平成30年-問42 多肢選択式 行政法
Lv2
問題 更新:2023-11-20 12:35:44
行政事件訴訟法10条は、二つの「取消しの理由の制限」を定めている。次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。
第一に、「取消訴訟においては、[ ア ]に関係のない違法を理由として取消しを求めることができない」(10条1項)。これは、訴えが仮に適法なものであったとしても、[ ア ]に関係のない違法を理由に取消しを求めることはできない(そのような違法事由しか主張していない訴えについては[ イ ]が下されることになる)ことを規定するものと解されている。取消訴訟が(国民の権利利益の救済を目的とする)主観訴訟であることにかんがみ、主観訴訟における当然の制限を規定したものにすぎないとの評価がある反面、違法事由のなかにはそれが[ ア ]に関係するものかどうかが不明確な場合もあり、「[ ア ]に関係のない違法」を広く解すると、国民の権利利益の救済の障害となる場合もあるのではないかとの指摘もある。
第二に、「処分の取消しの訴えとその処分についての[ ウ ]の取消しの訴えとを提起することができる場合には」、[ ウ ]の取消しの訴えにおいては「[ エ ]を理由として取消しを求めることができない」(10条2項)。これは、[ エ ]は、処分取消訴訟において主張しなければならないという原則(原処分主義)を規定するものと解されている。
- 審査請求を棄却した裁決
- 処分を差止める判決
- 訴えを却下する判決
- 処分の無効
- 処分取消裁決
- 処分の違法
- 法律上保護された利益
- 裁決の違法
- 不作為の違法
- 裁決の無効
- 自己の法律上の利益
- 審査請求を認容した裁決
- 処分により保護される利益
- 請求を認容する判決
- 処分を義務付ける判決
- 請求を棄却する判決
- 処分取消判決
- 法律上保護に値する利益
- 事情判決
- 裁判上保護されるべき利益
- ア
-
- イ
-
- ウ
-
- エ
-
正解
- ア11
- イ16
- ウ1
- エ6
解説
ア:11(自己の法律上の利益)、イ:16(請求を棄却する判決)、ウ:1(審査請求を棄却した裁決)、エ:6(処分の違法)
空欄に補充した文章は以下のとおり。
第一に、「取消訴訟においては、[ア:自己の法律上の利益]に関係のない違法を理由として取消しを求めることができない」(10条1項)。これは、訴えが仮に適法なものであったとしても、[ア:自己の法律上の利益]に関係のない違法を理由に取消しを求めることはできない(そのような違法事由しか主張していない訴えについては[イ:請求を棄却する判決]が下されることになる)ことを規定するものと解されている。取消訴訟が(国民の権利利益の救済を目的とする)主観訴訟であることにかんがみ、主観訴訟における当然の制限を規定したものにすぎないとの評価がある反面、違法事由のなかにはそれが[ア:自己の法律上の利益]に関係するものかどうかが不明確な場合もあり、「[ア:自己の法律上の利益]に関係のない違法」を広く解すると、国民の権利利益の救済の障害となる場合もあるのではないかとの指摘もある。
第二に、「処分の取消しの訴えとその処分についての[ウ:審査請求を棄却した裁決]の取消しの訴えとを提起することができる場合には」、[ウ:審査請求を棄却した裁決]の取消しの訴えにおいては「[エ:処分の違法]を理由として取消しを求めることができない」(10条2項)。これは、[エ:処分の違法]は、処分取消訴訟において主張しなければならないという原則(原処分主義)を規定するものと解されている。
本問は、行政事件訴訟法10条1項、2項を題材にしている。
ア.自己の法律上の利益
行政事件訴訟法10条1項。「取消訴訟においては、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として取消しを求めることができない」
イ.請求を棄却する判決
まず、判決を簡単に説明すると、判決には、本案判決と訴訟判決がある。
前者の本案判決とは、原告が訴えをもって主張した権利又は法律関係の有無を判断し、請求を認容又は棄却する判決である。この本案判決をするには、必要な訴訟要件が具備されてなければならず、訴訟要件が具備されてなければ、権利又は法律関係の有無を判断することなく請求を却下する判決が下されることになる。これを前者の本案判決に対比して、後者を訴訟判決という。
本問では、「訴えが仮に適法なものであったとしても・・・」とあることから、請求内容を審理した上での本案判決(請求を認容又は棄却する判決)がなされると読み取ることができ、「そのような違法事由しか主張していない訴え」とあることから「請求を棄却する判決」となる。
ウ.審査請求を棄却した裁決
行政事件訴訟法10条2項。「処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消しの訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求めることができない。
エ.処分の違法
肢ウ説明参照。
行政事件訴訟法10条2項は、原処分主義を表したものである。