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令和4年-問27 民法 総則

Lv2

問題 更新:2023-01-17 10:18:00

虚偽表示の無効を対抗できない善意の第三者に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bは当該土地上に建物を建築し、これを善意のCに賃貸した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できない。
  2. AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bが当該土地を悪意のCに譲渡し、さらにCが善意のDに譲渡した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をDに対抗できない。
  3. AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bは善意の債権者Cのために当該土地に抵当権を設定した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できない。
  4. AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bの債権者である善意のCが、当該土地に対して差押えを行った。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できない。
  5. AはBと通謀してAのCに対する指名債権をBに仮装譲渡したところ、Bは当該債権を善意のDに譲渡した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をDに対抗できない。
  解答&解説

正解 1

解説

民法94条2項の第三者に関する判例の知識を問うものである。

民法94条
1項 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2項 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

ここでいう第三者とは、虚偽表示の当事者又はその包括承継人以外の者であって、その表示の目的につき法律上の利害関係を有するに至った者を指す(大判大正9年7月23日)。
包括承継人とは、前主の法律上の地位を一括して引継ぐ者のことで、たとえば相続人や合併後の会社のことである。包括承継人は前主と同一の法律上の立場に立つとされる。

AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bは当該土地上に建物を建築し、これを善意のCに賃貸した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できない。 1.妥当でない

Cは虚偽表示の第三者にあたらないので、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できる。

土地の仮装譲受人が当該土地上に建物を建築してこれを他人に賃貸した場合、当該建物賃借人は、仮装譲渡された土地については法律上の利害関係を有するものとは認められないから、民法94条2項所定の第三者にはあたらない(最判昭和57年6月8日)。

土地と建物は別の不動産であるから、「建物の」賃借人は「土地」について法律上の利害関係がないので(せいぜい事実上の利害関係に過ぎない)、第三者にはあたらないとの判断である。

AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bが当該土地を悪意のCに譲渡し、さらにCが善意のDに譲渡した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をDに対抗できない。 2.妥当である

直接取引関係に立った者が悪意の場合でも、当該悪意者からの転得者が善意であるときは、善意の第三者にあたる(最判昭和45年7月24日)。

直接取引関係に立ったCは悪意であるが、Cから土地を譲渡された転得者のDは善意であるため第三者にあたる。したがって、Aは、虚偽表示の無効をDに対抗することができない。

AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bは善意の債権者Cのために当該土地に抵当権を設定した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できない。 3.妥当である

虚偽表示による譲受人からその目的物について抵当権の設定を受けた者は、民法94条2項の第三者に含まれる(大判大正4年12月17日、大判昭和6年10月24日)。

Aの無効の主張を認めてしまうと善意の第三者であるCの物権取得が否定されることになるからである。したがって、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗することができない。

AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bの債権者である善意のCが、当該土地に対して差押えを行った。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できない。 4.妥当である

仮装譲受人の一般債権者は、民法94条2項の第三者にあたらないが(大判大正9年7月23日)、一般債権者であっても仮装譲受人の下にある虚偽表示目的物を差し押さえた場合には民法94条2項の第三者にあたる(最判昭和48年6月28日)。

差押えにより、目的物の所有権の所在と債権回収の可能性との関係が密接化するから、Cは法律上の利害関係を有するに至った第三者にあたる。したがって、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗することができない。

AはBと通謀してAのCに対する指名債権をBに仮装譲渡したところ、Bは当該債権を善意のDに譲渡した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をDに対抗できない。 5.妥当である

虚偽表示に基づき発生した債権を善意で譲受けた者は、民法94条2項の第三者に該当する(大判昭和13年12月17日)。

通謀虚偽表示に基づき発生した指名債権を善意で譲受けたDは第三者にあたる。したがって、Aは、虚偽表示の無効をDに対抗することができない。

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