令和元年-問2 基礎法学 裁判制度
Lv4
問題 更新:2023-01-28 12:23:26
裁判の審級制度等に関する次のア~オの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。
ア.民事訴訟および刑事訴訟のいずれにおいても、簡易裁判所が第1審の裁判所である場合は、控訴審の裁判権は地方裁判所が有し、上告審の裁判権は高等裁判所が有する。
イ.民事訴訟における控訴審の裁判は、第1審の裁判の記録に基づいて、その判断の当否を事後的に審査するもの(事後審)とされている。
ウ.刑事訴訟における控訴審の裁判は、第1審の裁判の審理とは無関係に、新たに審理をやり直すもの(覆審)とされている。
エ.上告審の裁判は、原則として法律問題を審理するもの(法律審)とされるが、刑事訴訟において原審の裁判に重大な事実誤認等がある場合には、事実問題について審理することがある。
オ.上級審の裁判所の裁判における判断は、その事件について、下級審の裁判所を拘束する。
- ア・イ
- ア・オ
- イ・ウ
- ウ・エ
- エ・オ
正解 5
解説
民事訴訟および刑事訴訟のいずれにおいても、簡易裁判所が第1審の裁判所である場合は、控訴審の裁判権は地方裁判所が有し、上告審の裁判権は高等裁判所が有する。 ア.妥当でない。
民事訴訟については正しいが、「刑事訴訟のいずれにおいても」としている点で誤りである。
民事訴訟では、第一審裁判所が簡易裁判所である場合には、控訴裁判所は地方裁判所となり(裁判所法16条1号、24条3号)、上告裁判所は高等裁判所となる(裁判所法16条3号)。
しかし、刑事訴訟では、上告裁判所は常に最高裁判所になる制度設計がされており、すなわち第一審裁判所が簡易裁判所である場合、控訴裁判所は高等裁判所となり(裁判所法16条1号)、上告裁判所は最高裁判所となる(裁判所法7条1号)。
民事訴訟における控訴審の裁判は、第1審の裁判の記録に基づいて、その判断の当否を事後的に審査するもの(事後審)とされている。 イ.妥当でない。
控訴審の構造として、「覆審制」「事後審制」「続審制」があり、日本の民事訴訟が採用していているのは「続審制」である。
「続審制」は、原判決の再審査を裁判の目的としながら、下級審の裁判資料に加え、新たに収集した裁判資料を含めて、原判決の当否について判断し、控訴を棄却するか、原判決を取り消すかなどの判断をする。
覆審制 | 下級審の裁判資料とは無関係に上級審が裁判資料を収集し、これに基づいて再度裁判をやり直す。 |
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事後審制 | 原則として新たな裁判資料の提出を認めず、下級審の裁判資料のみに基づいて上級審が原判決の当否を判断する。 |
続審制 | 原判決の再審査を裁判の目的としながら、下級審の裁判資料に加え、新たに収集した裁判資料を含めて、原判決の当否について判断し、控訴を棄却するか、原判決を取り消すかなどの判断をする。 |
刑事訴訟における控訴審の裁判は、第1審の裁判の審理とは無関係に、新たに審理をやり直すもの(覆審)とされている。 ウ.妥当でない。
刑事訴訟における控訴審では、「事後審制」が採用されている。
「事後審制」は、原則として新たな裁判資料の提出を認めず、下級審の裁判資料のみに基づいて上級審が原判決の当否を判断する。
肢イ参照。
上告審の裁判は、原則として法律問題を審理するもの(法律審)とされるが、刑事訴訟において原審の裁判に重大な事実誤認等がある場合には、事実問題について審理することがある。 エ.妥当である。
上告申し立ての理由として認められるのは、原審に対して憲法違反や憲法解釈の誤り、判例と相反する判断があったことなどに限定されているが(刑事訴訟法405条)、判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認等があって原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときには、原判決を破棄することができる(刑事訴訟法411条)。
上級審の裁判所の裁判における判断は、その事件について、下級審の裁判所を拘束する。 オ.妥当である。
条文は、「上級審の裁判所の裁判における判断は、その事件について下級審の裁判所を拘束する」と規定している(裁判所法4条)。