平成29年-問4 憲法 経済的自由
Lv2
問題 更新:2023-01-30 15:20:34
次の記述は、ため池の堤とう(堤塘)の使用規制を行う条例により「ため池の堤とうを使用する財産上の権利を有する者は、ため池の破損、決かい等に因る災害を未然に防止するため、その財産権の行使を殆んど全面的に禁止される」ことになった事件についての最高裁判所判決に関するものである。判決の論旨として妥当でないものはどれか。
- 社会生活上のやむを得ない必要のゆえに、ため池の堤とうを使用する財産上の権利を有する者は何人も、条例による制約を受忍する責務を負うというべきである。
- ため池の破損、決かいの原因となるため池の堤とうの使用行為は、憲法でも、民法でも適法な財産権の行使として保障されていない。
- 憲法、民法の保障する財産権の行使の埒外にある行為を条例をもって禁止、処罰しても憲法および法律に抵触またはこれを逸脱するものとはいえない。
- 事柄によっては、国において法律で一律に定めることが困難または不適当なことがあり、その地方公共団体ごとに条例で定めることが容易かつ適切である。
- 憲法29条2項は、財産権の内容を条例で定めることを禁じているが、その行使については条例で規制しても許される。
正解 5
解説
本問題は、奈良県溜池条例判決(最判昭和38年6月26日)を題材にしている。
社会生活上のやむを得ない必要のゆえに、ため池の堤とうを使用する財産上の権利を有する者は何人も、条例による制約を受忍する責務を負うというべきである。 1.妥当である。
「公共の福祉」を理由として受忍義務を認めている。
ため池の破損、決かいの原因となるため池の堤とうの使用行為は、憲法でも、民法でも適法な財産権の行使として保障されていない。 2.妥当である。
溜池の堤とうの使用行為は認められるが、それが制限される者というわけではなく、そもそも憲法でも民法でも適法な財産権の行使として認められないということである。
憲法、民法の保障する財産権の行使の埒外にある行為を条例をもって禁止、処罰しても憲法および法律に抵触またはこれを逸脱するものとはいえない。 3.妥当である。
肢2解説参照。
認められないものを禁止等しても、憲法及び法律に抵触又は逸脱するものではない。
事柄によっては、国において法律で一律に定めることが困難または不適当なことがあり、その地方公共団体ごとに条例で定めることが容易かつ適切である。 4.妥当である。
法律は、全国一律に制約を課すものであるが、地域によって事情が異なるので、法律で一律に制限できないものがある。
そのため、条例という制度が認められている。
憲法29条2項は、財産権の内容を条例で定めることを禁じているが、その行使については条例で規制しても許される。 5.妥当でない。
肢2解説参照。
憲法29条2項にいう財産権にあたらないものを制限することに何ら問題はない。