平成28年-問7 憲法 法の下の平等
Lv3
問題 更新:2023-01-30 17:09:50
法の下の平等に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当でないものはどれか。
- 憲法が条例制定権を認める以上、条例の内容をめぐり地域間で差異が生じることは当然に予期されることであるから、一定の行為の規制につき、ある地域でのみ罰則規定が置かれている場合でも、地域差のゆえに違憲ということはできない。
- 選挙制度を政党本位のものにすることも国会の裁量に含まれるので、衆議院選挙において小選挙区選挙と比例代表選挙に重複立候補できる者を、一定要件を満たした政党等に所属するものに限ることは、憲法に違反しない。
- 法定相続分について嫡出性の有無により差異を設ける規定は、相続時の補充的な規定であることを考慮しても、もはや合理性を有するとはいえず、憲法に違反する。
- 尊属に対する殺人を、高度の社会的非難に当たるものとして一般殺人とは区別して類型化し、法律上刑の加重要件とする規定を設けることは、それ自体が不合理な差別として憲法に違反する。
- 父性の推定の重複を回避し父子関係をめぐる紛争を未然に防止するために、女性にのみ100日を超える再婚禁止期間を設けることは、立法目的との関係で合理性を欠き、憲法に違反する。
正解 4
解説
憲法が条例制定権を認める以上、条例の内容をめぐり地域間で差異が生じることは当然に予期されることであるから、一定の行為の規制につき、ある地域でのみ罰則規定が置かれている場合でも、地域差のゆえに違憲ということはできない。 1.妥当である。
地域差は憲法の容認するところである。
「憲法が各地方公共団体の条例制定権を認める以上、地域によって差別を生ずることは当然に予期されることであるから、かかる差別は憲法みずから容認するところであると解すべきである。
それ故、地方公共団体が売春の取締について各別に条例を制定する結果、その取扱に差別を生ずることがあっても、所論のように地域差の故をもって違憲ということはできない。(最大判昭和33年10月15日)」
選挙制度を政党本位のものにすることも国会の裁量に含まれるので、衆議院選挙において小選挙区選挙と比例代表選挙に重複立候補できる者を、一定要件を満たした政党等に所属するものに限ることは、憲法に違反しない。 2.妥当である。
「政策本位、政党本位の選挙制度というべき比例代表選挙と小選挙区選挙とに重複して立候補することができる者が候補者届出政党の要件と衆議院名簿届出政党等の要件の両方を充足する政党等に所属する者に限定されていることには、相応の合理性が認められるのであって、不当に立候補の自由や選挙権の行使を制限するとはいえず、これが国会の裁量権の限界を超えるものとは解されない。(最大判平成11年11月10日)」
法定相続分について嫡出性の有無により差異を設ける規定は、相続時の補充的な規定であることを考慮しても、もはや合理性を有するとはいえず、憲法に違反する。 3.妥当である。
判例は相続において嫡出子と非嫡出子を差別することは憲法違反であるとしている。
「遅くとも被相続人の相続が開始した当時においては、立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたというべきである。(最大判平成25年9月4日)」
本判決を受けて民法は改正され、法定相続分を定めた民法の規定のうち嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の1/2と定めた部分(民法900条4号ただし書き前半部分)を削除し、嫡出子と嫡出でない子の相続分を同等にしている。
尊属に対する殺人を、高度の社会的非難に当たるものとして一般殺人とは区別して類型化し、法律上刑の加重要件とする規定を設けることは、それ自体が不合理な差別として憲法に違反する。 4.妥当でない。
両者を類型的に区別することを憲法違反とする本肢は妥当でない。
判例は、尊属殺人を普通殺人と区別することは認めているが、尊属殺人が普通殺人に比べて量刑が重いことが憲法第14条第1項に違反しているとしている(最大判昭和48年4月4日)。
なお、現在は刑法200条の尊属殺人は削除され、同法199条の殺人の罪(普通殺人)のみが規定されているので、尊属を殺害しても普通殺人罪が適用されることになる。
父性の推定の重複を回避し父子関係をめぐる紛争を未然に防止するために、女性にのみ100日を超える再婚禁止期間を設けることは、立法目的との関係で合理性を欠き、憲法に違反する。 5.妥当である。
判例は「本件規定(民法772条2項)のうち100日超過部分が憲法24条2項にいう両性の本質的平等に立脚したものでなくなっていたことも明らかであり、上記当時において、同部分は、憲法14条1項に違反するとともに、憲法24条2項にも違反するに至っていたというべきである。(最大判平成27年12月16日)」としている。
なお、国賠法の点については、「本件立法不作為は、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないというべきである」としている。