平成27年-問38改題 商法 会社法
Lv4
問題 更新:2023-01-30 19:41:54
取締役会設置会社(指名委員会等設置会社を除く。)であり、種類株式発行会社でない株式会社の単元株式に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。
- 株式会社は、その発行する株式について、一定の数の株式をもって株主が株主総会において一個の議決権を行使することができる一単元の株式とする旨を定款で定めることができる。
- 株式会社は、単元未満株主が当該単元未満株式について残余財産の分配を受ける権利を行使することができない旨を定款で定めることができない。
- 単元未満株主は、定款にその旨の定めがあるときに限り、株式会社に対し、自己の有する単元未満株式を買い取ることを請求することができる。
- 単元未満株主は、定款にその旨の定めがあるときに限り、株式会社に対し、自己の有する単元未満株式と併せて単元株式となる数の株式を売り渡すことを請求することができる。
- 株式会社が単元株式数を減少し、または単元株式数についての定款の定めを廃止するときは、取締役会の決議によりこれを行うことができる。
正解 3
解説
株式会社は、その発行する株式について、一定の数の株式をもって株主が株主総会において一個の議決権を行使することができる一単元の株式とする旨を定款で定めることができる。 1.正しい。
株式会社は、その発行する株式について、一定の数の株式をもって株主が株主総会又は種類株主総会において一個の議決権を行使することができる一単元の株式とする旨を定款で定めることができる(会社法188条1項)。
なお、単元株式数の設定は、株主総会の特別決議を要する。
定款変更であるし、議決権を行使できなくなる者がいるためである(たとえば10株で1単元とされると、9株しか持っていない者は議決権を行使できない)。
株式会社は、単元未満株主が当該単元未満株式について残余財産の分配を受ける権利を行使することができない旨を定款で定めることができない。 2.正しい。
株式会社は、単元未満株主が当該単元未満株式について残余財産の分配を受ける権利を行使することができない旨を定款で定めることはできない(会社法189条2項5号)。
残余財産の分配はいわば「投下資本の回収」の最終局面であり、株主として絶対に保証されるべきなのが「投下資本回収の手段」なのであるから、単元未満株主が残余財産の分配を受けることができないとするのは望ましくないのである。
株式会社は社会からお金を集めることで成り立つものだから、皆が安心してお金を出せる仕組みが必要である。「一度払い込んだらお金は返ってこない」というのでは、誰も投資してくれないだろう。それゆえ投下資本回収の仕組みを会社法はいたるところで確保しているである。
単元未満株主は、定款にその旨の定めがあるときに限り、株式会社に対し、自己の有する単元未満株式を買い取ることを請求することができる。 3.誤り。
定款で定めた場合のみ買取請求が認められるとする本肢は誤り。
単元未満株主は、株式会社に対し、自己の有する単元未満株式を買い取ることを請求することができる(会社法192条1項)。
定款で定めなくとも、当然に買取請求ができるのである。
本肢は「買取請求」についての知識を問う問題であるが、「売渡請求」とのひっかけを狙った問題であろう。
条文によると、株式会社は、単元未満株主が当該株式会社に対して単元未満株式売渡請求(単元未満株主が有する単元未満株式の数と併せて単元株式数となる数の株式を当該単元未満株主に売り渡すことを請求すること)ができる旨を定款で定めることができるとされている(会社法194条1項)。
売渡請求は「定款の定め」が必要なのである。
単元未満株主は、定款にその旨の定めがあるときに限り、株式会社に対し、自己の有する単元未満株式と併せて単元株式となる数の株式を売り渡すことを請求することができる。 4.正しい。
肢3解説を参照。
買取請求は定款の定めがなくとも行使できて、売渡請求は定款の定めがあって初めて行使できるが、この理由は「買取請求が株主にとっての直接の投下資本の回収になるから」である。
単元未満の株式は売りに出しても売れないため(買い手がつかない)、株主にとって株式譲渡による投下資本の回収が難しい。そこで定款の定めなどなくとも、当然に単元未満株式の株主に買取請求が認められている。
投下資本の回収手段の確保は会社法にとって重要であるため、定款の定めがなくとも認められるのである。
株式会社が単元株式数を減少し、または単元株式数についての定款の定めを廃止するときは、取締役会の決議によりこれを行うことができる。 5.正しい。
株式会社は取締役の決定(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によって、定款を変更して単元株式数を減少し、又は単元株式数についての定款の定めを廃止することができる(会社法195条1項)。
単元株式については「定款の定め」が必要なのであるから(肢1解説参照)、単元株式数を減少したり、単元株式数についての定款の定めを廃止するときは「定款の変更」にあたり、株主総会の特別決議が必要なように思える。
しかしそれが不要なのは、単元株式数を減少したり、単元株式数についての定款の定めを廃止することによって、議決権が復活する株主がいるためである(たとえば10株で1単元のときの9株しか有していない株主は議決権が復活する)。