平成29年-問35 民法 相続
Lv3
問題 更新:2023-01-30 16:38:06
遺言に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。
ア.15歳に達した者は、遺言をすることができるが、遺言の証人または立会人となることはできない。
イ.自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付および氏名を自書してこれに押印しなければならず、遺言を変更する場合には、変更の場所を指示し、変更内容を付記して署名するか、または変更の場所に押印しなければ効力を生じない。
ウ.公正証書によって遺言をするには、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授しなければならないが、遺言者が障害等により口頭で述べることができない場合には、公証人の質問に対してうなずくこと、または首を左右に振ること等の動作で口授があったものとみなす。
エ.秘密証書によって遺言をするには、遺言者が、証書に署名、押印した上、その証書を証書に用いた印章により封印し、公証人一人および証人二人以上の面前で、当該封書が自己の遺言書である旨ならびにその筆者の氏名および住所を申述する必要があるが、証書は自書によらず、ワープロ等の機械により作成されたものであってもよい。
オ.成年被後見人は、事理弁識能力を欠いている場合には遺言をすることができないが、一時的に事理弁識能力を回復した場合には遺言をすることができ、その場合、法定代理人または3親等内の親族二人の立会いのもとで遺言書を作成しなければならない。
- ア・ウ
- ア・エ
- イ・ウ
- イ・オ
- エ・オ
正解 2
解説
15歳に達した者は、遺言をすることができるが、遺言の証人または立会人となることはできない。 ア.正しい。
15歳に達した者は、遺言をすることができる(民法961条)。
遺言の効力が生じるのは遺言者が死亡したときであるため、本人の保護を徹底する必要はなく、未成年者でも15歳に達していれば遺言をすることができるのである。
一方で、未成年者は遺言の証人又は立会人となることができない(民法974条1号)。
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付および氏名を自書してこれに押印しなければならず、遺言を変更する場合には、変更の場所を指示し、変更内容を付記して署名するか、または変更の場所に押印しなければ効力を生じない。 イ.誤り。
前半は正しいが、後半の「署名するか、または変更の場所に押印」という点が誤り。「署名し、かつ、変更の場所に押印」しなければならない。
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない(民法968条1項)。
遺言の効力が生じた後に遺言者に真意を確認する術はないのだから、遺言の作成の要件は厳格なのである。
遺言を訂正する場面でも、同様の趣旨から厳格な要件が定められている。
条文によると「自筆証書中(財産目録を含む。)の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない」とされているのである(民法968条3項)。
公正証書によって遺言をするには、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授しなければならないが、遺言者が障害等により口頭で述べることができない場合には、公証人の質問に対してうなずくこと、または首を左右に振ること等の動作で口授があったものとみなす。 ウ.誤り。
「公証人の質問に対してうなずくこと、または首を左右に振ること等の動作で口授があったものとみなす」という点が誤り。
公正証書によって遺言をするには、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授することが必要である(民法969条2号)。
口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、民法969条2号の口授に代えなければならない(民法969条の2第1項)。
秘密証書によって遺言をするには、遺言者が、証書に署名、押印した上、その証書を証書に用いた印章により封印し、公証人一人および証人二人以上の面前で、当該封書が自己の遺言書である旨ならびにその筆者の氏名および住所を申述する必要があるが、証書は自書によらず、ワープロ等の機械により作成されたものであってもよい。 エ.正しい。
秘密証書遺言の要件は下記のとおり(民法970条)。
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自筆証書遺言とは異なり、「自書」は要件ではない(民法968条1項参照)から、証書はワープロ等の機械により作成されたものでもよい。
成年被後見人は、事理弁識能力を欠いている場合には遺言をすることができないが、一時的に事理弁識能力を回復した場合には遺言をすることができ、その場合、法定代理人または3親等内の親族二人の立会いのもとで遺言書を作成しなければならない。 オ.誤り。
「法定代理人または3親等内の親族二人の立会いのもと」という点が誤り。
成年被後見人であっても、一時的に事理弁識能力を回復した場合には遺言をすることが可能である。
成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師2人以上の立会いがなければならない(民法973条1項)。