷した。このような場合であっても、Bは、Aに対して甲の修補を請求することができる。
問題
Aは、リサイクルショップBと中古カメラ甲を購入する契約を締結した。代金は支払済みで、引渡しは、Bによるメンテナンス完了後の1週間後とした。しかし、Bは引渡しの準備を終えていたが、引渡し予定日にAは来なかった。引渡し予定日の翌日、隣家が原因の火災によりリサイクルショップBが延焼し、中古カメラ甲は焼失してしまった。この場合、Aは支払済みの代金返還請求をすることはできない。
解説
受領遅滞中の履行不能と帰責事由について、債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす(民法413条の2第2項)
Aの受領遅滞中に第三者による火災によって中古カメラ甲が焼失してしまったが、このことによる負担は債権者であるAが負担する。
問32 練習問題>民法>債権Ⅱ>15-1
肢4
Aが弁済期に甲を持参したところ、Bが甲を管理するための準備が整っていないことを理由に受領を拒んだため、Aは甲を持ち帰ったが、隣人の過失によって生じた火災により甲が滅失した。このような場合であっても、Bは、代金の支払を拒むことはできない。
問題肢5
Bが甲建物を引渡そうとしたが、Aが受領を拒んだ。その後、第三者Cの放火によって甲建物が全焼した場合、Aは売買契約を解除することができる。
解説肢5
売主が契約の内容に適合する目的物をもって、その引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず、買主がその履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその目的物が滅失し、又は損傷したとき、買主は、その滅失又は損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない(民法567条2項)。
問32 一問一答>民法>債権82
肢5
Aが弁済期に甲を持参したところ、Bが甲を管理するための準備が整っていないことを理由に受領を拒んだため、Aは甲を持ち帰ったが、隣人の過失によって生じた火災により甲が滅失した。このような場合であっても、Bは、本件売買契約を解除することができる。
問題
Aは、リサイクルショップBと中古カメラ甲を購入する契約を締結した。代金は支払済みで、引渡しは、Bによるメンテナンス完了後の1週間後とした。しかし、Bは引渡しの準備を終えていたが、引渡し予定日にAは来なかった。引渡し予定日の翌日、隣家が原因の火災によりリサイクルショップBが延焼し、中古カメラ甲は焼失してしまった。この場合、Aは支払済みの代金返還請求をすることはできない。
解説
受領遅滞中の履行不能と帰責事由について、債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす(民法413条の2第2項)。
Aの受領遅滞中に第三者による火災によって中古カメラ甲が焼失してしまったが、このことによる負担は債権者であるAが負担する。
練習問題>民法>債権Ⅰ>4-1
解説肢3
債権者が債務不履行を理由に契約の解除をするのに、債務者の帰責事由は不要である。
なお、債務の不履行が債権者の帰責事由によるものであるときは、債権者は契約の解除をすることができない(民法543条)
問33 一問一答>民法>債権25
肢ア
使用貸借契約においては、期間や使用収益の目的を定めているか否かにかかわらず、借主は、いつでも契約の解除をすることができる。
問題
Aは、自己所有の建物について、友人Bと契約期間を1年間とする使用貸借契約を締結した。Bは期間満了を待たずにいつでも契約を解除することができる。
解説
使用貸借において、借主は、いつでも契約の解除をすることができる(民法598条3項)。
問33 練習問題>民法>債権Ⅰ>4-1
肢イ
賃貸借契約は、期間の定めがある場合であっても、賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなったときには、当該賃貸借契約は終了する。
問題肢4
甲建物が、第三者の放火により焼失してしまったとしても、特約がない限り、賃貸借契約が終了するわけではない。
解説肢4
賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には、賃貸借は、これによって終了する(民法616条の2)。
問33 練習問題>民法>債権Ⅰ>4-3
肢ウ
請負契約においては、請負人が仕事を完成しているか否かにかかわらず、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
問題肢1
請負契約において、注文者は、仕事が完成するまでの間、いつでも、請負人の受ける損害を賠償すれば、その契約を解除することができる。
解説肢1
請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる(民法641条)。
問33 練習問題>民法>債権Ⅱ>19-1
肢エ
委任契約は、委任者であると受任者であるとにかかわらず、いつでも契約の解除をすることができる。
問題肢3
委任者は、委任契約をいつでも解除することができるが、受任者が委任者にとって不利な時期に解除するには、やむをえない事由がなければならない。
解説肢3
委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる(民法651条1項)。
なお、当事者一方がやむを得ない事由なく、相手方にとって不利な時期に解除しようとする場合は、損害賠償が必要となる(民法651条2項)。
問33 一問一答>民法>債権33
肢オ
寄託契約においては、寄託物を受け取るべき時期を経過しても寄託者が受寄者に寄託物を引き渡さない場合には、書面による寄託でも無報酬の受寄者は、直ちに契約の解除をすることができる。
問題
古美術商Aは、貸倉庫業者BとAが所有する多数の美術品をBの貸倉庫に預ける有償寄託契約を締結した。引渡し日については、2025年11月1日と予定している。ところが、当日以降になってもAは美術品を預けに来なかった。BはAとの契約を催告なしで解除することができる。
解説
受寄者(無報酬で寄託を受けた場合にあっては、書面による寄託の受寄者に限る。)は、寄託物を受け取るべき時期を経過したにもかかわらず、寄託者が寄託物を引き渡さない場合において、相当の期間を定めてその引渡しの催告をし、その期間内に引渡しがないときは、契約の解除をすることができる(民法657条の2第3項)。
当該問題の場合、有償寄託と考えられることから、Bは契約を解除するために相当の期間を定めて催告をしなければならない。
問34 過去問>平成27年>問34
肢1
幼児が死亡した場合には、親は将来の養育費の支出を免れるので、幼児の逸失利益の算定に際して親の養育費は親に対する損害賠償額から控除される。
解説肢
養育費については、判例によると、交通事故により死亡した幼児の損害賠償債権を相続した者が一方で幼児の養育費の支出を必要としなくなった場合においても、当該養育費と幼児の将来得べかりし収入との間には、前者を後者から損益相殺の法理又はその類推適用により控除すべき損失と利得との同質性がなく、したがって、幼児の財産上の損害賠償額の算定にあたり、その将来得べかりし収入額から養育費を控除すべきものではないと解するのが相当であるとしている(最判昭和53年10月20日)。
つまり養育費は損益相殺ができない。
「養育費を支払うことは親にとっては楽しみなことでもあり、養育費の支出を免れることは、親にとって利益とはいえない、だから損益相殺できない」ということである。
問34 単元テスト>民法Ⅰ>問9
肢2
被害者が死亡した場合に支払われる生命保険金は、同一の損害についての重複填補に当たるので、被害者の逸失利益の算定に当たって支払われる生命保険金は損害賠償額から控除される。
問題肢2
交通事故により死亡した者の相続人に対して給付された生命保険金は、その死亡による損害賠償額から控除されない。
解説肢2
生命保険契約に基づいて給付される保険金は、すでに払い込んだ保険料の対価の性質を有し、もともと不法行為の原因と関係なく支払わるべきものであるから、たまたま不法行為により被保険者が死亡したためにその相続人に保険金の給付がされたとしても、これを不法行為による損害賠償額から控除されない(最判昭和39年9月25日)。
問34 練習問題>記述式>民法Ⅲ>23
肢4
著しく高利の貸付けという形をとっていわゆるヤミ金融業者が元利金等の名目で借主から高額の金員を違法に取得し多大な利益を得る、という反倫理的行為に該当する不法行為の手段として金員を交付した場合、この貸付けによって損害を被った借主が得た貸付金に相当する利益は、借主から貸主に対する不法行為に基づく損害賠償請求に際して損害賠償額から控除されない。
解説
不法原因給付にあたる場合、互いに履行の請求はできないばかりか、その給付したものの返還を請求することもできない。この考えは、裁判所は不法な請求には関与しないというクリーン・ハンズの法理(法廷に出てくる者は「きれいな手」でなければならない、というイギリスの法理)が根底にある。不法原因給付の具体例としては、本問の妾(愛人)契約の他に麻薬の売買契約、殺人の請負契約などがある。また、最近の判例では、闇金融が出資法に違反する利息で貸し付けた金銭も、不法原因給付にあたるとして、出資法違反の利息を請求できないのはもちろん、貸金元本の返還請求もできないとしている(最判平成20年6月10日)
問35 一問一答>民法>相続26
肢ア
重度の認知症により成年被後見人となった高齢者は、事理弁識能力を一時的に回復した場合であっても、後見開始の審判が取り消されない限り、遺言をすることができない。
問題
成年被後見人は成年後見人の同意がなくても遺言をすることができる。
解説
制限行為能力者の行為能力の規定は、遺言については適用されないため(民法962条)、未成年(15歳に達していること)、成年被後見人、被保佐人、被補助人は、法定代理人の同意などを要することなく、有効に遺言をすることができる。
問35 練習問題>民法>相続>3-5
肢ウ
夫婦は、同一の証書によって遺言をすることはできない。
問題肢3
遺言は原則として複数の者が同一の証書ですることはできないが、夫婦が遺言をする場合は同一の証書でも有効である。
解説肢3
遺言は、たとえ夫婦であっても、二人以上の者が同一の証書ですることができない(民法975条)。
問35 練習問題>民法>相続>3-3
肢エ
遺言において受遺者として指定された者が、遺言者の死亡以前に死亡した場合には、受遺者の相続人が受遺者の地位を承継する。
問題肢5
遺贈者の死亡前に受遺者が死亡したときは、その受遺者の相続人が遺贈を受ける。
解説肢5
遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、遺言書に「受遺者が死亡したときは代襲する」とされているなどの特段の事情がない限り、その遺贈の効力は生じない(民法994条1項)。

商法-会社法

令和5年本試験 合格道場掲載
問36 総合テスト2>問36
肢1
商行為の代理人が本人のためにすることを示さないで商行為をした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない。
問題肢エ
商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれを行い、かつ、相手方が本人のためにすることを過失なく知らなかった場合において、相手方が代理人との法律関係を主張したときは、本人は、相手方に対して、本人相手方間の法律関係を主張することができない。
解説肢エ
商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない(商法504条)。
このように商法では、非顕名主義を採用しているが、相手方を保護するために、相手方が知らなかったときは、相手方による代理人に対して履行の請求を認めており、本人はそれに対抗することができない。
問36 練習問題>商法>商行為>11
肢2
商行為の受任者は、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為をすることができる。
問題肢4
商行為の受任者は、たとえ委任の本旨に反しない範囲内であっても、具体的に委任を受けていない行為をすることはできない。
解説肢4
商行為の受任者は、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為をすることができる(商法505条)。
問36 一問一答>商法>35
肢3
商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
問題
商人である隔地者の間において、承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
解説
商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失う(商法508条1項)。
問36 練習問題>商法>商行為>14
肢4
商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならず、当該通知を発することを怠ったときは、その商人はその申込みを承諾したものとみなす。
問題肢ウ
商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、遅滞なく契約の申込みに対する諾否の通知を発することを怠ったときは、その商人は当該契約の申込みを[ ウ ]ものとみなされる。
解説肢ウ
商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならない(商法509条1項)。
商人が前項の通知を発することを怠ったときは、その商人は、同項の契約の申込みを承諾したものとみなす(商法509条2項)。
問36 練習問題>商法>商行為>10
肢5
商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときは、その申込みを拒絶したかどうかにかかわらず、申込みを受けた商人の費用をもって、その物品を保管しなければならない。
問題肢1
商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受け、申込みとともに受け取った物品がある場合において、その申込みを拒絶したときは、原則として申込者の費用をもってその物品を保管しなければならない。
解説肢1
商人がその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときは、その申込みを拒絶したときであっても、原則としてその物品を保管しなければならない(商法510条本文)。
問37 過去問>平成29年>問37
肢ア
発起設立においては、発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、設立時取締役を選任しなければならないが、定款で設立時取締役として定められた者は、出資の履行が完了した時に、設立時取締役に選任されたものとみなす。
肢5
発起設立または募集設立のいずれの手続においても、設立時取締役の選任は、創立総会の決議によって行わなければならない。
解説肢5
発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、設立時取締役を選任しなければならない(会社法38条1項)。
また、定款で設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人として定められた者は、出資の履行が完了した時に、それぞれ設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人に選任されたものとみなす(会社法38条4項)。

発起設立では設立時取締役は発起人が選任するか、定款で選任することができるのである。
問37 過去問>平成29年>問37
肢イ
募集設立においては、設立時取締役の選任は、創立総会の決議によって行わなければならない。
肢5
発起設立または募集設立のいずれの手続においても、設立時取締役の選任は、創立総会の決議によって行わなければならない。
解説肢5
発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、設立時取締役を選任しなければならない(会社法38条1項)。
また、定款で設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人として定められた者は、出資の履行が完了した時に、それぞれ設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人に選任されたものとみなす(会社法38条4項)。
発起設立では設立時取締役は発起人が選任するか、定款で選任することができるのである。
また、創立総会は募集設立でのみ開かれるものであることからも正誤を判断できる(会社法65条)。
募集設立では「設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人の選任は、創立総会の決議によって行わなければならない」と規定されている(会社法88条)。
問37 練習問題>商法>会社法Ⅰ>2-6
肢オ
設立時取締役は、その選任後、株式会社が成立するまでの間、発起人と共同して、株式会社の設立の業務を執行しなければならない。
問題肢4
設立時取締役は、その選任の日から会社の設立の登記がなされるまでの期間において、発起人に代わって設立中の会社のすべての業務を行う権限を有する。
解説肢4
設立時取締役の選任の日から会社の設立の登記がなされるまでの期間においての権限は、設立事項の調査等、一定の行為に限られている(会社法46条以下、会社法93条1項参照)。
問38 練習問題>商法>会社法Ⅲ>4-2
肢2
公開会社および指名委員会等設置会社のいずれでもない株式会社は、1つの株式につき2個以上の議決権を有することを内容とする種類株式を発行することができる。
問題肢1
合名会社と合資会社の持分は、定款の定めにより1持分につき複数の議決権を与えることができるが、同様に株式会社でも、1株に複数の議決権を有する種類株式を発行する旨を定款に定めることができる。
解説肢1
株式会社においては、1株1議決権の原則が採られており、1株につき複数の議決権を有するような株式は認められていない(会社法308条1項)。
問38 練習問題>商法>会社法Ⅰ>3-1
肢4
公開会社および指名委員会等設置会社のいずれでもない株式会社は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役または監査役を選任することを内容とする種類株式を発行することができる。
解説肢5
取締役、監査役選任付株式の発行は種類株式として認められているが、委員会設置会社及び公開会社は、発行することができない(会社法108条1項ただし書き、会社法108条1項9号)。
問38 練習問題>商法>会社法Ⅰ>3-6
肢5
株式会社は、株主総会の決議事項の全部について議決権を有しないことを内容とする種類株式を発行することができる。
問題肢2
株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならないため、議決権の行使について制限がある株式を発行することはできない。
解説肢2
株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならないが(会社法109条1項)、その例外として、異なる種類の株式の発行は認められており、その一つとして議決権制限株式の発行も認められている(会社法108条1項3号)。
問39 練習問題>商法>会社法Ⅱ>2-22
肢4
非業務執行取締役等は、定款の定めに基づき、職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度として責任を負うとする契約を株式会社と締結することができる。
問題肢5
株式会社は、業務執行取締役ではない取締役の会社に対する損害賠償責任について、職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度とする旨の契約を、業務執行取締役ではない当該取締役と締結することができる旨を定款で定めることができる。
解説肢5
いわゆる「責任限定契約」に関する問題である。
株式会社は、取締役(業務執行取締役等であるものを除く。)、会計参与、監査役又は会計監査人(非業務執行取締役等)の423条1項の責任について、当該非業務執行取締役等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度とする旨の契約を非業務執行取締役等と締結することができる旨を定款で定めることができる(会社法427条1項)。
従前は当該契約を会社と締結できるのは社外取締役及び社外監査役であったが、平成26年改正で締結できる者の範囲を拡大した。これにより優秀な人材を株式会社が登用しやすくなったといえる。
問40 過去問>令和4年>問40
肢1
大会社、監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社は、会計監査人の設置が義務付けられているのに対して、当該いずれの会社形態においても、会計参与は任意に設置される機関である。
解説肢ア
「置いてはならない」ということはないので誤り。会計参与の設置は原則的に任意である。
会計参与を置かなければならないケースは、大会社ではない非公開会社で取締役会を設置しているのに監査役を置かない株式会社の場合に限られる(会社法327条2項)。
解説肢イ
公開会社、非公開会社を問わず、大会社であれば会計監査人を置かなければならない(会社法328条1項、2項)
問40 練習問題>商法>会社法Ⅱ>1-11
肢2
会計参与は会社法上「役員」に位置づけられるが、会計監査人は「役員」に含まれない。
解説肢3
役員(取締役、会計参与及び監査役)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する(会社法329条1項)。
問40 練習問題>商法>会社法Ⅱ>2-12
肢4
会計参与は、取締役または執行役と共同して計算関係書類を作成するが、会計監査人は計算関係書類の監査を行う。
問題肢5
会計参与は、取締役と共同して計算書類等を作成し、会計参与報告を作成する役員である。
解説肢5
会計参与は、取締役と共同して、計算書類、その附属明細書、臨時計算書類及び連結計算書類を作成すると共に会計参与は、会計参与報告を作成する役員である(会社法374条1項)。
練習問題>商法>会社法Ⅱ>2-10
問題肢4
会計監査人の職務としては、株式会社の計算書類等を監査し、会計監査報告を作成する。
解説肢4
会計監査人は、計算書類、その附属明細書、臨時計算書類及び連結計算書類を監査し、会計監査報告を作成する(会社法396条1項)。

多肢選択式

令和5年本試験 合格道場掲載
問41 練習問題>憲法>精神的自由>33
表現行為に対する事前抑制は、新聞、雑誌その他の出版物や放送等の表現物がその自由市場に出る前に抑止してその内容を読者ないし聴視者の側に到達させる途を閉ざし又はその到達を遅らせてその意義を失わせ、[ ア ]の機会を減少させるものであり、また、事前抑制たることの性質上、予測に基づくものとならざるをえないこと等から事後制裁の場合よりも広汎にわたり易く、濫用の虞があるうえ、実際上の抑止的効果が事後制裁の場合より大きいと考えられるのであって、表現行為に対する事前抑制は、表現の自由を保障し検閲を禁止する憲法21条の趣旨に照らし、厳格かつ[ イ ]な要件のもとにおいてのみ許容されうるものといわなければならない。 解説肢3
表現行為に対する事前抑制は、新聞、雑誌その他の出版物や放送等の表現物がその自由市場に出る前に抑止してその内容を読者ないし聴視者の側に到達させる途を閉ざし又はその到達を遅らせてその意義を失わせ、公の批判の機会を減少させるものであり、また、事前抑制たることの性質上、予測に基づくものとならざるをえないこと等から事後制裁の場合よりも広汎にわたり易く、濫用の虞があるうえ、実際上の抑止的効果が事後制裁の場合より大きいと考えられるのであって、表現行為に対する事前抑制は、表現の自由を保障し検閲を禁止する憲法21条の趣旨に照らし、厳格かつ明確な要件のもとにおいてのみ許容されうるものといわなければならない。
出版物の頒布等の事前差止めは、このような事前抑制に該当するものであって、とりわけ、その対象が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等の表現行為に関するものである場合には、そのこと自体から、一般にそれが[ ウ ]に関する事項であるということができ、前示のような憲法21条1項の趣旨(略)に照らし、その表現が私人の名誉権に優先する社会的価値を含み憲法上特に保護されるべきであることにかんがみると、当該表現行為に対する事前差止めは、原則として許されないものといわなければならない。ただ、右のような場合においても、その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら[ エ ]を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときは、・・・(中略)・・・例外的に事前差止めが許されるものというべきであ〔る〕(以下略)。 過去問>令和2年>問4
解説肢4
そして「出版物の頒布等の事前差止めは、このような事前抑制に該当するものであって、とりわけ、その対象が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等の表現行為に関するものである場合には、そのこと自体から、一般にそれが公共の利害に関する事項であるということができ、・・・その表現が私人の名誉権に優先する社会的価値を含み憲法上特に保護されるべきであることにかんがみると、当該表現行為に対する事前差止めは、原則として許されないものといわなければならない。
ただ、右のような場合においても、その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあるときは、当該表現行為はその価値が被害者の名誉に劣後することが明らかであるうえ、有効適切な救済方法としての差止めの必要性も肯定されるから、かかる実体的要件を具備するときに限って、例外的に事前差止めが許されるものというべきであり、このように解しても上来説示にかかる憲法の趣旨に反するものとはいえない」(最大判昭和61年6月11日)とし、裁判所による表現行為の事前差し止めは厳格な要件のもとで許容される。
問42 練習問題>行政法>行政総論>14-7
公営住宅の使用関係には、[ イ ]の利用関係として公法的な一面があることは否定しえないところであって、入居者の募集は公募の方法によるべきこと(法16条)などが定められており、また、特定の者が公営住宅に入居するためには、事業主体の長から使用許可を受けなければならない旨定められているのであるが(条例3条)、他方、入居者が右使用許可を受けて事業主体と入居者との間に公営住宅の使用関係が設定されたのちにおいては、前示のような法及び条例による規制はあっても、事業主体と入居者との間の法律関係は、基本的には私人間の家屋[ ウ ]と異なるところはなく、このことは、法が賃貸(1条、2条)等私法上の[ ウ ]に通常用いられる用語を使用して公営住宅の使用関係を律していることからも明らかであるといわなければならない。したがって、公営住宅の使用関係については、公営住宅法及びこれに基づく条例が特別法として民法及び借家法に優先して適用されるが、法及び条例に特別の定めがない限り、原則として一般法である民法及び借家法の適用があり、その契約関係を規律するについては、[ エ ]の法理の適用があるものと解すべきである。 解説肢4
「公営住宅の使用関係には、公の営造物の利用関係として公法的な一面があることは否定しえない・・・
他方、入居者が右使用許可を受けて事業主体と入居者との間に公営住宅の使用関係が設定されたのちにおいては、前示のような法及び条例による規制はあっても、事業主体と入居者との間の法律関係は、基本的には私人間の家屋賃貸借関係と異なるところはなく、このことは、法が賃貸、家賃等私法上の賃貸借関係に通常用いられる用語を使用して公営住宅の使用関係を律していることからも明らかであるといわなければならない。
したがって、公営住宅の使用関係については、公営住宅法及びこれに基づく条例が特別法として民法及び借家法(借地借家法)に優先して適用されるが、法及び条例に特別の定めがない限り、原則として一般法である民法及び借家法(借地借家法)の適用があり、その契約関係を規律するについては、信頼関係の法理の適用があるものと解すべきである。」(最判昭和59年12月13日)
問43 練習問題>行政法>行政事件訴訟法>3-1
処分の取消しの訴え(行政事件訴訟法3条2項)には出訴期間の制限があり、当該処分があったことを知った日又は当該処分の日から一定期間を経過したときは、原則としてすることができない(同法14条1項、2項)。ただし、出訴期間が経過した後でも、当該処分が[ ア ]であれば、当該処分の取消しの訴えとは別の訴えで争うことができる。
そのような訴えとしては複数のものがある。まず、行政事件訴訟法上の法定抗告訴訟としては、[ イ ]がこれに当たる。
解説肢2
取消訴訟の出訴期間に関する規定を無効等確認の訴えは準用しておらず、また、独自での規定もないため、無効等確認の訴えは出訴期間の制限をうけない(行政事件訴訟法14条1項、行政事件訴訟法38条)。
無効等確認の訴えは、行政行為の無効又は不存在を前提に提訴するものであり、無効又は不存在な行政行為には、その効力として公定力が生じず、不可争力も生じないため、出訴期間の制限を受けないのである。
また、私法上の法律関係に関する訴訟においても処分が[ ア ]か否かが争われ得るところ、この訴えは[ ウ ]と呼ばれ、行政事件訴訟法の一部が準用される。 練習問題>行政法>行政事件訴訟法>1-9
解説肢2
争点訴訟とは、私法上の法律関係に関する訴訟において、その前提として、行政庁の処分等の存否又はその効力の有無が争われる「民事訴訟」をいい、単純に民事事件として処理するわけにもいかないので行政事件訴訟法の規定の一部を準用するべきことが規定されている
最高裁判所の判例は、処分が[ ア ]であるというためには、当該処分に[ エ ]な瑕疵がなければならないとする考えを原則としている。 練習問題>行政法>行政総論>6-5
解説肢1
行政処分が当然無効であるというためには、処分に重大かつ明白な瑕疵がなければならず、・・・瑕疵が明白であるというのは、処分成立の当初から、誤認であることが外形上、客観的に明白である場合を指すものと解すべきである。・・・
所論のように、重大かつ明白な瑕疵があるかどうかを口頭弁論終結時までに現われた証拠及びこれにより認められる事実を基礎として判断すべきものであるということはできない。」(最判昭和36年3月7日)

記述式

令和5年本試験 合格道場掲載
問44 練習問題>行政法>行政事件訴訟法>5-1
Y市議会の議員であるXは、2023年7月に開催されたY市議会の委員会において発言(以下「当該発言」という。)を行った。これに対して、当該発言は議会の品位を汚すものであり、Y市議会会議規則α条に違反するとして、Y市議会の懲罰委員会は、20日間の出席停止の懲罰を科すことが相当であるとの決定を行った。Y市議会の議員に対する懲罰は、本会議で議決することによって正式に決定されるところ、本会議の議決は、9月に招集される次の会期の冒頭で行うこととし、会期は終了した。これに対し、Xは、①問題となった当該発言は市政に関係する正当なものであり、議会の品位を汚すものではなく、会議規則には違反しない、②予定されている出席停止の懲罰は20日と期間が長く、これが科されると議員としての職責を果たすことができない、と考えている。
9月招集予定の次の会期までの間において、Xは、出席停止の懲罰を回避するための手段(仮の救済手段も含め、行政事件訴訟法に定められているものに限る。)を検討している。次の会期の議会が招集されるまで1ヵ月程度の短い期間しかないことを考慮に入れたとき、誰に対してどのような手段をとることが有効適切か、40字程度で記述しなさい。
解説肢1
処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、当該処分又は裁決をした行政庁の所属する国又は公共団体を被告として提起しなければならない(行政事件訴訟法11条1項)。
解説肢5
肢4参照。差止め訴訟でも行政事件訴訟法11条2項が準用されている(行政事件訴訟法38条1項)。
一問一答>行政法>行政事件訴訟法62
問題
仮の差止めは、差止めの訴えに係る処分又は裁決がされることにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときに認められる。
解説
仮の義務付け及び仮の差止めについては、処分の執行停止と同様の機能を有するため、執行停止の規定の多くを準用しており、また、準用してない部分についてもその趣旨自体は類似した規定となっている(行政事件訴訟法37条の5第2項)。
問45 練習問題>民法>物権>13-4
AがBに対して有する貸金債権の担保として、Bが所有する甲建物(以下「甲」という。)につき抵当権が設定され、設定登記が経由された。当該貸金債権につきBが債務不履行に陥った後、甲が火災によって焼失し、Bの保険会社Cに対する火災保険金債権が発生した。Aがこの保険金に対して優先弁済権を行使するためには、民法の規定および判例に照らし、どのような法的手段によって何をしなければならないか。40字程度で記述しなさい。 問題肢3
当該建物が火事により滅失して、火災保険金が支払われる場合、Cは、火災保険金について差押えをしなくても、他の債権者に優先して、1000万円の弁済を受けることができる。
解説肢3
抵当権では、その性質の一つとして物上代位性があり、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対して、行使することができる。ただし、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない(民法372条、民法304条)
問46 単元テスト>民法3>問8
Aは、Aが所有する土地上に住宅を建築する旨の建築請負契約(以下「本件契約」という。)を工務店Bとの間で締結した。本件契約においては、Bの供する材料を用い、また、同住宅の設計もBに委ねることとされた。本件契約から6ヵ月経過後に、Aは、請負代金全額の支払いと引き換えに、完成した住宅の引渡しを受けた。しかし、その引渡し直後に、当該住宅の雨漏りが3ヵ所生じていることが判明し、Aは、そのことを直ちにBに通知した。この場合において、民法の規定に照らし、Aが、Bに対し、権利行使ができる根拠を示した上で、AのBに対する修補請求以外の3つの権利行使の方法について、40字程度で記述しなさい。 解説肢1
仕事の目的物に種類・品質に関して契約内容に適合しない場合があるときは、注文者は、請負人に対し、追完請求、報酬額減額請求、損害賠償請求、解除権の行使をすることができる(民法559条、民法562条、民法563条、民法564条)。

一般知識

令和5年本試験 合格道場掲載
問48 行政法テキスト5
国家行政組織参照
肢5
2022年7月8日に奈良県で発生した安倍晋三・元首相銃撃事件をきっかけとして、内閣府に「テロ対策庁」が設置された。
問51 総合テスト1>一般知識>問50
肢1
近年、日本銀行は、消費者物価指数の上昇率を年率2%とする物価安定目標を掲げ、金融緩和を推進してきた。
解説肢3
インフレターゲットとは、インフレ率目標政策とも呼ばれるが、金融政策の透明性向上のためのひとつの枠組みであり、具体的な物価上昇率(消費者物価指数等)を「数値」で示し、公表された見通しが物価の安定という目的から乖離しそうな場合に金融政策を変更する等の対応することをいう。
なお、世界各国の多くの中央銀行で導入されているなか日本では長らく導入を見送っていたが、2012年に「中期的な物価安定のめど」として1%を掲げ、事実上のインフレターゲットを導入し、さらに2013年に「物価安定の目標」に変更し、1%から2%に引き上げた
問51 一問一答>一般知識>経済28
肢2
諸外国ではマイナス金利政策を導入する事例があるが、マイナス金利政策の導入は、預金残高縮小をもたらすことから、日本では導入されていない。
解説肢
マイナス金利とは、金融機関が日本銀行に持つ当座預金のうち、任意で預けている額について、マイナスの金利をつける政策を指し、手数料を取られる形になる金融機関は、日本銀行に預けていたお金を企業や個人への貸し出しに回すことが期待され、結果として経済の活性化につなげる施策のことである。
問51 一問一答>一般知識>経済28
肢4
2024年には新しい日本銀行券が発行されるが、その際には、デジタル通貨の導入も同時に行われることとされている。
解説肢
CBDC:Central Bank Digital Currencyは、中央銀行発行デジタル通貨のことを指し、発行の裏付けには円やドルなどの法定通貨の資産を持つ。
国家の中央銀行が中央集権的に発行するという点で仮想通貨や暗号通貨とは異なる。法定通貨と完全に1対1で連動させることで、価値が相対的に安定し決済に使いやすいと期待されている。
現在、最も早く実用化を進めている国は中国であるが、日本においては今後具体的な検討に乗り出すとしている。
問52 練習問題>一般知識>社会>29
肢2
日本は1985年に男女雇用機会均等法 *1を制定したが、女性差別撤廃条約 *2はいまだ批准していない。
肢5
女子差別撤廃条約は、男女の完全な平等の達成に貢献することを目的に、女子に対するあらゆる差別の撤廃を基本理念とする条約で、1985年に日本は批准している。
解説肢
女子差別撤廃条約は、1979年の第34回国連総会において採択され、1981年に発効した。
日本は1985年に批准している。

「女子に対する差別」を定義し、締約国に対し、政治的・公的活動や経済的・社会的活動における差別の撤廃のために適当な措置をとることを求めている。
問53 一問一答>一般知識>社会84
肢4
2008年に、75歳以上の高齢者を対象とした後期高齢者医療制度が整備された。
問題
日本では、少子高齢化が進み増加する社会保障関係費を賄うため、40歳以上の健康保険加入者全員を対象とする年金保険制度を実施し、平成20年(2008年)には、75歳以上の高齢者を対象とする、後期高齢者医療制度も導入した。
解説
日本では、少子高齢化が進み増加する社会保障関係費を賄うため、40歳以上の健康保険加入者全員を対象とする介護保険制度を実施し、平成20年(2008年)には、75歳以上の高齢者を対象とする、後期高齢者医療制度も導入した
問54 一問一答>一般知識>情報通信60
肢ア
RPAとはRobotic Process Automationの略で、ロボットの代行による作業の自動化、ないし導入するソフトウェア等を指すが、これにより人手不足の解消と職員の負担軽減を図ることが期待されている。
問題
ロボティックプロセスオートメーション(RPA)は、これまで人間のみが対応することができると想定されていた作業又はより高度な作業を、人間に代わりAI、機械学習等を含む認知技術を活用して代行・代替する取り組みのことである
解説
DXツールであるRPAを簡単に説明すると「人の代わりに単純作業をこなしてくれるツール」で、近年、業務改善や働き方改革につながるテクノロジーとして注目を集めている。
問55 一問一答>一般知識>情報通信7
肢2
ランサムウェアとは、感染したコンピュータのデータを暗号化してロックし、使えない状態にしたうえで、データを復元する対価として金銭を要求するプログラムをいう。
問題
ランサムウェアとは、パソコン内に保存しているデータを勝手に暗号化させて使えない状態にし、解除するための身代金を要求する不正プログラムのことである。
解説
ランサム(ransom)は身代金の意味。
ランサムウェアの感染経路とは、主にメール経由で、添付ファイルを開いたり、本文中に記載されたリンク先をクリックしたりすることによる。ランサムウェアに感染すると組織内のネットワークで接続されたパソコンに感染が広がる。
基幹システムや工場など企業活動の生命線が狙われやすく、鉄道や病院といったインフラ系の被害が目立つ。

※合格道場の問題番号・タイトル・内容は2023年12月時のものです。
修正等により変更されている場合があります。