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  4. 問26

平成30年-問26 行政法 その他

Lv3

問題 更新:2023-01-30 14:19:50

ある市立保育所の廃止に関する以下の会話を受けてCが論点を整理した次の記述のうち、法令および最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

A:友人が居住している市で、3つある市立保育所を廃止するための条例が制定されるらしいんだ。この場合、どうしたら、条例の制定を阻止できるのだろうか。

B:議会への働きかけも含めていろいろ考えられるけれども、その他、何らかの訴訟を提起することも考えられるね。

C:行政事件訴訟法と地方自治法を勉強するいい機会だから、すこし考えてみよう。

  1. 特定の市立保育所のみを廃止する条例の効力を停止するために、当該条例の効力の停止の申立てのみを、それに対する抗告訴訟の提起の前に行うことができる。
  2. 特定の市立保育所を廃止する条例の制定行為については、住民訴訟によってその差止めを求めることができる。
  3. 条例の制定行為は、普通地方公共団体の議会が行う立法行為に属するが、一般的に抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解されている。
  4. 特定の市立保育所の廃止条例の制定に関する議決を阻止するため、一定数の選挙人の署名により、地方自治法上の直接請求をすることができる。
  5. 処分の取消判決や執行停止の決定には第三者効が認められているため、市立保育所廃止条例の制定行為の適法性を抗告訴訟によって争うことには合理性がある。
  解答&解説

正解 5

解説

特定の市立保育所のみを廃止する条例の効力を停止するために、当該条例の効力の停止の申立てのみを、それに対する抗告訴訟の提起の前に行うことができる。 1.妥当でない

行政事件訴訟法(25条1項)では、「処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によって目的を達成することができる場合にはすることができない」とあり、当該条例の効力の停止の申し立てのみもって抗告訴訟の提起前に行うことはできない。

特定の市立保育所を廃止する条例の制定行為については、住民訴訟によってその差止めを求めることができる。 2.妥当でない

行政立法を制定する行為や条例を制定する行為は、通常、特定の者に対して個別具体的に権利義務への影響を及ぼすわけではないため処分性は否定される。
よって抗告訴訟を提起することはできない。

また、住民訴訟では、その差し止めを求めることはできない。

地方自治法の住民訴訟は、自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起する民衆訴訟であり、客観的な法秩序の維持を目的とするので、特定の私立保育所を廃止する条例制定行為の差止めといった主観的な目的とする訴訟ではないことに注意されたい。

条例の制定行為は、普通地方公共団体の議会が行う立法行為に属するが、一般的に抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解されている。 3.妥当でない

条例の制定は、普通地方公共団体の議会が行う立法作用に属し、一般的には、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるものではないとされている。

条例の制定行為は、通常は、特定の者に対して個別具体的に権利義務へ影響を及ぼすわけではないので、取消訴訟の訴訟要件である処分性が否定されるからである。

ただし、完全に否定されたわけではなく、判例では、「本件改正条例は、本件各保育所の廃止のみを内容とするものであって、他に行政庁の処分を待つことなく、その施行により各保育所廃止の効果を発生させ、当該保育所に現に入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して、直接、当該保育所において保育を受けることを期待し得る上記の法的地位を奪う結果を生じさせるものであるから、その制定行為は、行政庁の処分と実質的に同視し得るものということができる。・・・以上によれば、本件改正条例の制定行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたると解する(最判平成21年11月26日)」としている。

特定の市立保育所の廃止条例の制定に関する議決を阻止するため、一定数の選挙人の署名により、地方自治法上の直接請求をすることができる。 4.妥当でない

一定数の選挙人の連署によって条例の改廃を求める直接請求はできるが、最終的な決定権限は議会にあるので、直接請求によって議会の議決を阻止できるわけではない。

普通地方公共団体の条例の制定又は改廃を請求するには、総数の1/50以上の連署が必要であり、その請求先は、当該普通地方公共団体の長に対してすることになる(地方自治法74条1項)。

条例の制定又は改廃について直接請求がなされた場合、長は請求を受理した日から20日以内に議会を招集し、意見を附けてこれを議会に付議し、その結果を代表者に通知するとともに、これを公表しなければならない(地方自治法74条3項、4項)。
したがって、代表者は意見を述べる機会を与えられるが、あくまでも最終判断をするのは議会である。

処分の取消判決や執行停止の決定には第三者効が認められているため、市立保育所廃止条例の制定行為の適法性を抗告訴訟によって争うことには合理性がある。 5.妥当である

判例では、「本件改正条例は、本件各保育所の廃止のみを内容とするものであって、他に行政庁の処分を待つことなく、その施行により各保育所廃止の効果を発生させ、当該保育所に現に入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して、直接、当該保育所において保育を受けることを期待し得る上記の法的地位を奪う結果を生じさせるものであるから、その制定行為は、行政庁の処分と実質的に同視し得るものということができる。・・・
以上によれば、本件改正条例の制定行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたると解する(最判平成21年11月26日)」としている。

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