令和3年-問13 行政法 行政手続法
Lv3
問題 更新:2023-11-20 17:07:16
行政指導についての行政手続法の規定に関する次のア~エの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
ア.行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならないとされているが、その定めが適用されるのは当該行政指導の根拠規定が法律に置かれているものに限られる。
イ.行政指導に携わる者は、当該行政指導をする際に、行政機関が許認可等をする権限を行使し得る旨を示すときは、その相手方に対して、行政手続法が定める事項を示さなければならず、当該行政指導が口頭でされた場合において、これら各事項を記載した書面の交付をその相手方から求められたときは、行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならない。
ウ.行政指導をすることを求める申出が、当該行政指導をする権限を有する行政機関に対して適法になされたものであったとしても、当該行政機関は、当該申出に対して諾否の応答をすべきものとされているわけではない。
エ.地方公共団体の機関がする行政指導については、その根拠となる規定が法律に置かれているものであれば、行政指導について定める行政手続法の規定は適用される。
- ア・イ
- ア・ウ
- イ・ウ
- イ・エ
- ウ・エ
正解 3
解説
イ、ウが正しい。
行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならないとされているが、その定めが適用されるのは当該行政指導の根拠規定が法律に置かれているものに限られる。 ア.誤り
行政指導の一般原則として、行政手続法32条には、「行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意し、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない」と規定されている。
したがって、当該行政指導の根拠規定が法律に置かれているものに限られない。
処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関しこの法律に規定する事項について、他の法律に特別の定めがある場合は、その定めるところによる(行政手続法1条2項)とされ、行政手続法は一般法であるから、別の法律で特別の定めがある場合は、その特別法が優先される(特別法優先の原則)。
例えば、国土利用計画法24条1項では、「都道府県知事は、届出があった場合において、その届出に係る土地に関する権利の移転又は設定後における土地の利用目的に従った土地利用が土地利用基本計画その他の土地利用に関する計画に適合せず、当該土地を含む周辺の地域の適正かつ合理的な土地利用を図るために著しい支障があると認めるときは、土地利用審査会の意見を聴いて、その届出をした者に対し、その届出に係る土地の利用目的について必要な変更をすべきことを勧告することができる」と規定し、同法26条において、「都道府県知事は、勧告をした場合において、その勧告を受けた者がその勧告に従わないときは、その旨及びその勧告の内容を公表することができる」と定めている。
行政指導に携わる者は、当該行政指導をする際に、行政機関が許認可等をする権限を行使し得る旨を示すときは、その相手方に対して、行政手続法が定める事項を示さなければならず、当該行政指導が口頭でされた場合において、これら各事項を記載した書面の交付をその相手方から求められたときは、行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならない。 イ.正しい
行政指導に携わる者は、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならず(行政手続法35条1項)、当該行政指導をする際に行政機関が許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を行使し得る旨を示すときは、その相手方に当該権限を行使し得る根拠等を示さなければならない(行政手続法35条2項)。
また、口頭で行政指導をする場合において、その相手方から上述の内容を記載した書面の交付を求められたときは、行政上特別の支障がない限り交付しなければならない(行政手続法35条3項)。
なお、既に文書又は電磁的記録によりその相手方に通知されている事項と同一の内容を求めるものの場合には、これを書面で交付する必要はない(行政手続法35条4項2号)。
行政指導をすることを求める申出が、当該行政指導をする権限を有する行政機関に対して適法になされたものであったとしても、当該行政機関は、当該申出に対して諾否の応答をすべきものとされているわけではない。 ウ.正しい
何人も、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分又は行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)がされていないと思料するときは、当該処分をする権限を有する行政庁又は当該行政指導をする権限を有する行政機関に対し、その旨を申し出て、当該処分又は行政指導をすることを求めることができる(行政手続法36条の3第1項)。
しかし、法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものは「申請に対する処分」であり(行政手続法2条3号)、「申出」は、申出人の権利義務に変動が生じないから処分性が認められない。
したがって、行政指導をすることを求める申出に対して行政機関は、諾否の応答をすべきものとされていない。
地方公共団体の機関がする行政指導については、その根拠となる規定が法律に置かれているものであれば、行政指導について定める行政手続法の規定は適用される。 エ.誤り
地方公共団体の機関の「行政指導」「命令等を定める行為」については、第2章~第6章は適用除外となる(行政手続法3条3項)。
また、地方公共団体の「処分」「届出」については、根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものは第2章~第6章が適用除外である。
憲法で要求されている地方自治を尊重する趣旨から、このように規定されている。
なお、地方公共団体は、「行政手続法の規定を適用しないこととされた処分、行政指導及び届出並びに命令等を定める行為に関する手続について、この法律の規定の趣旨にのっとり、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない」とされている(行政手続法46条)。