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  4. 問4

令和3年-問4 憲法 新しい人権

Lv2

問題 更新:2023-01-27 20:15:32

捜査とプライバシーに関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 個人の容ぼうや姿態は公道上などで誰もが容易に確認できるものであるから、個人の私生活上の自由の一つとして、警察官によって本人の承諾なしにみだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を認めることはできない。
  2. 憲法は、住居、書類および所持品について侵入、捜索および押収を受けることのない権利を定めるが、その保障対象には、住居、書類および所持品に限らずこれらに準ずる私的領域に侵入されることのない権利が含まれる。
  3. 電話傍受は、通信の秘密や個人のプライバシーを侵害するが、必要性や緊急性が認められれば、電話傍受以外の方法によって当該犯罪に関する重要かつ必要な証拠を得ることが可能な場合であっても、これを行うことが憲法上広く許容される。
  4. 速度違反車両の自動撮影を行う装置により運転者本人の容ぼうを写真撮影することは憲法上許容されるが、運転者の近くにいるため除外できないことを理由としてであっても、同乗者の容ぼうまで撮影することは許されない。
  5. GPS端末を秘かに車両に装着する捜査手法は、車両使用者の行動を継続的・網羅的に把握するものであるが、公道上の所在を肉眼で把握したりカメラで撮影したりする手法と本質的に異ならず、憲法が保障する私的領域を侵害するものではない。
  解答&解説

正解 2

解説

個人の容ぼうや姿態は公道上などで誰もが容易に確認できるものであるから、個人の私生活上の自由の一つとして、警察官によって本人の承諾なしにみだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を認めることはできない。 1.妥当でない

警察が犯罪捜査のためにデモ行進の写真撮影を行ったことの違法性が争われた京都府学連事件において判例は、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有するものというべきであるとしている(京都府学連デモ事件:最大判昭和44年12月24日)。

憲法は、住居、書類および所持品について侵入、捜索および押収を受けることのない権利を定めるが、その保障対象には、住居、書類および所持品に限らずこれらに準ずる私的領域に侵入されることのない権利が含まれる。 2.妥当である

本肢は、「車両に使用者らの承諾なく秘かにGPS端末を取り付けて位置情報を検索し把握する刑事手続上の捜査(GPS捜査)の適法性等」を争った事案である。

判例は、憲法35条は、「住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利」を規定しているところ、この規定の保障対象には、「住居、書類及び所持品」に限らずこれらに準ずる私的領域に「侵入」されることのない権利が含まれるものと解するのが相当であるとしている(最大判平成29年3月15日)。

電話傍受は、通信の秘密や個人のプライバシーを侵害するが、必要性や緊急性が認められれば、電話傍受以外の方法によって当該犯罪に関する重要かつ必要な証拠を得ることが可能な場合であっても、これを行うことが憲法上広く許容される。 3.妥当でない

「電話傍受以外の方法によって当該犯罪に関する重要かつ必要な証拠を得ることが可能な場合であっても」としているため妥当でない。

本肢は、平成11年法律第138号による刑訴法222条の2の追加前において「検証許可状により電話傍受を行うことの適否」が争われた事案である。
判例は、「電話傍受は通信の秘密や個人のプライバシーを侵害する強制処分であるが、一定の要件の下では、捜査の手段として憲法上全く許されないものではない」としている。
その要件として、「重大な犯罪に係る被疑事件について、被疑者が罪を犯したと疑うに足りる十分な理由」「当該電話により被疑事実に関連する通話の行われる蓋然性」「電話傍受以外の方法によってはその罪に関する重要かつ必要な証拠を得ることが著しく困難な場合」「電話傍受により侵害される利益の内容、程度を慎重に考慮した上で、なお電話傍受を行うことが犯罪の捜査上真にやむを得ない場合」に、法律の定める手続に従ってこれを行うことも憲法上許されるとしている(最判平成11年12月16日)。

速度違反車両の自動撮影を行う装置により運転者本人の容ぼうを写真撮影することは憲法上許容されるが、運転者の近くにいるため除外できないことを理由としてであっても、同乗者の容ぼうまで撮影することは許されない。 4.妥当でない

「同乗者の容ぼうまで撮影することは許されない」としているため妥当でない。

本肢は、「自動速度監視装置による速度違反車両運転者及び同乗者の容ぼうの写真撮影の合憲性」が争われた事案である。
判例は、速度違反車両の自動撮影を行う本件自動速度監視装置による運転者の容ぼうの写真撮影は、現に犯罪が行われている場合になされ、犯罪の性質、態様からいって緊急に証拠保全をする必要性があり、その方法も一般的に許容される限度を超えない相当なものであるから、憲法13条に違反しない。また、写真撮影の際、運転者の近くにいるため除外できない状況にある同乗者の容ぼうを撮影することになっても、憲法13条、21条に違反しないとしている(最判昭和61年2月14日)。

GPS端末を秘かに車両に装着する捜査手法は、車両使用者の行動を継続的・網羅的に把握するものであるが、公道上の所在を肉眼で把握したりカメラで撮影したりする手法と本質的に異ならず、憲法が保障する私的領域を侵害するものではない。 5.妥当でない

本肢は、「車両に使用者らの承諾なく秘かにGPS端末を取り付けて位置情報を検索し把握する刑事手続上の捜査(以下「GPS捜査」という。)の適法性等」を争った事案である。
判例は、公道上の所在を肉眼で把握したりカメラで撮影したりするような手法とは異なり、公権力による私的領域への侵入を伴うものというべきであるとしているため、妥当でない。

「GPS捜査は、対象車両の時々刻々の位置情報を検索し、把握すべく行われるものであるが、その性質上、公道上のもののみならず、個人のプライバシーが強く保護されるべき場所や空間に関わるものも含めて、対象車両及びその使用者の所在と移動状況を逐一把握することを可能にする。
このような捜査手法は、個人の行動を継続的、網羅的に把握することを必然的に伴うから、個人のプライバシーを侵害し得るものであり、また、そのような侵害を可能とする機器を個人の所持品に秘かに装着することによって行う点において、公道上の所在を肉眼で把握したりカメラで撮影したりするような手法とは異なり、公権力による私的領域への侵入を伴うものというべきである(最大判平成29年3月15日)。」

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