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令和2年-問33 民法 債権

Lv3

問題 更新:2024-01-07 12:14:12

A所有の甲土地をBに対して建物所有の目的で賃貸する旨の賃貸借契約(以下、「本件賃貸借契約」という。)が締結され、Bが甲土地上に乙建物を建築して建物所有権保存登記をした後、AがCに甲土地を売却した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 本件賃貸借契約における賃貸人の地位は、別段の合意がない限り、AからCに移転する。
  2. 乙建物の所有権保存登記がBと同居する妻Dの名義であっても、Bは、Cに対して、甲土地の賃借権をもって対抗することができる。
  3. Cは、甲土地について所有権移転登記を備えなければ、Bに対して、本件賃貸借契約に基づく賃料の支払を請求することができない。
  4. 本件賃貸借契約においてAからCに賃貸人の地位が移転した場合、Bが乙建物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、Bは、Cに対して、直ちにその償還を請求することができる。
  5. 本件賃貸借契約の締結にあたりBがAに対して敷金を交付していた場合において、本件賃貸借契約が期間満了によって終了したときは、Bは、甲土地を明け渡した後に、Cに対して、上記の敷金の返還を求めることができる。
  解答&解説

正解 2

解説

本件賃貸借契約における賃貸人の地位は、別段の合意がない限り、AからCに移転する。 1.妥当である

賃貸借の対抗要件を備えた場合であっても、不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転するため(民法605条の2)、賃貸人たる地位は、Aから譲受人Cに移転する。

乙建物の所有権保存登記がBと同居する妻Dの名義であっても、Bは、Cに対して、甲土地の賃借権をもって対抗することができる。 2.妥当でない

判例は、「土地の賃借人は、借地上に妻名義で保存登記を経由した建物を所有していても、その後その土地の所有権を取得した第三者に対し、建物保護に関する法律1条により、その土地の賃借権をもって対抗することができない」(最判昭和47年6月22日)としている。

Cは、甲土地について所有権移転登記を備えなければ、Bに対して、本件賃貸借契約に基づく賃料の支払を請求することができない。 3.妥当である

賃貸人たる地位の移転は、所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない(民法605条の2第3項)。

本件賃貸借契約においてAからCに賃貸人の地位が移転した場合、Bが乙建物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、Bは、Cに対して、直ちにその償還を請求することができる。 4.妥当である

賃借人は、賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる(民法608条)。

譲渡人Aから譲受人Cに賃貸人たる地位の移転がおこっているため、賃借人Bは、Cに対して直ちにその償還を請求することができる。

本件賃貸借契約の締結にあたりBがAに対して敷金を交付していた場合において、本件賃貸借契約が期間満了によって終了したときは、Bは、甲土地を明け渡した後に、Cに対して、上記の敷金の返還を求めることができる。 5.妥当である

賃貸人が、敷金を受け取っている場合において、賃貸借が終了し、かつ賃借物の返還を受けたときは、敷金を返還しなければならない(民法622条の2第1項柱書き、1項1号)。

したがって、賃貸借契約が期間満了によって終了し、Bが甲土地を明け渡した後においては、Cには敷金返還の義務が発生する。
すなわち、賃借人Bは、土地を明け渡した後であれば、賃貸人たる地位の移転を受けた譲受人Cに対して、敷金の返還を請求できる。

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