平成29年-問8 行政法 行政総論
Lv3
問題 更新:2023-01-30 15:28:37
砂利採取法26条1号から4号までによる「認可の取消し」に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 1号による「認可の取消し」および2号による「認可の取消し」は、いずれも行政法学上の取消しである。
- 1号による「認可の取消し」および3号による「認可の取消し」は、いずれも行政法学上の取消しである。
- 2号による「認可の取消し」および3号による「認可の取消し」は、いずれも行政法学上の撤回である。
- 2号による「認可の取消し」および4号による「認可の取消し」は、いずれも行政法学上の撤回である。
- 3号による「認可の取消し」および4号による「認可の取消し」は、いずれも行政法学上の撤回である。
(参照条文)
砂利採取法
(採取計画の認可)
第16条 砂利採取業者は、砂利の採取を行おうとするときは、当該採取に係る砂利採取場ごとに採取計画を定め、(当該砂利採取場の所在地を管轄する都道府県知事等)の認可を受けなければならない。
(遵守義務)
第21条 第16条の認可を受けた砂利採取業者は、当該認可に係る採取計画・・・に従つて砂利の採取を行なわなければならない。
(緊急措置命令等)
第23条第1項 都道府県知事又は河川管理者は、砂利の採取に伴う災害の防止のため緊急の必要があると認めるときは、採取計画についてその認可を受けた砂利採取業者に対し、砂利の採取に伴う災害の防止のための必要な措置をとるべきこと又は砂利の採取を停止すべきことを命ずることができる。(第2項以下略)
(認可の取消し等)
第26条 都道府県知事又は河川管理者は、第16条の認可を受けた砂利採取業者が次の各号の一に該当するときは、その認可を取り消し、又は6月以内の期間を定めてその認可に係る砂利採取場における砂利の採取の停止を命ずることができる。
1 第21条の規定に違反したとき。
2 ・・・第23条第1項の規定による命令に違反したとき。
3 第31条第1項の条件に違反したとき。
4 不正の手段により第16条の認可を受けたとき。
(認可の条件)
第31条第1項 第16条の認可・・・には、条件を附することができる。(第2項以下略)
正解 3
解説
本問は、「砂利採取法」の条文に照らし、講学上の「取消し」と「撤回」の理解を問う問題である。
講学上の「取消し」と「撤回」の内容を確認した上で、砂利採取法26条の1号~4号にかけて検討していくことになる。
講学上の「取消し」は、処分成立当初に瑕疵があったこと(原始的瑕疵)を理由としており、その効果は原則として遡及し、はじめから行政行為がなかったものとみなされる。
それに対して、講学上の「撤回」とは、成立に瑕疵のない行政行為について、後発的事情の変化によってその効力を存続させることができない新たな事由が発生したために、将来に向かってその効力を失わせることをいう。
砂利採取法
(認可の取消し等)
第26条
都道府県知事又は河川管理者は、第16条の認可を受けた砂利採取業者が次の各号の一に該当するときは、その認可を取り消し、又は6ヵ月以内の期間を定めてその認可に係る砂利採取場における砂利の採取の停止を命ずることができる。
一 第21条の規定に違反したとき。
二 第22条又は第23条第1項の規定による命令に違反したとき。
三 第31条第1項の条件に違反したとき。
四 不正の手段により第16条の認可を受けたとき。
1号による認可の取消し
1号による認可の取消しは、認可申請の際に提出した採取計画に従って砂利採取を行う必要があるが、それに違反した場合には取消すという性質のものである。
これは、後発的事情の変化によって、認可を存続させることができないために将来に向かって認可の効力を失わせる性質のものであり、講学上の「撤回」である。
2号による認可の取消し
2号による認可の取消しは、緊急措置命令違反によるものである。
これも後発的事情の変化によって、認可を存続させることができないために将来に向かって認可の効力を失わせる性質のものであり、講学上の「撤回」である。
3号による認可の取消し
3号による認可の取消しは、認可に付された条件違反によるものである。
これも後発的事情の変化によって、認可を存続させることができないために将来に向かって認可の効力を失わせる性質のものであり、講学上の「撤回」である。
4号による認可の取消し
4号による認可の取消しは、不正な手段を用いて認可を受けたことが後に発覚した場合であり、その場合、成立当初の認可に瑕疵が存在している。
このように原始的な瑕疵のある行政行為を取り消すことで、はじめからその行政行為がなかったものとすることを講学上の「取消し」という。
以上より、組合せで正しいのは肢3になる。