令和4年-問23 行政法 地方自治法
Lv4
問題 更新:2023-01-17 10:14:04
住民監査請求および住民訴訟に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 住民訴訟は、普通地方公共団体の住民にのみ出訴が認められた客観訴訟であるが、訴訟提起の時点で当該地方公共団体の住民であれば足り、その後他に転出しても当該訴訟が不適法となることはない。
- 普通地方公共団体における違法な財務会計行為について住民訴訟を提起しようとする者は、当該財務会計行為が行われた時点において当該地方公共団体の住民であったことが必要となる。
- 普通地方公共団体における違法な財務会計行為について住民訴訟を提起しようとする者は、当該財務会計行為について、その者以外の住民が既に提起した住民監査請求の監査結果が出ている場合は、自ら別個に住民監査請求を行う必要はない。
- 普通地方公共団体において違法な財務会計行為があると認めるときは、当該財務会計行為と法律上の利害関係のある者は、当該地方公共団体の住民でなくとも住民監査請求をすることができる。
- 違法に公金の賦課や徴収を怠る事実に関し、住民が住民監査請求をした場合において、それに対する監査委員の監査の結果または勧告に不服があるとき、当該住民は、地方自治法に定められた出訴期間内に住民訴訟を提起することができる。
正解 5
解説
住民訴訟は、普通地方公共団体の住民にのみ出訴が認められた客観訴訟であるが、訴訟提起の時点で当該地方公共団体の住民であれば足り、その後他に転出しても当該訴訟が不適法となることはない。 1.妥当でない
住民訴訟の訴訟要件の一つである当該普通地方公共団体の住民であることは、維持されなければならない。
普通地方公共団体の住民が、地方自治法242条の2に基づく訴えを提起した後、事実審の口頭弁論終結時までに当該普通地方公共団体から転出した場合には、当事者適格を欠く者の訴えとして不適法となる(大阪高判?昭和59年1月25日)。
普通地方公共団体における違法な財務会計行為について住民訴訟を提起しようとする者は、当該財務会計行為が行われた時点において当該地方公共団体の住民であったことが必要となる。 2.妥当でない
「当該財務会計行為が行われた時点において当該地方公共団体の住民であったことが必要となる。」としているので妥当でない。
住民訴訟をするには、事前に住民監査請求(事務監査ではない)をしていることが要件となる(地方自治法242条の2第1項)。
また、住民監査請求の主体は「普通地方公共団体の住民」であるため、選挙権を有さない者でも、納税者でなくても、日本人でなくても、法人であっても、住民監査請求をした当該地方公共団体の住民であり、かつ法律上の行為能力が認められている限り、住民訴訟を提起することができる(地方自治法242条1項)。
普通地方公共団体における違法な財務会計行為について住民訴訟を提起しようとする者は、当該財務会計行為について、その者以外の住民が既に提起した住民監査請求の監査結果が出ている場合は、自ら別個に住民監査請求を行う必要はない。 3.妥当でない
他の住民によって既に住民監査請求の監査結果が出ていたとしても、自ら住民監査請求を行わずに住民訴訟を提起することはできない。
当該普通地方公共団体の住民であっても、住民監査請求をしていなければ住民訴訟を提起することができないことを、住民監査請求前置主義と呼んでいる(地方自治法242条の2第1項)。
住民訴訟の要件として、請求権者は住民監査請求をした住民に限られている。
普通地方公共団体において違法な財務会計行為があると認めるときは、当該財務会計行為と法律上の利害関係のある者は、当該地方公共団体の住民でなくとも住民監査請求をすることができる。 4.妥当でない
「当該地方公共団体の住民でなくとも住民監査請求をすることができる。」としているので妥当でない。
普通地方公共団体の住民は、住民監査請求をすることが認められているが(地方自治法242条1項)、たとえ当該財務会計行為と法律上の利害関係があったとしても、住民以外に住民監査請求ができると定めている条文はない。
違法に公金の賦課や徴収を怠る事実に関し、住民が住民監査請求をした場合において、それに対する監査委員の監査の結果または勧告に不服があるとき、当該住民は、地方自治法に定められた出訴期間内に住民訴訟を提起することができる。 5.妥当である
住民が住民監査請求をした場合において、監査委員の監査の結果または勧告に不服があるときは、当該監査の結果又は当該勧告の内容の通知があった日から30日以内に住民訴訟を提起することができる(地方自治法242条の2第1項・2項)。