令和3年-問23 行政法 地方自治法
Lv3
問題 更新:2023-01-27 20:50:09
普通地方公共団体に適用される法令等に関する次の記述のうち、憲法および地方自治法の規定に照らし、正しいものはどれか。
- 国会は、当該普通地方公共団体の議会の同意を得なければ、特定の地方公共団体にのみ適用される法律を制定することはできない。
- 普通地方公共団体は、法定受託事務についても条例を制定することができるが、条例に違反した者に対する刑罰を規定するには、個別の法律による委任を必要とする。
- 普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務に関し、規則を制定することができ、条例による委任のある場合には、規則で刑罰を規定することもできる。
- 条例の制定は、普通地方公共団体の議会の権限であるから、条例案を議会に提出できるのは議会の議員のみであり、長による提出は認められていない。
- 普通地方公共団体の議会の議員および長の選挙権を有する者は、法定数の連署をもって、当該普通地方公共団体の長に対し、条例の制定または改廃の請求をすることができるが、地方税の賦課徴収等に関する事項はその対象から除外されている。
正解 5
解説
国会は、当該普通地方公共団体の議会の同意を得なければ、特定の地方公共団体にのみ適用される法律を制定することはできない。 1.誤り
一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない(憲法95条)。
したがって地方公共団体の議会の同意を得る必要はない。
なお、「一の」というのは、「特定の」という意味である。
たとえば、旧軍港市転換法(軍事利用されていた港を持つ市を平和産業港湾都市に転換させる法律)は、4つの市(横須賀市、佐世保、舞鶴市、呉市)に適用される地方自治特別法である。
また、本規定は他機関関与がなくとも、国会の意思のみによって立法できるとされている「国会単独立法の原則」の例外である。
普通地方公共団体は、法定受託事務についても条例を制定することができるが、条例に違反した者に対する刑罰を規定するには、個別の法律による委任を必要とする。 2.誤り
普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定することができる(地方自治法14条1項)。
また、この「事務」には、自治事務、法定受託事務のいずれも含んでいるとされる。
ただし、「条例によって刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されておればたりる」(最大判昭和37年5月30日)とされているため、条例で刑罰を定めるには、個別の法律による委任までは必要とされていない。
普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務に関し、規則を制定することができ、条例による委任のある場合には、規則で刑罰を規定することもできる。 3.誤り
普通地方公共団体の長は、規則で過料を科する旨を規定することはできるが、規則に違反した者に対し、刑罰の規定を設けることはできない。
普通地方公共団体の長は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、普通地方公共団体の規則中に、規則に違反した者に対し、5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる(地方自治法15条2項)。
条例の制定は、普通地方公共団体の議会の権限であるから、条例案を議会に提出できるのは議会の議員のみであり、長による提出は認められていない。 4.誤り
普通地方公共団体の長は、条例案の提出をすることができる。
普通地方公共団体の長は、普通地方公共団体の議会の議決を経べき事件につきその議案を提出することができ(地方自治法149条1号)、ここにいう「普通地方公共団体の議会の議決を経べき事件」には、「条例を設け又は改廃すること」が含まれている(地方自治法96条1項1号)。
普通地方公共団体の議会の議員および長の選挙権を有する者は、法定数の連署をもって、当該普通地方公共団体の長に対し、条例の制定または改廃の請求をすることができるが、地方税の賦課徴収等に関する事項はその対象から除外されている。 5.正しい
制定又は改廃の請求ができる条例の内容は、「地方税の賦課徴収並びに分担金、使用料及び手数料の徴収に関するものを除く」とされている(地方自治法74条1項かっこ書き)。