令和元年-問31 民法 物権
Lv3
問題 更新:2024-01-04 16:14:29
質権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。
- 動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができず、また、質物の占有を第三者によって奪われたときは、占有回収の訴えによってのみ、その質物を回復することができる。
- 不動産質権は、目的不動産を債権者に引き渡すことによってその効力を生ずるが、不動産質権者は、質権設定登記をしなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。
- 債務者が他人の所有に属する動産につき質権を設定した場合であっても、債権者は、その動産が債務者の所有物であることについて過失なく信じたときは、質権を即時取得することができる。
- 不動産質権者は、設定者の承諾を得ることを要件として、目的不動産の用法に従ってその使用収益をすることができる。
- 質権は、債権などの財産権の上にこれを設定することができる。
正解 4
解説
動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができず、また、質物の占有を第三者によって奪われたときは、占有回収の訴えによってのみ、その質物を回復することができる。 1.妥当である。
動産質の対抗要件及び質物の占有の回復について条文は、「動産質権者は、継続して質物を占有しなければその質権をもって第三者に対抗することができず」(民法352条)、「動産質権者は、質物の占有を奪われたときは、占有回収の訴えによってのみ、その質物を回復することができる」(民法353条)と規定している。
不動産質権は、目的不動産を債権者に引き渡すことによってその効力を生ずるが、不動産質権者は、質権設定登記をしなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。 2.妥当である。
質権の設定について条文は、「質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる」と規定している(民法344条)。
そして不動産質権者は、民法177条に基づき、登記をしなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。
債務者が他人の所有に属する動産につき質権を設定した場合であっても、債権者は、その動産が債務者の所有物であることについて過失なく信じたときは、質権を即時取得することができる。 3.妥当である。
即時取得について条文は、「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する」と規定している(民法192条)。
この取引行為については、売買は当然として、贈与・譲渡担保・質権設定・弁済・代物弁済としての給付も該当する。
不動産質権者は、設定者の承諾を得ることを要件として、目的不動産の用法に従ってその使用収益をすることができる。 4.妥当でない。
設定者の承諾を得る必要はない。
不動産質権者による使用及び収益について条文は、「不動産質権者は、質権の目的である不動産の用法に従い、その使用及び収益をすることができる」と規定している(民法356条)。
質権は、債権などの財産権の上にこれを設定することができる。 5.妥当である。
権利質の権利等について条文は、「質権は、財産権をその目的とすることができる」と規定している(民法362条)。
権利質とは、債権・株式・用益物権などの財産権を目的とする質権をいい、権利質が目的となるためには、財産的価値を持ち、譲渡可能でなければならない。
また、目的債権が保証債務によって担保されている場合、効力は保証債権に及ぶとされている。