覚える量を減らす努力をせよ
行政書士試験は、覚える量が多い試験です。行政法にはじまり民法に会社法……、必要な暗記量を考えただけで嫌になってしまいます。
ここで一つ申し上げておきます。
行政書士試験のような難関試験では、「覚える量を減らす努力」が大切です。目の前にある情報が膨大であるなら、それを正攻法で真正面から覚えにかかるのではなくて、覚え方を工夫し、覚える対象自体を減らすべきなのです。
あなたの暗記方法をチェック
あなたの覚え方を確認してみましょう。次の事柄がテキストに載っているとして(テキストに載るような内容ではないのですが)、あなたはどのように覚えるのでしょうか。
- 新宿西口の交差点では、赤信号なら止まらないといけない
- 渋谷ハチ公口の交差点では、赤信号は進んではいけない
- 梅田駅前の交差点では、赤信号は「止まれ」の合図
上記の3つの内容を「真正面から(つまり工夫せずに)」覚えていくとするなら、「新宿西口では~、渋谷ハチ公口では~、梅田駅前では~」と覚えていくことでしょう。そう、覚える内容は「3つ」あるのです。
あなたはどのように覚えようとしたでしょうか。3つの情報を「3つ」のまま覚えようとした人は要注意。工夫すれば、覚える量は簡単に圧縮できます。
情報は、圧縮、圧縮、とにかく圧縮
3つの情報を「3つ」として覚えるのではなく、上記の場合は「1つ」の情報にまで圧縮して覚えてください。
もうお分かりかもしれませんが、私だったら「赤信号は止まらないといけない」と覚えておしまいにします。各情報に共通する部分をピックアップして、一つの情報にまとめあげます。情報の「抽象化」です。こうすれば3つの情報をたった一つにして覚えることが可能であり、時間も労力も節約できるのです。
難しいのは、実際の勉強への応用です。信号機の例であれば簡単だったでしょうが、行政書士試験の勉強にも応用できなければ意味がありません。
コツは、「常日頃から頭のなかで比較する」ということ。いま勉強している事柄と似ていることが以前勉強した範囲でなかったか、頭のなかで考えに考えてください。頭のなかで似ている情報が見つかったら、情報を抽象化できないか判断しましょう。抽象化できたら、どんどん抽象化します。
たとえば会社法の知識ですが、「株主総会議事録の原本は10年の保存義務」があります。これを勉強してしばらくすると「取締役会」についての勉強にうつります。その取締役会の議事録も「10年の保存義務」があるのですが、取締役会議事録の勉強をしているときに頭のなかで「似ていること」を探すのです。そして議事録つながりで「株主総会議事録」が出てきたら良い傾向。ここまで出てきたら「議事録は10年!」とまとめて覚えましょう。
抽象化して覚えれば応用できる
抽象化して覚えることは、副次的な効果を得られます。それは「応用力」です。抽象化して覚えることで、自分が覚えていなかった知識に関する問題にも、対応できるようになるのです。
たとえば「監査役会議事録の保存期間は何年か?」という問題が出たとしましょう。このとき、まったく何も知らなければ適当に「5年」とか「20年」とか当てずっぽうで答えるしかありません。一方で抽象化して覚えるクセがある人はどうでしょう。「議事録といえば基本的には10年のはず。だったら監査役会議事録の保存期間も10年!」と答えることができるようになります。
たしかに間違っている可能性もあります。けど完全な当てずっぽうでの回答に比べたら、正答率は格段に上がるのは間違いないことです。
情報は、ぜひとも抽象化してまとめて覚えましょう!
- 碓井 孝介(うすい こうすけ)
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札幌出身、『司法書士平成事務所』代表。元大手資格スクール講師。勉強法、相続等の書籍出版なども手掛ける。個人サイトは『平成相続相談室』。
著書:試験は暗記が9割(朝日新聞出版)