「問題先行学習」のススメ

勉強といえば、教科書やテキストによる「インプット教材重視の学習スタイル」と、問題演習を通した「アウトプット教材重視の学習スタイル」の二通りがあります。

この二通りのうち、ほとんどの方はそれらを組み合わせて、「インプット教材で覚えてからアウトプット教材で勉強」というスタイルをとるでしょう。教科書やテキストを読み込み、覚えてから問題演習にうつるのです。はじめから問題集をガリガリ解く方は、なかなかいないのではないでしょうか。

しかしながら、私は徹底して「問題先行学習」をおすすめします。教科書やテキストなどで情報を覚えるのではなく、問題集をある意味でインプット教材にしてしまって、問題集で情報を覚えるのです。この勉強スタイルが、特に時間のない受験生には役立ちます。

問題集には「問題になり得る情報」しかない

受験勉強においては、重要であり覚えなければいけないのは「試験に出る(問題になり得る)情報」です。これに異論はないでしょう。

ここで気づいて欲しいのは、教科書やテキストには「問題にならない情報」もたくさん載っているという事実です。教科書やテキストというからには、1ページ目の1行目から、最後のページの最終行までで、「お話」の筋を通さなければいけません。教科書・テキストのこのような性格から、どう考えたって問題にはならない情報だって、お話の展開の都合で紹介せざるを得ないのです。

一方で、問題集に載るのは、問題になり得る情報です。「問題集」というからには、「問題になり得る情報」しか取り上げていないのは、当然といえば当然です。

だったら勉強の中心を「問題集」に置く!
このような戦略が合理的だと分かるでしょう。教科書やテキストよりも、受験上重要な情報が凝縮されているのが「問題集」なのです。問題集を通して情報を覚えれば、自ずと重要情報に絞って勉強ができるようになります。

問題集でもっとも重要なのは「解説」

具体的な問題へのアプローチ方法ですが、次のようにしましょう。

  • 問題文を読む
  • 解答を思い浮かべ、解答を確認する
  • 解説を読み、解説を覚える

まずは問題文を読み、自分なりに解答を思い浮かべます。ここで重要なのは、思考に時間をかけないことです。問題に取り組む目的は「問題を通して情報を覚える」ということですから、できなくてもよい。

解答が思い浮かんだ後は、解説を確認します。そして、解説を「徹底的に」覚えます。解答とは、問題文と解答を結びつけるものであって、解説の内容が頭に入っていたら、問題が多少ひねられても対応することが可能です。問題において、解答よりも解説の方が絶対に重要です。

解説を徹底的に覚えるというのは、問題文を見ただけで解説が思い浮かび、自分で自分に説明できるようになることです。ここが一つの基準になります。

行政書士試験における「問題先行学習」

行政書士試験の受験勉強においてこそ、問題集を使って情報を覚える勉強は非常に有益です。私自身、それまでまったく勉強したことがなかった行政法ですら、テキストや教科書はほとんど読みませんでした。いきなり過去問にあたり、解説を徹底的に覚えたのでした。

問題集で情報のインプットをする場合、知識の「網羅性」を確保するために、相当な量のある問題集でなければいけないことは付け加えておきます。ペラペラの問題集で覚えたら、知識は「虫食い状態」になってしまいます。

おすすめは「過去問」です。民法・行政法といった主要科目の過去問であれば、過去10年分か15年分もあれば、相当なボリュームになるでしょう。合格道場で勉強している方であれば、収録されている過去問数で事足ります。ぜひ問題にたくさんぶつかり、知識を増やしていきましょう。

碓井 孝介

碓井 孝介(うすい こうすけ)
札幌出身、『司法書士平成事務所』代表。元大手資格スクール講師。勉強法、相続等の書籍出版なども手掛ける。個人サイトは『平成相続相談室』
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