令和3年-問2 基礎法学 法の効力及び解釈
Lv3
問題 更新:2023-01-27 20:11:12
法令の効力に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 法律の内容を一般国民に広く知らせるには、法律の公布から施行まで一定の期間を置くことが必要であるため、公布日から直ちに法律を施行することはできない。
- 法律の効力発生日を明確にする必要があるため、公布日とは別に、必ず施行期日を定めなければならない。
- 日本国の法令は、その領域内でのみ効力を有し、外国の領域内や公海上においては、日本国の船舶および航空機内であっても、その効力を有しない。
- 一般法に優先する特別法が制定され、その後に一般法が改正されて当該特別法が適用される範囲について一般法の規定が改められた場合には、当該改正部分については、後法である一般法が優先して適用され、当該特別法は効力を失う。
- 法律の有効期間を当該法律の中で明確に定めている場合には、原則としてその時期の到来により当該法律の効力は失われる。
正解 5
解説
法律の内容を一般国民に広く知らせるには、法律の公布から施行まで一定の期間を置くことが必要であるため、公布日から直ちに法律を施行することはできない。 1.妥当でない
施行期日の定めがなければ、公布されてから20日(条例等は10日)だが、法律で施行期日を定めたときは、その定めた日から施行することもできるとされており、公布の日から施行することも可能である(法の適用に関する通則法2条)。
もっとも、原則的には公布により周知する必要があるので(最大判昭和32年12月28日)、罰則規定がなくて、公布と同時に施行しても問題のないものに限るべきとされている。
なお、実際に公布の日と施行の日が同日の法律としては「国旗及び国歌に関する法律」などがある。
法律の効力発生日を明確にする必要があるため、公布日とは別に、必ず施行期日を定めなければならない。 2.妥当でない
肢1解説参照日本国の法令は、その領域内でのみ効力を有し、外国の領域内や公海上においては、日本国の船舶および航空機内であっても、その効力を有しない。 3.妥当でない
「外国の領域内や公海上においては、日本国の船舶および、航空機内であっても、その効力を有しない」という部分が誤りである。
わが国の法の適用に関しては、自国領域内に限定されるいわゆる属地主義が原則的に採用されており(刑法1条1項など)、前半部分は正しい。
しかし、属地主義から派生する旗国主義も採用されており(刑法1条2項など)、わが国に属する船舶および航空機内では、外国の領域内や公海においても効力を有することがあるため、後半部分は誤りである。
なお、属地主義はあくまでも原則的なものであって、刑法では国外の一定の犯罪に対して処罰できる旨が規定されており(刑法3条、3条の2など)、例外的に属人主義も採用されている。
一般法に優先する特別法が制定され、その後に一般法が改正されて当該特別法が適用される範囲について一般法の規定が改められた場合には、当該改正部分については、後法である一般法が優先して適用され、当該特別法は効力を失う。 4.妥当でない
一般法と特別法の関係では特別法が優先して適用される(特別法優先の原則)。また、旧法(前法)と新法(後法)では、新法(後法)が優先される(新法(後法)優先の原則)。
新法(後法)優先の原則と特別法優先の原則の関係では、特別法優先の原則が優先される。
換言すると旧法かつ特別法と新法かつ一般法を比較した場合は、旧法かつ特別法が優先されることになる。
特別法優先の原則
特別法 > 一般法
新法(後法)優先の原則
新法(後法)> 旧法(前法)
特別法優先の原則 VS 新法(後法)優先の原則
特別法優先の原則 > 新法(後法)優先の原則
法律の有効期間を当該法律の中で明確に定めている場合には、原則としてその時期の到来により当該法律の効力は失われる。 5.妥当である
法律の有効期間を明確に定めているものを限時法(時限法、時限立法とも呼ばれる)という。
特定の事態に対応するために制定されることが多いが、その事態の進捗状況によって効力が左右されるわけではなく、あくまでも効力は、原則として期間内であるかどうかにかかっている。
近年では、「東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律(法テラス震災特例法:平成24年3月29日交付、平成27年期限延長、平成30年期限再延長、令和3年3月31日失効)」などがある。
なお、限時法に対して、有効期間を定めないで立法された法令は、恒久法と呼ばれる。