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  4. 問21

令和3年-問21 行政法 国家賠償法

Lv2

問題 更新:2023-11-20 17:10:19

規制権限の不行使(不作為)を理由とする国家賠償請求に関する次のア~エの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.石綿製品の製造等を行う工場または作業場の労働者が石綿の粉じんにばく露したことにつき、一定の時点以降、労働大臣(当時)が労働基準法に基づく省令制定権限を行使して罰則をもって上記の工場等に局所排気装置を設置することを義務付けなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上違法である。

イ.鉱山労働者が石炭等の粉じんを吸い込んでじん肺による健康被害を受けたことにつき、一定の時点以降、通商産業大臣(当時)が鉱山保安法に基づき粉じん発生防止策の権限を行使しなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上違法である。

ウ.宅地建物取引業法に基づき免許を更新された業者が不正行為により個々の取引関係者に対して被害を負わせたことにつき、免許権者である知事が事前に更新を拒否しなかったことは、当該被害者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法である。

エ.いわゆる水俣病による健康被害につき、一定の時点以降、健康被害の拡大防止のために、水質規制に関する当時の法律に基づき指定水域の指定等の規制権限を国が行使しなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上違法とはならない。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. ウ・エ
  解答&解説

正解 1

解説

ア、イが妥当である

石綿製品の製造等を行う工場または作業場の労働者が石綿の粉じんにばく露したことにつき、一定の時点以降、労働大臣(当時)が労働基準法に基づく省令制定権限を行使して罰則をもって上記の工場等に局所排気装置を設置することを義務付けなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上違法である。 ア.妥当である

石綿製品の製造等を行う工場又は作業場の労働者が石綿の粉じんにばく露したことにより石綿肺等の石綿関連疾患にり患した場合において、昭和33年当時、①石綿肺に関する医学的知見が確立し、国も石綿の粉じんによる被害の深刻さを認識していたこと、②上記の工場等における石綿の粉じん防止策として最も有効な局所排気装置の設置を義務付けるために必要な技術的知見が存在していたこと、③従前からの行政指導によっても局所排気装置の設置が進んでいなかったことなど判示の事情の下では、石綿に関する作業につき局所排気装置の設置の促進を指示する通達が発出された同年5月26日以降、労働大臣が労働基準法(昭和47年法律第57号による改正前のもの)に基づく省令制定権限を行使して罰則をもって上記の工場等に局所排気装置を設置することを義務付けなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上違法であるとしている(最判平成26年10月9日)。

鉱山労働者が石炭等の粉じんを吸い込んでじん肺による健康被害を受けたことにつき、一定の時点以降、通商産業大臣(当時)が鉱山保安法に基づき粉じん発生防止策の権限を行使しなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上違法である。 イ.妥当である

炭鉱で粉じん作業に従事した労働者が粉じんの吸入によりじん肺にり患した場合において、炭鉱労働者のじん肺り患の深刻な実情及びじん肺に関する医学的知見の変遷を踏まえて、じん肺を炭じん等の鉱物性粉じんの吸入によって生じたものを広く含むものとして定義し、これを施策の対象とするじん肺法が成立したこと、そのころまでには、さく岩機の湿式型化によりじん肺の発生の原因となる粉じんの発生を著しく抑制することができるとの工学的知見が明らかとなっており(略)、同法成立の時までに、鉱山保安法に基づく省令の改正を行わず、さく岩機の湿式型化等を一般的な保安規制とはしなかったことなど判示の事実関係の下では、じん肺法が成立した後、通商産業大臣が鉱山保安法に基づく省令改正権限等の保安規制の権限を直ちに行使しなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上違法である(最判平成16年4月27日)。

宅地建物取引業法に基づき免許を更新された業者が不正行為により個々の取引関係者に対して被害を負わせたことにつき、免許権者である知事が事前に更新を拒否しなかったことは、当該被害者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法である。 ウ.妥当でない

宅地建物取引業者に対する知事の免許の付与ないし更新が宅地建物取引業法所定の免許基準に適合しない場合であっても、知事の右行為は(略)、直ちに国家賠償法1条1項にいう違法な行為にあたるものではない(最判平成元年11月24日)。

いわゆる水俣病による健康被害につき、一定の時点以降、健康被害の拡大防止のために、水質規制に関する当時の法律に基づき指定水域の指定等の規制権限を国が行使しなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上違法とはならない。 エ.妥当でない

国が、昭和34年11月末の時点で、多数の水俣病患者が発生し、死亡者も相当数に上っていると認識していたこと、水俣病の原因物質がある種の有機水銀化合物であり、その排出源が特定の工場のアセトアルデヒド製造施設であることを高度のがい然性をもって認識し得る状況にあったこと、同工場の排水に含まれる微量の水銀の定量分析をすることが可能であったことなど判示の事情の下においては、同年12月末までに、水俣病による深刻な健康被害の拡大防止のために、公共用水域の水質の保全に関する法律及び工場排水等の規制に関する法律に基づいて、指定水域の指定、水質基準及び特定施設の定めをし、上記製造施設からの工場排水についての処理方法の改善、同施設の使用の一時停止その他必要な措置を執ることを命ずるなどの規制権限を行使しなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上違法となる(最判平成16年10月15日)。

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