令和2年-問29 民法 物権
Lv4
問題 更新:2024-01-04 16:18:16
根抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものはどれか。
- 被担保債権の範囲は、確定した元本および元本確定後の利息その他の定期金の2年分である。
- 元本確定前においては、被担保債権の範囲を変更することができるが、後順位抵当権者その他の第三者の承諾を得た上で、その旨の登記をしなければ、変更がなかったものとみなされる。
- 元本確定期日は、当事者の合意のみで変更後の期日を5年以内の期日とする限りで変更することができるが、変更前の期日より前に変更の登記をしなければ、変更前の期日に元本が確定する。
- 元本確定前に根抵当権者から被担保債権を譲り受けた者は、その債権について根抵当権を行使することができないが、元本確定前に被担保債務の免責的債務引受があった場合には、根抵当権者は、引受人の債務について、その根抵当権を行使することができる。
- 根抵当権設定者は、元本確定後においては、根抵当権の極度額の一切の減額を請求することはできない。
正解 3
解説
被担保債権の範囲は、確定した元本および元本確定後の利息その他の定期金の2年分である。 1.誤り
根抵当権の被担保債権の範囲は、極度額を限度として、「確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部」である(民法398条の3)。
つまり、極度額の範囲以内であれば、すべて担保されるということであり、利息その他定期金の2年分という制限はなく、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部が、被担保債権の範囲となる。
元本確定前においては、被担保債権の範囲を変更することができるが、後順位抵当権者その他の第三者の承諾を得た上で、その旨の登記をしなければ、変更がなかったものとみなされる。 2.誤り
確定前根抵当権においては、被担保債権の範囲の変更をすることができるが(民法398条の4)、後順位抵当権者や第三者の承諾は求められていない(民法398条の4第2項)。
また、元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなされる(民法398条の4第3項)。
元本確定期日は、当事者の合意のみで変更後の期日を5年以内の期日とする限りで変更することができるが、変更前の期日より前に変更の登記をしなければ、変更前の期日に元本が確定する。 3.正しい
元本確定期日の定めの変更については、民法398条の4第2項の準用により、第三者の承諾は不要とされ、当事者の合意により成立する(民法398条の6第1項、2項)。変更後の期日については、変更した日から5年以内と制限がついている(民法398条の6第3項)。
また、元本確定期日の変更には、登記をすることを求められている(民法398条の4第4項)。元本確定期日の変更登記をしないときは、その変更前の期日に確定する(民法398条の6第4項)。
元本確定前に根抵当権者から被担保債権を譲り受けた者は、その債権について根抵当権を行使することができないが、元本確定前に被担保債務の免責的債務引受があった場合には、根抵当権者は、引受人の債務について、その根抵当権を行使することができる。 4.誤り
元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない(民法398条の7)。
免責的債務引受があった場合においては、原則として担保権の移転をすることができるが(民法472条の4第1項)、根抵当権については、免責的債務引受があった場合においても、根抵当権者は、引受人の債務について、根抵当権を行使することができない(民法398条の7第1項、3項)。
根抵当権設定者は、元本確定後においては、根抵当権の極度額の一切の減額を請求することはできない。 5.誤り
元本の確定後においては、根抵当権設定者は、その根抵当権の極度額を、現に存する債務の額と以後2年間に生ずべき利息その他の定期金及び債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求することができる(民法398条の21第1項)。