平成29年-問16 行政法 行政不服審査法
Lv3
問題 更新:2023-01-30 15:40:53
行政不服審査法の定める執行停止に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 処分庁の上級行政庁または処分庁のいずれでもない審査庁は、必要があると認めるときは、審査請求人の申立てによりまたは職権で、処分の効力、処分の執行または手続の続行の全部または一部の停止その他の措置をとることができる。
- 審査庁は、処分、処分の執行または手続の続行により生ずる重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときは、審査請求人の申立てがなくとも、職権で執行停止をしなければならない。
- 審理員は、必要があると認める場合には、審査庁に対し、執行停止をすべき旨の意見書を提出することができ、意見書の提出があった場合、審査庁は、速やかに執行停止をしなければならない。
- 執行停止をした後において、執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが明らかとなったとき、その他事情が変更したときには、審査庁は、その執行停止を取り消すことができる。
- 処分庁の上級行政庁または処分庁が審査庁である場合には、処分の執行の停止によって目的を達することができる場合であっても、処分の効力の停止をすることができる。
正解 4
解説
処分庁の上級行政庁または処分庁のいずれでもない審査庁は、必要があると認めるときは、審査請求人の申立てによりまたは職権で、処分の効力、処分の執行または手続の続行の全部または一部の停止その他の措置をとることができる。 1.誤り
処分庁の上級行政庁または処分庁のいずれでもない審査庁は、当該審査請求を処理する権限は個別の法律によって付与されているにすぎず、当該処分に関する一般的な指揮監督権を有するわけではないので、審査請求人の申立てがあって、かつ、処分庁の意見を聴取した上でなければ執行停止をすることはできないし、原処分を変更するような暫定的な措置をとる権限は付与されていない。
処分庁の上級行政庁または処分庁のいずれでもない審査庁は、必要があると認める場合には、審査請求人の申立てにより、処分庁の意見を聴取した上、執行停止をすることができる。ただし、処分の効力、処分の執行または手続の続行の全部または一部の停止以外の措置をとることはできない(行政不服審査法25条3項)。
審査庁は、処分、処分の執行または手続の続行により生ずる重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときは、審査請求人の申立てがなくとも、職権で執行停止をしなければならない。 2.誤り
義務的執行停止は、処分庁の上級行政庁または処分庁である審査庁であっても審査請求人の申立てがあることが要件になる。
審査請求人の申立てがあった場合において、処分、処分の執行または手続の続行により生ずる重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときは、審査庁は、執行停止をしなければならない(行政不服審査法25条4項)。
審理員は、必要があると認める場合には、審査庁に対し、執行停止をすべき旨の意見書を提出することができ、意見書の提出があった場合、審査庁は、速やかに執行停止をしなければならない。 3.誤り
執行停止をするかどうかの判断権限は、補助機関である審理員ではなく審査庁に付与されている。
審理員から執行停止をすべき旨の意見書の提出を受けた審査庁は、速やかに、執行停止をするかどうかを決定しなければならない(行政不服審査法25条7項)。
執行停止をした後において、執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが明らかとなったとき、その他事情が変更したときには、審査庁は、その執行停止を取り消すことができる。 4.正しい
執行停止をした後に、執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが明らかとなったとき、その他事情が変更したときには、審査庁は、その執行停止を取り消すことができる(行政不服審査法26条)。
処分庁の上級行政庁または処分庁が審査庁である場合には、処分の執行の停止によって目的を達することができる場合であっても、処分の効力の停止をすることができる。 5.誤り
処分の効力の停止は、処分の効力の停止以外の措置によって目的を達することができるときは、することができない(行政不服審査法25条6項)。
執行停止は、仮の救済であり、暫定的とはいえ処分の効力を停止するというような強力な執行停止は、より温和な仮の救済措置(処分の効力の停止以外の措置)で目的を達することができない場合にのみ認められている。