平成29年-問7 憲法 憲法改正
Lv3
問題 更新:2023-01-30 15:26:58
憲法の概念に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 通常の法律より改正手続が困難な憲法を硬性憲法、法律と同等の手続で改正できる憲法を軟性憲法という。ドイツやフランスの場合のように頻繁に改正される憲法は、法律より改正が困難であっても軟性憲法に分類される。
- 憲法の定義をめぐっては、成文の憲法典という法形式だけでなく、国家統治の基本形態など規定内容に着目する場合があり、後者は実質的意味の憲法と呼ばれる。実質的意味の憲法は、成文の憲法典以外の形式をとって存在することもある。
- 憲法は、公権力担当者を拘束する規範であると同時に、主権者が自らを拘束する規範でもある。日本国憲法においても、公務員のみならず国民もまた、憲法を尊重し擁護する義務を負うと明文で規定されている。
- 憲法には最高法規として、国内の法秩序において最上位の強い効力が認められることも多い。日本国憲法も最高法規としての性格を備えるが、判例によれば、国際協調主義がとられているため、条約は国内法として憲法より強い効力を有する。
- 憲法には通常前文が付されるが、その内容・性格は憲法によって様々に異なっている。日本国憲法の前文の場合は、政治的宣言にすぎず、法規範性を有しないと一般に解されている。
正解 2
解説
通常の法律より改正手続が困難な憲法を硬性憲法、法律と同等の手続で改正できる憲法を軟性憲法という。ドイツやフランスの場合のように頻繁に改正される憲法は、法律より改正が困難であっても軟性憲法に分類される。 1.妥当でない。
前半は正しいが、後半は妥当でない。
いかに頻繁に改正される憲法であっても、憲法改正が法律より困難な場合は、硬性憲法に分類される。
ちなみに、ドイツでは60回以上、フランスでは24回以上改正されている。
憲法の定義をめぐっては、成文の憲法典という法形式だけでなく、国家統治の基本形態など規定内容に着目する場合があり、後者は実質的意味の憲法と呼ばれる。実質的意味の憲法は、成文の憲法典以外の形式をとって存在することもある。 2.妥当である。
実質的憲法は、固有の意味の憲法と立憲的意味の憲法とに分類される。
前者は、国の統治の基本を意味し、後者は、立憲主義の思想に基づく憲法を意味する。
憲法は、公権力担当者を拘束する規範であると同時に、主権者が自らを拘束する規範でもある。日本国憲法においても、公務員のみならず国民もまた、憲法を尊重し擁護する義務を負うと明文で規定されている。 3.妥当でない。
「国民もまた」という点が妥当でない。
憲法は、天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う(憲法99条)と規定し、ここから国民をあえて除外している。
憲法には最高法規として、国内の法秩序において最上位の強い効力が認められることも多い。日本国憲法も最高法規としての性格を備えるが、判例によれば、国際協調主義がとられているため、条約は国内法として憲法より強い効力を有する。 4.妥当でない。
憲法98条は、「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」と規定している。
ここに「条約」が明記されていないことで憲法と条約の上下に争いが生じている。ただ、条約に比べて憲法を上位と考えるのが通説である。
憲法には通常前文が付されるが、その内容・性格は憲法によって様々に異なっている。日本国憲法の前文の場合は、政治的宣言にすぎず、法規範性を有しないと一般に解されている。 5.妥当でない。
日本国憲法の前文は憲法の一部だと考えられていて、法規範性も有している。
なお、前文を改正するためには、憲法改正の手続き(憲法96条)が必要である。