令和3年-問42 多肢選択式 行政法
Lv2
問題 更新:2023-11-20 17:28:52
感染症法*の令和3年2月改正に関する次の会話の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。
教授A: 今日は最近の感染症法改正について少し検討してみましょう。
学生B: はい、新型コロナウイルスの感染症防止対策を強化するために、感染症法が改正されたことはニュースで知りました。
教授A: そうですね。改正のポイントは幾つかあったのですが、特に、入院措置に従わなかった者に対して新たに制裁を科することができるようになりました。もともと、入院措置とは、感染者を感染症指定医療機関等に強制的に入院させる措置であることは知っていましたか。
学生B: はい、それは講学上は[ ア ]に当たると言われていますが、直接強制に当たるとする説もあって、講学上の位置づけについては争いがあるようです。
教授A: そのとおりです。この問題には決着がついていないようですので、これ以上は話題として取り上げないことにしましょう。では、改正のポイントについて説明してください。
学生B: 確か、当初の政府案では、懲役や100万円以下の[ イ ]を科すことができるとなっていました。
教授A: よく知っていますね。これらは、講学上の分類では[ ウ ]に当たりますね。その特徴はなんでしょうか。
学生B: はい、刑法総則が適用されるほか、制裁を科す手続に関しても刑事訴訟法が適用されます。
教授A: そのとおりですね。ただし、制裁として重すぎるのではないか、という批判もあったところです。
学生B: 結局、与野党間の協議で当初の政府案は修正されて、懲役や[ イ ]ではなく、[ エ ]を科すことになりました。この[ エ ]は講学上の分類では行政上の秩序罰に当たります。
教授A: そうですね、制裁を科すとしても、その方法には様々なものがあることに注意しましょう。
(注) * 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
- 罰金
- 過料
- 科料
- 死刑
- 公表
- 即時強制
- 行政代執行
- 仮処分
- 仮の義務付け
- 間接強制
- 課徴金
- 行政刑罰
- 拘留
- 損失補償
- 負担金
- 禁固
- 民事執行
- 執行罰
- 給付拒否
- 社会的制裁
- ア
-
- イ
-
- ウ
-
- エ
-
正解
- ア6
- イ1
- ウ12
- エ2
解説
ア:6(即時強制)、イ:1(罰金)、ウ:12(行政刑罰)、エ:2(過料)
行政上の強制措置については行政法テキスト9《行政上の強制措置の分類》参照。
ア.即時強制
「感染者を感染症指定医療機関等に強制的に入院させる措置」のように、行政が国民の身体に強制的に実力行使を行うのは即時強制である。
即時強制とは、義務を課す事を前提とせず、目前急迫の障害を取り除くために、直接国民の身体又は財産に実力を加え、必要な状態を実現することである。
例えば、入国警備官による不法入国者の収容(入管法39条)、破壊消防(消防法29条)などが即時強制にあたる。
イ.罰金
懲役と併記されていることや、後の文脈から罰金か科料になるが、科料は1,000円以上1万円未満とされているので(刑法17条)、空欄前の100万円以下との文章から考えるとここでは罰金が入る。
ウ.行政刑罰
行政上の義務違反に対して科される罰には行政刑罰と秩序罰があり、行政刑罰には懲役、罰金、科料など刑法で定められた刑が科され、秩序罰には刑法で定めのない過料が科させる。「刑法総則が適用される」と後に続くのでここは行政刑罰が入る。
エ.過料
講学上の分類では行政上の秩序罰にあたるのは過料である。
秩序罰とは、行政上の義務違反のうち、軽微な違反行為について過料を科す制裁で、刑法総則及び刑事訴訟法の適用はうけず、刑罰の一種である科料を科すことはできない。