平成29年-問18 行政法 行政事件訴訟法
Lv3
問題 更新:2023-01-30 15:43:08
行政事件訴訟法3条3項による「裁決の取消しの訴え」に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 「裁決の取消しの訴え」の対象とされている裁決は、「義務付けの訴え」や「差止めの訴え」の対象ともされている。
- 「裁決の取消しの訴え」について、原告適格が認められるのは、裁決の相手方である審査請求人に限られ、それ以外の者には、原告適格は認められない。
- 「裁決の取消しの訴え」は、審査請求の対象とされた原処分に対する「処分の取消しの訴え」の提起が許されない場合に限り、提起が認められる。
- 「裁決の取消しの訴え」については、審査請求に対する裁決のみが対象とされており、再調査の請求に対する決定は、「処分の取消しの訴え」の対象とされている。
- 「裁決の取消しの訴え」については、「処分の取消しの訴え」における執行停止の規定は準用されていないから、裁決について、執行停止を求めることはできない。
正解 1
解説
「裁決の取消しの訴え」の対象とされている裁決は、「義務付けの訴え」や「差止めの訴え」の対象ともされている。 1.正しい
裁決の取消しの訴えとは、審査請求その他の不服申立てに対する行政庁の裁決、決定その他の行為の取消しを求める訴訟である(行政事件訴訟法3条3項)。
義務付けの訴えは、裁決がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、その損害を避けるために他に適当な方法がないときに限り(行政事件訴訟法37条の2)、差止めの訴えは、裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り(行政事件訴訟法37条の4)、それぞれ提起することができる。
裁決の取消しの訴えの対象とされている裁決は、義務付けの訴えや差止めの訴えの対象ともされている。
「裁決の取消しの訴え」について、原告適格が認められるのは、裁決の相手方である審査請求人に限られ、それ以外の者には、原告適格は認められない。 2.誤り
裁決の取消の訴えは、当該裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる(行政事件訴訟法9条)。
裁決の取消の訴えの原告適格となる「法律上の利益を有する者」については、裁決の相手方に限定されておらず、自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害され又は侵害されるおそれのある者であれば、取消の訴えを提起することができる(行政事件訴訟法9条1項、2項)。
「裁決の取消しの訴え」は、審査請求の対象とされた原処分に対する「処分の取消しの訴え」の提起が許されない場合に限り、提起が認められる。 3.誤り
元の処分に違法があり、かつ裁決にも違法があるという場合には、処分の取り消し訴訟と裁決の取消訴訟を両方提起することも、併合提起することも可能である。
取消訴訟は、処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消しの訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求めることができないとされている(行政事件訴訟法10条2項)。
しかし原処分主義を採用しているからといって、本肢のように審査請求の対象とされた原処分に対する処分の取消しの訴えの提起が許されない場合に限り、提起が認められるわけではない。
裁決の取消訴訟においては、処分の違法を理由として取消しを求めることができず、裁決の手続上の違法やその他裁決固有の違法のみしか主張することができないということである。
「裁決の取消しの訴え」については、審査請求に対する裁決のみが対象とされており、再調査の請求に対する決定は、「処分の取消しの訴え」の対象とされている。 4.誤り
裁決の取消しの訴えとは、審査請求その他の不服申立てに対する行政庁の裁決、決定その他の行為の取消しを求める訴訟であり(行政事件訴訟法3条3項)、行政不服審査法における裁決に限られず、他の法令で定める不服申立てに対する行政庁の義務的な応答行為も裁決の取消しの訴えの対象となる。
「裁決の取消しの訴え」については、「処分の取消しの訴え」における執行停止の規定は準用されていないから、裁決について、執行停止を求めることはできない。 5.誤り
審査請求と同様に、裁決の取消の訴えでも執行不停止の原則が採用され、原則として、処分の執行又は手続きの続行は妨げられない(行政事件訴訟法25条・29条)。
訴えを提起しただけでは、手続きはそのまま進行していくことになるので、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、執行停止の申立てをすることになる(行政事件訴訟法25条2項)。