平成29年-問27 民法 債権
Lv2
問題 更新:2024-01-07 12:18:04
自然人A(以下「A」という。)が団体B(以下「B」という。)に所属している場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。
ア.Bが法人である場合に、AがBの理事として第三者と法律行為をするときは、Aは、Bの代表としてではなく、Bの構成員全員の代理人として当該法律行為を行う。
イ.Bが権利能力のない社団である場合には、Bの財産は、Bを構成するAら総社員の総有に属する。
ウ.Bが組合である場合には、Aは、いつでも組合財産についてAの共有持分に応じた分割を請求することができる。
エ.Bが組合であり、Aが組合の業務を執行する組合員である場合は、Aは、組合財産から当然に報酬を得ることができる。
オ.Bが組合であり、Aが組合の業務を執行する組合員である場合に、組合契約によりAの業務執行権限を制限しても、組合は、善意無過失の第三者には対抗できない。
- ア・ウ
- ア・エ
- イ・ウ
- イ・オ
- エ・オ
正解 4
解説
Bが法人である場合に、AがBの理事として第三者と法律行為をするときは、Aは、Bの代表としてではなく、Bの構成員全員の代理人として当該法律行為を行う。 ア.妥当でない。
AはBの構成員全員の代理人として法律行為をするわけではなく、AはBを代表して法律行為をする。
条文によると「理事は、一般社団法人を代表する」と規定されている(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律77条1項本文)。
Bが権利能力のない社団である場合には、Bの財産は、Bを構成するAら総社員の総有に属する。 イ.妥当である。
権利能力なき社団の財産は、実質的には社団を構成する総社員の所謂総有に属するものである(最判昭和32年11月14日)。
なお、「総有」とは、広義の共有の一種である。
広義の共有は、狭義の共有、合有、総有の3つに分類され、それぞれの特徴は次のとおりである。
広義の共有 | 狭義の共有 | 合有 | 総有 |
---|---|---|---|
具体例 | 不動産を二人で購入するなど、通常の場面 | 組合 | 権利能力なき社団 |
持分 | あり(具体的) | あり(しかし潜在的) | なし |
持分の譲渡 | できる | できない | できない |
分割の請求 | できる | 原則できない | できない |
広義の共有
狭義の共有 | |
---|---|
具体例 | 不動産を二人で購入するなど、通常の場面 |
持分 | あり(具体的) |
持分の譲渡 | できる |
分割の請求 | できる |
合有 | |
---|---|
具体例 | 組合 |
持分 | あり(しかし潜在的) |
持分の譲渡 | できない |
分割の請求 | 原則できない |
総有 | |
---|---|
具体例 | 権利能力なき社団 |
持分 | なし |
持分の譲渡 | できない |
分割の請求 | できない |
Bが組合である場合には、Aは、いつでも組合財産についてAの共有持分に応じた分割を請求することができる。 ウ.妥当でない。
肢イ表参照。
各組合員の出資その他の組合財産は、総組合員の共有に属する(民法668条)。この「共有」は「合有」を意味し、合有は原則として分割請求ができない。
組合員は、清算前に組合財産の分割を求めることができない(民法676条3項)。
その理由として、組合財産は組合の目的を遂行するためにあることから、分割請求を認めてしまうと組合の目的の妨げになってしまうためである。
Bが組合であり、Aが組合の業務を執行する組合員である場合は、Aは、組合財産から当然に報酬を得ることができる。 エ.妥当でない。
組合の業務を執行する組合員は、特約がなければ、組合に対して報酬を請求することができない(民法671条、民法648条)。
Bが組合であり、Aが組合の業務を執行する組合員である場合に、組合契約によりAの業務執行権限を制限しても、組合は、善意無過失の第三者には対抗できない。 オ.妥当である。
組合は、業務執行者があるときは、業務執行者のみが組合員を代理することができ、業務執行者が数人あるときは、各業務執行者は、業務執行者の過半数の同意を得たときに限り、組合員を代理することができるが(民法670条の2第2項)、判例は「組合規約等で内部的に業務執行者の代理権限を制限しても、その制限は善意・無過失の第三には対抗できない」としている(最判昭和38年5月31日)。