令和2年-問30 民法 債権
Lv3
問題 更新:2023-01-28 11:58:54
A・B間において、Aが、Bに対して、Aの所有する甲建物または乙建物のうちいずれかを売買する旨の契約が締結された。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものはどれか。
- 給付の目的を甲建物とするか乙建物とするかについての選択権は、A・B間に特約がない場合には、Bに帰属する。
- A・B間の特約によってAが選択権者となった場合に、Aは、給付の目的物として甲建物を選択する旨の意思表示をBに対してした後であっても、Bの承諾を得ることなく、その意思表示を撤回して、乙建物を選択することができる。
- A・B間の特約によってAが選択権者となった場合において、Aの過失によって甲建物が焼失したためにその給付が不能となったときは、給付の目的物は、乙建物になる。
- A・B間の特約によって第三者Cが選択権者となった場合において、Cの選択権の行使は、AおよびBの両者に対する意思表示によってしなければならない。
- A・B間の特約によって第三者Cが選択権者となった場合において、Cが選択をすることができないときは、選択権は、Bに移転する。
正解 3
解説
給付の目的を甲建物とするか乙建物とするかについての選択権は、A・B間に特約がない場合には、Bに帰属する。 1.誤り
債権の目的が数個の給付の中から選択によって定まるときは、その選択権は、債務者に属する(民法406条)。
原則、選択権は、債務者にある。選択債権における債務者は、給付する義務を負う側である。
本肢の場合は、Aが債務者(給付義務を負う側)となり、AB間に特約もないため、原則にしたがい、債務者Aが選択権を持つことになる。
A・B間の特約によってAが選択権者となった場合に、Aは、給付の目的物として甲建物を選択する旨の意思表示をBに対してした後であっても、Bの承諾を得ることなく、その意思表示を撤回して、乙建物を選択することができる。 2.誤り
「Bの承諾を得ることなく」という点が誤り。
選択債権における選択権は、相手方に対する意思表示によって行使し(民法407条1項)、相手方の承諾を得なければ、撤回することができない(民法407条2項)。
つまり選択権者は、相手方の承諾を得れば、撤回することができる。
A・B間の特約によってAが選択権者となった場合において、Aの過失によって甲建物が焼失したためにその給付が不能となったときは、給付の目的物は、乙建物になる。 3.正しい
選択権を有する者の過失により、給付の中に不能のものがある場合、債権は、その残存するものについて存在する(民法410条)。
本肢の場合、選択権者Aの過失により、甲建物が滅失したとあるため、債権は、その残存するもの(つまり、乙建物)について存在することになる。
A・B間の特約によって第三者Cが選択権者となった場合において、Cの選択権の行使は、AおよびBの両者に対する意思表示によってしなければならない。 4.誤り
第三者が、選択権を行使すべき場合には、「債権者又は債務者」に意思表示をする(民法409条1項)。
つまり、どちらか一方に対して意思表示をすればよく、債権者および債務者に意思表示をする必要はない。
A・B間の特約によって第三者Cが選択権者となった場合において、Cが選択をすることができないときは、選択権は、Bに移転する。 5.誤り
「選択権は、Bに移転する」としているので誤り。
第三者が選択をすることができず、又は選択をする意思を有しないときは、選択権は、債務者に移転する(民法409条2項)。
本肢では原則どおり、選択権は債務者Aに移転する。