平成28年-問18 行政法 行政事件訴訟法
Lv4
問題 更新:2023-01-30 17:26:47
行政事件訴訟に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものはどれか。
- 地方税法に基づく固定資産税の賦課処分の取消訴訟を提起することなく、過納金相当額の国家賠償請求訴訟を提起することは、結果的に当該行政処分を取り消した場合と同様の経済的効果が得られることになるため、認められない。
- 供託法に基づく供託金の取戻請求権は、供託に伴い法律上当然に発生するものであり、一般の私法上の債権と同様、譲渡、質権設定、仮差押等の目的とされるものであるから、その請求が供託官により却下された場合には、民事訴訟により争うべきである。
- 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に基づく発電用原子炉の設置許可の無効を主張する者は、その運転差止めを求める民事訴訟を提起できるからといって、当該許可処分の無効確認訴訟を提起できないわけではない。
- 国民年金法に基づく裁定の請求に対して年金支給をしない旨の決定が行われた場合、当該年金の裁定の請求者は、公法上の当事者訴訟によって、給付されるべき年金の請求を行うことができるが、年金支給をしない旨の決定の取消訴訟を提起することは認められない。
- 登録免許税を過大に納付した者は、そのことによって当然に還付請求権を取得し、その還付がなされないときは、還付金請求訴訟を提起することができるから、還付の請求に対してなされた拒否通知について、取消訴訟を提起することは認められない。
正解 3
解説
地方税法に基づく固定資産税の賦課処分の取消訴訟を提起することなく、過納金相当額の国家賠償請求訴訟を提起することは、結果的に当該行政処分を取り消した場合と同様の経済的効果が得られることになるため、認められない。 1.誤り
判例は、行政処分が違法であることを理由として国家賠償請求をするについては、あらかじめ当該行政処分について取消し又は無効確認の判決を得なければならないものではないが、このことは、当該行政処分が金銭を納付させることを直接の目的としており、その違法を理由とする国家賠償請求を認容したとすれば、結果的に当該行政処分を取り消した場合と同様の経済的効果が得られるという場合であっても異ならず、国家賠償請求はできるとしている(最判平成22年6月3日)。
供託法に基づく供託金の取戻請求権は、供託に伴い法律上当然に発生するものであり、一般の私法上の債権と同様、譲渡、質権設定、仮差押等の目的とされるものであるから、その請求が供託官により却下された場合には、民事訴訟により争うべきである。 2.誤り
判例は「供託事務を取り扱うのは国家機関である供託官であり、供託官が弁済者から供託物取戻の請求を受けた場合において、その請求を理由がないと認めるときは、これを却下しなければならず、右却下処分を不当とする者は監督法務局または地方法務局の長に審査請求をすることができ、右の長は、審査請求を理由ありとするときは供託官に相当の処分を命ずることを要すると定められており、実定法は、供託官の右行為につき、とくに、「却下」および「処分」という字句を用い、さらに、供託官の却下処分に対しては特別の不服審査手続をもうけている」ことを理由として、弁済供託における供託金取戻請求に対する供託官の却下は行政処分にあたるとして取消訴訟の提起を認めている(最大判昭和45年7月15日)。
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に基づく発電用原子炉の設置許可の無効を主張する者は、その運転差止めを求める民事訴訟を提起できるからといって、当該許可処分の無効確認訴訟を提起できないわけではない。 3.正しい
判例は、その原子炉の運転の差止めを求める民事訴訟を提起することができるとしても、当該処分の無効確認を求める訴えのほうがより直截的で適切な争訟形態であるとみるべき場合には、無効等確認訴訟の提起を認めるべきとしている(もんじゅ訴訟:最判平成4年9月22日)。
国民年金法に基づく裁定の請求に対して年金支給をしない旨の決定が行われた場合、当該年金の裁定の請求者は、公法上の当事者訴訟によって、給付されるべき年金の請求を行うことができるが、年金支給をしない旨の決定の取消訴訟を提起することは認められない。 4.誤り
前半は正しいが後半は誤り。
判例は、障害基礎年金の裁定請求を却下した事案について、直接的には「処分又は裁決に関し『事案の処理にあたった下級行政機関』の所在地の裁判所にも当該処分等の取消訴訟の管轄を認めている趣旨」の問題であるが、当事者訴訟も取消訴訟も否定していない(最決平成26年9月25日)。
登録免許税を過大に納付した者は、そのことによって当然に還付請求権を取得し、その還付がなされないときは、還付金請求訴訟を提起することができるから、還付の請求に対してなされた拒否通知について、取消訴訟を提起することは認められない。 5.誤り
判例は「登録免許税法31条2項は、登記等を受けた者に対し、簡易迅速に還付を受けることができる手続を利用することができる地位を保障しているものと解するのが相当である。
そして、同項に基づく還付通知をすべき旨の請求に対してされた拒否通知は、登記機関が還付通知を行わず、還付手続を執らないことを明らかにするものであって、これにより、登記等を受けた者は、簡易迅速に還付を受けることができる手続を利用することができなくなる。
そうすると、上記の拒否通知は、登記等を受けた者に対して上記の手続上の地位を否定する法的効果を有するものとして、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたると解するのが相当である」としている(最判平成17年4月14日)。