平成28年-問24 行政法 地方自治法
Lv2
問題 更新:2023-01-30 17:36:07
地方財務に関する次の記述のうち、法令および最高裁判所の判例に照らし、誤っているものはどれか。
- 普通地方公共団体は、予算の定めるところにより、地方債を起こすことができるが、起債前に財務大臣の許可を受けなければならない。
- 普通地方公共団体は、分担金、使用料、加入金および手数料を設ける場合、条例でこれを定めなければならない。
- 選挙権を有する普通地方公共団体の住民は、その属する普通地方公共団体の条例の制定または改廃を請求する権利を有するが、地方税の賦課徴収に関する条例については、その制定または改廃を請求することはできない。
- 市町村が行う国民健康保険は、保険料を徴収する方式のものであっても、強制加入とされ、保険料が強制徴収され、賦課徴収の強制の度合いにおいては租税に類似する性質を有するものであるから、これについても租税法律主義の趣旨が及ぶと解すべきである。
- 地方税法の法定普通税の規定に反する内容の定めを条例に設けることによって当該規定の内容を実質的に変更することは、それが法定外普通税に関する条例であっても、地方税法の規定の趣旨、目的に反し、その効果を阻害する内容のものとして許されない。
正解 1
解説
普通地方公共団体は、予算の定めるところにより、地方債を起こすことができるが、起債前に財務大臣の許可を受けなければならない。 1.誤り
本肢のように起債前に財務大臣の許可を受けなければならないとする規定はない。
地方公共団体が地方債を発行するときは、原則として、都道府県及び指定都市にあっては総務大臣、市町村にあっては都道府県知事と協議を行うことが必要である(地方財政法5条の3)。
ただし、財政状況が悪化している地方公共団体が地方債を起債するときは、総務大臣または都道府県知事の許可が必要とされており、総務大臣は同意または許可をしようとするときは、あらかじめ財務大臣と協議することとされている(地方財政法5条の4第1項1号2号、地方財政法施行令22条、23条、2条4項、21条4項)。
普通地方公共団体は、分担金、使用料、加入金および手数料を設ける場合、条例でこれを定めなければならない。 2.正しい
普通地方公共団体は、分担金、使用料、加入金及び手数料に関する事項については、条例でこれを定めなければならない(地方自治法228条1項)。
選挙権を有する普通地方公共団体の住民は、その属する普通地方公共団体の条例の制定または改廃を請求する権利を有するが、地方税の賦課徴収に関する条例については、その制定または改廃を請求することはできない。 3.正しい
選挙権を有する普通地方公共団体の住民は、その総数の1/50以上の者の連署をもって、その代表者から、普通地方公共団体の長に対し、条例(地方税の賦課徴収並びに分担金、使用料及び手数料の徴収に関するものを除く。)の制定又は改廃の請求をすることができる(地方自治法74条1項)。
したがって、地方税の賦課徴収に関する条例の改廃請求はできない。
市町村が行う国民健康保険は、保険料を徴収する方式のものであっても、強制加入とされ、保険料が強制徴収され、賦課徴収の強制の度合いにおいては租税に類似する性質を有するものであるから、これについても租税法律主義の趣旨が及ぶと解すべきである。 4.正しい
旭川市国民健康保険条例事件において、判例は、市町村が行う国民健康保険は、保険料を徴収する方式のものであっても、強制加入とされ、保険料が強制徴収され、賦課徴収の強制の度合いにおいては租税に類似する性質を有するものであるから、これについても憲法84条の趣旨が及ぶと解すべきであるとしている(最大判平成18年3月1日)。
地方税法の法定普通税の規定に反する内容の定めを条例に設けることによって当該規定の内容を実質的に変更することは、それが法定外普通税に関する条例であっても、地方税法の規定の趣旨、目的に反し、その効果を阻害する内容のものとして許されない。 5.正しい
判例は「法定普通税に関する条例において、地方税法の定める法定普通税についての強行規定の内容を変更することが同法に違反して許されないことはもとより、法定外普通税に関する条例において、同法の定める法定普通税についての強行規定に反する内容の定めを設けることによって当該規定の内容を実質的に変更することも、これと同様に、同法の規定の趣旨、目的に反し、その効果を阻害する内容のものとして許されないと解される。」としている(最判平成25年3月21日)。