平成27年-問36改題 商法 商行為
Lv3
問題 更新:2023-01-30 19:36:41
運送営業および場屋営業に関する次の記述のうち、商法の規定に照らし、誤っているものはどれか。
- 運送人は、運送品の受取り、引渡し、保管および運送に関して注意を怠らなかったことを証明するのでなければ、その運送品に生じた損害を賠償する責任を負う。
- 運送品が高価品であるときに、荷送人が運送を委託するにあたり、運送品の種類および価額を通知していなければ、運送人はその運送品に生じた損害を賠償する責任を負わない。
- 場屋の営業主は、客から寄託を受けた物品について、物品の保管に関して注意を怠らなかったことを証明すれば、その物品に生じた損害を賠償する責任を負わない。
- 客が特に寄託しない物品であっても、客が場屋内に携帯した物品が場屋の営業主またはその使用する者の不注意によって損害を受けたときは、場屋の営業主はその物品に生じた損害を賠償する責任を負う。
- 場屋の営業主が寄託を受けた物品が高価品であるときは、客がその種類および価額を通知してこれを場屋の営業主に寄託したのでなければ、場屋の営業主はその物品に生じた損害を賠償する責任を負わない。
正解 3
解説
運送人は、運送品の受取り、引渡し、保管および運送に関して注意を怠らなかったことを証明するのでなければ、その運送品に生じた損害を賠償する責任を負う。 1.正しい。
運送人は、運送品の受取から引渡しまでの間にその運送品が滅失し若しくは損傷し、若しくはその滅失若しくは損傷の原因が生じ、又は運送品が延着したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。ただし、運送人がその運送品の受取、運送、保管及び引渡しについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない(商法575条)。
訴訟実務においては、自分にとって有利になることは自らが主張して、立証するのが基本である。損害賠償請求であれば、被害者側が加害者に対して「お前には落ち度(過失)」があったと主張し、それを立証するのが通常である。
しかし商法は民法とは異なり「プロの法律」なので、プロである運送人側に「落ち度がないこと」の立証を要求したのである。
運送品が高価品であるときに、荷送人が運送を委託するにあたり、運送品の種類および価額を通知していなければ、運送人はその運送品に生じた損害を賠償する責任を負わない。 2.正しい。
貨幣、有価証券その他の高価品については、荷送人が運送を委託するにあたり、その種類及び価額を通知した場合を除き、運送人は、その滅失、損傷又は延着について損害賠償の責任を負わない(商法577条1項)。
場屋の営業主は、客から寄託を受けた物品について、物品の保管に関して注意を怠らなかったことを証明すれば、その物品に生じた損害を賠償する責任を負わない。 3.誤り。
責任を免れるためには「注意を怠らなかったことを証明する」だけでは足りず、不可抗力によることを証明する必要がある。
旅館、飲食店、浴場その他の客の来集を目的とする場屋における取引をすることを業とする者は、客から寄託を受けた物品の滅失又は損傷については、不可抗力によるものであったことを証明しなければ損害賠償の責任を免れることはできない(商法596条1項)。
客が特に寄託しない物品であっても、客が場屋内に携帯した物品が場屋の営業主またはその使用する者の不注意によって損害を受けたときは、場屋の営業主はその物品に生じた損害を賠償する責任を負う。 4.正しい。
客が寄託していない物品であっても、場屋の中に携帯した物品が、場屋営業者が注意を怠ったことによって滅失し、又は損傷したときは、場屋営業者は、損害賠償の責任を負う(商法596条2項)。
場屋の営業主が寄託を受けた物品が高価品であるときは、客がその種類および価額を通知してこれを場屋の営業主に寄託したのでなければ、場屋の営業主はその物品に生じた損害を賠償する責任を負わない。 5.正しい。
貨幣、有価証券その他の高価品については、客がその種類及び価額を通知してこれを場屋営業者に寄託した場合を除き、場屋営業者は、その滅失又は損傷によって生じた損害を賠償する責任を負わない(商法597条)。