平成26年-問36 商法 商法総則
Lv4
問題 更新:2023-01-30 21:47:10
商法上の支配人に関する次の記述のうち、商法の規定に照らし、正しいものはどれか。
- 商人が支配人を選任したときは、その登記をしなければならず、この登記の完了により支配人も商人資格を取得する。
- 支配人は、商人の営業所の営業の主任者として選任された者であり、他の使用人を選任し、または解任する権限を有する。
- 支配人の代理権の範囲は画一的に法定されているため、商人が支配人の代理権に加えた制限は、悪意の第三者に対しても対抗することができない。
- 支配人は、商人に代わり営業上の権限を有する者として登記されるから、当該商人の許可を得たとしても、他の商人の使用人となることはできない。
- 商人の営業所の営業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、支配人として選任されていなくても、当該営業所の営業に関しては、支配人とみなされる。
正解 2
解説
商人が支配人を選任したときは、その登記をしなければならず、この登記の完了により支配人も商人資格を取得する。 1.誤り。
商人資格を取得するとする点は誤り。
支配人は広範な権限を有するものの(商法21条1項参照)、商業使用人に過ぎない。
なお「商人が支配人を選任したときは、その登記をしなければならない(商法22条)。」ゆえに前段は正しい。
支配人は、商人の営業所の営業の主任者として選任された者であり、他の使用人を選任し、または解任する権限を有する。 2.正しい。
支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる(商法21条2項)。
そして支配人の権限について「支配人は、商人に代わってその営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する(商法21条1項)。」
その権限の大きさから、商人の営業所の営業の主任者として選任された者といえよう。
支配人の代理権の範囲は画一的に法定されているため、商人が支配人の代理権に加えた制限は、悪意の第三者に対しても対抗することができない。 3.誤り。
支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない(商法21条3項)。
つまり悪意の第三者には対抗することができるのである。
支配人は、商人に代わり営業上の権限を有する者として登記されるから、当該商人の許可を得たとしても、他の商人の使用人となることはできない。 4.誤り。
商法は、支配人の「精力分散防止義務」を定めている。支配人は商人に雇われている以上、与えられた職務を全うすることが求められるからである。
「精力分散防止義務」の内容として条文は「支配人は、商人の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。
①自ら営業を行うこと
②自己又は第三者のためにその商人の営業の部類に属する取引をすること
③他の商人又は会社若しくは外国会社の使用人となること
④会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること
」と定めている(商法23条1項)。
本肢は、上記③についての問うものであるが、条文の反対解釈から、商人の許可を受ければ、③他の商人又は会社若しくは外国会社の使用人となることは認められているのである。
商人の営業所の営業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、支配人として選任されていなくても、当該営業所の営業に関しては、支配人とみなされる。 5.誤り。
支配人とは、商人に代わってその営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する者である(商法21条1項)。
条文は「商人の営業所の営業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該営業所の営業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす」としている(商法24条)。
「一切の裁判上の権限」までは認められるわけではないから、商人の営業所の営業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、支配人とみなされるわけではない。