平成26年-問45 記述式 民法
Lv4
問題 更新:2019-11-14 17:28:13
Aは複数の債権者から債務を負っていたところ、債権者の一人で懇意にしているBと相談の上、Bに優先的な満足を得させる意図で、A所有の唯一の財産である甲土地を、代物弁済としてBに譲渡した。その後、Bは同土地を、上記事情を知らないCに時価で売却し、順次、移転登記がなされた。この場合において、Aのほかの債権者Xは、自己の債権を保全するために、どのような権利に基づき、誰を相手として、どのような対応をとればよいか。判例の立場を踏まえて40字程度で記述しなさい。
正解例 詐害行為取消権に基づき、Bを相手として裁判上AB間の契約を取り消し、価格賠償を請求する。(44字)
解説
本問では、Aの債権者Xは、自己の債権を保全するために、①どのような権利に基づき、②誰を相手として、③どのような対応をとればよいか。という3点が主な論点となる。
①について
詐害行為取消権に基づく。
民法424条1項は、「債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。」と規定している。
まず、Xは、Aに対して債権を有しており、被保全債権の存在が認められる。
次に、Aは唯一の財産である甲土地を、債権者の一人であるBに代物弁済として譲渡し、他の債権者の責任財産を減少させているため、かかる代物弁済は詐害行為に該当する。そして、Aは本件代物弁済により唯一の財産である甲土地の所有権を失っているため、無資力である。さらに、かかる甲土地の譲渡は、AがBと相談のうえ、Bに優先的な満足を得させる意図をもって行われていることから、債務者Aには詐害の意思が、Bには他の債権者を害すべき事実につき悪意が認められる。
よって、詐害行為取消権を行使することができる。
②について
Bが相手方である。
詐害行為取消権の被告は、受益者又は転得者である(民法424条の7)。本件では、BC間の甲土地の売買契約につき詐害行為取消を請求し、甲土地をAのもとに取り戻すことが考えられるが、甲土地をBより転得したCは、AB間の事情を知らないため、これは認められない(民法424条の5反対解釈)。
そこで、Cを相手とすることはできない。
なお、民法424条の7の反対解釈としてAを相手にできないが、詐害行為取消権を認容する確定判決は、債務者にも及ぶためXは、遅滞なくAに対し、訴訟告知をする義務がある。
ここで、注意したいのは、受益者であるBが被告とされた場合には、詐害行為取消権の請求を認容する確定判決の効力は、転得者Cには及ばないことである。したがって、Xは、甲土地をAのもとに取り戻すことはできない。
③について
〈1〉まず、最初に気を付けたいのは、詐害行為取消権は、「裁判上」行使するという点である。
〈2〉そこでXは裁判所に対し、AB間の代物弁済契約につき詐害行為取消を請求することが考えられる。
そして、Bに対して甲土地の価格相当額を請求することができるにとどまる。