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平成28年-問30 民法 物権

Lv4

問題 更新:2024-01-04 16:15:16

不動産先取特権に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 不動産の保存の先取特権は、保存行為を完了後、直ちに登記をしたときはその効力が保存され、同一不動産上に登記された既存の抵当権に優先する。
  2. 不動産工事の先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増加が現存する場合に限り、その増価額についてのみ存在する。
  3. 不動産売買の先取特権は、売買契約と同時に、不動産の代価またはその利息の弁済がされていない旨を登記したときでも、同一不動産上に登記された既存の抵当権に優先しない。
  4. 債権者が不動産先取特権の登記をした後、債務者がその不動産を第三者に売却した場合、不動産先取特権者は、当該第三取得者に対して先取特権を行使することができる。
  5. 同一の不動産について不動産保存の先取特権と不動産工事の先取特権が互いに競合する場合、各先取特権者は、その債権額の割合に応じて弁済を受ける。
  解答&解説

正解 5

解説

不動産の保存の先取特権は、保存行為を完了後、直ちに登記をしたときはその効力が保存され、同一不動産上に登記された既存の抵当権に優先する。 1.正しい。

条文によると、不動産の保存の先取特権の効力を保存するためには、保存行為が完了した後直ちに登記をしなければならない(民法337条)。
「効力を保存する」とは、「対抗する」の意味である。

また、条文には、民法337条の規定に従って登記をした先取特権は、抵当権に先立って行使することができるとある(民法339条)。

不動産工事の先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増加が現存する場合に限り、その増価額についてのみ存在する。 2.正しい。

条文によると、不動産の工事の先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増加が現存する場合に限り、その増価額についてのみ存在するとされている(民法327条2項)。

不動産売買の先取特権は、売買契約と同時に、不動産の代価またはその利息の弁済がされていない旨を登記したときでも、同一不動産上に登記された既存の抵当権に優先しない。 3.正しい。

不動産の売買の先取特権の効力を保存するためには、売買契約と同時に、不動産の代価又はその利息の弁済がされていない旨を登記しなければならない(民法340条)。
「効力を保存する」とは、「対抗する」の意味である。

そして不動産売買の先取特権と抵当権の優劣は登記によって決するとされている(民法341条、民法373条)。

債権者が不動産先取特権の登記をした後、債務者がその不動産を第三者に売却した場合、不動産先取特権者は、当該第三取得者に対して先取特権を行使することができる。 4.正しい。

不動産先取特権者と第三取得者は対抗関係に立つため、登記をした者が勝つ。
不動産先取特権者と第三取得者の関係を規定した条文がない以上は、民法の一般原則による解決になるためである(民法177条参照)。

なお、民法333条は、先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができないとするが、本条は先取特権が「動産」に及んでいる場合の規定である。
本肢は「不動産」についての先取特権についての問題であるから、民法333条は適用されない。

同一の不動産について不動産保存の先取特権と不動産工事の先取特権が互いに競合する場合、各先取特権者は、その債権額の割合に応じて弁済を受ける。 5.誤り。

不動産保存の先取特権と不動産工事の先取特権とを同格に扱う本肢は誤り。

同一の不動産について不動産保存の先取特権と不動産工事の先取特権が競合した場合は、不動産保存の先取特権が優先することになる(民法331条1項、民法325条)。

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