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平成30年-問29 民法 物権

Lv3

問題 更新:2023-01-30 14:35:28

Aが登記簿上の所有名義人である甲土地をBが買い受ける旨の契約(以下「本件売買契約」という。)をA・B間で締結した場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.甲土地は実際にはCの所有に属していたが、CがAに無断で甲土地の所有名義人をAとしていた場合において、Aがその事情を知らないBとの間で本件売買契約を締結したときであっても、BはCに対して甲土地の引渡しを求めることができない。

イ.甲土地はAの所有に属していたところ、Aの父であるDが、Aに無断でAの代理人と称して本件売買契約を締結し、その後Dが死亡してAがDを単独で相続したときは、Aは、Dの法律行為の追認を拒絶することができ、また、損害賠償の責任を免れる。

ウ.甲土地が相続によりAおよびEの共有に属していたところ、AがEに無断でAの単独所有名義の登記をしてBとの間で本件売買契約を締結し、Bが所有権移転登記をした場合において、Bがその事情を知らず、かつ、過失がないときは、Bは甲土地の全部について所有権を取得する。

エ.甲土地はAの所有に属していたところ、本件売買契約が締結され、B名義での所有権移転の仮登記がされた場合において、Aが甲土地をその事情を知らないFに売却し所有権移転登記をしたときは、Bは本登記をしない限りFに対して所有権の取得を対抗することができない。

オ.甲土地はAの所有に属していたところ、GがAに無断で甲土地上に建物を築造し、その建物の所有権保存登記をした場合において、本件売買契約により甲土地の所有者となったBは、Gが当該建物の所有権を他に譲渡していたとしても、登記名義がGにある限り、Gに対して当該建物の収去および土地の明渡しを求めることができる。

  1. ア・ウ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. エ・オ
  解答&解説

正解 5

解説

甲土地は実際にはCの所有に属していたが、CがAに無断で甲土地の所有名義人をAとしていた場合において、Aがその事情を知らないBとの間で本件売買契約を締結したときであっても、BはCに対して甲土地の引渡しを求めることができない。 ア.妥当でない。

民法94条2項類推適用に関する問題である。

通謀虚偽表示とは、真意に反して当事者間でした嘘の意思表示をした場合、当事者間においては、その意思表示は無効である。
嘘の意思表示(通謀虚偽表示)によって作出された不実の外形を信じて新たな法律関係に入ってきた善意の第三者には、当事者はその意思表示が無効であることを対抗することができない(民法94条1項2項)。

当事者間で嘘の意思表示(通謀虚偽表示)がなくても、
①権利帰属の外形の存在があり、
②本来の権利者がその外形を作出または存続させ、
③第三者がその外形を信頼した場合は、
権利外観法理(ある者が、責めに帰すべき事由により不実の外形を作出した場合、その外形を信じた者を保護する理論)が妥当であるから、第三者を保護すべきとされている。

本肢において、登記簿上の所有名義人はAであり(要件①)、本来の権利者であるCがAに無断で所有名義人にする外形を作出し(要件②)、事情を知らないBが売買契約を締結した(要件③)。
これら全ての要件を満たしているので、Bを保護すべきとされ、BはCに対して甲土地の引渡しを求めることができる。

甲土地はAの所有に属していたところ、Aの父であるDが、Aに無断でAの代理人と称して本件売買契約を締結し、その後Dが死亡してAがDを単独で相続したときは、Aは、Dの法律行為の追認を拒絶することができ、また、損害賠償の責任を免れる。 イ.妥当でない。

Aは、Dの法律行為の追認を拒絶することはできるが、損害賠償の責任を免れることはできない。

無権代理と相続に関する問題である。

判例は「相続人たる本人が被相続人の無権代理行為の追認を拒絶しても何ら信義則に反しないから、被相続人の無権代理行為は本人の相続により当然有効となるものではない(最判昭和37年4月20日)」が、「民法117条による無権代理人の債務が相続の対象となることは明らかであって、このことは本人が無権代理人を相続した場合でも異ならないから、本人は相続により無権代理人の右債務を承継するのであり、本人として無権代理行為の追認を拒絶できる地位にあったからといって右債務を免れることはできないと解すべきである」としている(最判昭和48年7月3日)。

無権代理人を本人が相続しても、本人の地位は変わらないので、本人が追認を拒絶することは可能であるが、無権代理人を相続するということは、無権代理人の地位も相続することになる。

甲土地が相続によりAおよびEの共有に属していたところ、AがEに無断でAの単独所有名義の登記をしてBとの間で本件売買契約を締結し、Bが所有権移転登記をした場合において、Bがその事情を知らず、かつ、過失がないときは、Bは甲土地の全部について所有権を取得する。 ウ.妥当でない。

BはAの持ち分についてのみ取得することができるが、甲土地の全部について所有権を取得することができない。

各共有者の第三者に対する権利に関する問題である。

判例は「共同相続人が共同相続した不動産につき共同相続人の一方が勝手に単独所有権取得の登記をし、さらに第三取得者がその者から移転登記をうけた場合、他の共同相続人は第三者に対し自己の持分を登記なくして対抗できる」としている(最判昭和38年2月22日)。

甲土地はAの所有に属していたところ、本件売買契約が締結され、B名義での所有権移転の仮登記がされた場合において、Aが甲土地をその事情を知らないFに売却し所有権移転登記をしたときは、Bは本登記をしない限りFに対して所有権の取得を対抗することができない。 エ.妥当である。

仮登記の対抗力に関する問題である。

判例は「仮登記権利者は、本登記をなすに必要な要件を具備した場合でも、本登記を経由しない限り、登記の欠缺を主張し得る第三者に対しその明渡しを求めることはできない」としている(最判昭和38年10月8日)。

仮登記には、順位保全の効力は認められるが、対抗力は認められないため、Bは所有権移転登記をしたFに対して所有権の取得を対抗することができない。

甲土地はAの所有に属していたところ、GがAに無断で甲土地上に建物を築造し、その建物の所有権保存登記をした場合において、本件売買契約により甲土地の所有者となったBは、Gが当該建物の所有権を他に譲渡していたとしても、登記名義がGにある限り、Gに対して当該建物の収去および土地の明渡しを求めることができる。 オ.妥当である。

Bは登記名義人Gに当該建物の収去および土地の明渡しを求めることができる。

物権的請求権の相手方に関する問題である。

原則として、物権的請求権は、現に占有している相手方に対してするものである。

本肢の事例において、登記名義はあるが、所有権がない相手方に対し、物権的請求権行使の可否について、判例は、「土地所有権に基づく物上請求権を行使して建物収去・土地明渡しを請求するには、現実に建物を所有することによってその土地を占拠し、土地所有権を侵害している者を相手方とすべきである。
したがって、未登記建物の所有者が未登記のままこれを第三者に譲渡した場合には、これにより確定的に所有権を失うことになるから、その後、その意思に基づかずに譲渡人名義に所有権取得の登記がされても、右譲渡人は、土地所有者による建物収去・土地明渡しの請求につき、建物の所有権の喪失により土地を占有していないことを主張することができるものというべきであり、また、建物の所有名義人が実際には建物を所有したことがなく、単に自己名義の所有権取得の登記を有するにすぎない場合も、土地所有者に対し、建物収去・土地明渡しの義務を負わないものというべきである」とし(ここまでが原則論)、さらに、「もっとも、他人の土地上の建物の所有権を取得した者が自らの意思に基づいて所有権取得の登記を経由した場合には、たとい建物を他に譲渡したとしても、引き続き右登記名義を保有する限り、土地所有者に対し、右譲渡による建物所有権の喪失を主張して建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできないものと解するのが相当である」としている(最判平成6年2月8日)。

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